SSブログ
8.トピック ブログトップ
前の10件 | -

521. 中学校非常勤講師に未払い残業代を支払い [8.トピック]

 中日新聞が11月4日に、次のように報じた。

中学校非常勤講師に未払い支給へ 名古屋市教委、申告5講師の残業代
2020年11月14日 05時00分 (11月14日 05時01分更新)

名古屋市立中学校の非常勤講師四人が市教委に残業代の支払いを求めて労働基準監督署に申告し、市教委と各勤務校が是正勧告を受けた問題で、市教委は、中学校長に勤務時間を申告した別の非常勤講師一人を加えた計五人に対し、計約百三十万円の未払い賃金があると認め、支払うと決めた。小中学校の非常勤講師に未払い賃金が支払われるのは全国的にも珍しい。 (福沢英里)
 同市の小、中、特別支援学校で働く非常勤講師は約千四百人。同様に未払い賃金があれば影響は大きいとみられるが、今回の五人以外への対応について市教委は「申し出がないため、調査はしない」としている。
 五人の未払い賃金の対象は昨年四月〜今年三月。各校の校長が十月までに本人に聞き取りをし、勤務記録などを調査。市教委は授業準備やテストの作問、提出物の点検などを「業務命令による勤務」と認め「各校で適切な勤務時間管理ができていなかった」とした。二カ月以内に支払う予定。
 四人は「規定の授業以外の授業準備など業務分の給与が支払われていない」と主張し、昨年十一月、名古屋南、東、西の各労基署に申告。労基署は今年二〜三月、市教委と各校に是正勧告書と指導票を交付した。仕事の...
https://www.chunichi.co.jp/article/153998

 続いて、東海テレビのネット記事

正規の教員には支給なく異例の決定…非常勤講師5人に未払いの残業代計130万円支払いへ 名古屋市教委
2020年11月14日 土曜 午後1:26

名古屋市教育員会は、市立中学校の非常勤講師5人に対し、未払いだった残業代合わせておよそ130万円の支払いを決めました。
 市教委によりますと、名古屋市立中学校の非常勤講師4人は去年11月、所定の勤務時間を超えて授業準備などをした分の給与の支払いを求めて労働基準監督署に申告し、市教委と各学校が是正勧告を受けていました。
 市教委は、校長に勤務時間の申告をした別の非常勤講師1人も加えて聞き取り調査などを行い、昨年度の残業代合わせておよそ130万円の支払いを決め、11月12日に労基署に報告しました。
 正規の教員は特別措置法で残業代が支給されず、同様に教壇に立つ非常勤講師に残業代を支払うのは異例だということです。
 市教委は5人の非常勤講師に対し、できるだけ速やかに支給するほか、他の非常勤講師からも申告があれば調査するとしています。
 また労基署からの指導を受け、各学校では現在勤務時間の実態を把握するための確認簿を作成しています。
https://www.fnn.jp/articles/-/107642

 この問題はこれからも起こりうるように思う。しかし、取り上げた記事の残業代は、会計年度任用職員制度が導入される以前のものであり、令和2年4月以降は非常勤講師は一般職の位置づけとなって労働基準監督署の守備範囲ではなくなる。さて、各県の人事委員会は厳しく対応するのだろうか。



nice!(0)  コメント(1) 
共通テーマ:仕事

520. 教員新型コロナ業務手当 [8.トピック]

 「教員 コロナ 手当」で年と検索をすると、京都市教育委員会が教員に対してこんな手当を支給する方針を明らかにしたことを報じる京都新聞のネット記事に出くわした。

コロナ感染者が出て長時間勤務…教員に手当を支給 京都市教委、制度創設後初めて適用
2020年11月11日 19:55

 京都市教育委員会は11日、市立学校・幼稚園で新型コロナウイルス感染者が出て保護者対応などで長時間勤務が生じた教員に、手当を支給する方針を明らかにした。市内では児童生徒や教員の感染が相次いでおり、校長会が要望していた。
 市教委によると、手当の対象となる業務は保護者への連絡や疫学調査への協力など。管理職を含む教員が所定の勤務時間に加え4時間程度以上業務に当たった場合、1日当たり3750円が支給される。休日出勤など8時間程度以上の場合は同7500円。
 来週中にも方針について全校・園に通知する予定。その後、対象者には6月以降の業務にさかのぼって支給する。
 教員は教職員給与特別措置法(給特法)に基づき本給の4%に相当する教職員調整額が一律で支給されているため、時間外手当はない。そのため今回のコロナ禍の対応業務は「特に疲労度や困難度の加わる勤務、その他特異な勤務」に支給される「特異性手当」として、制度の創設後初めて適用することを決めた。
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/410583

 教職調整額が支給される教員にもに支給される教員特殊業務手当で柔軟に対応しようという話かと思ったが、記事を読んでいくと最後の方に「今回のコロナ禍の対応業務は「特に疲労度や困難度の加わる勤務、その他特異な勤務」に支給される「特異性手当」として、制度の創設後初めて適用する」とある。うん?「特異性手当」とは、いったいどんな手当なのか…。京都市の例規集で確認してみた。

○京都市教職員の給与,勤務時間等に関する条例(平成28年条例第37号)
(特殊勤務手当)
第16条 特殊勤務手当の種類及び額は,別表第5のとおりとする。
2 特殊勤務手当は,月1回又は3月に1回,別に定める日に支給するものとする。
3 前2項に定めるもののほか,特殊勤務手当について必要な事項は,別に定める。
別表第5(第16条関係)
特殊勤務手当の種類及び額
 (表は省略)

