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406.「コマ給」をどう捉えるか(続き) [47.「コマ給」をどう捉えるか]

 前回のノートについて、うさぎさんから「2780円? これを見てからもう一度考えてみてはくれまいか。」ということで、東京都の非常勤講師に関する規則が示された。同じようなやり方で考察してみた。

 東京都における小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校に勤務する時間講師の時給の時給については、都立学校等に勤務する時間講師に関する規則(昭和49年教育委員会規則第24号)の別表第三に規定されており、そのことについては、以前このノートで紹介している。(403.臨時・非常勤教員(その14))
 今一度、掲載する。

<東京都の非常勤講師の報酬単価>
経験区分  経験年数    時間額
 1   1年未満     1,880円
 2   1年以上2年未満 1,950円
 3   2年以上3年未満 2,020円
 4   3年以上4年未満 2,090円
 5   4年以上5年未満 2,160円
 6   5年以上6年未満 2,223円
 7   6年以上7年未満 2,310円
 8   7年以上8年未満 2,400円
 9   8年以上9年未満 2,490円
 10   9年以上10年未満 2,580円
 11   10年以上11年未満 2,660円
 12   11年以上12年未満 2,780円
 13   12年以上     2,860円

 東京都における時間講師の報酬単価の定め方は経験年数に応じた1年刻みの額となっており、他県の多くが単一の単価としていると思われる(例えば、以前紹介した大阪府など)中、その点が大きな特徴になっている。
 この表に定める「経験年数」は、別表第三には「教育職員としての経験年数等」と規定されている。(ここでいう「教育職員としての経験年数等」がどのように定義づけられているのかによって異なる側面が出てくると思われるが、残念ながらよく分からない。給料表適用者の初任給決定に当たっては号給換算の際に一定の割落としがあるが、ここでは、割落としはないものとして考察することにする。)

 これまでは、非常勤講師の時給に係る地方交付税単価2,780円をベースに考察してきたのだが、東京都の時間講師について考察するとなると、一応、東京都の常勤講師の基本給を確認しなければならないだろう。
 例によって、俸給制度表を作成し、常勤講師に適用される1級の給料月額について掲載する。(講師に適用される大学卒の初任給基準は1級21号給185,600円であり、これを基礎に作成。平成27年4月1日に適用されている給料表による。)

<東京都の常勤講師の給料月額>
 経験年数 号給 給料月額
  0年 21号給 185,600円
  1年 25号給 191,000円
  2年 29号給 196,600円
  3年 33号給 202,400円
  4年 37号給 208,400円
  5年 41号給 214,500円
  6年 45号給 221,500円
  7年 49号給 227,900円
  8年 53号給 234,300円
  9年 57号給 240,600円
  10年 61号給 246,500円
  11年 65号給 252,100円
  12年 69号給 257,700円
      (略)
  26年 125号給 312,100円(旧教(三)最高号俸の位置)
  33年 153号給 321,200円(旧教(二)最高号俸の位置)
  37年 169号給 326,000円(東京都の最高号給)

 次に、東京都の規則では「時間講師の勤務時間の一単位時間は、60分とする」と定めていることから、常勤講師の給料月額の時間単価を計算してみる。
 計算式は、「(給料月額+地域手当)×12月/52週×38時間45分」とした。その際、地域手当の支給割合をどのように設定すべきか悩んだが、とりあえず今年度の支給割合である「20%」とした。 なお、非常勤講師報酬との関連を考えるため、教職調整額は含めていない。
 非常勤講師報酬と比較するため、常勤講師の時給の右に経験年数に応じた報酬単価と比率を記載する。

<東京都の常勤講師の時給>
 経験年数 号給 時給(A) 非常勤単価(B)比率(B/A)
  0年 21号給 1,326円 1,880円 1.42
  1年 25号給 1,365円 1,950円 1.43
  2年 29号給 1,405円 2,020円 1.44
  3年 33号給 1,446円 2,090円 1.44
  4年 37号給 1,489円 2,160円 1.45
  5年 41号給 1,533円 2,223円 1.45
  6年 45号給 1,583円 2,310円 1.46
  7年 49号給 1,629円 2,400円 1.47
  8年 53号給 1,674円 2,490円 1.49
  9年 57号給 1,719円 2,580円 1.50
  10年 61号給 1,762円 2,660円 1.51
  11年 65号給 1,802円 2,780円 1.54
  12年 69号給 1,842円 2,860円 1.55
      (略)
  26年 125号給 2,230円 2,860円 1.28
  33年 153号給 2,295円 2,860円 1.25
  37年 169号給 2,330円 2,860円 1.23

