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31.博士課程修了 ブログトップ

248. 博士課程修了(その8) [31.博士課程修了]

 ところで、3級の最高号俸の現行位置は、8等級制の時代に遡る。小中学校教員に適用される教(三)の場合は、人材確保法による第一次特別改善で2号俸が増設され、現行57歳の位置となったのである。この辺りの事情について、佐藤著『教職員の給与』(学陽書房)は次のように伝えている。

 「次に角度をかえて、この改正新べースによる場合、教諭や校長の最高号俸がどれだけ改善され、それと行政職との関係はどうかという点をみておこう。
 まず小・中学校の場合、教諭の最高号俸は二号俸追加され、一七三、五〇〇円となった。これは、行政職でいえば三等級(中央各省の総括課長補佐、地方部局の課長級)の最高号俸(一七一、九〇〇円)に相当するものである。
 また、校長の場合についてみても、その最高号俸は二号俸追加され、一九六、一〇〇円となった。これも行政職二等級(本省課長、地方部局の部長級)の最高号俸(一九五、二〇〇円)に相当するもの。さらに高校教諭の場合は一八二、七〇〇円、校長の場合はニ一三、二〇〇円に改定されることとなり、これも行政職員の相当ポストの給与に比べてそん色のないものとなったと説明されている。
 要するに、この改正は、小・中学校を中心にして、中堅層以上の教員、校長の処遇を一段と引き上げたもので教職を魅力あるものとするねらいからすれば、当然の措置であった。」

 教(二)の最高号俸の位置は、人材確保法による改善の前に既に57歳の位置に到達していた。『改正給与制度詳説』(学陽書房)によれば、8等級制時代の俸給表は、「主として職員の在職実態に対応する形で号俸幅が設定されてきた」ものらしい。当時の教(二)適用教員の在職実態を示す資料は持ち合わせていないので正確な事情は分からないが、高学歴是正の経緯を踏まえると、おそらくは、修学年数の長い旧制大学卒業者又はこれに準じる者が相当数存在したのではないかと思われる。そのため、人材確保法による特別改善が行われる前は、教(二)の最高号俸は、教(三)に対して2号俸分高い位置になっていたのではないだろうか。
 いずれにしても、昭和60年の11級制への移行に際しては、旧1等級=3級の最高号俸の位置は変更されなかったことは確かである。行(一)の10級(本省課長級)最高号俸の位置が大卒ベースで57歳、11級(本省部長級)最高号俸の位置が大卒ベースで60歳であり、いわゆるキャリアは指定職俸給表に突き抜けていくことを勘案すると、8等級制時代の最高号俸の位置を維持することで、公務部内の均衡が図られることになったのであろうと思われる。

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247. 博士課程修了(その7) [31.博士課程修了]

 昭和60年の11級制への移行に当たって、修士課程以上の学歴を1年につき1.5号俸に評価して初任給を定めている取扱いについての議論があったようである。
 人事院給与法令研究会人事院給与局長鹿児島重治編集『改正冶与制度詳説』(昭和61年、学陽書房)から、関係部分を抜粋しておく。

 「(2) 特定の俸給表(教育職俸給表(一)~(四)、研究職俸給表(選考採用に係る場合)、医療職俸給表(一))においては、職務遂行に当たり高度の専門的知識が必要とされ、しかもその知識が大学院の修士課程等を修了することにより初めて修得できるものがあることから、「博士」、「修士」の修学期間については、1年につき1.5号俸に評価され初任給が定められている。
 このような取扱いについては、近年における高学歴化の観点から見直す必要があるとし検討されてきたが、近年の民間企業における大学卒以上の学歴相互間の給与の評価の状況、公務部内における採用試験相互間の学歴評(1.25倍)との均衡、さらに修学期間の評価を下げることとなると人材確保の面から支障があること等を考慮すると、従来からの取扱いを変更することは適当でないと判断するに至り、今後とも検討課題としつつ、1.5倍評価は維持することとされた。」

