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501. 人事異動通知書と人事記録(人事院月報第83号) [49.「人事院月報」拾い読み]

 人事院月報第83号(昭和33年1月1日発行)の「人事用語早わかり」と題したコラムのテーマは、「人事異動通知書と人事記録」である。

 人事異動通知書と人事記録

 新しく官庁に採用される際には、今までの経歴を記載した履歴書とか学校の卒業証明書等を提出することを要求され、いよいよ採用と決定すると、辞令、正式には人事異動通知書といわれるものが交付される。これらは、現在一般職の国家公務員については法令上の制度としてその取扱が統一されている。

 戦前や戦後の数年間は、墨痕鮮かに書かれた縦書の重々しい辞令(正式には任官する場合の辞令を官記といい、その他の場合は大体辞令といつて区別されていた。)が交付され、文句も「任内閣書記官、叙高等官7等」といつたものや、その後の「内閣事務官に任命する。2級に叙する」といつた調子のものであつた。しかも、職員の身分によつて異なつた任命の手続が行われ、異なつた形式の辞令が交付されていた。人事関係の用語もただ慣習的に永年使用されていただけで、はつきりした定義もなかつた訳である。また、人事記録についても人事記録という名称はなく、その名称、種類、内容、形式は各省庁によつて区々であり、人事記録に当るものとしては美濃紙を用いた履歴書があつて、これにその職員の経歴を毛筆などで順次記載して人事事務を処理していた。

 国家公務員法では、公正な人事、能率的な人事を行うためには、その基礎となる人事に関する手続、用語および人事記録について統一化、明確化をはかる必要があると考え、昭和24年画期的な人事記録制度を樹立し、昭和27年現行の制度に改正した。

 そこで、まず人事異動通知書についていうと、職員が採用されたり、転任させられたりすると、原則として人事異動通知書がその者に交付される。また、俸給の決定を通知する場合および任官させた場合にも原則としてこの通知書が交付される。その場合の人事異動通知書の様式とか異動の用語や辞令の文句(これを発令形式といつている)等はだいたい統一されている。ここで重要なことは、採用とか転任とかの異動については、発令したときにその効力が発生するが、降任とか休職あるいは休職の期間の更新とか免職とかの場合は、原則としてこの人事異動通知書がその職員に交付されたときにその効力が発生することになっている。

 人事異動通知書の様式および紙質は横書のしかもコピーがとれるような紙質のもので、昔のものに比べると、かなり簡便なものになつている。

 つぎに異動の用語の定義(採用、昇任、降任、配置喚については指定日前、すなわち職階制が実施される日で、人事院指令で定めることになつている日の以前と指定日後ではその定義は異なるが、現在は指定日前であるので現在の定義についてのみ)の1例をあげると、
(採用) 現に「官職」についていない者を新たに官職に任命する場合をさすものである。しかし、臨時的任用を行う場合を除くことになつている。

 発令形式は、だいたいその異動の用語を発令の字句の中に織り込んでその異動の形態がわかるようになつている。指定日前(前掲)と指定日後では多少その形式が異なるが、指定日前の例はつぎのとおりである。
「○○事務官行政職(一)(○○課)に採用する」

 つぎに人事記録であるが、任命権者がある職員の人事上の措置をする場合、または全般的な人事管理上の措置をする場合には、その資料として職員についての人事記録が整備されていいなければ、公正妥当でかつ能率的な措置を期待することはできない。したがつて法は任命権者に人事記録の整備保管を厳重に要求しているのである。

 人事記録という言葉を職員の人事に関する一切の事項の記録と解釈すると、出勤簿や人事記録の原議その他種々の記録があるが、法令上では、人事記録というのは特に規則で指定されたものさすことになつている。この人事記録は、法令上の言葉ではないが、必ず任命権者が作成、保管しなければならない必須記録と、任命権者の任意である任意記録とにわけることができる。

 これらの人事記録は2,3の例外を除いて職員別に一括して所定のフォルダーに収めて容器に保管される。例外として、勤務記録カードはこれだけを一括して保管し、その利用の便をはかつている。また、健康診断の記録とか勤務評定の結果の記録はその記録の特殊性にかんがみ、任命権者の定める方法で保管することができる。

 また、これらの人事記録は職員が任命権者を異にして異動した場合には、その職員とともに新しい任命権者の下に移管され、しかも原則として職員の離職後10年間は離職当時の任命権者のもとに保管される。また、その期間内に再び採用された場合には、新任命権者の請求によりその人事記録を移管することになつている。
(任用局 企画課)

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500. 給料表カーブの公表 [8.トピック]

 平成31年3月29日付けで「地方公共団体における職員給与等の公表について」(昭和56年10月13日付け自治給第45号自治事務次官通知)の一部改正が行われ、国の行政職俸給表(一)と当該地方公共団体の行政職給料表(一)のカーブを比較した表を公表することとなった。
 この比較表は、縦軸に俸給(給料)月額、横軸に号俸(号給)を置いて俸給表及び給料表のカーブを描くグラフとなっている。これは、以前このノートでも取り上げた「地方公務員の給与決定に関する調査研究会報告書」(平成31年3月一般財団法人自治総合センター)によって示された「わたり」を点検するための給料表カーブの比較手法に基づいている。(475. 自治総合センター31年3月報告書)
 https://hayamitaku.blog.ss-blog.jp/2019-07-19

