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16. 旧教育職俸給表(二)(三)の作成(その16) [1.旧教(二)(三)の作成]

 前回、教(三)の水準が、行(一)と比較して号俸ベースで実際にはどの程度となっているのかを見てきた。三本建てが確立した時点で明確であった調整号俸1号俸分の有利性は、8等級制に引き継がれたものの、行(一)は昇格していくのに従って給与水準が上昇するのに対して教(二)(三)2級は教諭である限り昇格はないという事情もあって、また、その後の給与改定によって不明確となった。8等級制時代の昭和48年に至っては、三本建て給与の6級を引き継いだ教(三)の俸給水準を見れば、行(一)と比較して、有利どころかマイナスとなってしまったとも言える。一方、この時点で、2等級の初号付近の概ね5号俸分は2号俸程度の有利性がある。これは、教(三)の大学卒初任給を教(二)の大学卒初任給と同額にしていることによる改善効果なのであろう。
 いったん「明らかでなくなった」、むしろ逆転してしまったとさえ言える調整号俸の有利性は、人材確保法に基づく俸給表の特別改善により飛躍的に改善された。それは、昭和49年適用の教(三)の対行(一)優位率と号俸ベースでの差を見れば一目瞭然である。正に、金井助教授がインタビューで人事院の担当者から聞かれたとおり、「教育(三)2級(教諭)の到達水準について、人確法により、本省課長補佐(行政(一)7級)を念頭に置き、1号俸程度上回ること。」となっているではないか。教(三)2級の初号付近は改善前の2号俸程度優位を更に1号俸程度分改善して3号俸程度優位とし、最高号俸の到達水準について行(一)7級(4等級)を1号俸程度上回るよう俸給曲線を引き起こしたのである。その改善効果は、平均9%にも及ぶ。
 この時に形作られた教(三)の俸給曲線、俸給の格付け=俸給水準の部内評価は、第2次改善、第3次改善で若干の修正は加えられるが、基本的にはほぼ変更されることなく、現在に連綿と引き継がれているといってよいのである。


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15. 旧教育職俸給表(二)(三)の作成(その15) [1.旧教(二)(三)の作成]

 金井東大大学院助教授が人事院の担当者からインタビューで聞き出した「教育(三)2級(教諭)の到達水準について、人確法により、本省課長補佐(行政(一)7級)を念頭に置き、1号俸程度上回ること」という点について、沿革的な面も一応気にしながら、実際にどうなっているのかを具体的に確認しておきたい。
 まず、3本建てへの移行で本俸に繰り入れられた調整号俸を確認する。
 <中・小学校等俸給表に繰り入れられた調整号俸>
 職務の級(8等級制) 調整号俸
  1級(7等級)   1号俸
  2級(7等級)   1号俸
  3級(6等級)   1号俸
  4級(5等級)   1号俸
  5級(5等級)   1号俸
  6級(4等級)   1号俸
 これが、8等級制になってどうなっているか、人確法に基づく特別改善前の俸給表で見てみると次のようになる。行(一)の7級は、8等級制では4等級であるから、教(三)の2級は、7等級から4等級までわたっているものとして対比してみる。
 <教(三)の有利制 昭和48年適用俸給表>
  等級・号俸 俸給月額 教行差 優位率 号俸ベースの差  行(一)等級・号俸
  2-4      58,100  4,600  1.09   2号俸程度    7-1
  2-14     86,900  2,600  1.03   1号俸程度    5-5
  2-24    121,100 △4,300  0.97  △1号俸程度   4-14
  2-34    153,000 △15,000  0.91  △6号俸程度   4-21
更に、人確法に基づく第1次改善後の俸給表で確認する。
 <教(三)の有利制 昭和49年適用俸給表>
  等級・号俸 俸給月額 教行差 優位率 号俸ベースの差  行(一)等級・号俸
  2-4      61,600  8,100  1.15  3号俸程度    7-1
  2-14     93,400  9,100  1.11  2号俸程度    5-5
  2-24    131,600  6,600  1.05  1.5号俸程度  4-14
  2-34    162,800  2,600  1.02  1号俸程度    4-21


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14. 旧教育職俸給表(二)(三)の作成(その14) [1.旧教(二)(三)の作成]

