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10.高等官のなごり ブログトップ

80. 高等官のなごり(その3) [10.高等官のなごり]

 前回、足立忠夫の指摘に触発されて、戦前の官吏の階級と15級制との対比をこころみた。指摘は官吏給与の専門家ではなく行政学者が行ったものであり、給与上の対比としての真偽のほどは十分な時間も資料もなく、このノ-トでは確かめられないが、六級職採用試験と高等文官試験とが同等であり15級制の6級以上が戦前の高等官に対応するとの問題意識には、興味を持ってしまう。
では、この15級制度が、度重なる給与制度改革の中で、どのように変遷し、現行制度に至ったのか。次に概観しておきたい。

 (15級制)      (8等級制)  (11級制)  (構造改革)
 15級 次官      指定職    指定職   指定職 事務次官
 14級 長官      〃       〃      〃    長官・審議官
 13級 局長      〃       〃      〃    局長
 -            -       -      10級  特重課長
 12級 部・課長    1等級     11級    9級   重要課長
 〃            2等級     10級    8級   困難室長
 11級 課長・補佐   〃       9級     7級   室長
 10級 課長補佐    3等級     8級     6級   困難補佐
 9級  補佐・係長   4等級     7級     5級   課長補佐
 〃            〃       6級     4級   困難係長
 8級  係長       5等級     5級     3級  係長・困難主任
 7級  係長・事務員   〃      4級     〃
 6級  事務員     6等級     3級     2級  主任
 5級  〃        7等級     2級     1級  係員
 4級  事務員補助   〃      〃      〃
 3級  〃        8等級     1級     〃
 2級  〃        〃       〃      〃
 1級  給仕       -       -      -

 注目すべきは高等官9等に足立忠夫が対比させた15級制の6級である。8等級制、11級制を経て、平成18年4月に給与構造の抜本的な見直しが行われたのだが、意図的かどうか分からないが、職務の級の統合又は分割の対象にはなってこなかったという事実だ。事務次官を目指して超スピードで昇進していくいわゆるキャリア官僚に採用されるための試験である「国家公務員採用I種試験」は、「行政職俸給表(一)の職務の級二級の官職等に採用するための競争試験」と位置付けられている(人事院規則八-八)。正に高等文官試験により採用された高等官の給与上の格付けが、形を変えてながら今も連綿として続いているとは見えないだろうか…。


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79. 高等官のなごり(その2) [10.高等官のなごり]

 いわゆる職階法が国会で審議される過程で公述人として意見を開陳した足立忠夫関西学院大学助教授の発言を、大森彌『官のシステム』(東京大学出版会、2006)から引用してみたい。
 「それゆえにまた、足立は、当時の一五級の分類が職階制の一種であり、しかもそれが給与という人事行政の機能にのみ役立つように作成されたものであるが、「一五級の分類は、奇妙なことに、わが国の官吏の階級である一つの親任官と、九つに分れる勅任官、奏任官、即ち高等官と、四つに分れる判任官及び一つの雇員の階級、合せて一五級の階級とぴったりと一致しているではないか、しかも、この一五級の分類は形を変えて国家公務員の採用試験にも適用されているではないか」と指摘した。」(p26)

 足立忠夫の指摘に従えば、次のような対応関係となる。
 (戦前の官吏の階級)     (15級制)
 勅任官 親任官   大臣   15級 次官
      高等官1等 次官   14級 長官
      高等官2等 局長   13級 局長
 奏任官 高等官3等 課長  12級 部・課長
      高等官4等 書記官 11級 課長・補佐
      高等官5等 〃    10級 課長補佐
      高等官6等 〃     9級  補佐・係長
      高等官7等 〃     8級  係長
      高等官8等 〃     7級  係長・事務員
      高等官9等 〃     6級  事務員
 判任官 判任官1等 書記   5級  〃
      判任官2等 〃     4級  事務員補助
      判任官3等 〃     3級  〃
      判任官4等 〃     2級  〃
 雇員、傭人            1級  給仕

 前回掲載した対比表とは対応関係が異なり、違った様相を示している。再び、大森彌『官のシステム』から引き続く部分を引用してみる。
 「そして、当時、実施されていた六級職の採用試験に言及し、「この六級職の受験資格として大学卒業者であることを要求しているが、この資格はほぼかつての高文試験の要求する資格と一致している。六級職が下から六番日の階級であるのと同様に、高文試験に合格したものがなる高等官九等もやはり下から六番目に当る。勅任、奏任等の官吏の分類は一級官、二級官と名前を代えただけで存在している」と指摘したのである。」(p26-27)


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78. 高等官のなごり(その1) [10.高等官のなごり]

 教員給与から話は脱線する。
 戦後、官吏の身分は、勅任官、奏任官、判任官の区分がなくなり、身分毎に定められていた俸給制度も一本化された。その後、昭和23年に職務給別俸給表となるのだが、この間の官位と職階との対比を行ったある資料によれば、次のようだとされている。
  (官等級制度)       (2,920円ベース)
  高等官1等 大臣      15級 次官
  〃   2等 長官・次官   14級 長官
  〃   3等 局長      13級 局長
  〃   4等          12級 部・課長
  〃   5等 書記官     11級 課長
  〃   6等 〃        10級 課長補佐
  〃   7等 〃        9級  補佐・係長
  〃   8等 〃        8級  係長・事務員
  〃   9等 〃
  判任官1等 書記       7級  〃
  〃   2等 〃        6級  〃
  〃   3等 〃        5級  事務員
  〃   4等 〃
  雇傭人             4級  〃
  〃                3級  補助員
  〃                2級  〃
  〃                1級  給仕

 ところが、この間の事情について、これとは違った認識を示した行政学者がいる。戦後改革の一環として職階法案が国会に提出され、その審議の過程で、公述人として意見を開陳した足立忠夫関西学院大学助教授の昭和24年11月22日に開催された参議院人事委員会での興味深い発言がそれである。次回、大森彌『官のシステム』(東京大学出版会、2006)からその部分を引用して考えてみたい。


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