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179.残業時間の再評価(その5) [21.残業時間の再評価]

 「残業時間の再評価」というテーマで考察してきたが、ちょっと立ち止まって、財政制度等審議会の主張を再点検しておきたい。
 ポイントは、「昭和41年度調査では、調査結果に見直し・再評価を加えているものであり、平成18年度調査においても同様の見直し・再評価を行えば、必ずしも昭和41年度調査を上回る水準であるとは言えない」という部分である。
 確かにそのように主張される視点も大切である。今やっている仕事は、なんでもかんでも教員の職務であるというのは、ちょっと乱暴な気もしている。ただ、そうではなくて、「必ずしも昭和41年度調査を上回る水準であるとは言えない」と言われると、学校現場の実感としては「そんなことはない。格段に多忙化しているのが実態だ」という声が聞こえてきそうだと誰しも思うのではないだろうか。「特に完全学校週5日制になってから、土曜日の業務が平日に持ち込まれて、平日の勤務が過密になった分、超勤が増えている」と…。
 財政制度等審議会の資料における昭和41年度調査の残業時間は、再評価前のものと考えてよかったが、教員の勤務時間について、週44時間が週40時間になった点がどのように影響しているかについては、意図的かもしれないが、無視されている。
 この点を考慮するとどうなるか、粗っぽいがざっとしたところで計算をしておきたい。つまり、以前に財政制度等審議会資料の昭和41年度調査における1日平均勤務時間9時間19分から導き出した月平均残業時間の約12時間に、土曜日の勤務時間4時間分を残業時間としてカウントして加えてみると…。
 <完全学校週5日制の影響>
  年 間 (月約12時間×12月)+(4時間×52週)=352時間
  月平均  352時間÷12月=約29時間

 これに、近年学校に求められている様々な役割に伴って更に教員が多忙化した時間を週1時間程度、月概ね5時間と無理矢理みなして、これを足せば…、月平均34時間の残業時間となる。
 「あまりに単純すぎる計算だ。」とか「数字合わせにすぎない。」と批判されるかもしれない。しかし、1人の教員が担当する授業時間数が減らないのなら、実際にこれぐらいのイメージで受け取ってもよいのではないかと思うのだが…。

178.残業時間の再評価(その4) [21.残業時間の再評価]

 ところで、脱線するが、昭和41年度調査による残業時間を文部科学省はなぜ「月平均8時間」と言ったのだろうか。一週平均一時間四八分の4週分であるなら、「7時間12分」で少し少ない感じがする。だからといって、一週平均一時間四八分の52週分を12月で割ったものと考えると「7時間48分」になるが、これでは、先ほど触れた「エ」の「年間四四週」という計算と齟齬を来すように思う。

 ここで、文部科学省の平成20年度概算要求の内容を思い出したい。そこでは、「メリハリのある教員給与」を実現するための一つとして、教職調整額の見直しを掲げ、教員勤務実態調査による残業時間月平均34時間を半分の17時間に抑制した上で、現在との差額を措置し、総額約12%を確保するものであった。その考え方は、まず、諸手当へのはね返り分を廃止した上で、標準を10%とし、職務負荷を考慮して主任や主幹には2~4%プラスするというものであった。一方、現行の教職調整額の水準を振り返ってみると、支給割合は4%であるが、はね返り分を含めると実質6%ということになっている。つまり、文部科学省の概算要求については、残業時間が月平均8時間から月平均17時間に概ね倍増していることに対応して、教職調整額の水準を実質6%から総額12%に倍増しようという内容になっていると理解してよいのではないだろうか。

 しかし…、何か引っかかる。昭和41年調査で文部省が算定した残業時間である「一週平均一時間四八分」から残業時間「月平均概ね8時間」を算出するためには、通年で計算する必要があった。つまり、先ほど計算したように、夏休み等の間も「一週平均一時間四八分」の残業をしていると仮定して、ようやく「月平均概ね8時間」の数字になるのだった。しかしながら、『教育職員の給与特別措置法解説』によれば、「一週平均一時間四八分」の残業が「年間四四週(年間五二週から、夏休み四週、年末年始二週、学年末始二週の計八週を除外)にわたって行われた場合の超過勤務手当に要する金額が、超過勤務手当算定の基礎となる給与に対し、約四%に相当したものである」と説明しているのである。これは、廃案になった教職特別手当4%の根拠としてものを流用したものらしいのだが、この「超過勤務手当算定の基礎となる給与に対し、約四%に相当した」という部分を計算式で表せば次のようになろう。
 <本給に対して4%相当とした計算>
  残業時間 (1時間48分×44週)÷12月 = 月6.6時間 
  超勤手当 {(俸給月額+調整手当)×12月/44時間×52週}×1.25×残業時間数
  俸給月額に対する割合
   ={1.06×12/44×52}×1.25×6.6
   = 0.0458 → 概ね4%

