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70. 教職調整額(その11) [7.教職調整額]

 ところで、骨太の方針2006では、歳出改革へ向けた具体的内容として今後5年間で「人材確保法に基づく優遇措置を縮減するとともに、メリハリを付けた教員給与体系を検討する。その結果を退職手当等にも反映させる」ことを目指している。人材確保法の成立時点から強く反対していた財務省(大蔵省)の意向が強く出た方針であろうと思う。
 ここで注目したいのは、前段ではなく後段の「退職手当等にも反映させる」という下りである。これを素直に読めば、人確法に基づき優遇されている本俸の優遇措置を縮減し、その結果、本俸の優遇分が跳ね返っている退職手当や年金を縮減するというように受け取れる。言い換えると、素直に読めば、本俸的性格を付与されてはいるが人確法には基づかない教職調整額の退職手当や年金への跳ね返り効果の縮減を意味しない、更に言えば、本俸の優遇分が教職調整額に跳ね返り、その結果退職手当等に跳ね返っている分は縮減することになるが、教職調整額の支給率そのものを引き下げるということまでは触れてはいない、と受け取れるのである。
 さあ、実際にはどのように見直しが行われることになるのであろうか。現在、中教審の教職員給与の在り方に関するワーキンググループでも教職調整額について議論されているようであるが、この点についても議論をしているのだろうか。十分に注意していかなければならない。

(補足)
 ところで、中教審教職員給与WGでは、教職調整額を超過勤務手当に変更すべきかという論点に対しては、どちらかというと変更すべきでないとする意見の方が優勢であるように受け取れたのだが、教職調整額を残すとしても、その際、仮に今心配したように、退職手当等への跳ね返りをやめるとなれば給与制度上どのような影響が出るのかという問題を考える必要が出てくる。退職手当等への跳ね返りがないようにするとき、教職調整額の本俸的性格を解消するのだから、退職手当や年金に止まらず、跳ね返っている手当に何らかの影響が出るなら、単にその分減額になるというだけではなく、何かそのことで問題が生じないのかは制度的な観点からよく検証する必要があろう。それは、手当を考察する際に併せて考えてみたい。


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69. 教職調整額(その10) [7.教職調整額]

 ここで、教職調整額は超過勤務手当の一括支給だとするこの項の初めの議論に戻りたい。
 前回まで教職調整額を巡って、様々な議論を見てきたのだが、それでもなお「教職調整額は超過勤務手当の一括支給だ」と言い張るなら、労基法第37条の適用除外を元に戻し、この規定を適用することとしなければ話がおかしくなる。そうして、みなし労働時間制でみたように、教職調整額が超過勤務の実態に見合わない教員に対しては不足分以上の手当を支給すべきなのが筋だといいたくなる。
 繰り返しになるが、勤務密度に濃淡があり、長期休業が存在し、教員の自発的・創造的な勤務に期待する面が大きいという教員の職務と勤務態様の特殊性を踏まえ、もう超過勤務手当制度では対応できない、むしろ、教員の勤務というものを、勤務時間の内外を問わず、包括的に評価することとして、これに替えて新たに俸給相当の性格を有する給与として教職調整額を支給することとしたのではなかったのか。
 この当時の人事院の認識をひっくり返し、超過勤務手当の一括支給に矮小化するならば、いくら現行規定上、形式的に労基法第37条の適用除外をしているといっても、そのこと自体が労基法の精神を実質否定したものとなると言わざるをえないと思う。逆に言えば、教職調整額というものを超過勤務手当の一括支給という性格に止めず、勤務時間の内外を問わず包括的に評価して俸給相当の性格を有する給与として支給することとしたからこそ、労基法第37条の適用除外が許されるのだ。包括外部監査結果報告書は「一般的に、時間外勤務手当を諸手当の算出基礎に含むことはないため、見直しが必要である」と言うが、労基法第37条の適用除外を続ける限り、それは許されないと言うべきだろう。
 もちろん管理職手当(俸給の特別調整額)の存在も理解している。管理監督の地位にある職員に対しては労基法第41条が適用され、超過勤務手当を支給しなくてよいのであるが、この管理職手当は本俸的な給与とされながら、確かに諸手当の基礎となっていはいない。しかしながら、管理職手当の水準というのは、時間外勤務の実態を踏まえて改定されているし、一般的に教職調整額と比べても支給率が大きいし、そもそもベースとなる基本給の水準が高く比較にならない支給額となっているではないか。