 教(二)(三)の作成に関する面白い研究論文がある。財団法人地方自治総合研究所が毎月刊行している『自治総研』第298号~第301号(2003年8月号~11月号)に連載された金井利之東京大学大学院法学政治学研究科助教授(現教授)の「公立小中学校教員給与の決定方式Ⅰ~Ⅳ」である。
 幅広い観点から公立小中学校教員給与の決定方式の研究をされているのだが、このブログの問題意識から見て、人事院の教育職俸給表作成ノウハウの一端を示す興味深い記述があった。それは、人事院の担当職員へのインタビューに基づいて作成された「人事院の勧告に基づく義務教育諸学校等教育職員の給与決定の流れ」という図1に記載されていた。
 勧告措置に当たっての留意点とする箇所で、「他職種とのバランスを考慮」との記載があり、その下に「バランス」の具体的なイメージを説明する注意書きがある。
 「※バランス 教育(三)2級(教諭)の到達水準について、人確法により、本省課長補佐(行政(一)7級)を念頭に置き、1号俸程度上回ること。」
 このインタビューに基づく記述が正しいとすれば、これまで格合わせ方式で見てきた教(三)と行(一)との対比関係が正しかったことを裏付けることになるだろう。しかもこの記述には、これまで所与のものとして受け止めてきた教(三)の対行(一)優位率の指標が「1号俸程度上回ること」として示されている。
 この教(三)の対行(一)優位率指標たる「1号俸」の沿革を求めれば、いわゆる教員給与の三本建てによって確立された際の調整号俸に由来するのではないかと考えられる。その辺りの事情について、金井助教授は概ね次のように言う。
 「1つには、教員を一般俸給表より切り離して、一般の行政事務職員より「優遇」すること。…2つには、教員間に職域差を認めて、それぞれに適した俸給額を定める。」具体的には、前者は、調整号俸1号俸、後者は、さらに調整号俸1号俸を積むことになる訳であるが、金井助教授は、それが教育職俸給表を作成する際の教行関係基準、教育職員の内部関係基準の具体的指標になったと指摘する。
 この調整号俸と教員給与の有利性については、宮地茂監修『教育職員の給与特別措置法解説』(第一法規、昭和46年)に経緯の概略が書かれている。ただ、そこでは、8等級制への「切替直後は、一応従前の調整号俸を含んでいることは明らかであったが、毎年の給与改定、俸給表の構成の改正等により、端的に、かつての教員給与の有利分を明確な形で調整付加していた調整号俸分がどの程度俸給表に含まれているかは、明らかでなくなった。」と指摘している。
 しかしながら、それでもなお、現在の人事院の担当者が「教育(三)2級(教諭)の到達水準について、人確法により、本省課長補佐(行政(一)7級)を念頭に置き、1号俸程度上回ること。」というからには、いったん「明らかでなくなった」調整号俸分の有利性というものを、人材確保法に基づく特別改善の過程で復活させたと言えないだろうか。これは、うがった見方だろうか。もとより、調整号俸が勤務時間の違いに着目した措置であったのに対して、人材確保法に基づく俸給月額の優遇があくまで正規の勤務時間に対する報酬としてのそれであることは理解しているが、どうであろうか…


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13. 旧教育職俸給表(二)(三)の作成(その13) [1.旧教(二)(三)の作成]