 こうして見ると、年間おしなべて考えると、月平均6.6時間=月平均6時間36分ということになる。これでは、文部科学省が平成20年度概算要求で要求したストーリーとは合わなくなってくる。そうではなくて、はね返り分を考慮した実質6%の倍程度の時間に対応する水準が、はね返りを廃止して総額12%を確保するというのだから、現行の教職調整額が諸手当に跳ね返る分を考慮して、割り戻した時間数を根拠に要求したのかもしれない。次に計算してみよう。
 <教職調整額を残業時間数に割り戻す計算>
  超勤手当 {(俸給月額+地域手当)×12月/44時間×52週}×1.25×残業時間数
  教職調整額のはね返り効果
   年間 4%×調整(地域)手当分1.06×16.8月(昭和46年当時)=71.232%
   月間 71.232%÷12月=5.936%→概ね6%
  残業時間に割戻し
   (俸給月額×1.06×12月/44時間×52週)×1.25×残業時間数=俸給月額×5.936%
   残業時間数=8時間32分→概ね8時間

 なんだか分かりにくい、混乱した説明となったが、ここで言いたかったのは、「概算要求では、はね返り分の廃止と絡んで、改善前後の水準を実質水準で対比させるために『月平均概ね8時間』という説明をしたのではないだろうか」、という点である。


177.残業時間の再評価(その3) [21.残業時間の再評価]

 ところで、昭和41年度調査の時点で、当時の文部省は、残業時間についてどのような再評価を行ったのだろうか。前回も触れたところであるが、文部省調査結果の四%の率を算出するにあたって、服務時間外に報酬を受けて補習を行っていた時間を差し引き、服務時間内において社会教育関係団体等の学校関係団体の仕事に従事した時間を相殺減するという作業を行っている。
 宮地茂監修『教育職員の給与特別措置法解説』に収録されている「教員の勤務種類別の時間数」の表から、これらの時間に当たる「付随関連活動(関係団体活動、社会教育関係団体活動)」を差し引いてみると…、文部省が算定した「平均一時間四八分」にはまだ差し引かなければ届かない。また、本文の解説を読んでいくと「自主研修」は調査対象外としいるので、更にこれを差し引くと…、まだ不足するようである。「承認研修(校長の承認による研修会・研究会、夏休み等の自宅研修)」を差し引くと、差し引きすぎになる。しからば、あと何を差し引いたのか…。「自主研修」に近いと考えられる「夏休み等の自宅研修」だろうか。しかし、「八月を除く一一カ月の平均週当たり超過勤務時間」を算定基礎にしているから、これではないような気がする。この本のどこを読んでみても、答えは見あたらない…。
 ただ、小学校はほぼ近いが、中学校は約30分足りないという小学校と中学校で違うという状況や、高等学校の数字などを見ていくと、なんとなくクラブ活動ではないかという気もする(財政制度等審議会の資料では、クラブ活動は含まれている。)。教職調整額が制度化されて、後に人材確保法に基づく特別改善の一環として部活動手当が創設されたことを考えると、あながち間違っていないような気もするのだが…。いずれにしても、文部科学省が沈黙しているので、この辺りはよく分からない…。


176.残業時間の再評価(その2) [21.残業時間の再評価]

 宮地茂監修『教育職員の給与特別措置法解説』の110頁以下に「教職調整額を四%とした根拠」の記述がある。それによれば、「文部省調査結果の四%の率は、次のような計算によって算定されたものである」とし、次のように説明する。(骨子のみ掲載)
 ア 八月を除く一一カ月の平均週当たり超過勤務時間
   小学校 二時間三六分
   中学校 四時間三分
 イ 服務時間外に報酬を受けて補習を行っていた時間を差し引き、服務時間内において社会教育関係団体等の学校関係団体の仕事に従事した時間を相殺減する。
 ウ 一週平均の服務時間外勤務時間数(想定)
   小学校 一時間二○分
   中学校 二時間三○分
   平 均 一時間四八分 …A
 エ Aが年間四四週(年間五二週から、夏休み四週、年末年始二週、学年末始二週の計八週を除外)にわたって行われた場合の超過勤務手当に要する金額が、超過勤務手当算定の基礎となる給与に対し、約四%に相当したものである。

