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45.総務省検討会報告 ブログトップ

368. 総務省検討会報告(その3) [45.総務省検討会報告]

 前回に引き続き、総務省検討会の報告書を見る。
 こんな記述もある。(13~14頁)

(3)地方公務員に適用される給料表
(略)
 一方で、大都市などで導入されている独自給料表については、不適正な給与水準や給与制度の運用の温床とならないよう、級構成や構造の適正性、妥当性の評価方法を検討することが必要である。

 東京都をはじめいくつかの団体で独自給料表を作成しており、東京都のラスパイレス指数が高いこと(平成26年調査で102.5、全国第3位。ちなみに第1位は、愛知県の102.9)を受けて警戒感を示したものとなっている。しかし、「評価方法を検討することが必要である。」と述べているが、これは「現在、総務省は各団体の給料表の診断するノウハウを持っていません。」と表明しているようなものだ。
 平成18年の報告書でも、「個々の地方公共団体の規模、組織等も考慮されるべきもの」と述べているし、民間企業であれば、企業ごとに給与制度が異なるのは当たり前だろう。
 これまでこの学習ノートで考察してきたところによれは、国の行政職俸給表(一)は、国の行政組織を大きく4つの規模に分類し、それらの組織における標準的な職制やキャリアパスを想定した上で職務の級や給与水準が構想されてきたものであり、それが逆にワタリを生み出す原因につながる危険を内包するものなのであった。それに引き替え、それぞれの団体において、給与水準をどう評価するかは別にしても、少なくとも職務給の原則を一層徹底する方向での独自給料表を指向しているのならば、総務省から何を言われることがあるのか、と思う。独自給料表の構造や水準については、総人件費の現状ととともに、給与情報の公表を充実・徹底することで、住民によるガバナンスの問題として解決されるのが、地方自治の本旨にかなうものではないかと思う。

 次に、「国と地方の給与比較」の箇所で、地域補正後ラスパイレス指数の公表の取組に関する地方からの指摘に関して次のように述べている。(14~15頁)

 これに関して、今回の給与制度の総合的見直しにより、地域手当の支給割合の拡大や国における広域異動手当の拡充等がなされ、国家公務員給与においては給与全体に占める手当の割合が上昇(本給の割合は相対的に低下)することを踏まえると、国と地方の給与比較の方法について諸手当を含めた比較方法について改めて考える必要があるとの指摘がある。
 諸手当を含めてラスパイレス指数を算出し給与比較を行う場合、比較対象とする手当の範囲、地域手当支給割合の高い地域の取扱いなどを併せて検討していく必要があり、例えば手当の範囲については、公務員給与と民間給与との較差比較において対象とされる項目(いわゆる「較差内給与」)を念頭に検討することも一つの方法として考えられる。他方、地域手当を含めて比較する場合、その比較数値は民間給与の高い地域ほど高くなることとなり、従来の指数とは数値の持つ意味合いが異なることともなる。これらの点を含め、諸手当を含めた給与比較に当たっては、比較の目的や住民等への分かりやすさの観点などを踏まえ、更に検討していく必要がある。

 「国と地方の給与比較の方法について諸手当を含めた比較方法について改めて考える必要があるとの指摘」に対しては、色々言い訳をしつつも、「更に検討していく必要がある。」と謙虚に述べている。
 例えば、教員給与の見直しに関わって、かつて「一般行政職と教員の給与比較(平成13~17年度における5年間平均ベース)」が公表され、一般行政職、教員とも年齢42歳(大卒)とした場合の平均給与月額は11,323円・2.76%の差があることが示された。これは小泉内閣時代に行革推進法などに基づく教員給与の縮減を進めるため、そのスタート台として教員給与の現状を把握するために行われた比較であり、単純な平均給与月額ではなく、平均年齢、学歴を同一条件にして算出した平均給与月額を比較したものとなっている。ただし、給与水準の比較に適さない通勤手当、住居手当、地域手当等を除くとさたので、地域手当を含めて給与水準としてきた立場からは、そのまま受け入れることはできないかもしれないが、これに類した比較方法を採用することも一つの考え方ではないかと思う。
 なお、一般行政職と教員の給与比較については、平成24年度ベースの数字として、一般行政職、教員とも年齢43歳(大卒)とした場合の平均給与月額は1,217円・0.32%の差にまで縮減された現状が公表されている。