 どうもこれまでは教(二)(三)の作成というより、行(一)との対比の議論の深みにはまったような感じであった。ここで、「作成」の方に議論を戻したい。
 これまで述べてきたことを念頭に置きながら、(その1)で説明したように、教(二)(三)の改定前の各号俸に行(一)の各号俸のその年の改定率を掛けて教(二)(三)の改定後の各号俸を計算の上、100円未満の端数を処理することとなる。ただ、その際、その年の改定率がすべての号俸で同率の改定であれば、単純に改定率を掛けて後は微調整するだけである。実際には、その年その年の民間企業の賃金動向を踏まえ、若年層中心であったり、中堅層中心であったり、職務重視を意識した改定であったり、給与カーブを変更するような改定となっている年の方が多い。
 具体的な俸給表の改定は毎年の改定表を見て確かめてもらうしかないが、2級のままの教(二)(三)に対し、対比する行(一)Ⅱ種は2級から7級あるいは8級までわたっているのであるから、単に行(一)の対比する号俸の改定率を掛けただけとはなっていない。平均改定率が同程度であっても、教(二)(三)の各号俸の実際の改定の姿は微調整が施されている。行(一)の各職務の級の対比すべき号俸を並べただけでは、教(二)(三)2級としてはなめらかになっていなかったり、一つの職務の級の給与カーブの姿を考慮したり、昇格対応関係-いわゆる双子、三つ子関係-なども意識しながら改定率を調整したりしているのであろう。この辺りは想像でしかないが、しかし俸給表作成の思想としては大事な点ではあろう。
 大卒制度年数5年ごとの俸給水準を押さえつつ、一つの職務の級ごとになめらかな、言い換えれば等比級数曲線として美しい給与カーブを形成し、次の職務の級の給与カーブにつないでいく…。そんなイメージを抱いている。
 例えば、昭和28年の人事院勧告の説明資料では、「新しい俸給金額の算定は給与準則の俸給表に適合するように行ったが、その基礎資料として職種別の民間給与額を調査し、独身成年男子の標準生計費の計算を行った点は従来と同様である。すなわち、民間の職種別の賃金を公務員の東京における本俸相当額に換算し、これを予め定めておいた格付基準表(第四表)に従って等級と号俸(通し号俸)に格付した。次に、各格付号俸についてそれらの値の平均を算出し、その分布に最もよくあてはまった線(最適線)としての等比級数曲線を最小自乗法によって求めた」との説明がある。さすがに、これはちょっと古すぎるか。
 以上、想像を交えて教(二)(三)の2級について考察してきたが、教(二)(三)には他に1級、3級及び4級があり、それぞれ独自の観点を加味する必要はあろうが、分析の手法自体は基本的に2級と同様と考えられるため、ここでは触れない。1級には1級の問題、3級には3級の特殊性、4級には4級の特長がある。それはそれで興味深いのではあるが、とりあえず、それらはまた別の機会に考えていきたいと思う。


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12. 旧教育職俸給表(二)(三)の作成(その12) [1.旧教(二)(三)の作成]

 さて、平成4年から平成8年までの教(二)(三)の平均改定率が行(一)のそれに対して1.5%高くなっている点に戻るが、果たして、これで本当に均衡が保たれているのであろうか。つまり、1号上位昇格制度による行(一)の改善効果と号俸間引き及びこの間の厚めの改定による教(二)(三)の改善効果とはちょうどバランスがとれているのであろうか。
 これも教(二)(三)の2級について考えてみたい。
<1号上位昇格制度の効果>
  行(一) 2級~8級  累計で5号俸
       2級~7級  累計で4号俸
<号俸間引き>
  教(二)(三)  3号俸
 差し引きすると、まだ1~2号俸分足りないことになる。これを行(一)より累計1.5%厚めの改定により埋めようとしたのであろうか。
 例えば、1号俸分の間差は教(二)(三)の場合、平均すれば俸給月額の3%弱である。これでは累計1.5%じゃあ足りない。では、行(一)の間差の場合はどうか。
 <行(一)の級別号俸平均間差(平成8年)>
    4級   2.00%
    5級   2.03
    6級   2.23
    7級   2.21
    8級   2.22
 行(一)の2~8級まで累計すれば10.69%、2~7級まで累計すれば8.47%となる。この数値から、教(二)(三)の3号俸間引き分としてそれぞれの平均間差、教(二)2.91%、教(三)2.81%を仮に3倍したもの、教(二)8.73%、教(三)8.43%を差し引くと、残りは、教(二)1.96%、教(三)0.04%となる。これに平成3年の俸給表の改定差を加味するとすればどうなるか。対教(二)0.5%、対教(三)0.6%を加算し、それぞれ対教(二)11.19%、対教(三)10.07%となり、差し引き残りは、教(二)2.46%、教(三)1.64%となる。こうすると、行(一)より厚めの改定分である累計1.5%と教(三)の残り1.64%とは近い数値、ほぼ同じになったとはいえないだろうか。
 まあこのように比較する考え方が正しいかどうか分からない。「在職者調整を含む新昇格制度の効果について行政職との均衡」と言うのであるから、それぞれの職種の在職実態を踏まえた実質的な均衡を計算してはじいているのかもしれない。いずれにしても推測の域を出ないけれども、どうやら1号上位昇格制度による行(一)の改善効果と教(三)の号俸間引き及びこの間の厚めの改定による改善効果とはちょうどバランスがとれているといってよいのではないか。また、教(二)については、おそらく教(三)との均衡を考慮しての数値になっているのであろう。
 いずれにしても、この辺りの職種間「均衡」を確保するためにとられた芸術的ともいえる措置に人事院の職人的なこだわりを感じてしまうのは、私だけだろうか。


