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506. 日宿直も教諭の職務(人事院月報第85号) [49.「人事院月報」拾い読み]

 1958年3月号の人事院月報第85号の「資料室」と題するコーナーに、教員の職務にかかわる新聞記事が紹介されている。

 日宿直も教諭の職務

 山形県人事委員会は昨年12月20日、学校火災の責任を問われ減給処分された遊佐小学校金子教諭から出された不利益処分の審査請求に対し、「減給処分を取り消して戒告処分に修正する」との判定をくだした。一昨年の4月5日、遊佐小学校の火災にさいし、当夜宿直していた金子教諭は「学校事故防止の監視を怠つたのは教諭としての職務を果たさなかつた」との理由で教育委員会から減給処分を受け「日宿直は教諭の義務的な職務sではない」と審査請求していたもの。
 判定の内容は大略つぎのとおり
 (1) 学校の校舎、設備の管理保全ためには日宿直勤務は児童の教育を行う上に必要欠くべからざるもので、教員の職務内容には日宿直の勤務が含まれる。
 (2) 教員の職務は独立しておりその職務に関しては学校長の指揮監督の下にはないという請求者の主張は当らない。学校長は所属の教員に対し日宿直を命ずることができ、所属教員はその勤務に従う義務が発生するものと解する。
 (3) 請求者が酒をのんで宿直の事務引継ぎを1時間半もおくらせたことは職務上の怠慢と認められる。
 (4) 処分に当り、教育委員会が請求者の弁明をきかなかつたことは懲戒規定にそむくが、だからといつて問責の事由が消滅するものではない。
 (山形新聞 昭32.12.21)


 この記事を読んで、文部科学省職員による研究会の本に「教諭の職務」についての記述があったことを思い出した。
 『第六次全訂新学校管理読本』(学校管理運営法令研究会編著。第一法規)から該当箇所を抜粋する。

1 教諭の職務
 学教法第三十七条第十一項は、「教諭は、児童の教育をつかさどる。」と規定している(この規定は小学校に関するものであるが、当該規定は中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校についても学教法第四十九条(略)によってそれぞれ準用されている。また、幼稚園についても(略)。
 したがって、教諭は、教育活動に関する事項をその職務とするのであるが、だからといって教諭の職務が教育活動に限定されるものではない。すなわち、学校においては、実情に応じ、教諭にも学校の施設設備の管理の仕事や事務系の仕事を分担させることができるものであり、そもそも学校には処理すべき種々の校務がある一方、それを処理する教職員数は限定されているのであり、組織体として全員で校務を処理するという観点から、そのように分担する必要があるのである。前述の学教法の教職員の職務に関する規定は、それぞれの職に就いた教職員が果たすべき主たる職務について定めているものであって、それ以上に当該職務に限定する趣旨のものではないのである。このことについて判例でも、「学校教育法第五一条(注・現第六十二条)によって高等学校に準用される同法第二八条四項(注・現第三十七条第十一項)は、教諭の主たる職務を摘示した規定と解すべきであるから、同条四項の規定を根拠として児童に対する教育活動以外は一切教諭の職務に属しないものと断ずることは許されない。もとより教諭は、児童生徒の教育を掌ることをその職務の特質とするのであるが、その職務はこれのみに限定されるものではなく、教育活動以外の学校営造物の管理運営に必要な校務も学校の所属職員たる教諭の職務に属する」(昭四二・九・二九 東京高裁判決)と判示している。


 この読本に引用されている判例は、静岡県の教員が労基法の許可なく命じられた「宿日直勤務」を巡って争った事案であったのだが、実は省略されている部分がある。以下、判決文の該当箇所を抜粋する。

 学校教育法第五一条によって高等学校に準用される同法第二八条第四項は、教諭の職務として「教諭は児童の教育を掌る。」と定めているから、右規定を平面的に文理解釈するときは、教諭の職務は児童の教育を掌ることのみにあると解する余地がないわけではないけれども、学校教育法第二八条は教育活動を目的とする人的・物的要素の総合体である学校営造物の各種職員の地位を明らかにするため、その主たる職務を摘示した規定と解すべきであるから、同条第四項の規定を根拠として児童に対する教育活動以外は一切教諭の職務に属しないものと解することは許されない。もとより教諭は、児童生徒の教育を掌ることをその職務の特質とするのではあるが、その職務はこれのみに限定されるものではなく、教育活動以外の学校営造物の管理運営に必要な校務も学校の所属職員たる教諭の職務に属するものと解すべく従って学校施設・物品・文書の管理保全および外部連絡等の目的をもって行われる宿日直等もこの意味において教諭にこれを分掌すべき義務があり、上司たる校長は教諭に対し、職務命令をもって宿日直勤務を命ずることができ、右勤務を命ぜられた教諭は、あえて法令の規定をまたず職務としてこれに従事する義務があるものといわなければならない。
 そして、このように手続に違法のある宿日直勤務については、法第四一条第三号、同法施行規則第二三条によって、労働時間、休日労働等の関係規定の適用除外が認められない関係上これを労働基準法上の時間外または休日労働と目し、超過勤務として取扱うべきであるとの行政解釈(昭和二三年四月二二日基収第一〇三九号、なお昭和二三年九月二〇日基収第三三五四号)が行われたけれども、そもそも超過勤務手当は、正規の勤務時間をこえて勤務することを命ぜられた職員に正規の勤務時間を超えて勤務した全時間に対し、勤務一時間につき、勤務一時間当りの給与額を一定の割増率によって支給されるものであって、本来の勤務の延長に対する給与にほかならないというべきところ、被控訴人のなした宿日直は、既述のところから明らかなように、その実態において法第四一条第三号規則第二三条にいう断続的労働に該当し、教諭としての本務に附随する職務と見られるべきものであって本来の勤務の延長または変形ではなく、本来の勤務とは別個の労働であること、法第四一条第三号、規則第二三条の立法趣旨に照し、同条の許可は、その存否如何によって時間外労働となるか否かを決するものとは考えられないことからすれば、被控訴人のなした宿日直勤務が右許可を得ない違法なものであったことによって直ちに右勤務に対して超過勤務手当等が支給されるべきであるということはできない。それ故本件宿日直勤務に対する手当の額が超過勤務手当等とひとしい額でなければならないとの被控訴人の主張は失当であるというのほかはない。
(東京高等裁判所判決。事件名 判定取消請求控訴事件。裁判年月日 昭和42年9月29日。事件番号 昭和40年(行コ)23号。裁判結果 一部取消・一部請求棄却)



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