 いずれにしても、民間給与との較差解消を労働基本権制約の代償的機能としての人事委員会勧告の基本とする考え方に立てば、総務省検討会報告の内容に従うことは矛盾を来すことは明らかである。総人件費削減が国家の至上命題である中で、地方の財源保障を担当する総務省としては譲れないものなのかもしれない。しかし、地方自治を守る立場からすれば、民間給与との較差解消を基本とする中で、給与の構造や種目は国家公務員との均衡上、一定参考にするとしても、地方には地方の実情があるのであり、地方創成の取組を強化するための人事施策としての独自性が認められてよいはずである。地方自治法により給与種目が限定列挙され、自由に給与制度の構築ができない現状にあるが、これは地方不信が根っこにあるのであって、これからの時代にはそぐわないのではないか。地方に対する財源保障は財源保障としてあるべき水準を確保すればよいではないか。各団体の給与水準や制度は、民間準拠を基本としながらそれぞれの団体の実情に応じて構築できるようにしつつ、一方で総人件費管理の現状とともに給与情報の公表を徹底する中で、議会などによるチェックを強化することによって冗費を節減する方向を目指すべきではないのか、と思うのだが…。

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367. 総務省検討会報告(その2) [45.総務省検討会報告]

 12月22日に公表された「地方公務員の給与制度の総合的見直しに関する検討会」報告書の内容について、前回に引き続き見ていきたい。

 まず、「見直しの進め方等」の「人事委員会勧告との関係」について取り上げる。少し長いが、該当箇所を抜粋する。(8~9頁)

(1)人事委員会勧告との関係
 人事委員会を設置している団体にあっては、職務給の原則や均衡の原則を踏まえつつ、人事委員会機能を適切に発揮することにより、見直しに取り組むことが求められる。
 すなわち、公民比較方法の検証、公民較差のより一層精確な算定、勧告内容等に対する説明責任の強化等に努めつつ、当該団体の給与制度・運用・水準の状況や、国の制度見直しの内容を踏まえた上で、必要な対応について検討を行い、適切な勧告を行うことが求められる。
 これに関し、既に人事委員会が地域民間給与に準拠した勧告を行っているので給料表等の見直しの理由が見いだせない等の声を聞くことがある。
 しかしながら、国家公務員法の均衡の原則が基本的に民間における賃金を考慮事項とし、民間準拠による給与改定を行うこととしているのとは異なり、地方公務員法の均衡の原則においては、民間給与とともに、国家公務員給与も考慮事項の一つとされていることから、国家公務員給与の見直しがあれば、それを踏まえた当該団体の給与の検討が求められるところである。また、地方公務員給与においては、前述のとおり、平成18年以降の給与構造見直しが一定の成果を上げている一方、地域間の民間給与の差の反映はまだ道半ばとも言え、この点を十分考慮した上で、各人事委員会において適切な勧告を行うことが重要である。さらに、均衡の原則の適用においては、3.でみたとおり、給与水準については地域民間給与をより重視しつつ、民間給与が高い地域であっても当該地域の国家公務員の給与水準を目安とすることとして整理されていることを十分踏まえておく必要があろう(資料5)。

 見てのとおり、今年の人事委員会勧告において、人事院勧告に準じた給与制度の総合的見直しの勧告を行わなかった団体の人事委員会報告での見解を念頭に、これに反論する形の意見を述べている。
 曰く、「地方公務員法の均衡の原則は、国家公務員法の均衡の原則とは異なる」と。
 そして、「国家公務員給与も考慮事項の一つなのだから、また、地域間の民間給与の差の半径はま道半ばとも言えるから」という理由を挙げた上で、「均衡の原則の適用においては、給与水準については地域民間給与をより重視」するのだけれども、「民間給与が高い地域であっても当該地域の国家公務員の給与水準を目安とすることとして整理されていることを十分踏まえておく必要があるんだよ。」と言うのである。
 簡単に言えば、「民間給与か国家公務員給与かいずれか水準の低い方に合わせなさい。」という訳である。本来、人事委員会勧告は、人事院勧告同様に労働基本権制約の代償的機能を果たすべく、憲法上の要請からギリギリのところで認められた制度であるはずである。そういった観点からの積極的な説明もなく、単純に「地方公務員法の均衡の原則には国家公務員給与も考慮事項になっている。」ということのみで、短絡的に報告書の結論を導き出しているように思えてならない。民間均衡論を超える国準拠論についての丁寧な説明もなく、一言「公務としての近似性、財源負担の面から」という文言を理由に挙げるのみであり、論理の組み立てとしては極めて薄っぺらに思える。言い過ぎだろうか。