 この別表第5(特殊勤務手当の種類及び額)の1番目の項目に「特異性手当」が掲げられ、教員特殊業務手当は2番目の項目として掲げられている。「特異性手当」の支給要件及び額については次のとおり書かれている。

「特に疲労度又は困難度の加わる勤務その他特異な勤務に従事した教職員に対して,給料月額の100分の20以内において支給することができる。」

 う~む。何だこの手当は?支給対象者も業務の特殊性を示す具体的な業務内容も明示されず、余りに漠然としており、支給額も「給料月額の100分の20以内」となっている。まるで給料の調整額にかかわる規定を見るようである。
 この規定を根拠にして、教員特殊業務手当のような手当を支給しようと考えているらしい。しかし、ということは、今回のコロナ禍で長時間にわたる時間外勤務や休日勤務をせざるを得ないときには、教員特殊業務手当では対応できないと京都市教委は判断したということなのだろう。新聞記事によれば、京都市教委が想定している対象業務は「保護者への連絡や疫学調査への協力など」とされているから、教員特殊業務手当の対象業務である「児童生徒の保護業務」や「児童生徒の救急業務」などではなかなか読み難いということなのだろうか。(阪神淡路大震災の際に柔軟に解釈した例もあるが…)
 それに、教員特殊業務手当は日中8時間程度であり、4時間程度でも支給する点も考慮したということだろうか。
 経験したことのない精神的にも負担を強いられる状況下で業務に従事しなければならない教員にとっては朗報ではないかと思うが、いずれにしても、おそらく全国に例のないような文字通り「特異」な手当の感じではある。



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事

519. 俸給表改定のボーダーライン [8.トピック]

 今年の人事院勧告は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を考慮し、10月7日にボーナスのみ先行して行われ、一昨日(10月28日)月例給についての報告があった。
 ボーナスについての勧告は、民間との均衡を図るため支給割合を4.50月分から4.45月分に引き下げる内容であったのだが、月例給については「改定なし」との報告に留まった。人事院の報告によると、民間給与との較差は▲164円・▲0.04%で、「民間給与との較差が極めて小さく、俸給表及び諸手当の適切な改定が困難であることから、月例給の改定を行わない。」としている。

 ちなみに、人事院の資料から俸給表改定の勧告を行わなかった年の較差を見てみる。

 平成16年 39円 0.01%
 平成18年 18円 0.00%
 平成20年 136円 0.04%
 平成24年 ▲273円 ▲0.07%
 平成25年 76円 0.02%

 更に見ていくと、平成13年の較差は313円・0.08%で俸給表の改定は勧告されなかったが、特例一時金を創設して3,756円(313年×12月)の範囲内で支給するよう勧告している。令和元年は較差387円・0.09%で、この年は給料表改定の勧告が行われた。
俸給月額は100円刻みなのだから何とかなるのでは、と思うが、行一以外の俸給表を含めてすべての俸給表の改定をうまく実施するためには、どうも技術的な制約があるらしい。そのボーダーラインは、較差320円から380円辺りのようである。


nice!(0)  コメント(1) 
共通テーマ:仕事

508. 教員給与は適正に優遇されているのか [8.トピック]

 自治総研2020年3月号(通巻497号)に上林陽治氏の「教員給与は適正に優遇されているのか-教員の働き方改革の論じ方-」が掲載されている。

 上林氏の問題意識は、次の記述に集約されている。
 「そうすると今次改正給特法、とりわけ教職調整額を批評する観点としては、時間外労働・休日労働の不払いや労働時間規制の在り方の問題もあるが(9)、教職調整額をはじめとする給与水準調整の仕組みが、教員の働き方から見て、一般行政職員の給与との水準調整・優遇措置という機能を本当に果たしているのかということもあわせて検証しなければならない。/本稿の問題意識はここにある。」

 氏は、まず「1.教職調整額をはじめとする給与上の今日委員優遇措置の経緯」を論じていく。戦後の教員給与と超勤問題からスタートし、給特法の成立過程や人材確保法の成立過程を説明する。

 続いて「2.目減りする一般行政職との給与水準差の経過」を論じる。教職調整額の制度化と人確法制定によって教員の給与水準は一気に優遇されるものとなったのだが、その水準調整・優遇措置が維持されているかというと結論は「ノン」だと指摘する。氏は、「水準調整・優遇措置が解消してしまったなかで、時間外労働・休日労働が不払いになっていることが、問題なのである。」と主張し、「以下、この経過を、地方公務員給与実態調査から作成した表1の「都道府県の一般行政職・小中学校教員における月例給・年収額の推移(学歴計・男女計)」に沿って、検証していく。」と述べて論を進める。

 まず、月例給与水準と年収水準を検証する。ざっくり引用する。
 「この水準差(都道府県負担の小中学校教育職の給与の都道府県の一般行政職の給与に対する水準差=編注)は、3次にわたる計画的改善(1973~1978年度)が終了する1978年段階では、月例給、年収とも115に落ち着く。(略)、2018年には、平均年齢がほぼ一致しているにもかかわらず、月例給の水準差(C)が101、年収の水準差(F)が103と、教職調整額による4%優遇さえも下回ってしまった。」

