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132. 産業教育手当(その5) [17.産業教育手当]

 前回、昭和32年4月4日衆議院文教委員会における赤城宗徳による産業教育手当法の趣旨説明を引用した。これによれば、産業教育手当は「優秀な人材の確保」のために、産業教員における「勤務の特殊性」を考慮して「特別の措置」を講ずる趣旨の手当である旨をまず述べている。
 では、その「勤務の特殊性」は何かというと、続いて縷々説明をしているのであるが、要するに、農業においては「生命を持つものに対する管理責任から寸時も解放されないこと」「極度に困難な実習を伴うものであること」、水産については「実習船等に関し特に困難かつ複雑さを伴う業務に当たらなければならないこと」という点を指摘しているが、注目すべきなのは、これら勤務の複雑、困難等に着目するだけでなく、「これらの責任から生ずる早朝、夜間の作業」に言及していることであろう。
 言い換えれば、農業や水産に関する産業教育に従事する教員の職務について、単にその業務自体の困難性に着目するに止まらず、更に「早朝、夜間の作業」、すなわち正規の勤務時間外の勤務に着目しているのである。

 当時の教員給与は、「超過勤務手当は支給しないが、その代わり調整号俸で俸給月額自体を引き上げる」措置を講じていた。教職調整額こそ支給されてはいないが、一律に調整号俸を措置されてはいたが、担当する教科によっては、十分にその勤務実績が反映される形とはなっていなかったのである。
 このころの国会議事録を読んでいくと、超過勤務に着目した興味深い議論がいくつも出てくる。

<衆議院文教委員会 昭32.5.16>
○竹尾委員 (略)工業の方も、いろいろ時間外の超過勤務というような形のものもあるであろう、こういうような話でございましたが、むしろあの当時法律を改正する場合にも、工業の方に非常にそういうケースが多いから、それでまず変えなくちゃならぬ、こういうことで出発したものでありまして、これはこういうことをやると引き延ばしのようになって悪いけれども、そういう意味じゃないのですよ。工業の実習に関する教員及び実習助手などの時間外勤務というものは、非常に多いのです。深夜作業をするものが、電気科あるいは窯業、土木、機械、いろいろの面にわたって読み出したら切りがないほどたくさんある。それほど深夜業をやって、今のお説のような産業手当を出されるのであれば、当然工業の方にも出さなくちゃいかぬ。(略)

○赤城委員 御質疑でありますが、農業だけは通して工業だけは通さないというような御質疑らしくも聞えましたが、決してそういう意図ではありません。農業の方は、今の実習に伴って工業よりは自然的条件、あるいは生物を相手にしているので、本来超過勤務手当等を出すべきでありますが、学校の教員等については規定上超過勤務手当がありません。そこでほんとうは人事院の規則で一般職の給与の面からやるべきでありますが、これもできない。あるいはまたそのほかいろいろ研究いたしましたが、結局産業教育振興法の第三条の三の実施規定のようなもので、法律としてはまことにおかしいのですが、それでいこう、こういうところにだんだん研究して持ってきたのであります。(略)


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