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11. 旧教育職俸給表(二)(三)の作成(その11) [1.旧教(二)(三)の作成]

 前回、平成4年から平成8年までの人事院勧告の説明を見てきたが、ここで、昇格制度の改善が俸給制度曲線をどのように変化させ、行(一)と教(二)(三)との対比を考える上においてどのような影響を与えたのかを考えておきたい。
 平成4年に昇格制度が改善され、昇格時に直近上位の号俸に決定される方式から、直近上位の1号上位の号俸に決定される方式に変わった訳であるが、そうなると、以前触れた俸給制度曲線の元になる俸給制度表はどうなるのであろうか。行(一)の4級以上は従前の俸給制度表と比べ1号俸づつ前倒しにすべきであろうか。つまり、昇格早見表に近い表にすべきなのであろうか。実際、行(一)の昇給・昇格モデルを作成するとするならば、1号上位昇格制度を加味したものとしなければ意味がないであろう。昇給・昇格モデルを曲線で表現すれば、昇格ポイントで昇格メリット分がいわば上の階段に飛びつくかのようになるはずである。
 しかし、ここで「全人連モデル」の参考資料「参考給与表と行政職俸給表(一)との対比表」について考えた過程を思い出したい。そこでは、一見ずれているように見えた教(二)(三)と行(一)との対比の仕方、職務の級及び号俸の合わせ方が、平成3年以前の俸給表の姿に戻せば単純な対比方法になっていることが分かったはずである。言い換えれば、日本人事行政研究所は、1号上位昇格制度が導入され、号俸間引きが行われた後も、1号上位昇格制度の導入効果である行(一)の昇格メリットと教(二)(三)の号俸間引きの効果を差し引いた上で教(一)の俸給月額と教(二)(三)の俸給月額との比較を行い、従来の経緯を踏まえた行(一)との均衡が保たれているとしているのだ。
 つまり、昇格メリットはあくまでも昇格制度上の効果であって、俸給表構造には何ら影響を及ぼさないということなのだろう。逆に言えば、昇格メリットを織り込んで比較してしまうことは、昇格メリットの効果が号俸ピッチに影響を与えてしまうと考えたのではないかと思う。ここら辺り、かなり専門技術的な観点からの思想があってのことだろうと推測はする。


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10. 旧教育職俸給表(二)(三)の作成(その10) [1.旧教(二)(三)の作成]

 今回は、平成4年から平成8年までは、教(二)(三)の平均改定率が行(一)の平均改定率に対して1.5%高くなっていることについて考えてみたい。
 まず、平成4年の人事院勧告では、人事院は、「俸給表については、民間給与の動向等に照らし初任給の改善に配慮するとともに、中堅層職員の改善に留意しつつ、全俸給表について改定を行いました。行政職(一)についてみますと…。その他の俸給表については、本年四月から段階的に実施されている昇格制度の改善措置の効果(在職者調整分を含む)をも念頭に置いた行政職との権衡を基本に改定を行っています」と説明している。
 平成5年及び平成6年の人事委員勧告では、民間における初任給抑制及び中堅層重視の傾向を踏まえ、「俸給表については、将来の給与体系の方向をも念頭に置きながら、中堅層職員の改善に重点を置きつつ、全俸給表の俸給月額の改定を行う必要がある」と指摘している。その他の俸給表については、行政職との均衡を基本とし、民間における同種職種の給与の動向をも参考にした改定を行っているが、改定に当たっては、在職者調整を含む新昇格制度の効果について行政職との均衡にも配慮しているとしている。
 平成7年では、「俸給表については、中・長期的な視点に立って体系を変更していくことを念頭に置きながら、中堅層職員の改善を中心として、全俸給表の改定を行う必要がある」と指摘し、能力や実績又は職務を重視する給与カーブへの転換を指向した内容となっている。その他の俸給表については、昨年同様、在職者調整を含む新昇格制度の効果について行政職との均衡にも配慮している。
 平成8年の人事院勧告では、俸給表の改定の方向性は平成7年と同じ表現であるが、その他の俸給表については、「平成四年度から漸進的に実施することとされた職員の昇格時の号俸決定方法の改善が本年度から本格的に実施されることに伴い、教育職俸給表等一部の俸給表について所要の調整措置を講ずる必要がある」と述べて、号俸カット(間引き)が行われている。
 平成4年から平成8年までの人事院勧告の説明を見てきたが、そこで述べているように、1号上位昇格制度が導入された行政職との均衡に配慮し、行(一)に比べて教(二)(三)に厚めの配分が行われるとともに、号俸の間引きが実施されたのである。
 その影響については、回を改めて確認していきたい。


