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518. 退職年金制度改正と退職手当 [49.「人事院月報」拾い読み]

 昭和34年6月1日発行の人事院月報は、記念すべき第100号である。本号には、記念論文集や座談会も掲載されており、それはそれで面白いのだが、今回は「公務員退職年金制度改正の概要」の記事に注目したい。

 第31国会で成立し、5月15日公布された国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律(昭和34年法律第163号)により、明治17年太政官達第1号「官吏恩給令」に始まる文官の恩給制度は終りを告げ、新たに共済組合制度による公務員年金制度がきたる10月1日から全面的に発足することとなつた。
 ここまでに至る経緯を簡単にふり返つてみると、周知のごとく昭和28年11月17日に人事院は国家公務員法の規定に基づいて、官吏雇傭人を統一する国家管掌による公務員年金制度を内容とする研究成果を国会および内閣に提出しあわせてそれが法律として制定されるよう意見の申出を行つている。これを契機として、昭和31年7月1日から公共企業体職員についてほぼこれと水準を同じくする年金制度が共済制度によつて始められることとなり、郵政職員についても同様の動きが議員提出法案としてあらわれ、審議未了とはなつたが、政府としても早急の措置が必要となつた。しかし公務員年金制度を共済制度とするか国家管掌制度とするかについて政府部内の意見が一致せず、昭和33年3月14日閣議において、五現業職員については共済制度によることとし、非現業雇傭人はこれと調整をはかる意味で暫定的に共済制度により、非現業恩給公務員については別途至急検討するものと裁断された。かくして、国家公務員共済組合法(昭和33年法律第128号)により、昭和34年1月1日から非現業恩給公務員を除く国家公務員に新制度が適用されることとなつたが、その後残された非現業恩給公務員についても国家公務員法に基づく退職年金制度としての共済制度によることに政府部内の意見の一致をみ、国家公務員法の改正とともに今回の改正となつたものである。国家公務員法の改正においては、相当年限忠実に勤務して退職した公務員に退職年金が与えられなければならないことなどが規定されるとともに、退職年金制度について人事院が意見の申出をすることができることを定めている。公務員にとつて、きわめて重要な国家公務員共済組合法のこの改正につき、以下簡単に説明する。
 順序として、最初に、改正の主要点について。
 第1に、新制度は、官吏、雇傭人を通じての統一的な年金制度である。
 第2は、給付原因たる事故の範囲が広く、かつ、給付内容が改善された。
 第3は、掛金が高くなる。(これに相当する分が退職手当として増額されることとなると説明されている。)
 第4は、社会保険との均衡を考慮して、給付に最低保障制をおいた。
 第5は、多額所得停止制度が廃止され、若年停止制度に代えて減額退職年金制度を採用し、退職年金の支給開始年齢を55歳に延長した。以下、………(第100号18頁)

 そうだったのか。掛金が高くなる分が退職手当として増額されることになったのか。この年、例えば、勤続年数の短い自己都合退職者の退職手当が倍増したことなど、大幅に増額されたことは知っていたのだが、共済組合の掛金の増額と引き換えだったのだ。
 「参考までに新旧退職手当の支給率表を示すと次のとおりである」として、最後に退職手当支給率新旧比較表が掲載されている。一部抜粋する。(同号23頁)

1 普通退職
 1年以上10年以下の期間1年につき 60% → 100%
 11年以上20年以下の期間1年につき 65% → 110%
 21年以上 (略)
 (旧)勤続5年以下の者は右の率の50%、勤続6年以上10年以下の者は右の率の75%とする。
 (新)自己都合(傷病の場合を除く。)により退職した勤続5年以下の者は右の率の60%、勤続6年以上10年以下の者は右の率の75%とする。

 ちなみに、『公務員の退職手当法詳解』(第4次改訂版、平成18年)に退職手当の沿革や改正の経緯が載っているが、「掛金が高くなる分が退職手当として増額される」こととなったことまでは言及されていないようである。


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