 こうして常勤講師の時給と非常勤講師の時給を単純に比較すると、非常勤講師の時給の方が最低1.23倍、最高1.55倍も高く、有利な額となっているように見える。ちなみに最高号給の時給に4%を加えた額は2,423円となるが、これよりも更に高い額であると…。扶養手当などの手当やボーナスは支給されないとしても、通勤手当相当額は加算されるようであるし…。
 しかし、非常勤講師単価は「コマ給」であり、事実上、授業準備や評価等に要する時間に対する報酬も含まれていると考えると、このように理解することはできない。
 常勤講師も勤務時間内にすべての授業準備などの時間が取れない実態があるだろうけれども、「コマ給」との比較をするためには一定の調整が必要だろう。そこで、とりあえず、前回のノートで考えてみたように、「50分の授業には通常50分の準備及び後業務を要する」と仮定するとするならば、非常勤講師は50分授業のコマ単価と捉え、60分単価に換算した上で、常勤講師の単価を2倍にして比較しなければならないだろう。
 結果は次のとおり。経験12年までを見ると、非常勤講師の報酬水準は常勤講師の給与水準に対して、0.85から0.93の間にある。現行の非常勤講師単価がいつ設定されたのか確認していないのでわからないが、比率のばらつきは、給料表について初任給付近を手厚く改善した近年の改定傾向を反映した結果なのかもしれない。

<東京都の常勤講師の時給(コマ給に換算)>
 経験年数 号給 時給(A')非常勤単価(B')比率(B'/A')
  0年  21号給 2,653円 2,256円 0.85
  1年  25号給 2,730円 2,340円 0.86
  2年  29号給 2,810円 2,424円 0.86
  3年  33号給 2,893円 2,508円 0.87
  4年  37号給 2,979円 2,592円 0.87
  5年  41号給 3,066円 2,668円 0.87
  6年  45号給 3,166円 2,772円 0.88
  7年  49号給 3,257円 2,880円 0.88
  8年  53号給 3,349円 2,988円 0.89
  9年  57号給 3,439円 3,096円 0.90
  10年  61号給 3,523円 3,192円 0.91
  11年  65号給 3,603円 3,336円 0.93
  12年  69号給 3,683円 3,432円 0.93
      (略)
  26年  125号給 4,461円 3,432円 0.77
  33年  153号給 4,591円 3,432円 0.75
  37年  169号給 4,659円 3,432円 0.74

 逆に、非常勤講師の実質賃金単価を算出するという見方をすれば、掲載している時間単価(B')を2分の1にすればよいことになる。詳細の掲載は省くが、時給は実質1,128円から1,716円になる。つまり、教員免許取りたて大学卒業直後に採用された場合は時給1,128円であり、東京都の最低賃金888円を240円超える水準に止まる。(もっとも、通勤手当相当額が別途加算されるが…)

 東京都の場合には賃金水準が高い地域にある下で、経験年数に応じた単価としていることから、このような結果となのだと思われる。
 ただ、絶対水準が適当かどうかを横に置いて見てみた場合、経験年数12年までは常勤講師の昇給カーブとほぼ平行した報酬額のカーブを描いている。このとき、仮に、東京都の非常勤講師の時給の水準が概ね適切だとみなしたとするならば、「経験年数12年で頭打ちにはしているけれども、常勤講師の給与との均衡を図っている」との主張が成り立つのかもしれない。(とはいうものの、絶対水準は今見たとおりであるが…)


 一方、地方ではどうなるのだろうか。
 前々回のノートで違った角度からみてきたことにはなるのだが(404.臨時・非常勤教員(その15))、一応、平成27年4月に適用されている平成26年較差改定に基づく全人連モデルを用い、地域手当については平均的な水準に設定(5%と仮定)して、同じように考察しておく。地方交付税単価の2,780円を「非常勤単価」(D)とする。

<全人連モデル旧教(三)1級>
 経験年数 号給 給料月額  時給(C) 比率(D/C)
  0年 21号給 191,500円 1,197円 2.32
  1年 25号給 198,100円 1,239円 2.24
  2年 29号給 204,500円 1,279円 2.17
  3年 33号給 211,100円 1,320円 2.11
  4年 37号給 217,700円 1,361円 2.04
  5年 41号給 224,600円 1,404円 1.98
  6年 45号給 231,800円 1,449円 1.92
  7年 49号給 238,600円 1,492円 1.86
  8年  53号給 244,900円 1,531円 1.82
  9年 57号給 251,300円 1,571円 1.77
  10年 61号給 257,300円 1,609円 1.73
  11年 65号給 263,000円 1,645円 1.69
  12年 69号給 269,400円 1,685円 1.65
      (略)
  26年 125号給 310,500円 1,942円 1.43

 50分の授業には通常50分の準備及び後業務を要する」と仮定し、「非常勤単価」を60分に換算(2,780円→3,336円=(D'))とした上で、1級の時給を2倍にして比較してみる。

<地方交付税単価(コマ給)との比較>
 経験年数 号給 時給(C')比率(D'/C')
0年 21号給 2,395円 1.39
1年 25号給 2,477円 1.35
2年 29号給 2,558円 1.30
3年 33号給 2,640円 1.26
4年 37号給 2,723円 1.23
5年 41号給 2,809円 1.19
6年 45号給 2,899円 1.15
7年 49号給 2,984円 1.12
8年 53号給 3,063円 1.09
9年 57号給 3,143円 1.06
10年 61号給 3,218円 1.04
11年 65号給 3,289円 1.01
12年 69号給 3,369円 0.99
      (略)
26年 125号給 3,883円 0.86