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68. 教職調整額(その9) [7.教職調整額]

 実務上どのようにして個々の教員に段階を付けた支給率を適用しようとするのか、現時点ではまったく想像することができないが、教職調整額を創設した発想の基には、「教員の勤務は、勤務時間の内外を問わず、包括的に評価する」のだ、そして、それは「教員の勤務時間については、教育が特に教員の自発性、創造性に基づく勤務に期待する面が大きいことおよび夏休みのように長期の学校休業期間があること等を考慮すると、その勤務のすべてにわたって一般の行政事務に従事する職員と同様な時間管理を行うことは必ずしも適当でなく、とりわけ超過勤務手当制度は教員にはなじまない」のだという認識があったはずだ(昭和46年2月8日、人事院の意見の申し出の説明)。
 もっと言えば、井上孝美元文部事務次官の発言にもあったように、「教員の場合は厳密に超過勤務を日々何時間だと測定することが非常に困難な職務」なのであって、しかも、「時間の密度からいえば授業時間のあとは普通の行政職の場合に比べると密度が薄い、しかし授業時間内は非常に濃い、あるいは夏休みの場合においても行政職の場合とは違った一つの時間の管理のもとに立っている」(昭和46年5月18日参議院文教委員会における佐藤人事院総裁答弁)という認識ではなかったのか。つまり、外面的に測定できた超過勤務時間が例えば3時間であったとしても、そもそも自発性、創造性に基づく勤務に期待する面が大きいという観点や職務の専門性と勤務の質の観点、勤務密度の濃淡の観点、学校内で勤務が完了しないという観点から、その量としての3時間をどのように評価するのだという根本問題があったはずである。もうそうなれば、「超過勤務手当制度では対応できない、教員の勤務というものを、勤務時間の内外を問わず、包括的に評価するしかない」と…。


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67. 教職調整額(その8) [7.教職調整額]

 さて、前回まで、中教審初中教育分科会の教職員給与の在り方に関するワーキンググループにおける教職調整額を巡る議論を第9回の議事録を中心に確認してきた。
 それによれば、教職調整額を超過勤務手当に変更することは財源的に困難であるとともに、教員の職務と勤務態様の特殊性(専門職としての勤務の質を量で測定できないこと)からすれば、教職調整額を維持すべきである。そして、学校現場での勤務の実態から、教職調整額に差を設けることにする。一律の4%支給ではなく、支給率に2%、4%、6%といった段階を設けて、1月単位で評価して支給していくようなことを考えているようなのである。
 実際の教員の働き方には大きな差があることは今回の調査でも確認できた。7月の勤務日1日当たりの残業時間は、調査結果によれば、小学校では、最短時間0分に対して最長時間6時間38分、30分以下が10.6%、3時間以上が13.9%、中学校では、最短時間は0分で最長時間は7時間42分、1時間以下が13.1%、4時間以上が11%となっている。
 休職中や長期研修中など明らかに超過勤務が生じない場合にまで教職調整額を一律に支給することはおかしいという意見は分からないことはないし、勤務実態における残業時間の差からすれば、支給率に段階を設けることも一見合理的であるようにも感じる。
 しかしながら、そもそも、創設時の実態調査で校種別に見ても差があったものをおしなべてみて4%とした訳だから、そんなことは教職調整額の創設当初から織り込み済みだったのではなかったのか。それを、周囲からメリハリをつけろと言われるものだから、今になって無理矢理段階を設けて支給しようとしているようにも受け取れるのだが…。


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66. 教職調整額(その7) [7.教職調整額]