 次に、「人事委員会勧告の状況等」について述べた箇所を見ていく。(11頁)

 (略)また、勧告を見送った理由として、見直しによって給与水準が変動しこれまでの公民均衡が崩れることや他の団体の対応を踏まえて検討する必要があることを挙げている人事委員会が多いほか、独自給料表の見直しや他の諸課題と今回の見直しとを一体的に検討するため時間を要すること、地域手当の指定基準に対して検討を行う必要があること等を挙げている人事委員会がある。
 これらの理由で給与制度の総合的見直しについて勧告が行われていない団体においては、6.(1)でみたとおり、人事委員会は地方公務員法の均衡の原則に基づき国の給与制度の見直しを考慮する必要があること、スケジュールについても6.(2)のとおり、国・地方を通じて公務員給与の抱える課題への対応であることから、国の見直し時期を念頭に対応を行うことが求められること、また、地域手当にあっては5.(3)のとおり、地方公務員においても国の基準にのっとることが原則と考えられること等に鑑みると、住民・国民の地方公務員給与への理解と納得を得るためにも、国の見直し方針を踏まえ、速やかに必要な対応を取ることが求められると考えられる。

 今回、総合的見直しの勧告を行わなかった団体に対して、「住民・国民の地方公務員給与への理解と納得を得るためにも、国の見直し方針を踏まえ、速やかに必要な対応を取ることが求められる」と言っているのである。つまり、「先ほど報告書で説明したとおり、地方公務員給与制度上、我々の解釈・説明が正しいのだから、サッサと国準拠で実施しろ。」と言外に述べているとしか受け取れない言い方である。総務省とすれば、今回勧告を行わなかった人事委員会のうち、積極的に理由を説明しているものに対しては、メンツを潰されたような感覚を持ったのではないだろうか。この報告書を読むと、そのような総務省の怒りと焦りが見て取れるような…。

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366. 総務省検討会報告(その1) [45.総務省検討会報告]

 12月22日の時事ドットコムに次の記事が掲載された。

給料表の引き下げ勧告を=22人事委に要請-総務省検討会
 地方公務員の給与制度について議論する総務省の有識者検討会は22日、給料表の引き下げなどを柱とした「給与制度の総合的見直し」を勧告していない5府県17政令市の人事委員会に対し、早期に対応するよう求める最終報告をまとめた。住民の理解と納得を得るため、国と同様の取り組みを実施する必要があると指摘した。
 総合的見直しは、各地域、各世代の職員給与を民間に近づけることが目的で、国と地方自治体が来年度から実施する。民間よりも高いと指摘されている55歳以上の職員の給与を大きく引き下げる一方、民間賃金水準が高い都市部などに支給する「地域手当」の支給額を引き上げる。
 検討会は8月の中間報告で、全国の自治体に国と足並みをそろえるよう求めたが、岩手、秋田、群馬、京都、熊本の5府県と、札幌、千葉、新潟を除く17政令市の人事委は、今秋の勧告に見直し内容を盛り込まなかった。高知県も勧告していないが、既に55歳以上の職員給与が低く抑えられており、見直しは必要ないと判断した。(2014/12/22-15:50)

 前回までは、給与の総合的見直しと人件費削減をテーマに考察してきたが、その際の視点を意識しながら、早速、報告書(「地方公務員の給与制度の総合的見直しに関する検討会」報告書、平成26年12月)を見てみよう。
 まず、「地方公務員の給与決定原則(職務給の原則、均衡の原則)」について説明する2頁の記述の気になる部分を抜粋する。平成18年3月の「地方公務員の給与のあり方に関する研究会報告書」において給与決定の考え方の再検討が行われたことを紹介し、次のように述べる。

 そこでは、職務給の原則を徹底していくことの必要性が確認されるとともに、均衡の原則について、従来の国公準拠の考え方を刷新することが示されている。すなわち、給与制度(給料表の構造や手当の種類・内容等)については、公務としての近似性・類似性を重視して均衡の原則が適用されるべきであり、人事院等の専門的な体制によって制度設計されている国家公務員の給与制度を基本とすべきであること、給与水準については、地域の民間給与をより重視して均衡の原則を適用すべきであること、ただ、この場合に、仮に民間給与が高い地域であったとしても、公務としての近似性及び財源負担の面から、それぞれの地域における国家公務員の給与水準をその地域の地方公務員の給与の水準決定の目安と考えるべきであることなどが示されている(資料5)。