 この説明によれば、超過勤務命令をかけるという観点から見直しを行った後の残業時間は、一週平均一時間四八分ということになるが、見直し前の小・中学校の平均残業時間が記載されていない。同じような比率でもって見直し前の小・中学校の平均残業時間を算出すると、約二時間四六分となる。
 ここで議論を元に戻す。財政制度等審議会の資料によれば、昭和41年度調査の残業時間を逆算してみると、約12時間と考えてよく、週3時間という理解と受け止めてよかった。一方、文部科学省が主張する月平均8時間ならば、週2時間の残業時間となるはずであった。こうしてみると、財政制度等審議会の資料〔資料Ⅱ-4-8参照〕に記載している昭和41年度調査の「1日平均9:19」という勤務時間は、どうやら超過勤務命令をかけるという観点から精査し、見直しを行う前ものと言えそうである。

175.残業時間の再評価(その1) [21.残業時間の再評価]

 ところで、財政制度等審議会が去る6月3日に「平成21年度予算編成の基本的考え方について」の建議を行った。その中で、義務教育費国庫負担金について、次のように述べている。
 「イ.義務教育費国庫負担金
 ② 教職員給与の効率化
  (略)
 また、平成18年度(2006年度)の「教員勤務実態調査」によれば、教員の残業時間が、昭和41年度(1966年度)の「教職員勤務状況調査」における残業時間よりも長くなったと指摘がある。しかしながら、昭和41年度調査では、調査結果に見直し・再評価を加えているものであり、平成18年度調査においても同様の見直し・再評価を行えば、必ずしも昭和41年度調査を上回る水準であるとは言えない〔資料Ⅱ-4-8参照〕。
 教員の業務負担の軽減に努めるべきであり、給与の増額は適切ではない。」
 添付資料では、次のように指摘している。
 〔資料Ⅱ-4-8参照〕
  勤務状況調査の比較(小中学校加重平均)
  昭和32年度調査(1日平均10:41)
  昭和41年度調査(1日平均9:19)
  平成18年度調査(1日平均10:21)
 昭和41年度の「教員勤務状況調査」は、
 「服務時間外でも学校敷地内における勤務は、原則として調査対象としたが、自主研修、付随関連活動(関係団体等)及び宿日直勤務については調査対象としなかった」もの。(文部省編「教育職員の給与特別措置法解説」第一法 規出版(昭和46年))
 「教員自身の申告に基づくものであるが、これを、職務の緊急性を考慮し、超過勤務命令をかけるという観点から見直し」たもの。(同上)
 実際、教員自身の申告である昭和32年度調査と比較してみると授業準備・研修等といった間接的な業務が大きく減じられている。」

 この〔資料Ⅱ-4-8参照〕に示されている昭和41年度調査の「1日平均9:19」及び平成18年度調査「1日平均10:21」はどうやって計算したのだろうか。財務省の主計官が文部科学省の調査を元に再計算したものと思うが、ちょっと考えてみたいと思う。
 そこで、棒グラフを見てみると、8時間45分のところに線が引かれていて、この腺を超える部分を「残業時間」と定義していることが分かる。
この棒グラフから逆算すると、平成18年度調査の1日平均残業時間は、10時間21分から8時間45分を引いた1時間36分となる。これを、月平均残業時間に換算するため21倍すると、33時間36分となる。当然ではあるが、文部科学省の主張する34時間に近い時間となっている。
 次に、昭和41年度調査の残業時間を逆算してみる。1日平均勤務時間9時間19分から8時間45分を引くと34分となる。これを21倍し、月平均残業時間を算出すると11時間54分となる。約12時間と考えてよいと思うが、こちらのほうは、8時間と説明されてきた昭和41年度調査当時の残業時間数よりも長い時間となっている。
 この約12時間という残業時間は、超過勤務命令をかけるという観点から見直しを行う前の残業時間なのだろうか。8時間を仮に4週間で割り戻すと、週2時間の残業時間となり、約12時間を仮に4週間で割り戻すと、週3時間の残業時間と理解していることになる。これを、宮地茂監修『教育職員の給与特別措置法解説』に掲載されている昭和41年度の調査数字によって確認しておきたい。次回に具体的に考察する。

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