 では、「教職調整額を維持する場合、現行の支給対象・支給率についてどう考えるか」という論点については、どのような議論があったのだろうか。
 平成18年11月24日開催の第9回ワーキンググループの議事録によれば、井上副主査(井上孝美(財)放送大学教育振興会理事長、元文部事務次官)が次のように発言している。
 「【井上副主査】 …この実態調査に基づいて、教員の給与の在り方というものについて、どのようにメリハリのついた給与体系にしていくかということをこの場で議論していくわけでございまして、この実態調査をそのまま給与にどう反映させるかというのは、勤務の定量的なものと質の問題で、それが結びつくかどうかというのは、さらにこの場で議論をしていく必要があると思います。特に、教員の場合には、やはり専門職としてかなり自発的に授業の質を高めるための教案の準備とか、子供たちの世話とか、かなりその辺で量的にそういうものをどう評価するかという問題はどうしても残ってくると思います。(略)
 そういう意味では、こういう現在の学校を取り巻く状況、学校の業務の状況等を踏まえて、勤務時間というものを考え、また給与の在り方を考えるというのは、かなり勤務の中身を精査するということと、勤務時間との関係、給与の在り方ということで、特に教職調整額の関係はやはり勤務時間の内外を問わず、包括的に評価して、調整額を支給することになっているわけで、教員の場合は厳密に超過勤務を日々何時間だと測定することが非常に困難な職務ではないかと思いますので、そういう意味では、先ほど、超過勤務手当をどれだけ財源出すかという命題はなかなか難しい問題で、むしろ勤務時間の内外を問わず、包括的に評価して、教職調整額を差をつけて、小学校では30分以下が10%ぐらいいますし、小学校で3時間以上が10%を超える方々がいるというのを考えますと、教職調整額の支給で、そこで2とか4とか6とか差をつけるとか、それによって一月単位とか、評価していくというほうが、むしろ学校現場の職務の遂行状況からいうと、現実的なのではないかとも考えられますが、今後さらにそういう点を踏まえて議論を進めていただきたいと思っております。」
 やはり、この元文部事務次官の発言の中に、中教審の議論をリードしようとする文部科学省の意図が透けて見えるような気がする。


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65. 教職調整額(その6) [7.教職調整額]

 11月24日開催の中教審教職員給与WGにおける「教職調整額を超過勤務手当に変更すべきか」という論点を巡っては、吉川委員(吉川昭男高知市教育長)が、教職調整額を超過勤務手当に変更すべきかという論議が財源的に成立するのかという至極単純な疑問を出している。実質に見合う形で超過勤務手当を出すという方向性を出したとしても、財源的に困難と言われると議論する意味がないと…。誰でも考える不安だろう。この中教審の教職員給与WGにしたって、総人件費改革の名の下で教員の給与水準を引き下げるべしとの圧力によって、そもそも発足せざるを得なかったのだから…。
 ただ、文部科学省の財務課長が興味深い認識を示している。
 「【尾﨑財務課長】 すみません。超過勤務手当として総額どれだけ支給できるかということと、実態との乖離が生じるのではないかというお話、これはおそらく教員も一般の公務員も同じことなのかもしれません。我々もそうかと思いますけれども、予算の範囲内で、出せる範囲で超過勤務手当が出されていくということですので、自発的になされた勤務を全部総体として出た時間数にきちっとどこまで出せるのかということは、実は一般の公務員も、総務省にお尋ねをしたんですけれども、全体の勤務実態について、超過勤務の実態についての資料が、全国ベースでお持ちではないということもありますので、その比較もなかなか難しゅうございます。/そういう意味では、吉川委員のおっしゃるとおりで、自由気ままというと言い過ぎかもしれませんが、自発的に積み上げられた勤務時間に、財源的にそのまま言い値で対応できるのかという話になりますと、おそらくそれは超過勤務命令を出さないという仕組みから考えても、財源の問題から考えても、なかなか難しいお話ではないかと思います。」(議事録から)
 自発的な勤務については、超過勤務命令を出して行われた超過勤務ではないのだから、超過勤務手当を支給することは困難であるという前提に立った考えを持っているようなのである。しかも、「予算の範囲内」とか「財源の問題」などという発言があるが、確かに予算執行上の制限としては理解できるが、労働法制上の話としてはちょっと首をかしげたくなる。いわゆる超勤闘争時代の判例によっても、最近の賃金不払残業を巡る事例によっても、時間外勤務手当が予算措置をされていないこともって時間外勤務手当を支給しない理由とはならないことや、明示の超過勤務命令がなくても客観的にみて指示された仕事が正規の勤務時間内ではなされ得ないと認められる場合には超過勤務として取り扱われているのではなかったかと思うのだが…


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64. 教職調整額(その5) [7.教職調整額]

