239.俸給水準の重なり(その4) [30.俸給水準の重なり]
これまで行(一)における職務の級間の俸給水準の重なりを考察してきたが、今回は、教(二)(三)における重なりを考察しておきたい。
<17年4月改定教(二)における1級上位の職務の級との水準の重なり>
職務の級 初号 最高 レンジ 重なり 重複率
1級 147,000 360,300 213,300 169,800 80%
2級 190,500 454,200 263,700 144,100 55%
3級 310,100 502,900 192,800 99,400 52%
4級 403,500 524,500 121,000
<17年4月改定教(三)における1級上位の職務の級との水準の重なり>
職務の級 初号 最高 レンジ 重なり 重複率
1級 147,000 314,100 167,100 151,700 91%
2級 162,400 440,800 278,400 171,600 62%
3級 269,200 471,100 201,900 72,300 36%
4級 398,800 497,900 99,100
教(二)(三)の俸給表は、行(一)の複数の職務の級の水準にブリッジして作成されていることから、その重複率はもっと高いものかと想像したのだが、実際に計算すると、行(一)のそれとそれほど違った感じは受けない。教(三)1級の重複率が高いのは、教(二)2級の初号が大学卒初任給であるのに対して、教(三)2級の初号が短大卒初任給である影響が大きいと思われる。
<18年4月改定教(二)における1級上位の職務の級との水準の重なり>
職務の級 初号 最高 レンジ 重なり 重複率
1級 147,000 335,100 188,100 144,600 77%
2級 190,500 428,100 237,600 96,600 41%
3級 331,500 467,700 136,200 42,800 31%
4級 424,900 487,800 62,900%
<18年4月改定教(三)における1級上位の職務の級との水準の重なり>
職務の級 初号 最高 レンジ 重なり 重複率
1級 147,000 311,300 164,300 148,900 91%
2級 162,400 416,500 254,100 130,400 51%
3級 286,100 438,100 152,000 23,600 16%
4級 414,500 463,000 48,500
給与構造改革後の職務の級の水準の重なりを見ると、それ以前と比べて小さくなっている。前後を並べて、次に確認しておく。
<17年教(二)> <18年教(二)> <差引>
1級 80% 1級 77% △3%
2級 55% 2級 41% △14%
3級 52% 3級 31% △21%
<17年教(三)> <18年教(三)> <差引>
1級 91% 1級 91% △0%
2級 62% 2級 51% △11%
3級 36% 3級 16% △20%
当然だが、行(一)と同様の傾向になっている。
<17年4月改定教(二)における1級上位の職務の級との水準の重なり>
職務の級 初号 最高 レンジ 重なり 重複率
1級 147,000 360,300 213,300 169,800 80%
2級 190,500 454,200 263,700 144,100 55%
3級 310,100 502,900 192,800 99,400 52%
4級 403,500 524,500 121,000
<17年4月改定教(三)における1級上位の職務の級との水準の重なり>
職務の級 初号 最高 レンジ 重なり 重複率
1級 147,000 314,100 167,100 151,700 91%
2級 162,400 440,800 278,400 171,600 62%
3級 269,200 471,100 201,900 72,300 36%
4級 398,800 497,900 99,100
教(二)(三)の俸給表は、行(一)の複数の職務の級の水準にブリッジして作成されていることから、その重複率はもっと高いものかと想像したのだが、実際に計算すると、行(一)のそれとそれほど違った感じは受けない。教(三)1級の重複率が高いのは、教(二)2級の初号が大学卒初任給であるのに対して、教(三)2級の初号が短大卒初任給である影響が大きいと思われる。
<18年4月改定教(二)における1級上位の職務の級との水準の重なり>
職務の級 初号 最高 レンジ 重なり 重複率
1級 147,000 335,100 188,100 144,600 77%
2級 190,500 428,100 237,600 96,600 41%
3級 331,500 467,700 136,200 42,800 31%
4級 424,900 487,800 62,900%
<18年4月改定教(三)における1級上位の職務の級との水準の重なり>
職務の級 初号 最高 レンジ 重なり 重複率
1級 147,000 311,300 164,300 148,900 91%
2級 162,400 416,500 254,100 130,400 51%
3級 286,100 438,100 152,000 23,600 16%