 この11級制における号俸構成として、「各等級の最高号俸の位置については、現行制度において昇給し得るこことされている年齢である57歳に見合う号俸まで設定することを基本として措置された。具体的には在職者の実態等を考慮して原則として3号俸を限度に号俸が増設された。」のである。
 その際の切替表を見ると、教(二)の3級は2号俸を1号俸、最高号俸の25号俸を24号俸とし、4級は平行切替で最高号俸は15号俸のままとし、教(三)の3級は2号俸を1号俸、最高号俸の29号俸を28号俸とし、4級は平行切替で最高号俸は15号俸である。
 切替前後の最高号俸の位置を確認すると、これら3級及び4級においては号俸の増設は行われておらず、切替前後で変化はない。教(二)・教(三)ともその位置は、大学卒を基準にすると59歳であり、博士課程修了を基準にすると57歳となっている。

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246. 博士課程修了(その6) [31.博士課程修了]

 博士課程修了者を優遇する初任給基準が設けられたのは、以前にも記したように、昭和36年10月1日の人事院細則9-8-2改正によってである。
 この頃の国会会議録を見ていくと、科学技術振興の観点から、研究職の給与の改善や医師の給与、民間よりも低い大学教授の給与などについて、繰り返し議論されている。その中から、当時の人事院給与局長滝本忠男が答弁している箇所を一つだけ紹介しておく。

 <参議院内閣委員会 昭和35年9月1日>
○説明員(滝本忠男君) もう何回も繰り返して申し上げ、はなはだ恐縮でございますが、二等級のこの対応等級といえば教育一と行一と研究職、医療ですが、これは御承知の通りでございます。教育職につきましては、これは人事院は特別な配慮をいたしております。人事院の判断によりまして、特別な配慮をいたしております。しかし、研究、医療については一緒にした、すなわち現在比較いたしますべきもので、あり得るものは全部包含して比較したということであります。それから六、七、八のところは、やはりこれは俸給表で全体的に比較し得るような大体対応等級と考えられているようなのは合わせて比較したということでございまして、別に意図的であるというふうには考えない。特に行一の中に技官がおるということは鶴園先生十分御存じの通りであります。今後科学技術を振興していく上に伴いまして、やはりこういう方々が研究職と同様に尊重されなければならぬと思うのであります。そういう観点からいたしますれば、現に研究とそれから教育の間、大学の間、それから研究と行一の間というのは、これは絶えず交流があるということは十分御承知の通りであります。そういうことを考えますると、やはりこれはわれわれがやっているのが決して不適当ではない、むしろ妥当している。やはり科学技術行政という点は、研究のみではなく行政部内における技官という問題も合わせ考えなければなりません。こういう点から人事院はいたしている次第でございます。その辺で御了承願いたいと思います。

 国会での議論は、上級の公務員に適用される行(一)の職務の級の改定率が下級の公務員に適用される職務の級の改定率に比べて格段に大きく、「幹部職員を不当に厚遇しているのではないか」といった観点からの指摘を巡ってなされている。しかし、いきさつは別にして、やはり、当時の社会経済情勢や民間賃金の動向を踏まえて、研究職、医療職、教育職の初任給基準の改善を行ったのであろうことは、まず、間違いないだろう。

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245. 博士課程修了(その5) [31.博士課程修了]

 この間、「初任給基準における博士課程修了」をテーマに考察してきたが、ここで、当時の国会において何か議論されていないか、会議録をみておきたい。
まず、少し遡って、昭和31年に国会に提出された高学歴是正を内容とする給与法改正案の提案理由を引用しておく。

 <衆議院内閣委員会 昭和31年04月12日>
○赤城宗徳君 ただいま議題になりました一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の提案理由について、御説明いたします。
 現在、教育職員の給与制度は、学校の種類、職種、学歴、経験年数の四要素をもって構成されております。そのうち、特に経験年数の要素が重要視されておりますことは御承知の通りでありますが、学歴等他の要素は、俸給決定の上に、大きな比重をなしていないのであります。しかしながら、教育職員の特殊性にかんがみるとき、学歴の要素は、相当高く評価すべきものと考えます。文教行政の一端を示す教育職員免許制度を見ても、この点が高く評価されており、その学歴の相違がそのまま免許状の相違に結びつけられ、教育職員の職務と密接な関係が保たれているのであります。しかるにこの学歴の要素が、給与制度に明確に反映せしめられておらぬため、同一年令の者を比較した場合、高学歴者は低学歴者に比して、必ずしも高い給与を受けているとは限らないという均衡を伴わない現状に遜るのであります。この点、文教政策と人事管理の不一致に、矛盾を感ぜざるを得ないのであります。
 かかる状態のままでは、高学歴職員の士気に影響を及ぼし、教育を沈滞せしめ、学校教育の遂行に支障を来たすおそれもありますので、これら高学歴者の俸給額の調整をはかるべく、本改正法条を提出いたした次第であります。
 改正点の要旨を申し上げますと、第一点は、高等学校教育職員級別俸給表及び中学校、小学校等教育職員級別俸給表の適用を受ける教育職員中、旧制大学もしくは新制大学を卒業した者、旧中学校高等女学校教員免許状もしくは旧高等学校教員免許状を有する者、または人事院がこれらの者と同等以上の資格を有すると認める者等、いわゆる学歴、資格の高い者につきましては、予算の範囲内で、人事院の定めるところにより、二号俸をこえない範囲内におきまして、俸給月額を調整することができるものといたしたことであります。
 第二点といたしましては、人事院は、教育職員の初任給基準につきましても、右の趣旨を考慮して、適切な措置を講じなければならないものといたしたことであります。
 所要経費といたしましては、国立学校分納一千五百万円、公立学校国庫負担分約三億六千五百万円、合計約三億八千が円であります。
 何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。

