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449. 地公法及び自治法の改正案(その4) [46.臨時・非常勤教員]

 「地公法及び自治法の改正案(その2)」において、今回の地公法改正では臨時的任用厳格化を求めるものとなっており、国と同様に「常勤職員に欠員を生じた場合」に限定し、それ以外の場合を認めない改正内容となっていることとかかわって、次のように述べた。

「ということは、もし、現在、各都道府県で臨時的に任用されている常勤講師の中に「常勤職員に欠員を生じた場合」に該当しない者がいるとするならば、都道府県費負担にならないという事態になりそうな気がする…。」

 このことにかかわって、平成29年3月号の「地方公務員月報」に次のような記述が掲載された。「「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会報告書」に対する各地方公共団体からの意見等について」と題した記事中である。

「さらに、以下の三点について、地方公共団体から寄せられた質問に対し考え方を整理し、示しています。
 (略)
 第三に、「臨時的任用職員」についてです。
 改正法案では、フルタイムに限定するという趣旨から「常時勤務を要する職に欠員を生じた場合」という要件を付加していますが、これにより、臨時的任用が代替職員への対応に限られるということではなく、従来どおり、臨時に発生した業務等に臨時的任用職員を充てることができることを明示しています(ただし、臨時的任用については、パートタイムの任用はできません。)」

 以下に添付されている関係資料の13頁にも同趣旨の記述がある。

「 以上により、今回の改正でパートタイムの任用が制限され、フルタイムのみとなるものの、任用が可能な場合は、これまでどおり上記①から③までの場合(編注=①:緊急の場合、②:臨時の職に関する場合、③:採用候補者名簿や昇任候補者名簿がない場合)に変更はない。従って、臨時に発生した業務に対して臨時的任用職員を充てることは従来どおり認められるものである。」

 なんだ、従来どおりか…。どういう風に読めば「従来どおり」なのか、よく分からないのだが、都道府県負担にならないかもしれない…とか、心配することもないのかもしれない。

 ちなみに、分かる範囲で国家公務員の臨時的任用について確認しておきたい。
 まず、手始めに、人事院規則8-12(職員の任免)から、臨時的任用に係る規定を見ておく。

●人事院規則8-12(職員の任免)
(臨時的任用)
第三十九条 任命権者は、常勤官職に欠員を生じた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、現に職員でない者を臨時的に任用することができる。この場合において、第一号又は第二号に該当するときは、法第六十条第一項前段の人事院の承認があったものとみなす。
一 当該官職に採用、昇任、降任、転任又は配置換の方法により職員を任命するまでの間欠員にしておくことができない緊急の場合
二 当該官職が臨時的任用を行う日から一年に満たない期間内に廃止されることが予想される臨時のものである場合
三 当該官職に係る名簿がない場合又は当該官職に係る名簿において、当該官職を志望すると認められる採用候補者が五人に満たない場合

○運用通知(平21.3.18人企532)
第39条関係
2 この条の第1項第1号に該当する場合には、例えば、事故、災害等により突発的に生じた欠員を緊急に補充する必要がある場合で、採用、昇任、降任、転任、配置換又は併任の方法による補充が直ちには行えない客観的な事情があるときが含まれる。
3 この条の第1項第2号に該当する場合には、例えば、勤務時間法第20条に規定する介護休暇(1日を単位とするものに限る。)又は人事院規則15―14(職員の勤務時間、休日及び休暇)第22条第1項第6号若しくは第7号に規定する特別休暇(編注=産前・産後休暇)の承認を受けた職員の業務を処理することを職務とする官職で当該承認に係る期間を限度として置かれる臨時のものに臨時的任用を行う場合が含まれる。

 では、休職の場合は認められるのだろうか。
 この点について、手元にある逐条国家公務員法では詳しく書かれていなかったので、逐条地方公務員法を見た。臨時的任用に係る解説では特に注目すべき記述は見当たらなかったが、正式任用に係る第17条の解説に参考となる記述があった。(橋本勇「新版逐条地方公務員法第3次改訂版」)

「次に、任命が重複した場合が問題となる。本来、任命は欠員がある場合に行われるものであるから、任命が重複することはあり得ないのであるが、休職中の課長のポストに他の職員を任命する場合、あるいは分限免職が行われ、そのポストに他の職員が任命された後に当該免職の取消しが行われたような場合には重複任用の問題が生じる。前者については、国家公務員の場合は、休職者はその職を保有するものとしながら他の職員をその職に充てることはさしつかえないものとされており(人事院規則一一-四(職員の身分保障)四12)、制度的に重複任用が認められている。後者の場合は、やはり重複任用となるが、すみやかにいずれかの職員を配置換えすることにより、運用上解決すべきものである。」(247~248頁)

 補充の方法としては、正規職員を充てても、臨時的任用職員を充てても差し支えないと思われる。
 人事院規則11-4(職員の身分保障)の規定を確認しておく。

●人事院規則11-4(職員の身分保障)
(休職中の職員等の保有する官職)
第四条 休職中の職員は、休職にされた時占めていた官職又は休職中に異動した官職を保有するものとする。ただし、併任に係る官職については、この限りでない。
2 前項の規定は、当該官職を他の職員をもつて補充することを妨げるものではない。
3 第一項本文及び前項の規定は、専従休職者の保有する官職について準用する。

 休職の場合と同様に「当該官職を他の職員をもつて補充することを妨げるものではない。」とする例を拾ってみたら、国際機関等への派遣の場合(人事院規則18-0(職員の国際機関等への派遣)第5条第2項)、自己啓発等休業の場合(人事院規則25-0(職員の自己啓発等休業)第8条第2項)も同様の規定があった。
 個別の法律に基づく臨時的任用は、育児休業の場合(国家公務員育児休業法第7条第1項、地方公務員育児休業法第6条第1項)及び配偶者同行休業(国家公務員配偶者同行休業法第7条第1項、地方公務員法第26条の6第7項)がある。

