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509. 東京都の非常勤講師の報酬 [47.「コマ給」をどう捉えるか]

 「「コマ給」をどう捉えるか」のテーマで、ずいぶん前に東京都の非常勤講師の報酬単価が経験年数別に示されていることを取り上げた。(406.「コマ給」をどう捉えるか(続き))
 最近になって、久しぶりに『自治体の新臨時・非常勤職員の身分取扱』(地方公務員任用制度研究会編著、学陽書房、2001年)を見ていると、東京都の非常勤講師の報酬に関する記述が掲載されていることに気がついた。手元にあるのが2001年版なので、最新版は確認していないが…。抜粋しておきたい。

ウ 都立学校等に勤務する非常勤講師
  都立学校及び区市町村立学校に勤務する非常勤講師には、基礎報酬(正規任用の通常勤務職員の給料に相当する第1種基礎報酬と通勤手当に相当する第2種基礎報酬)が、非常勤講師のうち、一定の要件を満たした準常勤講師には、基礎報酬の外に、付加報酬(期末手当・勤勉手当に相当する報酬)が支給される。第2種基礎報酬と付加報酬については、諸手当の項で取り上げることとし、ここでは、第1種基礎報酬について述べる。
 基礎報酬については、「都立学校等に勤務する講師の報酬等に関する条例」で、「時間を単位とし、その額は、非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する条例第2条に定める額を超えない範囲内において定めるものとする。」と規定し、報酬の額、支給方法等については、教育委員会規則に委ねている。条例で定める報酬額の上限は、教育業務に従事する者の月額を502,000円としている。
 具体的な額については、経験年数に応じた1時間当たりの報酬額を決定し(次頁の表)、この単価を基礎に、1週間当たりの勤務すべき時間数から算出することとしている。
 すなわち、
 報酬額=1時間当たりの報酬額×1週間当たりの勤務すべき時間数×52週÷12月-1時間当たりの報酬額×土曜日1日当たりの勤務すべき勤務時間数×2)
という式によって算定される。
 1時間当たりの報酬額は、従来、正規教員の給料を基準とした方式(正規教員に適用される級別資格基準により経験年数に応じて決定される級号給に相当する額を基礎に、調整手当、割増率を考慮に入れて算定)であったが、平成4年4月1日から、人事委員会の平均給与改定率によるとともに、改定された報酬額は、正規教員の給与改定時まで遡及して適用される方式に改められた。
 平成12年度現在、経験年数を13区分とし、それぞれの区分に応じた単価を表(上図)のとおりとしている。

 平成12年度 都立学校等に勤務する講師の1時間当たりの報酬額
(小・中・高・盲・ろう・養護学校に勤務する講師(通信制を除く)の場合)
 経験区分 経験年数等    時間額
  1   1年未満     1,990円
  2   1年以上2年未満 2,060円
  3   2年以上3年未満 2,140円
  4   3年以上4年未満 2,220円
  5   4年以上5年未満 2,290円
  6   5年以上6年未満 2,360円
  7   6年以上7年未満 2,440円
  8   7年以上8年未満 2,530円
  9   8年以上9年未満 2,620円
  10   9年以上10年未満 2,720円
  11   10年以上11年未満 2,810円
  12   11年以上12年未満 2,930円
  13   12年以上     3,020円  (185~186頁)


 昔は正規教員の給料を基準に算定されていた、つまり均衡処遇の考え方を採用した上で割増率が導入されていたようだが、平成4年以降その考え方が崩れたと書かれている。
 さて、令和2年4月から会計年度任用職員制度が導入されたが、どうなっているのであろうか。平成元年に改正された改正後の条例・規則を確認する。

<改正前>
○都立学校等に勤務する講師の報酬等に関する条例<改正前>
(報酬の額等)
第六条 時間講師には、基礎報酬を支給する。
2 準常勤講師には、前項の基礎報酬のほか、付加報酬を支給する。
3 前二項に規定する基礎報酬及び付加報酬は、第四条第一項に規定する勤務時間を基準とし、次の各号に定めるところによる。
一 基礎報酬 時間を単位とし、その額は、非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する条例(昭和三十一年東京都条例第五十六号)第二条に定める額を超えない範囲内において定めるものとする。
二 付加報酬 学校職員の給与に関する条例(昭和三十一年東京都条例第六十八号)第二十四条及び第二十四条の二の規定に準じて定めるものとする。
4 前項に規定する報酬の支給額、支給方法その他必要な事項は、教育委員会規則で定める。

○非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する条例<改正前>
(報酬の額)
第二条 職員に対する報酬の額は、日額、月額又は時間額で定めるものとし、別表一に定める職員の種別に対応する額をこえない範囲内において、別表二に定める勤務態様に対応した支給単位により、任命権者が定めるものとする。ただし、(略)
別表一(第二条関係)
 職員の種別\額の種別 日額(円)   月額(円)    時間額(円)
 教育業務に従事する者 二三、八〇〇 四七八、〇〇〇 八、一〇〇