4級 414,500 463,000 48,500
給与構造改革後の職務の級の水準の重なりを見ると、それ以前と比べて小さくなっている。前後を並べて、次に確認しておく。
<17年教(二)> <18年教(二)> <差引>
1級 80% 1級 77% △3%
2級 55% 2級 41% △14%
3級 52% 3級 31% △21%
<17年教(三)> <18年教(三)> <差引>
1級 91% 1級 91% △0%
2級 62% 2級 51% △11%
3級 36% 3級 16% △20%
当然だが、行(一)と同様の傾向になっている。
238.俸給水準の重なり(その3) [30.俸給水準の重なり]
前回(その2)では、給与構造改革によって、職務の級間の水準の重なりの縮減が進み、職務の級が上位になるに従って、1級上位の職務の級との水準の重複率の減少が大きくなっている様子を確認した。
しかし、よく考えてみると、給与構造改革に伴う給料表の改定は、改革前の給料表において使わなくなっていた初号付近の号俸をカットするとともに、在級実態を追認する形でもって、最大3号俸の範囲内で号俸を延長したものであった。つまり、平成8年に完成した1号上位昇格制度の導入によって、職務の級間の水準の重なりの縮減は進んでいたといえるはずなのである。
号俸カットと号俸延長を加味して、確認しておきたい。
<17年4月改定行(一)における1級上位の職務の級との水準の重なり(修正版)>
職務の級 最低 最高 レンジ 重なり 重複率
1~2級 2号俸134,000 19号俸244,100 110,100 60,300 55%
3級 1号俸183,800 32号俸316,200 132,400 90,700 69%
4~5級 2号俸225,500 特2号俸385,600 160,100 112,300 70%
6級 3号俸273,300 特2号俸418,700 145,400 115,600 80%
7級 4号俸303,100 特3号俸436,200 133,100 99,700 75%
8級 5号俸336,500 特3号俸460,400 123,900 72,700 59%
9級 6号俸387,700 特3号俸497,600 109,900 58,600 53%
10級 7号俸439,000 特3号俸521,800 82,800 23,000 28%
<17年行(一)修正> <18年行(一)> <差引>
1~2級 55% 1級 55% 0%
3級 69% 2級 70% 1%
4~5級 70% 3級 70% 0%
6級 80% 4級 79% △1%
7級 75% 5級 72% △3%
8級 59% 6級 56% △3%
9級 53% 7級 49% △4%
10級 28% 8級 21% △7%
- 9級 11%
こうしてみると、水準の重なりは実質的には給与構造改革前に既に実現されていたことが分かる。職務の級が上位になるに従って、1級上位の職務の級との水準の重複率の減少が少し大きくなり、最大7%となっているが、前回(その2)で考察した劇的な変化と比べるとかなり小さくなっている。
しかし、よく考えてみると、給与構造改革に伴う給料表の改定は、改革前の給料表において使わなくなっていた初号付近の号俸をカットするとともに、在級実態を追認する形でもって、最大3号俸の範囲内で号俸を延長したものであった。つまり、平成8年に完成した1号上位昇格制度の導入によって、職務の級間の水準の重なりの縮減は進んでいたといえるはずなのである。
号俸カットと号俸延長を加味して、確認しておきたい。
<17年4月改定行(一)における1級上位の職務の級との水準の重なり(修正版)>
職務の級 最低 最高 レンジ 重なり 重複率
1~2級 2号俸134,000 19号俸244,100 110,100 60,300 55%
3級 1号俸183,800 32号俸316,200 132,400 90,700 69%
4~5級 2号俸225,500 特2号俸385,600 160,100 112,300 70%
6級 3号俸273,300 特2号俸418,700 145,400 115,600 80%
7級 4号俸303,100 特3号俸436,200 133,100 99,700 75%
8級 5号俸336,500 特3号俸460,400 123,900 72,700 59%
9級 6号俸387,700 特3号俸497,600 109,900 58,600 53%
10級 7号俸439,000 特3号俸521,800 82,800 23,000 28%
<17年行(一)修正> <18年行(一)> <差引>
1~2級 55% 1級 55% 0%
3級 69% 2級 70% 1%
4~5級 70% 3級 70% 0%
6級 80% 4級 79% △1%
7級 75% 5級 72% △3%
8級 59% 6級 56% △3%
9級 53% 7級 49% △4%
10級 28% 8級 21% △7%
- 9級 11%
こうしてみると、水準の重なりは実質的には給与構造改革前に既に実現されていたことが分かる。職務の級が上位になるに従って、1級上位の職務の級との水準の重複率の減少が少し大きくなり、最大7%となっているが、前回(その2)で考察した劇的な変化と比べるとかなり小さくなっている。