 これら以外の場合については確認できなかったのだが、問題は、これら以外の場合について現に臨時的任用を行っている場合、果たして認められるのかどうかということになる。はじめに引用した「地方公務員月報」の記事では、「従来どおり、臨時に発生した業務等に臨時的任用職員を充てることができる」としており、そのとおりであることを今は期待したい。


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447. 地公法及び自治法の改正案(その3) [46.臨時・非常勤教員]

 フルタイムの会計年度任用職員に対しては、給料を支給しなければならず、そして、手当を支給することができることになる。しかも、自治法上は正式任用の常勤の職員と同様、何の限定もないから、地公法上の諸原則、平等取扱い原則をはじめ、情勢適応の原則、均衡の原則、職務給の原則を踏まえて条例で定めることになるはずである。

 この点、モデルになったと思われる国の期間業務職員に対する給与の現状はどうなっているのか。

 遠回りになるが、前提として、期間業務職員の法令上の位置づけを確認しておかなければならないだろう。
 人事院が公表している「期間業務職員制度の概要」を見てみる。

1.定義
 相当の期間任用される職員を就けるべき官職以外の官職である非常勤官職であって、1会計年度内に限って臨時的に置かれるもの(短時間勤務の官職その他人事院が定める官職(注)を除く。)に就けるために任用される職員
 (注)「人事院が定める官職」とは、その官職を占める職員の1週間当たりの勤務時間が、勤務時間法第5条第1項に規定する勤務時間の4分の3を超えない時間であるものである。

 定義は分かったが、このほかに、採用、任期、条件付採用期間、人事異動通知書、施行期日等は記載されているが、給与についての記載がない。
 期間業務職員は、国家公務員法第2条の規定を確認したが、特別職として掲げられていないので、一般職で間違いないだろう。
 期間業務職員の任免については、人事院規則八―一二(職員の任免)の第46条から第49条(非常勤職員の特例)が適用される。「期間業務職員」という用語も使用されている。第4条第13号に先ほど概要から引用した定義規定もある。

 さて、一般職ということなので、いわゆる一般職給与法の規定を確認する。

○一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)
(非常勤職員の給与)
第二十二条 (略)
2 前項に定める職員以外の常勤を要しない職員については、各庁の長は、常勤の職員の給与との権衡を考慮し、予算の範囲内で、給与を支給する。

 各省庁が決める給与を支給することになっている。ここで、人事院のガイドラインがでてくる。このガイドラインは、格差社会の解消が問題となる中、人事院が実施した調査によって、非常勤職員の給与について、同じ職務内容にありながら官署の違いにより差があることが判明したことから、平成20年8月に人事院総裁名で発出された。

○一般職の職員の給与に関する法律第22条第2項の非常勤職員に対する給与について(平成20年8月26日付け給実甲第1064号)
 一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)第22条第2項の非常勤職員に対する給与の支給について、下記のとおり指針を定めたので、これを踏まえて給与の適正な支給に努めてください。
 なお、これに伴い、給実甲第83号(非常勤職員に対する6月及び12月における給与の取扱いについて)は廃止します。

1 基本となる給与を、当該非常勤職員の職務と類似する職務に従事する常勤職員の属する職務の級(当該職務の級が2以上ある場合にあっては、それらのうち最下位の職務の級)の初号俸の俸給月額を基礎として、職務内容、在勤する地域及び職務経験等の要素を考慮して決定し、支給すること。
2 通勤手当に相当する給与を支給すること。
3 相当長期にわたって勤務する非常勤職員に対しては、期末手当に相当する給与を、勤務期間等を考慮の上支給するよう努めること。
4 各庁の長は、非常勤職員の給与に関し、前3項の規定の趣旨に沿った規程を整備すること。

 人事院のガイドラインは分かった。「常勤の職員の給与との権衡を考慮」という給与法に示された考え方を踏まえたものとなっているが、手当については、通勤手当及び期末手当以外の手当についての言及がない。

 平成28年9月、内閣官房内閣人事局が「国家公務員の非常勤職員に関する実態調査について(調査結果)」を公表している。
 この調査の対象となる職員は、平成28年4月1日時点で各府省に在籍する国家公務員の非常勤職員のうち、全ての期間業務職員と期間業務職員のうち、委員顧問参与等職員、任命期間が3か月以内の非常勤職員、勤務日数が少ない非常勤職員及び無休の非常勤職員以外の者である。
 長くなるが、給与関係の調査結果を全文引用しておく。