 参議院内閣委員会(昭和31年04月19日)にも同じ内容の提案理由が記録されている。

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243. 博士課程修了(その4) [31.博士課程修了]

 博士課程修了者を優遇する初任給基準が設けられた経緯を明確に記した資料がなかなか見つけられないでいる。
 そこで、当時の人事院勧告を確認してみようと思う。博士課程修了の初任給基準が設けられたのは昭和36年10月なので、まず、その1年前の昭和35年の人事院勧告に関連する記述がないかを確認してみた。

「報 告
  四 官民給与の比較
 (略)
 この官民給与の比較において、特に医師および研究職について著しい給与格差が認められることを指摘するとともに、世論もあり、官民給与の較差を離れて、大学教授の給与改善の必要性のあることを指摘しなければならない。
 (略)
 以上に報告した諸事情を総合勘案して、民間給与との均衡、科学技術振興等の要請に基づき、この際一般職の国家公務員の給与について全面的且つ合理的な改善を必要とするものと認める。」
「勧 告
 (略)
1 俸給表  各俸給表をそれぞれ別紙のとおり改定し、且つ、各俸給表に定められた昇給期間をすべて12月とすること。
 (略)
3 初任給調整手当  科学技術振興の趣旨に沿い、初任給調整手当を新設すること。」

次に、昭和36年の人事院勧告を確認して見る。

「報 告
  二 官民給与の比較
(略)
 また、民間における初任給は、最近において特に上昇の傾向にあり、前述の民間給与調査によると、別表第二に示すとおり、一部のものを除き、いずれも、昨年4月に比べて本年4月は10%を上回る上昇を示している。
 (略)
 以上に報告した諸事情を総合勘案し、かつ、新規学卒者の採用の困難、科学技術振興の必要性等を考慮の上、この際初任給与の改善、中位等級以下の職員の給与の引上げおよび科学技術振興の趣旨に沿う給与の改善を中心とした俸給表の改定を行なうとともに、初任給調整手当について支給額の増加および支給対象の拡充を図る必要があると認められる。」

 昭和35年といえば、池田内閣の下で国民所得倍増計画が閣議決定された年であり、その後、日本経済は急激に成長していくことになる。そのような時代において、おそらくは、特に科学技術分野における公務への人材誘致が求められ、そのようなねらいをもって、医療、研究、教育の給与水準の引き上げが行われたのだろうと思われる。

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242. 博士課程修了(その3) [31.博士課程修了]

 行政経営者協会から昭和37年7月に刊行された『給与制度の変遷から見た俸給決定の手引』という冊子がある。巻頭には、文部省大臣官房人事課長安達健二が、本書推薦の序文を寄せている。この冊子は、終戦から十余年間における目まぐるしい変遷をしてきた公務員給与制度に関して、実務上必要となる資料を収録し、若干の解説をしたものである。
 この冊子の「昭和36年切替えを中心として」と題する部分から、「初任給基準の博士課程修了」の理解に役立ちそうな箇所をいくつか拾ってみたい。

 「人事院規則、細則等にあつては、上述の改正に伴う修正は勿論として、大学卒をこえる学歴を有する者の初任給の引き上げが行われた。これは研究職俸給表における等級の組み替えとからんで、昭和36年10月1日における給与の動きを一層複雑にした。」