 なぜ、このように水準差は縮小してきたのか。氏は、2000年代に入ってから、教員給与の引き下げ圧力が強まったことを指摘する。2006年5月成立のいわゆる行革推進法による教員給与の一律優遇の見直しの動きの中で、人確法優遇分430億円の減額が目指されることとなり、「教員給与の優遇性は解職していく。」と述べる。

 続いて、主要な給与項目ごとに推移を確認していく。まず、給料月額についてラスパイレス比較を行って検証する。
 氏は、「上記(ラスパイレス比較=編注)の手法により求められる小中学校教員と一般行政職員の給料月額の水準差は、計画的改善が終了する1978年時点において、都道府県一般行政職員の給料月額(学歴計・男女計)を100とすると、都道府県小中学校教員の給料月額(学歴計・男女計)は120.1で、給料月額だけで、この時点で約20ポイントの水準差が設けられたことがわかる。/ところが2018年になると、指数は、113.5となり、1948年当時の水準差に縮小してしまう。」と指摘する。
 そして、「水準差が縮小した背景には、1990年以降の給与制度改革の影響が作用している。/たとえば、1991年には、昇格制度の改善がなされ、昇格時の給料の引き上げ額が高まった結果、昇格機会の多い行政職給料表適用者には有利に、少ない級しか持たない教育職給料表適用者には不利なものと作用することとなった。」と説明する。

 次に、教職調整額の推移を確認する。氏は、「当時の教職調整額は2,974円と推定(給料月額×0.04%で計算)される。これに対し、一般行政職の時間外手当額は5,079円で、教職調整額は一般行政職の時間外手当の58.5%の水準にしか過ぎず、この時点ですでに見劣りしている(表3参照)。/1976年には85.5%水準まで接近するものの、その後一貫して今日まで、教職調整額と一般行政職の時間外手当額との差は拡大し、直近の調査(2018年)では、43.9%の水準まで落ち込んでいる。」と指摘する。ただ、分析で推定した計算方式は4%を前提としており、跳ね返りを考慮していない。実力6%といわれる水準で比較した方がよいのかもしれないが、いずれにせよ目減りしているのは事実であろう。
 次に、義教手当が「3分の1まで縮小している」ことを確認している。

 最後に「おわりに」で、氏は、「教員の働き方改革で問題にすべきは、長時間労働の規制だけでなく、ましてや時間外手当等を不払いにしている給特法の見直しばかりでなく、より全般的な教員の働き方に応じた処遇の在り方そのものである。」と主張する。
 その前提として、氏は次のように教員給与の優遇性の解消経過をまとめ、指摘する。
 「義務教育教員の給与水準は、1970年代中葉までは、人確法が制定されるなどにより、それなりに処遇は改善されていたが、1990年代の昇格制度改善のメリットは給料表の構造からうけられず、また2008年以降の教員給与の見直し策により、一般行政職員の給与との比較において、月例給・年収とも、その優遇性は解消している。/したがって、「教員給与は一般行政職員よりも優遇されている」との主張に根拠はない。」と。


 以上のとおり、上林氏は、教員給与の優遇性の解消の理由について、①昇格改善メリットを受けられない給料表構造、②教員給与の見直し策の2つを挙げている。しかし、このノートで学習してきた観点からすると、①を理由に挙げることには少し疑問が残る。

 平成4年から4年かけて実施された昇格改善は、いわゆる1号上位昇格制度の導入であり、俸給表の構造上、職務の級の数が多い方がメリットが累積することになる。しかし、職務の級の少ない旧教育職俸給表(二)(三)は、3号俸のカットが実施されるとともに、行政職(一)の在職者調整見合いの厚めの俸給表改定が実施されたのであった。人確法に基づく優遇措置のベースとなる旧教育職(三)については、旧行政職(一)の2級から7級までブリッジしているのだが、そうすると、1号上位昇格制度の導入された旧行政職(一)4級(係長)以上では、7級までの昇格4回分のメリットが付与されるのだが、一方、旧教育職(三)については昇格3回分に相当する3号俸のカットに加え、4年間の厚めの改定による概ね1号俸分により、制度上は均衡が分かられている。ただ、旧行政職(一)の改善効果が比較的早いのに対して、旧教育職(三)では未だに3号俸カットすべてのメリットを享受できていない層が50歳台に存在している。また、旧行政職(一)の8級以上のメリットが4回分もあり、旧教育職(三)は3級・4級への昇格2回分を踏まえても構造上見劣りすることは否定はできない。しかし、それほど大きな要素だったのであろうか。

 ここで上林氏作成の表1「都道府県の一般行政職・小中学校教員における月例給・年収額の推移(学歴計・男女計)」をもう一度よく見てみる。1990年の数値を見ると、給与月額の水準差102、年収の水準差103に対して、1995年の数値はそれぞれ101、102に1ポイント下がるに留まっており、2000年の数値はそれぞれ103、104と逆に1ポイント上がる結果となっている。
 一方、この表1でポイントが一番大きく下がっているのは、給与月額の水準差で見ると1980年の112から1985年の105の▲7ポイント、年収の水準差も1980年の114から1985年の106の▲8ポイントである。1985年(昭和60年)、8等級制が11級制に改められたのだが、実施は7月1日であった。すると調査時点は4月1日だからその効果が表れるのは昭和61年となると考えられる。何があったのか…。