4 手当等
(1)「基本となる給与を決める際の考慮要素」(複数回答)
基本となる給与を決める際の考慮要素については、「職務内容」54,938人(98%)、「在勤する地域」53,904人(96%)、「職務経験(民間企業等における経験)」42,572人(76%)、「職務経験(非常勤職員としての勤務実績等)」38,314人(68%)、「学歴」18,007人(32%)、「責任の程度」3,958人(7%)、「同種の民間賃金」3,856人(7%)、「転勤の有無」41人(0.1%)、「その他」1,372人(2%)だった。
なお、考慮要素が複数ある場合もあるため、重複計上されている。
(2)「基本となる給与の上限」
基本となる給与に上限があるのは、55,861人(99.7%)だった。
(3)「期末手当に相当する給与の支給」
期末手当に相当する給与の支給については、一週間の勤務時間が常勤職員と同じ38時間45分の期間業務職員11,807人のうち、期末手当に相当する給与を支給する予定の職員は11,497人(97%)、一週間の勤務時間が常勤職員の3/4超38時間45分未満の期間業務職員18,622人のうち、期末手当に相当する給与を支給する予定の職員は2,080人(11%)、期間業務職員以外の非常勤職員25,590人のうち、期末手当に相当する給与を支給する予定の職員は2,200人(9%)だった。
また、期末手当に相当する給与を支給する基準については、勤務期間を基準とするもの6,307人(6月以上1年以内5,577人、6月未満730人)(11%)、特定の日に在職することを基準とするもの7,098人(13%)、その他の基準によるもの2,372人(4%)だった。
(4)「勤勉手当に相当する給与の支給」
勤勉手当に相当する給与の支給については、一週間の勤務時間が常勤職員と同じ38時間45分の期間業務職員11,807人のうち、勤勉手当に相当する給与を支給する予定の職員は9,166人(78%)、一週間の勤務時間が常勤職員の3/4超38時間45分未満の期間業務職員18,622人のうち、勤勉手当に相当する給与を支給する予定の職員は781人(4%)、期間業務職員以外の非常勤職員25,590人のうち、勤勉手当に相当する給与を支給する予定の職員は1,752人(7%)であった。
また、勤勉手当に相当する給与を支給する基準については、勤務期間を基準とするもの3,619人(6月以上1年以内3,443人、6月未満176人)(6%)、特定の日に在職することを基準とするもの6,319人(11%)、その他の基準によるもの1,761人(3%)だった。
(5)「通勤手当に相当する給与の支給」
通勤手当に相当する給与の支給については、当該給与の支給対象となる非常勤職員(※)には全員(54,240人)に支給予定であった。
※ 徒歩2km圏内に住んでいる場合等には、常勤職員と同様に通勤手当に相当する給与の支給対象外となる。
(6)「超過勤務手当に相当する給与の支給」
超過勤務手当に相当する給与の支給については、超過勤務が想定されていない非常勤職員を除き、全員(44,567人)に支給予定であった。
(7)「退職手当の支給」
退職手当の支給については、国家公務員退職手当法(昭和28年法律第182号)が適用される非常勤職員(※)には全員(11,714人)に支給予定であった。
※ 国家公務員退職手当法が適用されるのは、常勤職員について定められている勤務時間以上勤務した日が18日以上ある月が引き続いて6月を超える等の要件を満たした者である。
(8)「給与法改正に伴う対応」
給与を引き上げる旨の「一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)」等の改正が行われた場合、非常勤職員の基本となる給与や期末手当に相当する給与等の対応(想定)については、「公布後の翌月から改定」10,617人(19%)、「次年度4月から改定」6,988人(12%)、「その他の時期に改定」6,447人(12%)、「4月に遡及して改定」2,796人(5%)、「給与の種類により改定する時期は異なる」1,283人(2%)、「改定なし」27,888人(50%)だった。

 期間業務職員は、日々雇用の非常勤職員の任用・勤務形態を見直して設けられた制度であった。予算の制約もあり、一気に正規任用の職員のようにはいかないのだろう。
 この調査結果では、割合の数値にばかり目がいくのだが、例えば、日々雇用であった頃の日給扱いはどうなっているのか、その他の手当の支給状況はどうか、といったことまでは分からない。そこで、各省庁のッホームページから、期間業務職員を募集する要項で給与に関する記述を拾い読みしてみた。ざっとした印象でしかないが、基本給たる給与については、月給ではなく日給(給与日額)であった。しかも、給与に上下の幅がないものが大半であると思われる。手当に至っては、ほとんどが通勤手当と期末手当の支給のみであった。目についたところでは、環境省では、期間業務職員の給与について、「日給8,100円~9,580円(学歴・職歴等を考慮の上決定) その他 賞与、通勤手当、住居手当、扶養手当、超過勤務手当支給(当方規定による)、退職手当(国家公務員退職手当法の規定による)」としている。

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446. 地公法及び自治法の改正案(その2) [46.臨時・非常勤教員]

 今回は、この地公法及び自治法の改正に伴って、関係する法律の規定整備が行われるのだが、教職員に関わる部分を確認しておく。

 まず、市町村立学校職員給与負担法の一部改正。
 第1条中の「及び職務を行うために要する費用の弁償」を「、職務を行うために要する費用の弁償及び期末手当」に改めることとなっている。
 この条は、市(指定都市の除く。)町村立の義務教育諸学校の基幹的な職員に対する給料、手当及び旅費並びにいわゆる定数活用の非常勤講師に対する報酬及び費用弁償は、都道府県の負担とするものなのだが、今回の自治法改正によって、パートタイムの会計年度任用職員に対して期末手当の支給が可能とされたことから、定数活用の非常勤講師に対する期末手当についても、都道府県の負担となるように改正しようというになっている。

 次に給与に関わって出てくるのは、定通振興法と産業教育手当法である。
 これは、定時制通信教育手当及び産業教育手当の支給対象となる職員のうち講師については、現行では「常時勤務の者及び再任用短時間勤務職員」に限っていたのだが、今回これに地公法第22条の2第1項第2号の職員、すなわちフルタイムの会計年度任用職員を追加する案となっている。

 うん? 市町村立学校職員給与負担法の改正内容をもう一度見ておく。給料、手当及び旅費の支給対象である基幹的な職員のうち講師についての定義は、どうなっていたか…。
 「講師(常勤の者及び地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第二十八条の五第一項に規定する短時間勤務の職を占める者に限る。)」のまま改正されず、フルタイムの会計年度任用職員を追加する案とはなっていない。従来、官吏又は吏員に相当する職員の給与等を都道府県の負担とするものであったのだから、その考え方を引き継いだということのようである。
 そうなると、微妙な問題が発生するのかもしれない。今回の地公法改正では、臨時的任用厳格化を求めるものとなっている。すなわち、国と同様に「常勤職員に欠員を生じた場合」という文言を挿入し、それ以外の場合を認めないというのである。
 昨年12月に取りまとめられた総務省の研究会による報告書「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会報告書」の記述では、「臨時的任用職員のうち、パートタイムで任用されている者は、一般職非常勤職員に移行する一方で、フルタイムで任用されている教員などは、必要な要件に該当する場合引き続き臨時的任用職員として任用されることも想定される。」とあるのだが、「必要な要件に該当する場合」との限定が付されていたのであった。
 ということは、もし、現在、各都道府県で臨時的に任用されている常勤講師の中に「常勤職員に欠員を生じた場合」に該当しない者がいるとするならば、都道府県費負担にならないという事態になりそうな気がする…。
 文部科学省は、各都道府県の任用実態を把握しているのだろうか…。