 問題は、最後に留意点として示された部分の記述である。平成18年の報告書の該当部分の記述と比較する。(本来は14~15頁の該当部分の記述全体掲載すべきだが、問題と思う箇所のみ掲載する。)

 この場合、仮に民間給与が著しく高い地域であったとしても、公務としての近似性及び財源負担の面から、それぞれの地域における国家公務員の給与水準をその地域の地方公務員の給与の水準決定の目安と考えるべきである。

 注目するのは、「民間給与が著しく高い」との記述から「著しい」が削除され、単に「民間給与が高い」という風に書き換えられていることだ。
 平成18年の報告書では、従来の国庫準拠の考え方の刷新を説明するに当たって、慎重な態度でもって説明しており、給与水準についても民間準拠が原則であると述べている。

 給与水準については、地方分権の進展を踏まえ、地域の労働市場における人材確保の観点や、住民等の納得を得られる給与水準にするという要請がより重視されると考えられることから、地域の民間給与をより重視して均衡の原則を適用すべきである。

 その上で、平成18年報告書は、国家公務員の給与水準を目安と考えるべきであることについて、「民間給与が著しく高い地域であったとしても」というように、まるで東京都を言外に述べるかのごとく補足意見的に述べている。
 一方、今回の報告書は、平成18年報告書を引用しているように見せながらも、国家公務員の給与水準を目安とすることを一層強調したものとなるような意図をもって記述しているとの印象を受ける。つまり、平成18年報告書では、地域の民間給与をより重視した視点に立っているのに対して、今回の報告書は、国家公務員の給与水準を重視すべきと強調したものとなっているのである。総合的見直しを勧告しなかった団体に対して実施を迫るために、無理矢理理論武装をしようとしている、と思えてならない。


 次に、「地方公務員給与における対応の方向性」について述べた箇所で、給料表についての現状認識に触れたところである。(5頁)

 地方公務員給与においては、総体としては平成18年以降の給与構造の見直しにより一定の成果を上げており、一部には人事委員会機能の発揮による地域民間給与の更なる反映を行っている団体もある。しかし、例えば都道府県で見ても、地域間の民間給与の差の反映はまだ道半ばとも言える(資料3)。また、(以下、略)

 「地域間の民間給与の差の反映はまだ道半ばとも言える」として示している資料3を見てみる。
 そこでは、平成16年と平成25年について、①総務省が実施している「地方公務員給与実態調査」に基づく地域手当(調整手当)を加味した上での職員給与の都道府県間の水準差、②人事院・人事委員会が実施している「職種別民間給与実態調査」基づく都道府県の民間給与の水準差及び③いわゆる賃金センサスのデータのうちの公務類似データに基づく都道府県の民間給与の水準差について、それぞれ全国単純平均からの乖離を指数化し、その変化を示している。数値のみ抜粋する。

<47都道府県における給与差>
              平成16年   平成25年
①総務省調査(職員)   21.4ポイント → 28.6ポイント
②人事院・人事委民調   23.3ポイント →  29.6ポイント
③賃金センサス      30.5ポイント →  30.6ポイント

<上位・下位10団体ずつを除いた27団体における給与差>
              平成16年   平成25年
①総務省調査        3.4ポイント →  5.9ポイント
②人事院・人事委調査    8.9ポイント →  7.7ポイント
③賃金センサス      10.3ポイント →  11.6ポイント

 このデータが正しいのかどうか、このような比較が正しいのかどうか、残念ながら確かめるだけの余力がない。ただ、言いたいのは、もし、このような比較が正しいものとして成り立つのであれば、①総務省調査と③賃金センサスに基づくデータさえあればよいことになると言っていることにならないか、ということだ。つまり、人事院・人事委員会の調査は信用できないと言っているように思えてならない。
 もちろん、別の箇所では、例えば「人事院等の専門的な体制によって制度設計されている国家公務員の給与制度(云々)」とか、「専門的な第三者機関である人事院において(云々)」と述べているのであり、人事院の調査を信頼しなければ、報告書の主張が瓦解することになる。したがって、ここでは、ずばり「人事委員会の調査は信用できない」と述べていることになる。そのこともあって、今後に向けた課題として、人事委員会機能のあり方に言及しているのだと思われる。
 (しかし、人事委員会の調査が信用できないのならば、人事院と都道府県人事委員会等が連携・協力して実施している職種別民間給与実態調査そのものを否定していることにはならないのだろうか。そうすると…。)


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