<改正後>
○都立学校等に勤務する講師の報酬等に関する条例(昭和四九年条例第三〇号)
(勤務時間等)
第四条 時間講師の勤務時間は、次に掲げる時間とする。
 一 教科の授業に要する時間
 二 東京都教育委員会(以下「教育委員会」という。)が定める授業の実施に付随する業務に要する時間
 三 教育委員会が定める基準により研修の命令を受けた時間
2 勤務時間の割振りについては、東京都人事委員会(以下「人事委員会」という。)の承認を得て東京都教育委員会規則(以下「教育委員会規則」という。)で定める。
  (平一九条例一三四・平三〇条例一二三・令元条例三六・一部改正)
(報酬の額等)
第六条 時間講師には、時間を単位とし、非常勤職員の報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例(昭和三十一年東京都条例第五十六号)第二条に定める額を超えない範囲内において、人事委員会の承認を得て教育委員会規則で定める額の報酬を支給する。
2 前項に規定するもののほか、報酬の支給方法その他必要な事項は、人事委員会の承認を得て教育委員会規則で定める。
  (平一九条例一三四・令元条例三六・一部改正)

○非常勤職員の報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例(昭和三一年条例第五六号)
〔非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する条例〕を公布する。
(報酬の額)
第二条 職員に対する報酬の額は、日額、月額又は時間額で定めるものとし、別表一に定める職員の種別に対応する額をこえない範囲内において、別表二に定める勤務態様に対応した支給単位により、任命権者が定めるものとする。ただし、月額で定める場合には、任命権者は、あらかじめ知事に協議するものとする。
2 前項の規定にかかわらず、職務の性質上これによりがたい職にある者の報酬の額は、任命権者があらかじめ知事と協議して定める額とする。
3 前二項により報酬の額を定める場合には、職員の職務の複雑性、困難性、特殊性及び責任の軽重に応じ、かつ、常勤職員の給与との権衡を考慮してしなければならない。
4 前三項に規定するもののほか、報酬の額に関し必要な事項は、東京都規則で定める。この場合において、法第二十二条の二第一項第一号に掲げる職員(以下「会計年度任用職員」という。)に関する事項を定めるときは、人事委員会の承認を得るものとする。
(昭四八条例一六・全改、平二六条例一四一・平三〇条例一〇七・一部改正)
別表一(第二条関係)
 職員の種別\額の種別 日額(円)   月額(円)    時間額(円)
 教育業務に従事する者 二三、八〇〇 四七八、〇〇〇 八、一〇〇

○都立学校等に勤務する時間講師に関する規則(昭和四九年教育委員会規則第二四号)
(勤務時間)
第十四条 条例第四条第一項の勤務時間は、一週間を単位として二十六時間を超えない範囲内で定める。
2 前項の規定にかかわらず、教育委員会が特に必要と認める場合は、前項に規定する勤務時間を越えて勤務時間を定めることができる。
3 第一項に規定する時間講師の勤務時間の一単位時間は、六十分とする。
  (平一九教委規則五九・令元教委規則一〇・一部改正)
(報酬)
第二十二条 条例第六条に規定する報酬は次のとおりとする。
 一 第一種報酬 時間講師の教育職員としての識見及び経験等を基準として、別表第三に定める区分による額
 二 第二種報酬 学校職員の給与に関する条例(昭和三十一年東京都条例第六十八号。以下「給与条例」という。)第十四条に規定する通勤手当に相当する額であつて、時間講師の通勤の実情等を勘案して、同条の例により算出した額
2 前項第一号に掲げる別表第三に定める区分による額は、常勤職員の給与との権衡を考慮し、前年度の時間額を基準として、各年度の四月一日に見直すものとする。
  (令元教委規則一〇・全改)
別表第三(第二十二条関係)
  (令元教委規則一〇・全改)
 教育職員としての経験年数等  時間額(円) 
 経験区分 経験年数
  一   一年未満        一、八八〇
  二   一年以上二年未満    一、九五〇
  三   二年以上三年未満    二、〇二〇
  四   三年以上四年未満    二、〇九〇
  五   四年以上五年未満    二、一六〇
  六   五年以上六年未満    二、二三〇
  七   六年以上七年未満    二、三一〇
  八   七年以上八年未満    二、四〇〇
  九   八年以上九年未満    二、四九〇
  十   九年以上十年未満    二、五八〇
  十一  十年以上十一年未満   二、六六〇
  十二  十一年以上十二年未満  二、七八〇
  十三  十二年以上十三年未満  二、八六〇
  十四  十三年以上十四年未満  二、九六〇
  十五  十四年以上十五年未満  三、〇五〇
  十六  十五年以上十六年未満  三、一五〇
  十七  十六年以上十七年未満  三、二五〇
  十八  十七年以上       三、三五〇