 次に、地教行法の一部改正の内容を見ていくと、県費負担教職員のうち非常勤講師の報酬等について都道府県の条例で定め、その身分取扱いについて都道府県の定めの適用があることを規定した第47条の3が削除されることとなっている。
 これは、現行では非常勤講師は特別職の非常勤であり、地公法が適用されなかったことから地教行法第42条の適用外であったのだが、今回の地公法改正により一般職の非常勤となったことによって地公法が適用されることとなるため、同条が適用されることになるということなのだろう。

○地方教育行政の組織及び運営に関する法律(抜粋)
(県費負担教職員の給与、勤務時間その他の勤務条件)
第四十二条 県費負担教職員の給与、勤務時間その他の勤務条件については、地方公務員法第二十四条第五項の規定により条例で定めるものとされている事項は、都道府県の条例で定める。

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445. 地公法及び自治法の改正案(その1) [46.臨時・非常勤教員]

 地方公務員の臨時・非常勤職員の適正な任用等を確保するための「地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法案」が去る3月7日に閣議決定され、国会に提出された。
 法案の概要のペーパーによれば、一つには「地方公務員法の一部改正(適正な任用等を確保)」であり、特別職の任用及び臨時的任用を厳格化するとともに、一般職の非常勤職員の任用等に関する制度を明確化する、もう一つは、「地方自治法の一部改正(会計年度任用職員に対する給付を規定)」であり、一般職の非常勤職員として明確化された「会計年度任用職員」について、期末手当の支給が可能となるよう、給付に関する規定を整備する、となっている。

 教員給与の学習ノートとしては、新たなカテゴリーとして明確化された「会計年度任用職員」の給与・報酬の給付体系がどのように規定されることとなったのか、確認しておきたい。

 まず、「会計年度任用職員」の定義を確認する。

<地方公務員法改正案>
(会計年度任用職員の採用の方法等)
第二十二条の二 次に掲げる職員(以下この条において「会計年度任用職員」という。)の採用は、第十七条の二第一項及び第二項の規定にかかわらず、競争試験又は選考によるものとする。
 一 一会計年度を超えない範囲内で置かれる非常勤の職(第二十八条の五第一項に規定する短時間勤務の職を除く。)(次号において「会計年度任用の職」という。)を占める職員であつて、その一週間当たりの通常の勤務時間が常時勤務を要する職を占める職員の一週間当たりの通常の勤務時間に比し短い時間であるもの
 二 会計年度任用の職を占める職員であつて、その一週間当たりの通常の勤務時間が常時勤務を要する職を占める職員の一週間当たりの通常の勤務時間と同一の時間であるもの

 つまり、「会計年度任用職員」には2種類の職員があり、ざっくりした表現をすれば、第22条の2第1項第1号の職員は、「会計年度内を任用期間とするパートタイムの職員」であり、第22条の2第1項第2号の職員は、「会計年度内を任用期間とするフルタイムの職員」であるということになろうか。

 次に、「会計年度任用職員」の給与・報酬の給付体系を確認する。

 地方自治法改正案を見ると、まず、「非常勤の職員に対し、報酬を支給しなければならない。」と規定する第203条の2について、第1項の「非常勤の職員(短時間勤務職員を除く。)」を「非常勤の職員(短時間勤務職員及び地方公務員法第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)」に改正することとしている。つまり、地公法でいうところの非常勤の職員のうち、フルタイムの職員は自治法上の非常勤の職員から除くのである。
その上で、第4項を新設し、「普通地方公共団体は、条例で、第一項の者のうち地方公務員法第二十二条の二第一項第一号に掲げる職員に対し、期末手当を支給することができる。」としている。つまり、自治法上の非常勤の職員のうち労働者性が高いパートタイムの会計年度任用職員に対して、期末手当の支給が可能となるよう規定を整備したということである。

 そして、「常勤の職員及び短時間勤務職員に対し、給料及び旅費を支給しなければならない。」と規定する第204条を改正し、「地方公務員法第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員」を追加している。つまり、公法でいうところの非常勤の職員のうち、フルタイムの職員は自治法上の常勤の職員等のグループに含めたのである。
更に、フルタイムの会計年度任用職員も含めて同条第2項が適用されることとなり、退職手当を含めた手当の支給が可能となっている。

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444. 一般職非常勤職員への移行 [46.臨時・非常勤教員]

 昨年12月27日、総務省の有識者による研究会「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会」(座長:高橋法政大学法学部教授)が報告書を取りまとめた。
 政府が進める働き方改革の一つの柱である「同一労働同一賃金」の実現に向けた動きに呼応したものだと思うが、報告のポイントは、「特別職非常勤職員及び臨時的任用職員から一般職非常勤職員の新たな仕組みへの移行を進める」ことにある。
 概要ペーパーから「課題への対応」部分を抜粋する。

<任用上の課題への対応>
 ①特別職非常勤職員を「専門性の高い者等(委員・顧問等)」に限定
 ②成績主義の特例である臨時的任用職員を国と同様に、「常勤職員(フルタイム)の代替」に限定
 ③一般職非常勤職員の「採用方法・服務規律等の新たな仕組み」を明確化し、労働者性の高い非常勤職員は一般職非常勤として任用
<処遇上の課題への対応>
 一般職非常勤職員について期末手当などの手当の支給が可能な制度に見直し(給料・手当を支給できる給付体系に移行)

 次に、本文中、教員に関わって述べられている箇所を抜粋する。

 この結果、臨時的任用職員のうち、パートタイムで任用されている者は、一般職非常勤職員に移行する一方で、フルタイムで任用されている教員などは、必要な要件に該当する場合引き続き臨時的任用職員として任用されることも想定される。
 また、特別職非常勤職員から一般職非常勤職員への移行については、教員や保育士などの一定の資格を有する職員を含めて行われることとなる。このため、特別職非常勤職員としては委員、顧問などの専門性の高い者等のみが存続することとなり、それ以外の職員は全て一般職非常勤職員に区分されることとなる。(5~6頁)