 表2「都道府県一般行政職と小中学校教員の給料月額比較(1978年・2018年)」が1978年と2018年だけで、表1と同じ年刻みないし5年刻みでないのが大変残念である。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事

500. 給料表カーブの公表 [8.トピック]

 平成31年3月29日付けで「地方公共団体における職員給与等の公表について」(昭和56年10月13日付け自治給第45号自治事務次官通知)の一部改正が行われ、国の行政職俸給表(一)と当該地方公共団体の行政職給料表(一)のカーブを比較した表を公表することとなった。
 この比較表は、縦軸に俸給(給料)月額、横軸に号俸(号給)を置いて俸給表及び給料表のカーブを描くグラフとなっている。これは、以前このノートでも取り上げた「地方公務員の給与決定に関する調査研究会報告書」(平成31年3月一般財団法人自治総合センター)によって示された「わたり」を点検するための給料表カーブの比較手法に基づいている。(475. 自治総合センター31年3月報告書)
 https://hayamitaku.blog.ss-blog.jp/2019-07-19

 今回、東京都が公表した比較表を見てみた。「東京都人事行政の運営等の状況」ちという資料の12頁に掲載されている。
https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/03jinji/pdf/hakushotousin/01jinjigyousei.pdf

 東京都の行政職給料表(一)はいわゆる独自給料表であるため、国の行政職俸給表(一)とは構造やカーブが大きく異なっている。まず、職務の級の構成は、国が10級制を採用しているのに対して、東京都は5級制を採用している。

<国の行政職俸給表(一)> 俸給月額は平成31年4月較差改定後
 職務の級 本省の職 号俸数 俸給月額      上下の幅
 10級  特重課長  21 521,700~559,500円  37,800円
 9級   重要課長  41 458,400~527,500円  69,100円
 8級   困難室長  45 408,100~468,600円  60,500円
 7級   室長    61 362,900~444,900円  82,000円
 6級   困難補佐  85 319,200~410,200円  91,000円
 5級   課長補佐  93 289,700~393,000円 103,300円
 4級   困難係長  93 264,200~381,000円 116,800円
 3級   係長   113 231,500~350,000円 118,500円
 2級   主任   125 195,500~304,200円 108,700円
 1級   係員    93 146,100~247,600円 101,500円

<東京都の行政職給料表(一)> 給料月額は平成31年4月較差改定後
 職務の級 基準職務 号給数 給料月額      上下の幅
 5級   部長     4 494,000~526,700円  32,700円
 4級   課長    97 284,000~455,000円 171,000円
 3級   課長代理 141 224,800~415,100円 190,300円
 2級   主任   129 199,100~362,500円 163,400円
 1級   主事   149 141,300~324,300円 183,000円

 こうして見ると、東京都の給料表の級別の水準に相当する国の級は、概ね次のような感じになるか。

<東京都行一VS国行一>
 東京の級      国の級
 (なし)      10級(特重課長)
 5級(部長)    9級(重要課長)
 4級(課長)    5級(課長補佐)~7級(室長)・8級(困難室長)
 3級(課長代理)  3級(係長)~6級(困難補佐)
 2級(主任)    2級(主任)~3級(係長)・4級(困難係長)
 1級(主事)    1級(係員)~2級(主任)・3級(係長)

 国の俸給表は本省だけでなく、管区機関や府県単位期間、地方出先機関に置かれる様々な職に対応する必要があり、必然的に2つの級にまたがる「わたり」を内包する構造となっている。もっとも総務省は、国の俸給表を「わたり」とは言わないが。
 これに対して、東京都の場合は、シンプルな職制に対応したシンプルな級構成となっている。これはこれで職務給を追求した姿となっているのだが、ざーと見た感じでは、逆に課長職以下については年功的で、国よりも手厚いようにも思える。総務省が示している都道府県の標準職務と比べるとワンランクアップなのは、東京都ならではと思うけれども…。

 さて、しかしである。総務省が示した比較方法では、独自給料表にはしっかりと対応できないことは明らかだろう。東京都のようにシンプルな級構成の場合、国の何級と比較すべきか、一見して分からない。号給の数が多くてカーブが長くなりがちであるが、国と比較して号給を延長しているのかどうか判然としない。こうした課題を克服するには、やはり俸給制度表を作成し、各級の職務を照らし合わせつつ比較するしかないのではないか。つまり、縦軸は俸給(給料)月額でよいのだが、横軸には号俸(号給)ではなく、制度年齢(経験年数)を置いて比較すべきである。そうすることで、更に分析が進み、違った様相が見えてくる。

 例えば、東京都の1級(主事)は、大卒制度年齢30歳を超えた辺りから国の2級(主任)の水準を超え、2級(主任)と3級(係長)との中間水準のカーブを描いて大卒制度年齢53歳に至る。
 東京都の2級(主任)は、大卒制度年齢30歳から国の3級(係長)の水準を超え、3級(係長)と4級(困難係長)との中間水準のカーブを描いた後、制度年齢40歳を超えてカーブが徐々にフラットになるに従って4級(困難係長)の水準から離れ、3級(係長)を12,000円~12,500円程度上回る水準で進み、大卒制度年齢56歳に至る。
 東京都の3級(課長代理)は、国の3級(係長)や4級(困難係長)、5級(課長補佐)の水準を上回るカーブを描き、6級(困難補佐)と同水準を走ったあと、40歳を過ぎた辺りから水準が下がるものの、国の6級(困難補佐)の最高号俸が大卒制度年齢57歳であるのに対して、最高号給は大卒制度年齢61歳まで延長されており、最終的には4,900円上回る水準に到達する。