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9. 旧教育職俸給表(二)(三)の作成(その9) [1.旧教(二)(三)の作成]

 前回、平成3年の俸給表の改定では、行(一)の各職務の級の初号付近をわたって昇格していく本省庁職員=特にキャリアと呼ばれる官僚たちを念頭においた昇格改善が行われてきたことを見てきた。しかし、この昇格対応号俸の改定率を1級下位より有利に改定するような改善方法は、昇格対応を崩さない限り自ずと限界があるのであって、それは当然の結果として、平成4年から漸進的に実施された昇格制度の改善をもたらしたと考えられるのである。
 ここで、少し脱線するが、昇格制度の変遷を概観しておきたい。
 昇格とは、「職員の職務の級を同一の俸給表の上位の級に変更すること」であるが、当然、昇格に伴って俸給月額が上がるものと考えているが、昔はそうではなかった。15級制時代の俸給表は、いわゆる通し号俸制であったため、職務の級が異なっても俸給月額は共通していたから、昇格後の俸給月額は、昇格前の俸給月額と同額に決定されることになっていた。現在では、昇格に伴って必ず某かの昇格メリットが与えられることからすれば不思議な感じさえするが、その名残は、行(一)の新1級38号俸から新2級1号俸(旧2級4号俸から旧3級1号俸)に昇格する場合に今もある。昭和32年に俸給表が8等級制になった後、昭和37年に昇格時の号俸決定方法として、特定号俸未満は同額又は直近上位の額に、特定号俸以上は直近上位の1号上位の額に決定するという方法が確立し、同制度が30年続いた後、昇格メリットの向上を図る趣旨で昭和37年に導入された直近上位昇格制度の更に1号上位の号俸に決定する1号上位昇格制度が平成4年度に行(一)4級以上にに導入されたのである。
 この1号上位昇格制度は、教(二)(三)にも当然導入されたが、いずれも3級以上の職務の級へ昇格する場合であり、1級から2級への昇格には採用されなかった。以前、教(二)2級は行(一)の2級から8級までに、教(三)2級は行(一)の2級から7級までにわたっているという話をしたが、教(二)(三)2級の場合には、当然といえば当然だが、同一級であるために1号上位昇格制度による昇格メリット効果を与えようにも制度的に与えられないこととなった。行(一)と教(二)(三)との俸給表の対比関係としては、平成4年の昇格改善及び平成8年の号俸間引き以前に戻して比較すれば、ほぼ均衡を保っている訳であるが、実際問題としては、行(一)4級以上には昇格するごとに1号俸が累積していく昇格メリット、つまり、7級に昇格すれば累積4号俸分のメリット、8級に昇格すれば累積5号俸分のメリットが与えられるのに対して、生涯2級にとどまる教諭に対しては、行(一)との格合わせでは明らかに4級以上の号俸となっているにも関わらず、そのような昇格メリットは制度上与えられることはないのである。
 この点を意識しながら、次回には平成4年から平成8年までの行(一)と教(二)(三)の平均改定率の違いから何が分かり、何が考えられるかを見ていきたい。


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8. 旧教育職俸給表(二)(三)の作成(その8) [1.旧教(二)(三)の作成]