236.俸給水準の重なり(その2) [30.俸給水準の重なり]
給与構造改革によって、職務の級間の水準の重なりの縮減は、どのていど進んだのだろうか。平成17年4月の俸給表と平成18年4月の俸給表で、1級上位の職務の級との水準の重なりの状況を比較してみよう。
<17年4月改定行(一)における1級上位の職務の級との水準の重なり>
職務の級 初号 最高 レンジ 重なり 重複率
1級 134,000 187,800 53,800 17,600 33%
2級 170,200 244,100 73,900 60,300 82%
※1~2級 110,100 60,300 55%
3級 183,800 316,200 132,400 98,700 75%
4級 217,500 363,200 145,700 128,200 88%
5級 235,000 380,400 145,400 124,900 86%
※4~5級 162,900 124,900 77%
6級 255,500 415,300 159,800 140,600 88%
7級 274,700 425,700 151,000 129,900 86%
8級 295,800 449,600 153,800 120,400 78%
9級 329,200 485,300 156,100 118,600 76%
10級 366,700 508,600 141,900 94,000 66%
<18年4月改定行(一)における1級上位の職務の級との水準の重なり>
職務の級 初号 最高 レンジ 重なり 重複率
1級 134,000 244,100 110,100 60,300 55%
2級 183,800 309,900 126,100 88,800 70%
3級 221,100 357,200 136,100 94,900 70%
4級 262,300 391,200 128,900 101,500 79%
5級 289,700 403,700 114,000 82,600 72%
6級 321,100 425,900 104,800 58,700 56%
7級 367,200 460,300 93,100 45,500 49%
8級 414,800 482,600 67,800 13,900 21%
9級 468,700 542,600 73,900 8,400 11%
比較に当たって、給与構造改革前は枠外昇給制度があったため、実際の給与水準はもっと高かったのだから、上位の職務の級との水準の重なりももっと大きかったのではないかと思われる。しかし、枠外の在職実態は、1号上位昇格制度による俸給表運用の反映であるし、実際にはほとんど使っていない号俸があって、平成18年4月改定の際にカットされたから、そのまま比較をしてもバランスはとれているだろうと思う。
それでは、給与水準の重複率を横にならべて確認してみる。
<17年行(一)> <18年行(一)> <差引>
1~2級 55% 1級 55% 0%
3級 75% 2級 70% △5%
4~5級 77% 3級 70% △7%
6級 88% 4級 79% △9%
7級 86% 5級 72% △14%
8級 78% 6級 56% △22%
9級 76% 7級 49% △27%
10級 66% 8級 21% △45%
- 9級 11%
職務の級が上位になるに従って、1級上位の職務の級との水準の重複率の減少が大きくなっている様子がよく分かる。
<17年4月改定行(一)における1級上位の職務の級との水準の重なり>
職務の級 初号 最高 レンジ 重なり 重複率
1級 134,000 187,800 53,800 17,600 33%
2級 170,200 244,100 73,900 60,300 82%
※1~2級 110,100 60,300 55%
3級 183,800 316,200 132,400 98,700 75%
4級 217,500 363,200 145,700 128,200 88%
5級 235,000 380,400 145,400 124,900 86%
※4~5級 162,900 124,900 77%
6級 255,500 415,300 159,800 140,600 88%
7級 274,700 425,700 151,000 129,900 86%
8級 295,800 449,600 153,800 120,400 78%
9級 329,200 485,300 156,100 118,600 76%
10級 366,700 508,600 141,900 94,000 66%
<18年4月改定行(一)における1級上位の職務の級との水準の重なり>
職務の級 初号 最高 レンジ 重なり 重複率
1級 134,000 244,100 110,100 60,300 55%
2級 183,800 309,900 126,100 88,800 70%
3級 221,100 357,200 136,100 94,900 70%
4級 262,300 391,200 128,900 101,500 79%
5級 289,700 403,700 114,000 82,600 72%
6級 321,100 425,900 104,800 58,700 56%