 以上のとおり、大卒直後では常勤講師の給与水準と比較して1.39、経験11から12年でほぼ常勤講師の水準となり、徐々に目減りをするが、最高号給でも0.86にとどまっている。
 実質賃金単価の見方で非常勤講師の時給単価(D')を2分の1にすると1,668円となる。(このほか、大半の県で通勤手当相当額が支給されている。)ちなみに、平成26年10月適用の地域別最低賃金の全国加重平均は780円である。
 もちろん、設定する条件を変えると答えは変わることにはなるのだが… 

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コメント 4

うさぎさん

おやおや。
ちょっと補足しますか。
経験年数割り落としに関して、
東京都は、非常勤講師は何コマ持っていたかは関係なく、その職名につき、×0.5 つまり、2年の経験で常勤の教職1年の経験とみなす。月の途中で退職した場合、例えば、4月1日採用で、4月10日退職の場合でも、1月の経験があるとみなす。(こちらは切り上げ主義)

埼玉県は、13コマ以上の担当で、常勤に準ずるとみなした経験年数の算定がなされるので、13コマ以上担当している場合、東京都で6年かかるところを3年で専修免許状等の上進申請等ができる。東京都ではできないのに、埼玉県ではできる、ということが起こっている。

東京都の場合、最高額に達するまでおよそ2倍の年月を要する(12年ではなく24年)ことを考慮していただきたい。
by うさぎさん (2015-08-14 15:07) 

うさぎさん

>別表第三には「教育職員としての経験年数等」と規定
これは、各都道府県教委の判断による。文科省の統一見解は無い。

>「50分の授業には通常50分の準備及び後業務を要する」と仮定する
これは、判例では認められていない。
契約書にある通りの時間。10分前であるとか20分前出勤とあれば、1日あたり、その時間は加算されるであろうが・・・その余は、時間割上の担当するコマの時間のみで計算されている。
前述の埼玉県の「13コマで常勤経験とみなす」という考え方は実態に即して前後を考慮してくれている奇特なものである。
社会保険加入等の要件(これは、法に定めおらず、内簡が根拠と判例が根拠になっている)である「常勤者のおおむね3/4以上」は、例えば常勤者が週に40時間働いていた場合、非常勤講師が週に30時間以上働いていると主張するには、1コマ50分であれば週に36コマを担当せねばならず、事実上不可能である。

by うさぎさん (2015-08-14 15:19) 

速見卓

うさぎさん、コメントありがとうございます。
 経験年数の割落としに関して、東京都は厳しい換算率なのですね。この辺りは不案内なので、参考になりました。ただ、経験年数を有する者の初任給決定に関しては、経験年数換算表による換算(紹介された東京都や埼玉県の例)と、経験年数換算表による換算後の経験年数の号給数への換算とがあり、いずれも東京都の考え方を知らないので、あのような記述になりました。埼玉県のように何コマ以上で常勤に準ずる換算率とする県は、正確ではありませんが、ほかにも聞いたことがあります。標準定数の基礎となった時間数はノートに記載したとおりですが、文部科学省の調査による担任を持たない教員も含めた持ち時間数の平均が確か小学校で約18時間、中学校で約15時間、高校で約14時間であり、この辺りを参考にしている県もあるようです。
 「50分の授業には通常50分の準備および後業務を要する」と仮定したのは、かなり感覚的なものです。実際には個々人で必要とする時間は異なるでしょう。この仮定は、そもそも非常勤講師については、授業のコマ数は明示されても、労働時間は明示されていないのが通例ではないか、ということが問題意識としてあることを前提としています。過去、文部省の役人が、「標準法上、授業1時間につき準備等に1時間を要すると想定している」という趣旨の国会答弁をしていたことも頭の隅にあって、あのような仮定の表現としました。そうしないと、一見、時間単価がそこそこの水準に見えるけれども、実態は違うということが示せないからです。非常勤講師の労働時間が争点となった裁判例は不勉強で知りません。
 社会保険のことについても言及いただいています。敢えて述べると、非常勤職員はおおざっぱに言えば、いわゆる日々雇用の者(1日の勤務時間が常勤職員の勤務時間を超えない者で任用期間が1日単位で日々更新される者=その後、国では期間業務職員制度に変更された。)を除いて、1週間の勤務時間が常勤職員の4分の3を超えない範囲内の者とされているので、通常、日々雇用の者を除いて非常勤職員が社会保険に加入することはないのではないかと思われます。しかし、常勤の者が週38時間45分勤務の場合、詳細は省きますが、条件によっては週26時間や27時間程度でも社会保険に加入できるはずです。つまり、非常勤職員でも社会保険に加入できる者もいることになります。勤務時間が明示されている嘱託などは条件を満たせば加入できます。非常勤講師の場合、その多くがいわゆる「コマ給」の契約であって、勤務時間が明示されていないことから、ここでも問題が生じているのではないでしょうか。
by 速見卓 (2015-08-16 22:51) 

N

全く同じ期間9月〜3月までの採用で24コマ採用なのに東京都採用の非常勤講師では社会保険に入れますが
文京区採用の場合、非常勤講師では社会保険に入れないと言われました。なんで?
by N (2015-10-11 23:55) 

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