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434. 部活手当の最低賃金割れ解消? [8.トピック]

 7月28日、文部科学省が部活動手当の増額を平成29年度予算の概算要求に計上する方針であるとの報道があった。例えば、毎日新聞の記事の一部を抜粋して掲載する。

公立中学教員
「部活手当」2割増 最低賃金割れ解消 来年度から文科省

文部科学省は27日、休日に部活動を指導した公立中学校教員に支給する「部活動手当」を来年度から2割増額する方針を固めた。4時間従事した場合の支給額が現在の3000円から3600円となる。必要額を来年度予算の概算要求に計上する。
現在は時給換算で750円と、最低賃金の全国平均798円を下回る。厚生労働相の諮問機関、中央最低賃金審議会の小委員会は27日、全国平均で24円引き上げの目安を公表。全国平均は822円となる見通しだが、部活動手当が増額されれば、それを上回る時給900円となる。
部活動手当は、教員給与と同様に国が3分の1、都道府県が3分の2を負担する。平日の指導分は、時間外手当の代わりに本給に上乗せされている「教職調整額」の範囲内として支給されない。
(略)

 確か、2年前の平成27年度予算の概算要求においても部活動手当を3,000円から3,600円に引き上げる要求をしたのだが、結局、ダメだった。「メリハリある教員給与体系の推進」として要求したのだが、ハリだけを要求し、財源となるメリを差し出さなかったのだから、財務省が認めるはずもない…、という雰囲気だった。当時は、給与問題よりも定数問題に焦点を当てていたからかもしれない。さて、今回は、どのような概算要求になるのだろうか、しっかりと見ていかないといけない。

 ところで、この記事の書きぶりには気になることがある。それは、部活動手当を最低賃金と比較していることだ。部活動手当は特殊勤務手当の一種である。特殊勤務手当は、基本となる本俸(本給)は別に支給されていて、本俸(本給)では十分に考慮できない個々の職務の困難度等の特殊性に対応するため支給されるものである。つまり、部活動手当単体で最低賃金と比較するのは、制度面から見ればおかしな話なのである。
 部活動指導をしても最賃より低い手当しかもらえない、というように教員が受け止めてしまうことは理解できなくはない。土日に4時間程度勤務しないと支給されない手当だから、それを超勤手当と比較したくなる気持ちは十分に分かる。けれど、制度上は最賃と比較すべきものなのだろうか。もっとも、通常の特殊勤務手当は、平日だろうが週休日だろうが、勤務時間の中だろうが外だろうが、同じ額が支給されるのに、部活動手当は、週休日にしか支給されないという教員に特有の変わった手当であることは確かだ。

「平日の指導分は、時間外手当の代わりに本給に上乗せされている「教職調整額」の範囲内として支給されない。」との記述も気になる。誰がこのようにこの記事を書いた記者に説明したのだろうか。
 教職調整額を4%とした根拠については、宮地茂監修「教育職員の給与特別措置法解説」(第一法規、昭和46年)に説明がある。引用するのは省略するが、結論だけ言うと、4%の基礎となった昭和41年度に文部省が実施した教員の勤務状況調査結果で示された超過勤務時間には、土日の勤務時間が含まれていることになっている。そうすると、「教職調整額は平日分であり、土日分はカバーできていない。」と理解しかねない毎日新聞の記事はおかしいということになる。
 とはいうものの、以前もこのノートで、「昭和41年度の教員勤務状況調査の結果に基づき4%を算出する過程で対象外あるいは相殺減した時間を見ていくと、クラブ活動の時間も減じられているように思う」との仮説を示している。もし、この仮説が正しいとするならば、部活動手当と最低賃金を比較することは、あながち間違いではないのかもしれないが…。




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