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328.国家公務員給与懇話会の最終報告(その3) [40.給与懇話会]

 次に、「国家公務員の給与の在り方に関する懇話会」最終報告書における各論の2番目を取り上げる。

(2) 世代間の給与配分の在り方
【基本的な認識】
○ 民間においては、役職定年制が導入されている企業もある等、企業によって人事管理は様々であるが、全体で見れば50 歳台後半層の給与水準は抑制されており、公務においても、世代間の給与配分の見直しを進めていく必要がある。(10頁)

 これは、人事院がこれまでの人事院給与報告で示してきた考え方を追認するものでしかない。そして、この項目の「主な意見」として、「中長期的には、公的年金支給開始年齢の引上げに伴う雇用と年金の接続への対応も踏まえ、給与カーブ全体の在り方を見直していく必要がある。」という意見を掲載している。
50歳台後半層の給与水準問題への対処としては、既に、経過措置額(いわゆる現給保障)の廃止や昇給・昇格制度の見直しを実施したのだから、昨年の人事院給与報告で述べるように、給与カーブの見直し、すなわち更なるフラット化を進めるということだろう。

 ところで、以前、大阪府における校長・教頭給与の引上げを取り上げたが、そこでは、「職務給の原則の推進」ばかりが強調されており、この懇話会が示したような観点、すなわち、「公務の人事管理の下における職員のライフステージに対応し、職員が安心して職務に専念できるようにするとの視点が重要である。」との観点は考慮されていなかった。
 若くして校長に抜擢するケースが年々増えてくると思われるが、更に本給の引上げようとしても、現状では昇格させるべき職務の級は存在しない。彼らのモチベーションをどう維持していくのだろうか。


 各論の3番目は次のようになっている。

(3) 地域間の給与配分の在り方
【基本的な認識】
○ 民間の地場賃金は、地域によって相当の水準差があるが、国家公務員については、転勤も多く、全国において同種の仕事をしていることから、地域による給与差には自ずと限界がある。
 なお、人事管理上、転勤を円滑に行うためには、地域による給与差を踏まえ、転勤者に対する一定の給与上の配慮を行うことが必要である。

 この点に関する昨年の人事院給与報告を踏まえると、「俸給表の水準を更に引き下げて地域の地場賃金との較差を今よりも小さくした上で、人事管理上、転勤者に対する給与上の配慮をこれまで以上に厚くする。」と読めるのではないか。
 俸給表の水準の在り方を見直せば、地域手当の支給される範囲やその水準の在り方に影響することになろう。そして、転勤者への配慮という意味では、地域手当の異動保障の在り方を見直し、10割保障の期間を現行より長期にすることなどについて検討されるのではないだろうか。

 今年の春闘情勢を踏まえて「7年ぶりに公務員のベースアップ成るか」という報道もあるが、平均すればそれほどのポイントにはならないかもしれない。その中で、地域による水準差を踏まえた給料表の改定を実施すると、どういう姿になるのだろうか。
この点についても、今年の人事院報告・勧告に注目したい。

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327.国家公務員給与懇話会の最終報告(その2) [40.給与懇話会]

 今回は、「国家公務員の給与の在り方に関する懇話会」最終報告書における各論の1番目を取り上げる。

(1) 能力・実績の給与への反映の在り方
【基本的な認識】
○ 仕事の重要度や能力・実績に応じたメリハリのある給与とすることは重要であり、人事評価を厳正に行い、その結果を給与等の処遇に適切に反映していく必要がある。
○ 国家公務員の給与については、その能力・実績に応じてインセンティブを付与する仕組みとなっているが、能力・実績を過度に給与へ反映させることは、組織にマイナスの影響を及ぼす可能性があることにも留意が必要である。(9頁)

 要するに、「人事評価を厳正に実施し、その結果を給与等の処遇に反映していく必要があるが、一方、過度な給与反映は組織にマイナスの影響がある。」との認識を示している。
 ここで思い出すのは、昨年8月の人事院給与報告の次の一節である。

 また、現行の昇給制度においては、例えば、特に優秀な者の昇給の効果が標準者の2倍以上と大きく、結果としてチームで職務を遂行する環境に必ずしもなじまない面もあるのではないかと考えられる。本院としては、長期で見た昇給効果や俸給表の号俸間の給与水準の差などとの関係について検証を行いながら、昇給の効果の在り方等について検討を行うこととしたい。(19頁)

 過度に成果主義的な給与反映になりかねないので、事実上、給与構造改革時の制度設計を修正しようとしているかのような表現となっている。懇談会の最終報告書をよく読んでみると、「3 国家公務員給与の基本的考え方に関する意見」の次の箇所に示された認識に注目すべきではないかと思う。