 ちなみに、平成22年2月に公表された「地方公務員の給料表等に関する専門家会合とりまとめ」(座長:稲継裕昭早稲田大学大学院公共経営研究科教授)に添付の資料17「国と独自構造の給料表を用いる団体Aの給料カーブ比較」は、俸給制度表を作成した上で給与カーブをグラフ化して比較している。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事

499. 給特法の一部改正公布 [8.トピック]

 公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別 措置法の一部を改正する法律が令和元年12月4日、参議院本会議で与党などの賛成多数で可決・成立し、同月11日に公布された。
 公布された法律の概要、新旧対照表は、文部科学省のホームページに掲載されている。
https://www.mext.go.jp/b_menu/houan/kakutei/detail/1423039.htm


 これを受けて、各都道府県教育委員会教育長及び各指定都市教育委員会教育長あてに、文部科学省の丸山初等中等教育局長名で通知されている。
 注目したいのは、記書きの3留意事項である。

3.留意事項
 この法律の施行に当たって留意すべき事項については,第5条関係と第7条関係 のそれぞれについて別途通知すること。
 特に第7条関係については,各地方公共団体において令和2年4月1日の施行日から教育職員の業務の量の適切な管理等を行うよう,本年度中に各地方公共団体に条例や教育委員会規則等の整備をお願いしたいと考えており,必要な準備を進めていただきたいこと。これに関して,文部科学省としては,令和2年1月を目途に条例や教育委員会規則の例を示すこととしていること。
 また,第5条関係については,中央教育審議会で御議論いただいた上で,第7条関係とは別途,文部科学省令や関係する指針の改正などについて示すこととしていること。
(元文科初第1214号令和元年12月11日、各都道府県教育委員会教育長各指定都市教育委員会教育長あて文部科学省初等中等教育局長通知)


 うん?「本年度中に各地方公共団体に条例や教育委員会規則等の整備をお願いしたいと考えており,必要な準備を進めていただきたい…」。
 「本年度中に条例…の整備」とある。何の条例か、というと、「特に第7条関係については,各地方公共団体において令和2年4月1日の施行日から教育職員の業務の量の適切な管理等を行うよう」にとある。改正給特法を見ても、文部科学大臣に対して指針の策定及び公表を義務づけるものであって、地方に条例制定を義務づける内容にはなっていない。確か、国会の審議で関連するやりとりはあった。通知をよく見ると「本年度中に各地方公共団体に条例や教育委員会規則等の整備をお願いしたいと考えており,必要な準備を進めていただきたいこと」とある。
 「整備をお願いしたい考えており、…いただきたい…」。これはもう、文部科学省としてのお願いにしかすぎない。それとも、地方教育行政法第48条に基づく指導又は助言に当たるのか?
 しかし、公布から3か月程度で、条例の整備ができるのであろうか?教育委員会ががんばればできるかもしれないけれども…。例えば、成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律では、地方公共団体の条例等又はその他関係機関の規則等の整備が必要なものについての施行期日は、原則として公布の日から6か月とされ、各団体での準備や議会での審議の時間が確保されている。さて、各県の教育委員会はどうするのか…。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事

496. 加害教諭4人給与停止 [8.トピック]

 神戸市立東須磨小学校いじめ・暴行問題で、10月30日に条例が公布されたばかりだが、その翌日の31日、神戸市教育委員会は加害教諭4人を速攻で分限休職処分にしたらしい。しかも、弁護士らで構成する分限懲戒審査会が「処分は不相当」との答申を出したにもかかわらず…。
 毎日新聞に、神戸大の馬場健一教授(法社会学)と立命館大の鵜養幸雄教授(行政学)のコメントが載せられている。新聞記事なので、正確ではないかもしれないが、このノートに記録しておきたい。

○毎日新聞
加害教諭4人給与停止 神戸市教委 同僚いじめ「分限処分」

 神戸市立東須磨小で男性教諭(25)が同僚教諭4人からいじめや暴行を受けた問題で、市教育委員会は31日、加害教諭4人を分限休職処分にした。懲罰の意味合いで行う懲戒処分とは異なり、公務継続に支障が出るとの点から市が独自に対象を拡大して可能となった。4人は10月以降、有給休暇や病気欠勤の扱いとなって給与が支払われていたが、処分で支払われなくなる。
(略)

 司法制度に詳しい神戸大の馬場健一教授(法社会学)は「4人を狙い撃ちするような条例改正は、普遍的に適用される法令として不適切。条文は曖昧で恣意的な運用も可能だ」と将来的な乱用を危惧する。
 4人の処分には十分な調査が必要なことを強調した上で、「市民感情に任せた付け焼き刃的な対応。拙速な手続きで、生きるために必要な給与を取り上げるべきではない。」と批判する。加えて、処分を受けた4人から逆に訴訟を起こされるリスクも指摘する。

 一方、元人事院職員で公務員人事に詳しい鵜養幸雄・立命館大教授(行政学)は「市民感覚を法令に取り入れ、市長の政治的判断があっても構わない」との立場だ。
 ただ、今回の措置については「理屈が後付けで違和感がある。懲罰感情が先行すれば、条例適用の裁量を誤りかねない」と懸念を示し、「加害教諭個人の問題と捉えるのではなく、学校や教育委員会という組織のあり方に目を向けるべきでは」と話した。