 次に、教員勤務実態調査の暫定集計を踏まえた論点として何が議論されたのであろうか。
 <教員勤務実態調査(第1期・第2期)暫定集計を踏まえた論点>
 【教員の業務の整理・効率化】
  ○教員の業務の整理・効率化をどのように行うべきか。
   ・教員が本来行うべき業務の範囲をどう考えるか。
   ・部活動指導の位置付けはどうあるべきか。
   ・教員が行う業務についてどのように効率化を図っていくか。
   ・事務の共同実施など学校事務についてどのように効率化を図っていくか。
 【教員の勤務時間と教職調整額の在り方】
  ○教員の勤務時間の在り方をどう考えるか。
   ・教員の勤務時間の弾力化についてどう考えるか。
   ・超勤4項目の在り方をどう考えるか。
   ・教員の勤務時間の把握・管理をどのように実施するか。
  ○教職調整額を超過勤務手当に変更すべきか。
  ○教職調整額を維持する場合、現行の支給対象・支給率についてどう考えるか。

 部活動指導など教職調整額との関係で興味深い論点もあるが、ここでは、二つめの大項目である「教員の勤務時間と教職調整額の在り方」に注目し、二番目の教職調整額を超過勤務手当に変更すべきか、三番目の教職調整額を維持する場合、現行の支給対象・支給率についてどう考えるかといった論点を見ておきたい。


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63. 教職調整額(その4) [7.教職調整額]

 ところで、現在、中教審の教職員給与の在り方に関するワーキンググループでは、教員勤務実態調査の第1期・第2期の暫定集計の結果を踏まえて教職調整額の在り方についても議論されている。今日時点で文部科学省のホームページから入手できる情報は、平成18年11月24日に開催された第9回までであるが、その第9回の資料と議事録から、何が論点になっているのかを見ていきたい。

 まず、教員勤務実態調査の結果から、残業時間に注目する。
 <教員の残業時間の実態>
           7月(学期末) 8月(夏休み)
 小学校 平均  1時間48分  0時間16分
       教頭  3時間11分  0時間57分
       教諭  1時間47分  0時間14分
 中学校 平均  2時間25分  0時間27分
       教諭  3時間24分  1時間03分
       教諭  2時間26分  0時間26分
 合  計 平均  2時間08分  0時間22分
       教頭  3時間18分  1時間00分
       教諭  2時間08分  0時間21分
 小川副主査(小川正人東京大学大学院教育学研究科教授)の説明によれば、今回7月と8月の調査結果をもって議論するに当たり、昭和41年に文科省で実施した教職員の勤務状況調査によれば、教員の勤務実態というものは、1年間を通して7月が一番のピークで、その後夏休みで激減しているという特徴をもって1年間変動していることから、一応、その繁忙の目安としたようである。
 昭和41年の調査では、8月期を除く11カ月の平均の週当たりの服務時間外の時間数は、小学校については1時間20分、中学校は2時間30分となっており、7月のピーク時は週当たり7~8時間、夏休みは週当たり2~3時間といった程度になっている。
 二つの調査は、勤務時間のとらえ方が異なるため、一概には比較できないが、今回の調査の「残業時間」と昭和41年調査の「服務時間外の時間数」をほぼ同じような時間概念だろうと粗っぽく捉えるならば、勤務の中身は別として、夏休みはほぼ同じ時間数だが、7月は2倍を超える実態となっている。ただ、給与を考える上で注意しておきたいのは、調査では「超過勤務時間」という用語を使用していないことである。


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62. 教職調整額(その3) [7.教職調整額]