○ 国家公務員の給与については、新規学卒者を採用して育成・選抜しながら定年まで公務部内で勤務してもらうことを基本とする長期的視点に立った人事管理の下での職員のライフステージに対応し、職員が安心して職務に専念できるようにするとの視点が重要である。(7頁)

 ここに示された認識は、極めて日本的な採用慣行・人事慣行であり、欠員の生じたポジションについて内外から広く公募して公開の競争試験を実施して適材を確保するという欧米的な考え方とは異なるものである。
 そうすると、定年までの長期的視点に立った人事管理という思想の下に給与制度を設計しようとするのならば、成果主義的な考え方は安易に持ち込めないはずである。公務員法上は「職務給の原則」を採用しており、それを踏まえる必要はあろうが、高級官僚などの幹部公務員は別として、少なくとも課長クラスまでの給与については、生計費の増嵩への対応や習熟へのインセンティブといった能力給的な配慮は必要であろう。人事院の考えていることがそのような理解でよいのならば、50年ぶりの改革として鳴り物入りで実施した給与制度改革について、その一部を改革前に修正することになるのではないだろうか。
 もちろん、給料表の構造を改革前に戻すのではない。運用の在り方について慎重に検討し、過度な給与反映とならないようにしようということだろう。
 人事院は今年の職種別民間給与実態調査において、査定昇給の状況も調査するようである。今後の人事院の検討結果に注目したい。

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326.国家公務員給与懇話会の最終報告(その1) [40.給与懇話会]

 去る3月25日、「国家公務員の給与の在り方に関する懇話会」(座長:清家篤慶應義塾長)から最終報告書が人事院事務総長に提出された。
 この懇話会は、人事院が「国家公務員の給与の在り方を中心に、基本に立ち返って検討を行う必要があることから、各界の有識者から御意見をお伺いする場として」昨年4月から開催しており、その「意見の中間的な整理」については、昨年の人事院給与報告でも引用されていた。
 今回の最終報告書については、マスコミも報道で大きく取り上げていなかったように思う。おそらく、目新しい要素がなかったためではないかと思われる。

 公務員の給与を巡っては、とかく厳しい話ばかりなのだが、この懇話会の意見は、例えば、「国家公務員の給与水準は、国家公務員が高い使命感を持って職務に専念することができるよう、その役割や仕事にふさわしい適正な処遇を行うという観点から考えるべき」など、国家公務員給与の基本的な在り方を考える上では、プラスイメージにつながる積極的な観点が提起されている。その観点は、報告書の副題~我が国を支える人材を確保し、活躍してもらうために~にも端的に示されている。

 国家公務員の給与に関わる基本的な考え方という総論については、異論は少ないだろう。問題は、今年の人事院報告に引用され、具体の勧告に反映されるであろう各論である。
 最終報告書の概要版では、各論の主な意見として、論点を3つにまとめて挙げている。人事院のホームページから、該当部分を転載しておく。

4 国家公務員の給与制度の在り方に関する意見
○ 仕事の重要度や能力・実績に応じたメリハリのある給与とすることは重要であり、人事評価を厳正に行い、その結果を給与等の処遇に適切に反映していく必要。
 他方、能力・実績を過度に給与へ反映させることは、組織にマイナスの影響を及ぼす可能性があることにも留意が必要。
○ 民間においては、役職定年制が導入されている企業もある等、企業によって人事管理は様々であるが、全体で見れば50歳台後半層の給与水準は抑制されており、公務においても、世代間の給与配分の見直しを進めていく必要。
○ 民間の地場賃金は、地域によって相当の水準差があるが、国家公務員については、転勤も多く、全国において同種の仕事をしていることから、地域による給与差には自ずと限界がある。
 人事管理上、転勤を円滑に行うためには、地域による給与差を踏まえ、転勤者に対する一定の給与上の配慮を行うことが必要。

 ところで、先日、7年ぶりの公務員給与引上げ勧告の可能性を伝える報道があった。

時事ドットコム
国家公務員、ベア成るか=来月から民間給与調査-人事院
 人事院は15日、国家公務員の給与改定勧告の基礎資料となる民間給与実態調査を5月1日から始めると発表した。今年の春闘で、主要企業のベースアップ(ベア)回答が相次いでいることから、公務員も7年ぶりの引き上げ勧告となる可能性が出ている。
 調査は、全国の従業員50人以上の企業約1万2400社の4月分の社員給与などを調べる。今回は、人事評価結果の昇給への反映度合いや、定年退職後に再雇用された社員の給与水準についても、詳細に調査する方針。
 連合の調査に2年連続で回答した1754労組全体の今春闘での平均賃上げ率(ベアと定期昇給含む)は2.25%で、昨年より0.44ポイントアップ。賃上げ月額は6572円で、昨年を1324円上回った。
(2014/04/15-18:28)

 今年こそは、久しぶりのベースアップを期待したい。
 次回以降、最終報告書の論点ごとにもう少し詳しく見ておきたい。

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