 う~ん、これをどう理解するか…。
 一つは、いわゆる常勤講師については、「引き続き臨時的任用職員として任用されることも想定される」ということ。(任期付職員制度の活用への言及はない…。)
 もう一つは、非常勤講師については、「特別職非常勤職員から一般職非常勤職員へ」移行されるということか…。つまり、報酬ではなく、給料・手当を支給できる給付体系に移行するということのようだ。イメージとしては、国立大学の非常勤講師のようなものか…。

 立法的な対応か、あるいは、通知等による解釈の明確化かの両論併記だが、可能な限り立法的な対応を目指して検討すべき、としている。各自治体での対応も、条例・規則への位置付けが求められてくることになる。
 さて、どのように、どの程度のスピードで変わっていくのか、要注目。

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404.臨時・非常勤教員(その15) [46.臨時・非常勤教員]

 前回、公立学校の非常勤講師の時給について具体例を見たが、今回は、非常勤講師の時給がどのようにして算出されたのかを考えてみたい。
 そこで、前々回紹介した国立大学の非常勤講師の勤務1時間当たりの給与(時間給)の計算方法をもう一度確認しておく。(『非常勤職員の給与について』平成13年3月26日付け12文科人第242号、文部科学省大臣官房人事課長通知)

(1) 講師である非常勤職員については、その者を常勤の講師として採用した場合に受けることとなる俸給月額および調整手当の額を基礎として、次の算式により算出した額の範囲内の額をもって時間給とする。
 (俸給月額+調整手当)×12 / 52×10

 この算式中の「10」の数値にかかわっては、佐藤三樹太郎の『教職員の給与』に次のような記述があるのであった。

「(注)52×10は52週(年間標準時数)×10時間の意味である。10時間というのは国立大学教官の標準担任時間を想定したものであるから、公立高等学校以下の教員に準用する場合は、これとは異なる時間数を想定することとなろう。なお、右の算式中、暫定手当は現在では調整手当と読み替える必要がある。」(292頁)

現行の公立高等学校以下の非常勤講師の時給は、前回見たところによれば、東京・大阪では授業1時間当たり2,860円程度の額であった。非常勤講師の時給についての地方交付税積算単価については、手元にある資料では、平成22年度以降2,780円となっている。
 この額の基礎となった標準担任時間が分かれば、ベースとなっている俸給月額とその号俸が分かるのだが、公表されていないと思われる。仕方がないので、このノートなりに想定してみるしかない。

 文部科学省による教職員定数の解説書によれば、従来、高等学校の教員の標準定数については、教員1人当たり担当時数を18時間として算定した必要教員数を基礎とし、中学校の教員について1教員24時間、小学校については1教員の週当たり担当時間数を26時間と想定して算定していることになっていた。
 大学教官の標準担任時間である10時間は、実際の授業時間の長さで考えると1授業90分が標準だろうから、1.5倍した15時間が実時間ということになるだろう。同じように無理矢理計算すると、高校の18時間は×50/60をして15時間、中学校の24時間は×50/60をして20時間、小学校の26時間は×45/60をして19.5時間がそれぞれ実時間ということになる。こうしてみると、大学と高校で釣り合いをとり、中学校と小学校で釣り合いをとっていることが分かる。
 しかしである、東京都も大阪府も東京学芸大学も、非常勤講師の時給について、高校と小・中学校で金額が異なってはいなかった。高校をベースに考えるなら「10」を「18」に替えて計算することになるし、小・中学校をベースにするなら「10」を「25」辺りに替えて計算することになる。
 「さて、どう考えるべきか」と、悩んでも答えはでないので、とりあえず、義務教育費国庫負担金の対象となっている小・中学校をベースとして計算してみることにしよう。

 まず、大学の非常勤講師の時間給の算式のうち「10」を「25」に替えてみる。(調整手当は地域手当に読み替える。)

 (俸給月額+地域手当)×12 / 52×25

 地方交付税単価の時給2,780円を当てはめた上で、俸給月額を逆算してみる。地域手当の支給割合は、地域によって異なるので、4.8%と仮定する(便宜上23年度の地方公務員給与実態調査により算定してみたら、4.77…%だった。)。このとき、教職調整額をどう考えるかなのだが、そもそも「10」は勤務時間ではなく、実時間で考えても「15」時間であり、フルタイムが「40」時間であることを考慮すると、教職調整額4%は計算に入れなくてもよいような気がする。俸給月額は、平成23年4月官民格差に基づく全人連モデル給与表の旧教(三)によった。
 逆算した結果は、1級84号俸287,400円となった。(大学卒の初任給基準は1級21号俸であるから、大卒制度年数15.75年の位置ということになる。)

 同じ手法でもって教職調整額4%を計算に入れて逆算してみる。結果は、1級75号俸276,200円(大卒制度年数13.5年)となった。

 ところで、平成18年に実施された給与構造改革の一環として、中途採用者の初任給決定方法が改善され、いわゆる初号制限が撤廃された。
 従前の取扱いでは、経験年数を有する者の号俸を決定するに当たっては、一定のルールに従い経験年数を号給数に換算して基準号俸の号数に加算することができることとなっていたが、その際、1級上位の職務の級の号俸との関係で決定できる号俸に一定の制限が加えられていたのだが、旧教育職俸給表(二)(三)には特例が認められていた。すなわち、旧教(二)については、1級は19号俸まで、2級は29号俸まで、旧教(三)については、1級は15号俸まで、2級は30号俸までの範囲内で初任給の号俸を決定することができることになっていた。(「教育職俸給表の適用を受ける職員の職務の級及び俸給月額の決定等について」(昭和39年12月28日給実乙第74号))
 そこで、この初号制限の号俸をベースに非常勤講師の報酬額との関係を試算してみたらどのようになるであろうか。旧教(三)1級15号俸は、給与構造改革後では1級53号俸(23年4月ベースで243,100円)に当たる。先ほどの式(地域手当は4.8%)に代入してみると約2,350円となる。教職調整額4%を考慮した場合でも、2,450円弱の額となる。これでは2,780円と大きな開きが出る。
 そこで、今度は、2,780円から時間数を逆算してみよう。