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事

495. 神戸・給与差し止め条例施行 [8.トピック]

 神戸市立東須磨小学校の教員4人が若手教員に暴行や暴言、セクハラを繰り返し行っていた問題を受けて、職員を分限休職処分にした上で給与を差し止められる改正条例が成立し、施行されるとの報道があった。

○神戸新聞NEXT
給与差し止め条例改正案が可決、成立 神戸・教員間暴行問題
2019/10/29 12:03

 神戸市立東須磨小学校(同市須磨区)の教員間暴行・暴言問題を受け、職員を「分限休職処分」にした上で給与を差し止められる条例改正案が29日、市会本会議で起立多数で可決、成立した。市は30日にも改正条例を公布、施行する方針。施行を受け、市教育委員会が加害教員4人の分限休職処分の手続きを進める。
 条例改正では、職員が重大な「非違(非法・違法)行為」を犯し、起訴される恐れがあり、職務を続けさせると公務に大きな支障が生じるようなケースを、新たに分限休職処分の対象に加える。
 今回の問題で「自宅謹慎」の代わりに有給休暇を取らせている加害教員4人を念頭に、市が28日、条例改正案を提案。審議付託された同日の総務財政常任委員会では、「恣意的な運用につながる恐れがある」などと懸念する声が議員から相次いだが、4時間余りの議論の結果、賛成多数で原案通り可決された。
 29日の本会議でも、同委員会の報告に対し、一部会派の議員が「恣意的な運用を防ぐ担保の根拠がない。恒久的な条例としては問題が多すぎる」などとして反対意見を表明したが、賛成多数で可決・成立した。
 本会議では、職員の処分の際、弁護士らによる分限懲戒審査会への諮問や、弁明の機会を確保するなどの公務員の身分保障を担保する規則や規定を求める付帯決議案が公明会派から提出され、賛成多数で可決された。(石沢菜々子)
【東須磨小教員間暴行・暴言問題】神戸市立東須磨小の30~40代の教員4人が、20代の若手教員4人に暴行や暴言、セクハラを繰り返していたことが神戸新聞の報道で発覚。被害教員の一人は療養を余儀なくされ、須磨署に被害届を出した。市教育委員会は10月1日から加害教員4人を有給休暇扱いで業務から外し、代わりの教員を配置。弁護士3人による調査委員会の結果が年内にもまとまる見通しだが、市教委は事実認定をした範囲で処分の前倒しも検討している。


 成立した条例改正案の議案を確認しておく。

第95号議案
職員の分限及び懲戒に関する条例等の一部を改正する条例の件
 職員の分限及び懲戒に関する条例等の一部を改正する条例を次のように制定する。
 令和元年10月28日提出  神戸市長 久元喜造
職員の分限及び懲戒に関する条例等の一部を改正する条例
(職員の分限及び懲戒に関する条例の一部改正)
第1条 職員の分限及び懲戒に関する条例(昭和27年2月条例第8号)の一部を次のように改正する。
  第2条に次の1号を加える。
   (3) 重大な非違行為があり,起訴されるおそれがあると認められる職員であつて,当該職員が引き続き職務に従事することにより,公務の円滑な遂行に重大な支障が生じるおそれがある場合
  第4条第2項中「第5項」を「第6項」に改め,同条中第7項を第8項とし,第6項を第7項とし,同条第5項中「第2項」の次に「,第4項」を加え,同項を同条第6項とし,同条第4項の次に次の1項を加える。
 5 第2条第3号の規定に該当する場合における休職の期間は,同号の事由が消滅するまでの間とする。
 附則第5項中「第4条第5項」を「第4条第6項」に,「「第5項」とあるのは「 第5項又は兵庫県分限条例」」を「「第6項」とあるのは「第6項又は兵庫県分限条例」」に改める 。
 (職員の給与に関する条例の一部改正)
第2条 神戸市職員の給与に関する条例(昭和26年3月条例第8号)の一部を次のように改正する。
  第21条第4項中「法第28条第2項第2号」の次に「又は職員の分限及び懲戒に関する条例(昭和27年2月条例第8号)第2条第3号」を加え,「支給することができる。」を「支給し,又は支給しないことができる。」に改め,同条第5項中「(昭和27年2月条例第8号)第2条各号」を「第2条第1号又は第2号」に改める。
 (職員退職手当金条例の一部改正)
第3条 神戸市職員退職手当金条例(昭和24年9月条例第147号)の一部を次のように改正する。
  第7条第4項第1号中「第2条に規定する休職」を「第2条第1号又は第2号の規定に該当する場合における休職」に改め,同項第2号中「その他これに準ずる事由」の次に「又は職員の分限及び懲戒に関する条例第2条第3号の規定に該当する場合における休職」を加える。
  附 則
 (施行期日)
 1 この条例は,公布の日から施行する。
 (略)

    理 由
 重大な非違行為があり,起訴されるおそれがあると認められる職員であって,当該職員が引き続き職務に従事することにより,公務の円滑な遂行に重大な支障が生じるおそれがある場合に分限休職処分する等に当たり,条例を改正する必要があるため。