7級 367,200 460,300 93,100 45,500 49%
8級 414,800 482,600 67,800 13,900 21%
9級 468,700 542,600 73,900 8,400 11%
比較に当たって、給与構造改革前は枠外昇給制度があったため、実際の給与水準はもっと高かったのだから、上位の職務の級との水準の重なりももっと大きかったのではないかと思われる。しかし、枠外の在職実態は、1号上位昇格制度による俸給表運用の反映であるし、実際にはほとんど使っていない号俸があって、平成18年4月改定の際にカットされたから、そのまま比較をしてもバランスはとれているだろうと思う。
それでは、給与水準の重複率を横にならべて確認してみる。
<17年行(一)> <18年行(一)> <差引>
1~2級 55% 1級 55% 0%
3級 75% 2級 70% △5%
4~5級 77% 3級 70% △7%
6級 88% 4級 79% △9%
7級 86% 5級 72% △14%
8級 78% 6級 56% △22%
9級 76% 7級 49% △27%
10級 66% 8級 21% △45%
- 9級 11%
職務の級が上位になるに従って、1級上位の職務の級との水準の重複率の減少が大きくなっている様子がよく分かる。
235.俸給水準の重なり(その1) [30.俸給水準の重なり]
前々回までは、給与カーブのフラット化を考察するため「昇給間差額」を取り上げて考察したが、別の見方をすれば、それは「職務の級間の俸給水準の重なりの縮減」にも影響を与えるものである。
給与構造改革の勧告を行った平成17年の人事院勧告から、そのことを指摘している部分を抜粋しておく。
(2) 中高齢層給与の抑制(給与カーブのフラット化)
俸給表の水準を平均4.8%引き下げることとするが、中高齢層については民間の中高齢層の給与水準との均衡を考慮して更に2%程度の引下げを行う一方で、若年層については引下げを行わないことによって、給与カーブのフラット化を進めることとした。さらに、課長、課長補佐、係長等のそれぞれの職務・職責の違いを重視した俸給表への転換を図るよう、職務の級間の俸給水準の重なりを縮減するとともに、職務の級と役職段階との関係を再整理し、職務の級の統合、新設を行う。
給与カーブのフラット化を行うべき理由については、次のように述べている。
イ 年功的な俸給構造の見直し
現行の俸給表は、上位の職務の級に昇格しないとしても俸給が一定の水準まで到達するよう配慮した号俸設定が行われているため、上下の職務の級の間における水準の重なりが極めて大きな構造となっている。加えて、最高号俸に達した職員も良好な勤務成績を挙げれば特別に最高号俸を超えた俸給月額に決定し得る仕組み(いわゆる「枠外昇給制度」)となっており、年功的な給与上昇を許容するものとなっている。
俸給は、生活給の側面も有しているが、基本的には職務・職責に応じたものとして支給されるべきものである(職務給の原則)。そのため、職務の級間の水準の重なりの縮小、最高到達水準の引下げによる給与カーブのフラット化、いわゆる枠外昇給制度の廃止などの措置を講ずる必要がある。
職務給の原則を貫けば、究極はシングルレートになるが、レンジレートであっても「職務の級間の水準の重なりはできる限り小さくすべきである」というのである。
それでは、実際の俸給表ではどのように縮小されたのか、次回以降、考察していきたい。
給与構造改革の勧告を行った平成17年の人事院勧告から、そのことを指摘している部分を抜粋しておく。
(2) 中高齢層給与の抑制(給与カーブのフラット化)
俸給表の水準を平均4.8%引き下げることとするが、中高齢層については民間の中高齢層の給与水準との均衡を考慮して更に2%程度の引下げを行う一方で、若年層については引下げを行わないことによって、給与カーブのフラット化を進めることとした。さらに、課長、課長補佐、係長等のそれぞれの職務・職責の違いを重視した俸給表への転換を図るよう、職務の級間の俸給水準の重なりを縮減するとともに、職務の級と役職段階との関係を再整理し、職務の級の統合、新設を行う。
給与カーブのフラット化を行うべき理由については、次のように述べている。
イ 年功的な俸給構造の見直し
現行の俸給表は、上位の職務の級に昇格しないとしても俸給が一定の水準まで到達するよう配慮した号俸設定が行われているため、上下の職務の級の間における水準の重なりが極めて大きな構造となっている。加えて、最高号俸に達した職員も良好な勤務成績を挙げれば特別に最高号俸を超えた俸給月額に決定し得る仕組み(いわゆる「枠外昇給制度」)となっており、年功的な給与上昇を許容するものとなっている。
俸給は、生活給の側面も有しているが、基本的には職務・職責に応じたものとして支給されるべきものである(職務給の原則)。そのため、職務の級間の水準の重なりの縮小、最高到達水準の引下げによる給与カーブのフラット化、いわゆる枠外昇給制度の廃止などの措置を講ずる必要がある。
職務給の原則を貫けば、究極はシングルレートになるが、レンジレートであっても「職務の級間の水準の重なりはできる限り小さくすべきである」というのである。
それでは、実際の俸給表ではどのように縮小されたのか、次回以降、考察していきたい。