(俸給月額+地域手当)×12 / 52×X = 2,780円
ア(243,100円+11,668円)×12 / 52×X = 2,780円
 教職調整額4%を含めると、
イ(252,824円+12,135円)×12 / 52×X = 2,780円

 計算すると、アはX=「21.148…」となり、イはX=「21.994…」となった。

 先に書いたとおり、教職員定数の算定の基礎となる担当時間数は、高等学校教員は18時間、中学校教員は24時間、小学校教員は26時間と想定されていた。そして、実時間を考慮すると大学教員と高等学校教員は実15時間であり、小中学校教員は実20時間程度であった。高等学校教員の時間数を考慮する合理的な理由までは見いだせないのだが、高等学校教員と小中学校教員の平均の担当時間数を計算してみる。

(18時間+(24時間+26時間)÷2)÷2 = 21.5

 近い数字になった。まあ、無理矢理合わせていると言われれば、そのとおりではあるが…。

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403.臨時・非常勤教員(その14) [46.臨時・非常勤教員]

 今回は、小・中・高等学校の非常勤講師の時給がどの程度の額なのか、いくつかピックアップしてみよう。

 まず、東京都の場合、都立学校等に勤務する講師の報酬等に関する条例(昭和49年条例第30号)が制定されているのだが、非常勤講師の時給の具体的な額については、都立学校等に勤務する時間講師に関する規則(昭和49年教育委員会規則第24号)の別表第三で小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校に勤務する時間講師の時給を教育職員としての経験年数ごと13の経験区分を設けて定めている。別表第三から抜粋する。

経験区分  経験年数    時間額
 1   1年未満     1,880円
 2   1年以上2年未満 1,950円
 3   2年以上3年未満 2,020円
 4   3年以上4年未満 2,090円
 5   4年以上5年未満 2,160円
 6   5年以上6年未満 2,223円
 7   6年以上7年未満 2,310円
 8   7年以上8年未満 2,400円
 9   8年以上9年未満 2,490円
 10   9年以上10年未満 2,580円
 11   10年以上11年未満 2,660円
 12   11年以上12年未満 2,780円
 13   12年以上     2,860円

 次の大阪府の例を見ておく。「平成27年度講師希望者登録のお知らせと講師制度の概要」に次のとおり掲載されている。(26年10月現在)

 報酬額:授業1時間につき以下のとおりの額を支給
   授業時間      報酬額
  55分未満      2,860円
  55分以上60分未満 3,150円
  60分以上65分未満 3,430円
  65分以上70分未満 3,720円
  70分以上75分未満 4,000円

 ちなみに、東京学芸大学附属学校の非常勤講師の時給も見ておく。「国立大学法人東京学芸大学非常勤講師就業規則」別表第1から附属学校担当講師の時間単価を抜粋する。

経験年数      時間単価
    ~4年11月 2,060円
5年00月~9年11月 2,370円
10年00月~     2,880円

以上、東京・大阪の時間単価を見てきたが、全国的にみれば少し高めの設定となっているかもしれない。(地方交付税積算単価は手元の資料では2,780円)
 なお、東京都は「時間講師の勤務時間の一単位時間は、60分とする」と規則で規定し、大阪府は「授業時間」を報酬額のベースに考えているようであり、それぞれの考え方に違いがあって大変興味深いのだが、いずれにしても、正味45分又は50分の授業に従事した1回分の報酬額は同じ2,860円となっている。

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401.臨時・非常勤教員(その13) [46.臨時・非常勤教員]

 前回まで、非常勤講師の報酬について考察する前提として、その任用関係の性格を考察してきた。今回以降は、非常勤講師の報酬額について具体的な考察を進めたい。

 非常勤講師の報酬額を考える際の手がかりがある。それは、文部科学省大臣官房人事課長から各国立学校校長などにあてられた通知『非常勤職員の給与について』(平成13年3月26日付け12文科人第242号)である。参考になりそうな部分のみを抜粋する。

1 非常勤講師の勤務一時間当たりの給与(以下「時間給」という。)または勤務一日当たりの給与(以下「日給」という。)は、次に掲げるところによるものとすること。
(1) 講師である非常勤職員については、その者を常勤の講師として採用した場合に受けることとなる俸給月額および調整手当の額を基礎として、次の算式により算出した額の範囲内の額をもって時間給とする。
 (俸給月額+調整手当)×12 / 52×10
(2) 医師、歯科医師、学校医および学校歯科医である非常勤職員…(略)
(3) 上記(1)および(2)のhか、一日につき八時間を超えない範囲内で日々雇い入れられる非常勤職員…(略)
(4) 上記(1)および(2)のほか、常勤職員の一週間当たりの勤務時間の四分の三をこえない範囲内で勤務する非常勤職員については、その者を常勤職員として採用した場合に受けることとなる俸給月額および調整手当の額を基礎として、次の算式により算出した範囲内の額をもって時間給とする。
 (俸給月額+地域手当)×12 / 52×40

 国家公務員である非常勤講師については一般職給与法に基づき給与が支給されることから、同法22条2項の「常勤の職員の給与との権衡を考慮し、予算の範囲内で、給与を支給する」との規定を踏まえたものとなっている。
 文科省通知の算式にある「12」は年間の月数である「12月」、「52」は年間の週数である「52週」、「40」は当時の週当たりの勤務時間数である「40時間」のそれぞれの数であることは明らかだ。非常勤講師の時間給の算式にある「10」については、実際の勤務時間ではなく、大学の教官が担当する標準的な担当時数=授業を担当するコマ数であるらしい。

 この点にかかわって、佐藤三樹太郎『教職員の給与』(学陽書房)の「非常勤講師の給与」の項に前記人事課長通知の基になった昭和37年の人事課長通知を掲載した後に、次のような記述がある。