 地方公務員法の関係規定を確認しておく。

(分限及び懲戒の基準)
第二十七条 すべて職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない。
2 職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、若しくは免職されず、この法律又は条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して、休職されず、又、条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して降給されることがない。
3 職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、懲戒処分を受けることがない。
(降任、免職、休職等)
第二十八条 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
 一 人事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、勤務実績がよくない場合
 二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
 三 前二号に規定する場合のほか、その職に必要な適格性を欠く場合
 四 職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合
2 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反してこれを休職することができる。
 一 心身の故障のため、長期の休養を要する場合
 二 刑事事件に関し起訴された場合
3 職員の意に反する降任、免職、休職及び降給の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなければならない。
4 職員は、第十六条各号(第三号を除く。)の一に該当するに至つたときは、条例に特別の定がある場合を除く外、その職を失う。
(懲戒)
第二十九条 職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
 一 この法律若しくは第五十七条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
 二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
 三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
2~3 (略)
4 職員の懲戒の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなければならない。


 自宅謹慎を命じただけでは、民間企業の場合と同様、給与を支払わなければ労基法に違反する。懲戒するにも分限するにも、必要な手続きを踏み、事実を認定した上で、処分の量定を判断することとなり、免職ともなれば極めて慎重に行わなければならない。粗っぽくやれば、裁判で負けるかもしれない。そこで、地公法28条2項2号の「刑事事件に関し起訴された場合」に準ずるものとして、「重大な非違行為があり,起訴されるおそれがあると認められる職員であつて,当該職員が引き続き職務に従事することにより,公務の円滑な遂行に重大な支障が生じるおそれがある場合」を休職事由として条例で定めたということか。なある…。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事

493.教員給与特別措置法改正案が閣議決定 [8.トピック]

 教員給与特別措置法改正案が閣議決定されたようです。

○時事ドットコムニュース
教員の「休日まとめ取り」推進=特措法改正案を閣議決定
2019年10月18日08時55分

 政府は18日の閣議で、勤務時間を年単位で調整する「変形労働時間制」を公立学校で導入可能にすることを柱とした教職員給与特別措置法(給特法)改正案を決定した。夏休み期間中などの「休日まとめ取り」を推進し、教員の働き方改革につなげる。
 学校の通信網整備に375億円=教員の働き方改革にも重点
 文部科学省の2016年度の調査では、残業時間が「過労死ライン」とされる月80時間を超える公立学校の教員は、小学校で約3割、中学校で約6割に上り、長時間労働が問題化している。同省は、学期中の業務縮減を進める一方、変形労働時間制の導入により、夏休みなどの長期休業中に、集中して休日確保を促したい考え。
 具体的には、学校行事などで特に繁忙な4、6、10、11月の計13週について、所定勤務時間を週3時間増やし、代わりに8月に5日間の休日を設定。有給休暇と合わせて「10日間の休日まとめ取り」を推進することなどを想定している。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019101800332&g=pol

○産経新聞
教員の休日まとめ取り可能に 変形労働時間制導入を閣議決定 学校の働き方改革を促進
2019.10.18 11:49

 政府は18日、教員の労働時間を年単位で調整できるようにする「変形労働時間制」の導入を盛り込んだ教職員給与特別措置法(給特法)改正案を閣議決定した。各自治体の判断で夏休み中の休日のまとめ取りを可能にするとともに、原則月45時間以内とする残業時間の指針を法的に位置づける。これにより、長時間労働が深刻な教員の働き方改革を総合的に進めることにしている。
 萩生田光一文部科学相は同日の会見で「(授業以外の業務を縮小するなどして)教職の魅力を高め、教師でなければできないことに集中できるようにする法案」などと述べ、今国会での成立に意欲を示した。
 教員の変形労働時間制には、多忙な学期中の勤務時間を引き上げる代わりに、夏休み中の長期休暇を取りやすくするなどの狙いがある。
 改正案では、自治体がそれぞれの判断で変形労働時間制の条例を制定できる。今国会で成立すれば、自治体によっては令和3年度から導入される見通しだ。
https://www.sankei.com/life/news/191018/lif1910180020-n1.html


nice!(0)  コメント(1) 
共通テーマ:仕事

491. 教員も休暇のまとめ取り可能に [8.トピック]

 10月9日、一年単位の変形労働時間制を公立学校の教員に適用可能とする給特法改正案が自民党文教科学部会で了承されたとの報道があった。

○読売新聞
教員も休暇のまとめ取り可能に…自民党が改正案了承
2019/10/09 20:56
 労働時間を年単位で調整する「変形労働時間制」を公立学校の教員にも適用可能にする「教員給与特別措置法(給特法)」改正案が9日、自民党文部科学部会で了承された。政府は10月下旬にも閣議決定し、今国会での成立を目指す。夏休み期間中などに休暇のまとめ取りをできるようにすることで、教員の働き方改革を進める狙いがある。
 労働基準法が定める年単位の変形労働時間制は、繁忙期に労働時間を延ばす代わりに、閑散期に休暇を増やすなどして調整する仕組みだ。現在は地方公務員は適用対象外だが、給特法改正案が成立すれば、2021年度から自治体が条例に基づいて教員にも適用可能となる。
 文科省の休暇まとめ取りのイメージは、行事などで多忙な4、6、10、11月の計13週に勤務時間を週3時間延長し、その分を夏休み期間中の8月に振り替えるというものだ。振り替え分は約5日となり、有給休暇と組み合わせると、10日程度の連続休暇も可能となるという。育児や介護などで勤務時間を延ばせない教員は適用対象外にもできる。
 文科省の16年度教員勤務実態調査では、小学校教諭の約3割、中学校教諭の約6割で残業時間が「過労死ライン」とされる月80時間を超えていた。ただ、休暇のまとめ取りは繁忙期の長時間労働の追認につながるとの指摘もあり、改正案では文科相が教育委員会が取るべき勤務管理の指針を策定、公表するとの規定を定めた。
 文科省は今年1月、教員の「自発的行為」とされてきた放課後の部活動指導や授業準備なども「勤務時間」とし、残業の上限は原則「月45時間、年360時間」とするガイドラインを定めた。改正案ではこれを法的な指針に格上げし、自治体に順守を求める。
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20191009-OYT1T50268/