 さて、ここで会計年度任用職員制度導入後の東京都の非常勤講師の報酬額と常勤講師(1級)の給料月額+地域手当20%=基礎額との比較を確認しておこう。「時間講師の勤務時間の一単位時間は、六十分」されているので、単純に比較する。区分1に対応する号給を1号給とすべきか、大卒基準の21号給とすべきか迷うが、ここでは大卒基準の21号給によった。
 非常勤講師の報酬単価は、基礎額の1.4倍から1.65倍になっている。常勤講師の給与額に単純に比例している訳ではない。しかも、最高号給の基礎額よりも高い水準であるから、勤務時間との関係の均衡が確保されていないことになると思われる。

(東京都の非常勤講師の報酬額:対常勤講師1級)
 区分 経験年数     報酬額 対時給 号給 給料月額 基礎額 時給
 1  1年未満      1,880 1.41  21 187,000 224,400 1,336
 2  1年以上2年未満  1,950 1.42  25 192,200 230,640 1,374
 3  2年以上3年未満  2,020 1.43  29 197,400 236,880 1,411
 4  3年以上4年未満  2,090 1.44  33 202,700 243,240 1,449
 5  4年以上5年未満  2,160 1.45  37 208,600 250,320 1,491
 6  5年以上6年未満  2,230 1.45  41 214,700 257,640 1,534
 7  6年以上7年未満  2,310 1.46  45 221,700 266,040 1,584
 8  7年以上8年未満  2,400 1.47  49 228,100 273,720 1,630
 9  8年以上9年未満  2,490 1.49  53 234,500 281,400 1,676
 10 9年以上10年未満  2,580 1.50  57 240,700 288,840 1,720
 11 10年以上11年未満 2,660 1.51  61 246,600 295,920 1,762
 12 11年以上12年未満 2,780 1.54  65 252,200 302,640 1,802
 13 12年以上13年未満 2,860 1.55  69 257,800 309,360 1,842
 14 13年以上14年未満 2,960 1.57  73 263,300 315,960 1,882
 15 14年以上15年未満 3,050 1.59  77 268,600 322,320 1,920
 16 15年以上16年未満 3,150 1.61  81 273,800 328,560 1,957
 17 16年以上17年未満 3,250 1.63  85 278,800 334,560 1,992
 18 17年以上     3,350 1.65  89 283,600 340,320 2,027
 -  (最高号給)   3,350 1.44  169 326,000 391,200 2,330


 ちなみに、正規職員である教諭(2級)の基礎額とも比較しておく。
 こうして見ると、非常勤講師の報酬単価は、正規教員である教諭の時給よりも高く、1.3倍から1.39倍になっている。常勤講師と比較した場合と比べると、むしろ教諭の給与カーブを基礎にしているようにも思える。
 しかも、2級の最高号給の基礎額よりも高い。3級の最高号給の基礎額よりも高い。さて、東京都教育委員会の担当者に聞いてみないとわからない…。

(東京都の非常勤講師の報酬額:対教諭2級)
 区分 経験年数     報酬額 対時給 号給 給料月額 基礎額 時給
 1  1年未満      1,880 1.33   9 197,300 236,760 1,410
 2  1年以上2年未満  1,950 1.33  13 205,800 246,960 1,471
 3  2年以上3年未満  2,020 1.32  17 214,300 257,160 1,531
 4  3年以上4年未満  2,090 1.31  21 223,500 268,200 1,597
 5  4年以上5年未満  2,160 1.30  25 232,100 278,520 1,659
 6  5年以上6年未満  2,230 1.30  29 240,700 288,840 1,720
 7  6年以上7年未満  2,310 1.30  33 249,200 299,040 1,781
 8  7年以上8年未満  2,400 1.30  37 257,700 309,240 1,842
 9  8年以上9年未満  2,490 1.31  41 266,200 319,440 1,902
 10 9年以上10年未満  2,580 1.31  45 274,700 329,640 1,963
 11 10年以上11年未満 2,660 1.31  49 283,100 339,720 2,023
 12 11年以上12年未満 2,780 1.33  53 291,500 349,800 2,083
 13 12年以上13年未満 2,860 1.33  57 299,900 359,880 2,143
 14 13年以上14年未満 2,960 1.35  61 307,900 369,480 2,200
 15 14年以上15年未満 3,050 1.35  65 315,700 378,840 2,256
 16 15年以上16年未満 3,150 1.36  69 323,200 387,840 2,310
 17 16年以上17年未満 3,250 1.38  73 330,100 396,120 2,359
 18 17年以上     3,350 1.39  77 336,800 404,160 2,407
 -  (最高号給)   3,355 1.22  177 386,300 463,560 2,761


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