「(注)52×10は52週(年間標準時数)×10時間の意味である。10時間というのは国立大学教官の標準担任時間を想定したものであるから、公立高等学校以下の教員に準用する場合は、これとは異なる時間数を想定することとなろう。なお、右の算式中、暫定手当は現在では調整手当と読み替える必要がある。」(292頁)


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400.臨時・非常勤教員(その12) [46.臨時・非常勤教員]

 前回のノートで、「週12時間程度のような非常勤講師については、非専務職である嘱託員に準ずる職だと理解してよいとするならば、そのような者は、果たして労働者に該当するのであろうか」との疑問を述べた。

 この点に関わって、地方公務員任用制度研究会編『自治体の新臨時・非常勤職員の身分取扱(第1次改訂版)』(学陽書房発行、2002年)は次のように記述している。 

第3節 労働者性を有する地方公務員の範囲
 (略)
(5) 臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職にある者  これらの者は、特定の知識・経験に基づき、随時、地方公共団体の行政に参画する者又は他に生業を有することを前提として、一定の場合に限り、地方公共団体の業務を行う、いわゆる職業的でない公務員をいうものと解され、(3)及び(6)の職に在る者も含め、一般的に、いわゆる非専務職といわれるものである。(5)の範ちゅうに属する者の場合は、原則として、(3)の範ちゅうに属する者と同じく、一種の請負又は委任と考えられる。しかし、公立学校の非常勤講師(昭35・7・28 自治丁公発第9号 行政実例)のように、複数の公立学校の非常勤講師を兼務しており、非常勤講師そのものによってのみ生計を維持している者もいる。そして、実態として、常勤教員の穴埋めに充てられている場合が多く、講義自体が学校運営に組み込まれており、非常勤講師の都合により、休講したり、時限を変更したりすることは困難であって、使用従属関係に在ると判断される者もある。また、地公法22条2項の規定に基づく「臨時的任用」職員(一般職)として理解すべきであるような職に在る者も現実には存在するので、注意しなければならない。(9頁)

 同書は、「一般職・特別職の区分にかかわりなく、労働者性の有無という観点から整理する」との考え方に立っており、引用した箇所を敢えて敷衍するならば、「公立学校の非常勤講師は、特別職に属する非専務職の位置づけではあるものの、実態としては任命権者と使用従属関係にあり、労働者性を有する者もいる」と述べていると理解してよいだろう。しかし、支配従属関係にある者については、むしろ、一般職に属する非常勤職員と理解する方がしっくりくるような気もする。
 例えば、ある大学の教授が別の大学の非常勤講師を数コマ分兼務している場合、その非常勤講師が非専務職であるというのは理解しやすいような気がする。例えば、定時制高校の教諭が全日制高校の非常勤講師を兼務しているケースがあるならば、その非常勤講師が非専務職であるということにもなるのだろう。しかしである。前者の場合は、上司の指揮命令に基づくというより、特定の学識経験に基づいて自らの責任で委嘱を受けた講座の授業を行い、受講した学生の成績を付けるものであるから、それは請負又は委任契約と考えるのがふさわしい気がする。一方、後者の場合は、大学の非常勤講師の場合に類似しているけれども、学習指導要領に基づく教育課程に従い、採択された教科書を用いて授業を実施しなければならず、多くの場合、授業の進度は常勤教員の授業の進度と合わせ、統一した定期テストを実施して生徒の学力の評価を行うこととなるのが通例であって、支配従属性が高く、従って、労働者性が高いといわざるを得ないのではないだろうか。同書が述べる「複数の公立学校の非常勤講師を兼務しており、非常勤講師そのものによってのみ生計を維持している者」については、常勤教員が担当している時間数に近い時間数の授業を担当しているであろうし、実態として、同書が述べるとおり、労働者性が高いと理解すべきだろう。

 しかし、である。元に戻ってしまうのだが、高等学校や中学校における特定の教科を担当する非常勤講師については、厳密な意味での勤務時間ではなく、「授業時数」、いわゆる「コマ数」によって委嘱されていると考えられるのだが、労働契約の重要事項である勤務時間についてはしっかり明示されていないのではないのだろうか。つまり、非常勤講師がその職務を遂行するためには、生徒を相手にした授業、すなわち、講義や実習だけでなく、授業の準備作業が必要であるし、テストの実施や成績評価のための作業も必要なはずである。場合によっては、成績不振者に対するフォローが必要になるかもしれない。それらを一切合切、その非常勤講師に委ねている実態に着目すれば、労働者性が高いとはいえ、一方で請負又は委任契約に類似の関係が存在しているようにも思われるのである。
 なお、非常勤講師の中には、特定の教科を単独で担当する者ばかりではなく、チームティーチングにおける常勤教員の補助を行う者も存在しており、そういった者については、最早、請負又は委任というイメージはないように思われ、労働者性が一層高くなっているといってよいだろう。

 どこまでいっても、すとんと落ちないところはある。とりあえず、この問題はこれぐらいにしておこう。

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399.臨時・非常勤教員(その11) [46.臨時・非常勤教員]

 非常勤講師とは、どのような性格の職であるのか。もう一つ頭の中に入らない。ずっと悩んでいるのだが、仕方がないので遠回りにはなるのかもしれないが、『新版 逐条地方公務員法第3次改訂版』(学陽書房)によって確認しながら学習しよう。