○日本経済新聞
教員の労働時間を柔軟に 文科省、法改正案を提出へ
2019/10/9 11:57
 教員の働き方改革を進めるため、勤務時間を年単位で管理する「変形労働時間制」の導入を柱とする教職員給与特別措置法(給特法)の改正案が9日、自民党の文部科学部会で了承された。文部科学省は4日に召集された臨時国会に提出する。成立すれば、繁忙期の勤務時間の上限を引き上げる代わりに、夏休み期間中などに休日をまとめ取りできるようになる。
 年単位の変形労働時間制は労働基準法が定めている。原則として1日8時間以内と決まっている労働時間を、平均で週40時間を超えない範囲で繁忙期には延長できる。ただし1日10時間が上限。残業は通常は月45時間、年360時間以内にする必要があるが、月42時間、年320時間以内となる。
 同制度は繁閑期が分かれる工場の従業員らに適用されてきたが、教員は対象外となっていた。
 同省は導入した場合、学校行事などが多い4、6、10、11月の間の計13週は所定の勤務時間を週3時間増やし、夏休みがある8月に5日程度の休みを取るといったイメージを描く。有給休暇を合わせてより長く休むことも狙う。
 導入の背景には教員の長時間労働問題がある。文科省の2016年度の調査では、中学校教員の約6割、小学校教員の約3割の残業時間が、おおむね月80時間超が目安の「過労死ライン」を超えていた。
 給特法改正案が成立すれば、自治体の判断で21年4月から変形労働時間制の導入が可能になる。ただ、現場の教員からは「夏に休める保証はない」「夏休み前に過労で倒れてしまう」といった声も上がる。
 導入反対の署名活動などに取り組む公立高校教員、西村祐二さんは、給特法の抜本改正を主張する。同法は残業代を払わない代わりに、基本給の4%を「教職調整額」として支給すると規定。これが長時間残業を招いているとし、時間に見合った残業代を払う内容に変えるべきだとしている。
 部活動や校務を含む業務量の削減、教員の増員を優先すべきだとの声もある。野党側からも同様の意見が出ており、国会で議論される見通しだ。
 教員の働き方改革では、中央教育審議会が1月、残業時間の上限を「月45時間、年360時間」とするガイドラインの順守を柱とした答申を提出。教員の自発的な行為とされてきた部活指導や授業準備なども含めて勤務時間とし、タイムカードなどによる管理を求めた。
 改正案はガイドラインを文科相が定める「指針」に格上げすることも盛り込んだ。同省は各自治体に指針の順守を求め、勤務時間を把握していない自治体名や、自治体ごとの教員の勤務時間も今後公表する方針。部活動指導員など外部人材の活用も進める考えだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50780080Z01C19A0CR0000/


 この問題については色々論点があるのだが、報道で聞く限りということにはなるが、ここでは2つの点を指摘しておきたい。

 まず、「多忙な4、6、10、11月の計13週に勤務時間を週3時間延長する」というのだが、そもそも教師の勤務時間の上限に関するガイドラインで示されたように、公立学校の教員はいわゆる超勤4項目以外の業務で残業しているのが大半なのであって、しかもその業務に従事している時間は労基法上の労働時間ではないと述べている。であるのに、「勤務時間を週3時間延長する」という。この勤務時間は労働基準法上の労働時間の扱いとなるはずである。何を言いたいかというと、変形労働時間制を活用すると、労基法上の労働時間ではない時間が労基法上の労働時間に化けるという訳である。不思議に思うのは、このノートだけか…?

 もう一つは、「給特法改正案が成立すれば…自治体が条例に基づいて教員にも適用可能となる」とする点だ。一年単位の変形労働時間制は、労基法上は労使協定によってしか適用されないこととなっている。それをどのような理由で条例で適用可能とするのか。おそらく、「勤務条件条例主義」を持ち出すのだろうと思う。確かに、労基法上は労使協定で実施できる一斉休暇の除外や代償休日、時間年休については、地方公務員は条例で特別の定めをすれば実施できるよう地公法に読み替え規定が設けられている。しかし、いわゆる時間外労働や休日労働に関する三六協定については、官公署に勤務する公務員には空振りだが、現業の公務員には適用されている。そうした中で、どうして公立学校の教員のみ条例で特別の定めをすれば適用可能になるのか。公立学校の教員のみ適用される給特法の存在が許されるという合理的な理由が理解できない限り、やはり理解できない点である。

 さて、いつ閣議決定され、国会でどのような論戦が行われるのだろうか。



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事
前の10件 | - 8.トピック ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。