 昭和36年10月1日における人事院細則9-8-2改正部分(抜粋)を見ると、別表第25~28にわたって初任給基準表が収録されている。詳細は掲載できないが、別表のそれぞれは、教(一)、教(二)、教(三)及び研究職であり、大学卒との修学年数差5年に対して7号俸の差とする博士課程修了の基準などが新たに設けられたことが分かる。
 更に、人事院細則9-8-2の改正による俸給月額の調整についての解説で、次のように調整の性格を述べている。

 「昭和36年10月1日における初任給の改正は、大学卒(16年)の学歴を基準として、それ以上の修学年数を有する学歴所有者の初任給を、学歴差1年が給与上1.5号俸の較差を生ずるように引き上げたものである。したがつて、医大卒ならびに修士課程修了者にあつては1号俸、博士課程修了者にあつては2号俸、医大卒後の博士課程修了者にあつては3号俸の初任給増額が行われることとなつた。」

 現在、博士課程修了の初任給基準を有する俸給表を確認すると、旧教(二)(三)以外では、教(一)、教(二)、研究及び医(一)となっている。こうして眺めてみると、「初任給基準における博士課程修了」については、教育者、研究者、医師に共通する高学歴の者の待遇を改善するために、昭和36年10月1日に設けられたものであると推認できそうである。

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241. 博士課程修了(その2) [31.博士課程修了]

 次に、瀧本忠男ほか『新俸給制度詳解』(学陽書房、昭和32年)に関係する記述がないか探してみる。

 「一○ 教育職俸給表(二)初任給基準表
 1 初任給額の構成
 本表の初任給の額は、大学の助手の場合と同様、行政職俸給表(一)初任給基準表より一号俸高くし、また、修士課程修了者はさらに一号俸高くなっている。この修士課程修了者については、高等学校の教員免許状が、修士課程を修了することによつて大学卒に授与される免許状よりも上の教諭一級免許状が授与されることにより、短大卒と大学卒との間の修学年数二年差を昇給期間として三年差、すなわち、三号俸差として初任給を定めた考え方と同様、修士課程修了と大学卒との間の修学年数二年差を昇給期間として三年差、すなわち、三号俸差として初任給に格差を設けたものであり、教員の免許状制度による特殊性を認めたものである。これはまた、さきに行われた高学歴者の俸給是正の趣旨に沿った措置である。」
 「一一 教育職俸給表(三)初任給基準表
…ただ、適用上教育職俸給表(二)初任給基準表と若干相違する点がある。すなわち、それは大学院の修士課程修了者の初任給について表上別段の定めがないことであるが、これは高等学校の教諭の場合と異なり、大学卒をもって教諭一級普通免許状が授与されることになるが、さらに修士課程を修了している場合であつても、それより上級の免許状がないのであるから、当然一級免許状以上の資格はない。従って、大学卒との間に免許状の資格と差がないので、修士課程修了者の初任給基準について特例を掲げなかつたものである。しかしながら、実質的には、記述のとおり、修学年数調整表の備考第六項によつて、高等学校教諭の修士課程修了者同様、大学卒業者より三号俸上位の号俸にすることが可能となっている。」

 当時の人事院給与局関係者の著作にこのような記述があるのだから、教員の初任給についても教育職員免許制度の体系が考慮されたことは間違いない。
 しかし、ここでも博士課程は出てこない。

 そこで、そもそも博士課程修了の初任給基準が設けられたのはいつなのだろうか。瀧本忠男ほか『新俸給制度詳解』(学陽書房)には記載がないのだから、昭和32年以降であることは確かである。
 確認して見ると、旧教(二)(三)の初任給基準表に博士課程修了の初任給基準が設けられたのは、昭和36年10月1日の改正によるようである。このときの改正で、大学卒との修学年数差5年に対して7号俸の差が設けられ、今日に至っている。
 <旧教(二)初任給基準>
  学歴免許      32.4.1      36.10.1
  博士課程修了 (2等級7号俸) 2等級8号俸
  修士課程修了  2等級4号俸  2等級4号俸
  大学卒      2等級1号俸  2等級1号俸
  短大卒      3等級4号俸  3等級4号俸
 <旧教(三)初任給基準>
  学歴免許      32.4.1      36.10.1
  博士課程修了 (2等級9号俸) 2等級11号俸
  修士課程修了 (2等級6号俸) 2等級7号俸
  大学卒      2等級4号俸  2等級4号俸
  短大卒      2等級1号俸  2等級1号俸
  高校卒      3等級1号俸  3等級1号俸
   ( )は、修学年数調整による調整を加えた初任給基準