 今回、東京都が公表した比較表を見てみた。「東京都人事行政の運営等の状況」ちという資料の12頁に掲載されている。
https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/03jinji/pdf/hakushotousin/01jinjigyousei.pdf

 東京都の行政職給料表(一)はいわゆる独自給料表であるため、国の行政職俸給表(一)とは構造やカーブが大きく異なっている。まず、職務の級の構成は、国が10級制を採用しているのに対して、東京都は5級制を採用している。

<国の行政職俸給表(一)> 俸給月額は平成31年4月較差改定後
 職務の級 本省の職 号俸数 俸給月額      上下の幅
 10級  特重課長  21 521,700~559,500円  37,800円
 9級   重要課長  41 458,400~527,500円  69,100円
 8級   困難室長  45 408,100~468,600円  60,500円
 7級   室長    61 362,900~444,900円  82,000円
 6級   困難補佐  85 319,200~410,200円  91,000円
 5級   課長補佐  93 289,700~393,000円 103,300円
 4級   困難係長  93 264,200~381,000円 116,800円
 3級   係長   113 231,500~350,000円 118,500円
 2級   主任   125 195,500~304,200円 108,700円
 1級   係員    93 146,100~247,600円 101,500円

<東京都の行政職給料表(一)> 給料月額は平成31年4月較差改定後
 職務の級 基準職務 号給数 給料月額      上下の幅
 5級   部長     4 494,000~526,700円  32,700円
 4級   課長    97 284,000~455,000円 171,000円
 3級   課長代理 141 224,800~415,100円 190,300円
 2級   主任   129 199,100~362,500円 163,400円
 1級   主事   149 141,300~324,300円 183,000円

 こうして見ると、東京都の給料表の級別の水準に相当する国の級は、概ね次のような感じになるか。

<東京都行一VS国行一>
 東京の級      国の級
 (なし)      10級(特重課長)
 5級(部長)    9級(重要課長)
 4級(課長)    5級(課長補佐)~7級(室長)・8級(困難室長)
 3級(課長代理)  3級(係長)~6級(困難補佐)
 2級(主任)    2級(主任)~3級(係長)・4級(困難係長)
 1級(主事)    1級(係員)~2級(主任)・3級(係長)

 国の俸給表は本省だけでなく、管区機関や府県単位期間、地方出先機関に置かれる様々な職に対応する必要があり、必然的に2つの級にまたがる「わたり」を内包する構造となっている。もっとも総務省は、国の俸給表を「わたり」とは言わないが。
 これに対して、東京都の場合は、シンプルな職制に対応したシンプルな級構成となっている。これはこれで職務給を追求した姿となっているのだが、ざーと見た感じでは、逆に課長職以下については年功的で、国よりも手厚いようにも思える。総務省が示している都道府県の標準職務と比べるとワンランクアップなのは、東京都ならではと思うけれども…。

 さて、しかしである。総務省が示した比較方法では、独自給料表にはしっかりと対応できないことは明らかだろう。東京都のようにシンプルな級構成の場合、国の何級と比較すべきか、一見して分からない。号給の数が多くてカーブが長くなりがちであるが、国と比較して号給を延長しているのかどうか判然としない。こうした課題を克服するには、やはり俸給制度表を作成し、各級の職務を照らし合わせつつ比較するしかないのではないか。つまり、縦軸は俸給(給料)月額でよいのだが、横軸には号俸(号給)ではなく、制度年齢(経験年数)を置いて比較すべきである。そうすることで、更に分析が進み、違った様相が見えてくる。

 例えば、東京都の1級(主事)は、大卒制度年齢30歳を超えた辺りから国の2級(主任)の水準を超え、2級(主任)と3級(係長)との中間水準のカーブを描いて大卒制度年齢53歳に至る。
 東京都の2級(主任)は、大卒制度年齢30歳から国の3級(係長)の水準を超え、3級(係長)と4級(困難係長)との中間水準のカーブを描いた後、制度年齢40歳を超えてカーブが徐々にフラットになるに従って4級(困難係長)の水準から離れ、3級(係長)を12,000円~12,500円程度上回る水準で進み、大卒制度年齢56歳に至る。
 東京都の3級(課長代理)は、国の3級(係長)や4級(困難係長)、5級(課長補佐)の水準を上回るカーブを描き、6級(困難補佐)と同水準を走ったあと、40歳を過ぎた辺りから水準が下がるものの、国の6級(困難補佐)の最高号俸が大卒制度年齢57歳であるのに対して、最高号給は大卒制度年齢61歳まで延長されており、最終的には4,900円上回る水準に到達する。

 ちなみに、平成22年2月に公表された「地方公務員の給料表等に関する専門家会合とりまとめ」(座長:稲継裕昭早稲田大学大学院公共経営研究科教授)に添付の資料17「国と独自構造の給料表を用いる団体Aの給料カーブ比較」は、俸給制度表を作成した上で給与カーブをグラフ化して比較している。


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