 11級制に改められて以降の教(二)(三)2級の平均改定率とこれに格合わせした行(一)の平均改定率の推移を見てみた。もっと詳細にみれば、若年層に配慮したり、売り手市場の民間賃金の動きを踏まえて初任給を改善したり、初任給の改善を抑えて中堅層に厚く配分したり…とその年その年の課題に対応するため、行(一)との均衡を基本に改定するとはいうものの、級構成がまったく違う教(二)(三)との対比関係は平均では均衡しても、号俸レベルでは微妙に食い違っている。この問題に首をつっこむときわめて技術的な話になると思うのでこの程度にし、平均改定率の推移で両者の対比関係を概観することにしたい。
 まず、平成3年は、行(一)の平均改定率が教(二)(三)の平均改定率に対して0.5~0.6%高くなっている。一方、平成4年から平成8年までは、教(二)(三)の平均改定率が行(一)の平均改定率に対して1.5%高くなっている。これをいったいどう見ればよいのか。
 平成3年の俸給表の改定についての人事院の説明では、民間企業の動向を踏まえた初任給の相当程度の改善を行ったことのほか、次のように言っている。
 「行政職俸給表(一)についていえば、初任給改善との関係や民間企業における配分傾向等を考慮して、若年層職員の改善に重点を置いた配分を行うこととし、併せて、本省庁職員を念頭に置いた改善を行うこととしました。…その他の俸給表については、行政職との権衡を考慮しつつ、それぞれの俸給表の特別な事情を勘案した改善を行っています。」
 ここでいう「本省庁職員を念頭においた特別改善」の実施が、行(一)の平均改定率を教(二)(三)の平均改定率に対して0.5~0.6%高くする結果をもたらしたのではないか、と推測できる。具体的な改定表はここに示せないが、行(一)の改定を見ると、若年層の職務の級である1~3級だけでなく、係長級以上である4級以上の各職務の級においても初号から2~5号俸では5.0~6.8%の高い改定率となっている。しかも、これを昇格対応号俸でみると、1級下位の職務の級の直近下位の号俸の改定率よりも昇格後に受ける号俸の改定率の方が0.5%程度高くなっている。例えば、3級5号俸の改定率が5.3%であるのに対して、昇格対応号俸である4級1号俸の改定率は6.8%と高くなっているが、その差は号俸が上がるにしたがい漸減し、中位号俸以上になると同率となり、さらに逆転する。これが、単に若年層職員の改善に重点を置いた平成2年の改定が昇格対応号俸でみると1級下位の職務の級の直近下位と号俸の改定率と同率になっていることと比較すると、まさに、行(一)の各職務の級の初号付近をわたって昇格していく本省庁職員=特にキャリアと呼ばれる官僚に昇格メリットを与えるための俸給表の改定であると言えるだろう。
 もっとも、同じメリットは教(二)(三)の3級以上でも行われてはいる。しかし、生涯教諭であることを前提とした2級について考えてみると、格合わせをする行(一)の各号俸は各職務の級を峰わたりした場合の号俸であるから、昇格メリットを付与するために嵩上げした改定率をそのまま教(二)(三)の2級に反映することはかえって公務部内全体の中でのバランスを崩すことになると考えられたのであろう。


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7. 旧教育職俸給表(二)(三)の作成(その7) [1.旧教(二)(三)の作成]

 前回、平成2年4月1日適用の俸給表で行(一)と教(二)(三)の対比を作ってみた。こうして見ると、B/Aはほとんど変化がないことが分かるだろう。俸給月額の最小単位は100円であることから、小数点以下第二位の微妙な差は誤差の範囲内とも受け取れそうである。昇格改善や号俸間引きといった制度改正を考慮しなければ、この間ずっと教(二)(三)は概ね行(一)との均衡を基本に改定されてきたものと言えるようである。
 しかし、教(二)(三)の行(一)に対する優位性がほんのわずかだが上がっているように見える。特に大卒制度年数23年以降は、0.01~0.02高くなっている。平成2年から平成17年までの間の給与改定で、教(二)(三)に有利な改定が行われたのであろうか。もう少し詳しく見てみたい。
<教(二)(三)2級の平均改定率とこれに格合わせした行(一)の平均改定率の推移>
改定年  教(二)  行(一)  教(三)  行(一)
 昭61  2.3% 2.3% 2.3% 2.3%
   62  1.5    1.5     1.5    1.5
   63  2.3    2.3     2.3    2.3
平成元  3.1    3.1     3.1    3.1
    2  3.6    3.7     3.6    3.7   初任給1号俸改善
    3  3.7    4.3     3.7    4.2   行(一)特別改善
    4  2.9    2.7     2.9    2.7   行(一)昇格改善(漸進的)
    5  2.3    1.9     2.3    1.9    〃
    6  1.6    1.2     1.6    1.2    〃
    7  1.3    1.0     1.3    1.0    〃
    8  1.3    1.1     1.3    1.1   教(二)(三)号俸間引き
    9  1.1    1.1     1.1    1.1
   10  0.8    0.8     0.8    0.8
   11  0.4    0.4     0.4    0.4
   12   -    -      -    -
   13   -    -      -    -
   14  -1.9   -2.0    -1.9   -1.9
   15  -1.1   -1.1    -1.0   -1.1
   16   -    -      -    -
   17  -0.3   -0.3    -0.3   -0.3
 平成3年から平成8年にかけての微妙なポイントの違いは、誤差ではないような気がするのだが…


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