 このとき何が行われたのかについては、佐藤三樹太郎『教職員の給与』(学陽書房)は沈黙している。

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240. 博士課程修了(その1) [31.博士課程修了]

 今回のテーマは、「初任給基準における博士課程修了」を取り上げる。
 以前、このノートで、3級の給料表が2級の最高号俸の位置よりも、2年分の号俸が飛び出した形となっていることを巡って考察した際、初任給基準の博士課程修了と大学卒の差が2号6月分あることに着目して、3級と4級は2年前倒しすれば、俸給制度として整合的に理解できるのではないかという仮説を提示した。
 しかし、なぜ、博士課程修了の初任給基準が定められているのかについては考察しておらず、疑問が残されたままである。修士課程修了の初任給基準があるのは、教育職員免許制度との関係があることは容易に想像できるのだが、博士課程修了の基準があるのは、直ちには理解できないのである。

 教員の給与体系は、教育職員免許制度と密接に関係している。まず、その点について、再確認しておこう。
例によって、佐藤三樹太郎『教職員の給与』(学陽書房)から教育職員免許制度との関連を指摘する代表的な記述を抜粋してみる。

 「まず、高等学校以下の学校の教職員には、教育職員免許法および同法施行令の適用があり、教職員の資格体系を形成しているので、学歴免許等の資格区分を設ける場合には、これら免許制度との関連を尊重する必要があり、前述の等級別資格基準表における備考のとおり、それぞれ大学卒、短大卒、高校卒に相当する教職員の例外資格を規定し、大学卒を基準学歴として授与される高等学校教諭二級普通免許状、養護学校教諭一級免許状等に、免許法または同法施行令の規定によって切り替えられる旧免許または旧学歴を掲げ、これを大学卒として区分することを規定したほか、「短大卒」、「高校卒」に区分されるものについても、それぞれ該当する学歴免許資格を規定している。」

 これは学歴免許資格区分表に関する記述であることから、博士課程修了は出てこない。初任給に関する部分を見ても、特段の言及はない。
 次に思い浮かぶのは、昭和31年3月末に高等学校以下の教職員に対して実施された、高学歴是正である。同書から学歴是正の趣旨に関する部分を抜粋する。

 「この高学歴是正というのは、学歴における修学年数一年の差を教員経歴一年半の差とみて、これまでの一対一を一対一・五に改めることにより、短大卒を基準とした場合、新大卒については一号俸、旧大卒については二号俸高くするというものであった。
 このため、新卒者の給与についても、新たに初任給を引き上げることとされたが、これは次に述べる新給与制度において考慮されることとなった。
 これによって当時、高等学校職員、中・小学校職員を通じて、旧制専門学校、旧制大学、新制大学の卒業者のほぼ全員にわたって一号俸ないし二号俸の昇給が行われることとなった。
この措置は単に高等学校以下の教職員にとどまらず、大学の教職員をはじめ全公務員についても及ぼされるべきはずのものであったが、財政上の都合その他の理由により、結局高等学校以下の教職員だけについて行われたものであり、このことにより高等学校以下の教職員の給与がさらに有利になったことは事実である。」

 具体的な措置内容は、別のページに掲載されている。紙幅の関係で詳細は省略するが、教育職員免許状との関係で次のように述べている。

 「給与調整の対象となる学歴免許等の資格は、同指令に詳細に列記されているが、これは旧制大学卒業者またはこれに準ずる資格を有する者(指令一号該当)と、新制大学卒業者またはこれに準ずる資格を有する者(指令二号該当)の二種類に分類された。
 また、この二分類のグループは、免許状の関係からいえば、高等学校教諭一級普通免許状を授与しうる対象となる学歴免許等の資格を一号該当とし、高等学校教諭二級普通免許状を授与しうる対象となる学歴免許等の資格を二号該当としたという意味もある。」

 この一号該当の中に、「新制の大学院の修士課程または博士課程の修了者」と「博士号を有する者」が含まれている。とはいえ、博士課程修了を修士課程修了よりも有利とする取扱いにしたものではない。

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