 一般職と特別職の違いについては、「地方公務員法第三条第三項に掲げる職員の職は、恒久的でない職または常時勤務することを必要としない職であり、かつ、職業公務員の職でない点において、一般職に属する職と異なるものと解される。」とする行政実例(昭和三五年七月二八日 自治庁公発第九号、茨城県人事委員会事務局長あて公務員課長回答)があるが、より具体的な両者を区別する基準としては次の要素が考えられる。
 ① 指揮命令関係の有無  一般職の地方公務員は上司の命令に従って職務を遂行するものであり(法三二、地教行法一九56、消防法一四など参照)、特別職の地方公務員は法律や自己の学識経験等に従って自らの判断と責任で職務を遂行することが期待されている(自治法一三八の二参照)こと
 ② 専務職であるか否か  一般職の地方公務員はもっぱら地方公務員としての職務に従事するものであり、特別職の地方公務員は、当該地方公務員としての職務のほかに、他の職務を有することも妨げられないのが原則である(自治法九二の二、一四二参照)こと
③ 終身職であるか否か  一般職の地方公務員は、原則として、定年に達するまでの勤務が想定されており、特別職の地方公務員には一定の任期が定められていること
④ 成績主義の適用の有無  一般職の地方公務員は、受験成績、勤務成績など、客観的な能力の実証に基づいて採用、昇任などが行われ(成績主義)、特別職の地方公務員は選挙、任命権者との信頼関係、特定の知識経験などに基づいて当該職に就くものであり、転任や昇任などのいわゆる人事異動の対象となることが想定されていないこと
 ⑤ 政治職であるか否か 一般職の地方公務員は政治活動において中立性が要求されるが、特別職の地方公務員は必ずしも政治的な中立性が要求されるわけではないこと
右の基準は、理論的なものであり、実定法上は、特別職に属する職が列記され、「一般職は、特別職に属する職以外の一切の職とする」とされている(法三2)のであるから、地方公務員の範囲が決まれば、自動的に一般職の範囲が定まることになるはずであるが、法公務員の定義に微妙な点があることは前述したところであるし、特別職を列記した地方公務員法第三条第三項にも解釈の余地があるものがあるので、必ずしも一義的に決まるとは限らない。(48~49頁)

 引用した解説は、選挙等によって就任する「政治職」や首長との人間的関係などに基づいて任命される「自由任用職」を含んだ説明であるし、これだけでは分かったような、分からないような感じのものとなっている。
 それらの職ほか、『逐条地方公務員法』は「非専務職」の範疇を用いて解説している。同書は、非常勤講師をこの「非専務職」に位置づけている。
 関係する部分を抜粋して掲載する。

 ウ 非専務職  非専務職というのは、生活を維持するために公務に就くのではなく、特定の場合に、一定の学識、知識、経験、技能などに基づいて、随時、地方公共団体の業務に参画する者の職のことを意味する。これらの職と占める者は、その相当する職務が厳格な指揮命令系統の中で行われることが予定されておらず、当該公務の他に職務を有していたり、公務のために使用する時間が短時間であったり、その期間が短いのが通例であることから、地方公務員法を適用することが適当ではないとされるのである。その意味で、特別の学識、知識、経験、技能などに基づくことなく、上司の指揮命令の下に、補助的職務に従事するにすぎない者は、ここでいう非専務職には含まれないことになる。具体的には、審議会や審査会などの委員、臨時または非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員およびこれらの者に準ずる者など、非常勤の消防団員および水防団員がある。(52頁)

 5 臨時または非常勤の顧問、参与などの職(本条3③)  非専務職として特別職となるものである。本号では、顧問、参与、調査員および嘱託員の職名が例示されているが、これらの者はいずれも特定の学識または経験に基づいて任用されるものであり、この職に該当するか否かは、客観的な職務の内容・性質、勤務態様や勤務条件等を総合的に考慮して判断されるべきものである(大阪高裁平二五・三・二七判決例集未登載)。そして、このような特定の要件に基づかない者を臨時または非常勤の職に任用しようとするときは、地方公務員法第二二条第二項の規定に基づく臨時職員として任用すべきである。また、ここで臨時または非常勤というのは、定数を条例で定めるとする地方自治法などにおけるのと異なり、特定のプロジェクトに従事する場合や調査研究のために採用された場合など、会計年度を越えて存続するものも含まれると解される。
 本号に基づく特別職としては、非常勤の公民館長(通知昭二六・三・三○ 委社第四○号、行実昭二六・三・一 地自公発第五一号)、非常勤の学校医(行実昭二六・二・六 地自乙発第三七号)、公立学校の非常勤講師(行実昭三二・八・二六 自丁公発第一○二号、昭三五・七・二八 自治丁公発第九号)、福井地裁昭三四・三・一一判決)、スポーツ振興法に規定する体育指導員(行実昭四二・二・二○ 公務員第一課電話回答)、 (略) などがある。(63~64頁)

 以上、長々と引用を続けて考えてきたのだが、少なくとも週12時間程度のような非常勤講師については、「非専務職である嘱託員に準ずる職」だと解釈していると理解してよいだろう。
しかし、である。公立学校に勤務する実際の非常勤講師については様々な任用形態があるのが実態なのではないだろうか。多くは雇用保険に加入もできないような時間数の非常勤講師が多いのだろうが、一方では、週当たりの勤務時間が常勤の者の2分の1をこえ、雇用保険にも加入するような者もいるのではないかと思われる。そうすると、そのような者については、先に引用した昭和35年の自治省公務員課長回答の前提となった非常勤講師とは異なるのではないか。つまり、すべての非常勤講師が特別職に属する職である即断すべきではなく、昭和32年の自治庁公務員課長通知に従って、「いわゆる非常勤講師と称されている職員が特別職に属するか一般職に属するかは、その者の勤務の実態により判断するべきもの」なのではないのだろうか。

 ということは、元に戻ると、「週12時間程度のような非常勤講師については、非専務職である嘱託員に準ずる職だと理解してよい」とするならば、そのような者は「労働者なのであろうか」との疑問がわいてくる。まず、「生活を維持するために公務に就くのではない」という理解がベースになっている。さらに、その12時間というものは、公立学校の実態からすると、厳密な意味での勤務時間というよりは、「授業時間が12時間」、すなわち「12コマ」を意味しているのではないのだろうか。そうすると、労働契約の重要事項の一つである勤務時間が明確になっているのかどうか、あやふやなのが実態なのではないのだろうか。そうすると、ますます、そのような者は「労働者なのであろうか」との疑問がわくのである。
 悩みは深まるばかりなのだ。

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