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380.読書=『トヨタ生産方式の逆襲』 [29.読書]

 鈴村尚久『トヨタ生産方式の逆襲』(文春新書、2015年)
 著者は、トヨタ自動車の生産調査部などで実際にトヨタ生産方式の指導を実践してきた人物である。
 その「カンバン方式」は間違っている!-という帯のコピーに引かれて手に取ったのだが、目次をみるだけで興味がますます大きくなり、即購入した。

 第1章「「常識」を疑い、パラダイムを変えよ」の小見出しには、読みたくてしかたがなくなる項目が並んでいる。
・ 「かんばん方式」はなぜ誤解されるのか
・ 「単能工」から「多能工」へ
・ 信奉せずに、武器にせよ
・ 会社の実力は「倉庫」でわかる
・ 「ストア」とは何か
・ 「待たせる」とは「我慢を強いる」こと
などだ。
第2章の「「タイミング」を売れ!」もよい。
第4章の「「サラダ理論」で需要予測とオサラバしよう」も目から鱗のタイトルだし、第5章の「ホワイトカラーという「魔物」」にも興味津々になる。

 これまでにもトヨタ生産方式に関する記述を目にしたことはある。しかし、「本当かいな?」と内心疑いを持っていたのだが、本書でその意味がよく分かった。
 例えば、「在庫を持たないカンバン方式」などというものは大きな間違いであり、「適正在庫」を持つことが正しいのだ。
 本書は、まさに驚きと納得の連続である。「教員給与とどうかかわるのか?」と言われると、そのとおりなのだが、なぜ取り上げたのかと言えば、理論先行型のコンサルタントのご高説などではなく、地に足のついた、現地現場で培われた真のトヨタ生産方式が語られているのであり、「真の解決策は現場から現場の人間によって発見される」ということを本書によって実感したからなのである。つまり、学校で発生している様々な問題の解決策もやはり、現場から現場の人間によって発想させるべきだと思うのである。

 ところで、1月28日の朝日新聞デジタル版にトヨタ自動車が新賃金制度を導入するとの記事が掲載されていた。

トヨタ、若手に手厚く 工場対象、新賃金制度導入へ
 トヨタ自動車は27日、工場で働く社員を対象に、新しい賃金制度を導入する方針を示した。年功序列で昇給する部分を今より圧縮し、それを元手に、若手への支給額を手厚くするのが柱。少子高齢化が進むなか、優秀な若手を確保しやすくするねらいだ。早ければ来年1月にも導入する。
経団連主催の「労使フォーラム」で、上田達郎常務役員(労務担当)が明らかにした。新制度では、子を持つ社員向けの手当などを増額し、子育て世代の若手の月給を引き上げる。一方、ベテランについては、年齢などに応じて昇給する賃金カーブを今より緩やかな形に見直し、月給の伸びを抑える。
 さらに、30歳前後以降は、上司の査定で決まる部分を拡大。技能やチームワークなどに応じて、今より月給に差をつける。これも全体として若手の賃金アップにつながるという。
(大内奏 2015年1月28日00時18分)

 長期にわたって実施する社内教育を通じて優秀な社員を育成するシステムがあるからこそ、トヨタのカイゼンもより効果があったのではないか、と想像している。年功序列賃金が徐々にフラット化されていくのが社会の趨勢とはいえ、この新賃金制度がトヨタ生産方式の実際にどのような影響を及ぼすことになるのだろうか…。

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