 ところで、労働時間を算定することが困難であったり、性質上、業務遂行の手段や時間配分に関して使用者が具体的な指示をせず、所定労働時間又は通常労働時間となる時間を労働したとみなす「みなし労働時間制」というものがある。これと、教職調整額とはどう違うのか。
 根本的に違うのは、労働基準法第37条の適用除外があるかないかだ。教職調整額の支給される教員は、この規定の適用除外があって、休日勤務手当や超過勤務手当が支給されないが、みなし労働時間制には、名称から受けるイメージとは異なりこの規定が適用される。
 したがって、みなし労働時間制を採用しているからといって、休日労働させておいて休日に係る割増賃金を支払わなければ、それは労基法違反となってしまう。時間外労働の場合も同じ理屈で、所定労働時間を超える時間を労働させた場合には、それ以上の時間外勤務手当に相当する額を支払うことが求められるのである。この点に関して、時間外割増が手当に含まれていると主張するためには、それが分かるように明確に区分することを要するとする判例もある(東京地裁平3.8.27)。
 このみなし労働時間制については、次の指摘がある。
「現行の裁量労働制は、みなし労働時間制を採用しており、労働時間規制の適用除外を認めたものではないが、その本質は、「業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し当該業務に従事する労働者に対し具体的な指示をしないこと」にあることを踏まえると、管理監督者等と同様、時間規制の適用除外を認めることが本来の姿であるとの考え方もある。よって、米国のホワイトカラーエグゼンプションの制度(その改革の動向を含む。)を参考にしつつ、裁量性の高い業務については、改正後の労働基準法の裁量労働制の施行状況を踏まえ、今般専門業務型裁量労働制の導入が認められた大学教員を含め、労働者の健康に配慮する等の措置を講ずる中で、適用除外方式を採用することを検討する。その際、現行の管理監督者等に対する適用除外制度の在り方についても、深夜業に関する規制の適用除外の当否を含め、併せて検討する。」(規制改革・民間開放推進3か年計画(平16.3.19閣議決定))
 今日、このホワイトカラーエグゼンプションを導入に向け、政府が関連法案を通常国会に提出する方針に舵を切ったとの報道があった。こうみると、教職調整額を支給し、労基法第37条を適用除外として、休日勤務手当や超過勤務手当を支給しないこととしている現行の教員についての勤務時間制度というものは、正に労働者を労働時間規制の対象外にする裁量労働制を35年も前に先取りしていたものと言えないだろうか。


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61. 教職調整額(その2) [7.教職調整額]

 果たして、監査結果報告書が示した「教職調整額は時間外勤務手当の一括支給」という認識は正しいのであろうか。そのような認識の下に諸手当の算出基礎から外してもよいのであろうか。
これについては、昭和46年5月18日の参議院文教委員会における佐藤人事院総裁の次の答弁によって確認しておこう。
 「……先生方の本来の職務のあるべき基本点は創意と自発性というものにあるものではないか、教育というものは教員方の創意と自発性というものにまつところが多いのじゃないかというようなその実質をも、それらも申しました点とからみ合わせて考えて、勤務時間の内外を問わず再評価いたしました結果は、前の文部省案のように勤務時間をはみ出た分について包括的ないわゆる超勤の包括支払いというような意味の四%では筋が通らない。勤務時間の内外を通じてのその職務の再評価をして、これは単なるつけたりの手当じゃなしに、本俸そのものを引き上げると、四%の調整額というのがそこにあるわけです。したがいまして、その調整額は諸般の手当にはね返りますから、実質的にはこれは六%の実質になってくる。そのほかにさらに退職手当等においては平均二十五万円のプラスになる、年金についてもさらにプラスになるというようなことになりますけれども、これは先生方の職務の評価をした場合においては正しい評価であるということに踏み切りまして、したがって、先ほど申しました時間計測にはなじまないという点から、普通の勤務時間をこえて何時間というようなことを基本にする超過勤務手当というものは、この際これは支給をしないことになる、いわば現在裁判官とか検察官に同じような制度がございます。超過勤務命令はあっても手当は支給しないという制度が現在あるわけであります。そういう制度の形に持っていくのが正しい姿ではないかというふうに考えまして、基本的にこの考え方を変えて、ここに意見の申し出を申し上げた…」
 この点について、宮地茂監修『教育職員の給与特別措置法解説』(第一法規、昭和46年)は明確に述べている。
 「教職調整額は超過勤務手当の一律支給という性格の給与ではない。教育職員の勤務態様の特殊性に基づいて勤務時間の内外を問わず、包括的に評価して支給される俸給相当の性格を有する給与というべきである。それでは何故俸給の引き上げにより処理しないかとの疑問が生ずるが、これは、給与法上俸給が正規の勤務時間の勤務に対する報酬であるとされている点や将来超過勤務に対する給与上の措置の有無が不明確になるおそれがある点などを考慮したものと考えられる。」(p92)
 これら認識は、教職調整額を創設してから相当な年月が経過したからなどというような理由付けで変えてもいいものだとはとても思えないのだが…


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