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5.行(一)の構造 ブログトップ

51. 行政職俸給表(一)の構造(その6) [5.行(一)の構造]

 ところで、平成18年4月の改正では、行(一)の4級以上で若い号俸が4分割前の号俸で1~6号俸分カットされた。その号俸の在職実態がないからというのが人事院の説明だが、何故在職実態がないのかといえば、カットされた号俸は、制度的な理由から使用しなくなったからその結果在職実態がなくなったのだと思う。それは、平成4年度から漸進的に実施された昇格改善の効果によるものだといってよいだろう。
 まず、平成18年4月の改正で級構成の再編が行われているため、改正後の行(一) Ⅱ種の基幹号俸による俸給制度表を作成する。これに昇格改善による1号上位昇格制度の効果を加味して4級以上の職務の級については1号俸づつ前倒しにする。つまり、4級は1号俸前倒し、5級は2号俸前倒し、6級は3号俸前倒し、7級は4号俸前倒し…というふうにして各級の号俸を並べるのである。これに行(一)Ⅱ種の級別資格基準のラインを重ねる。すると、級別資格基準のラインよりも初号の位置が何号俸分早くなっているかをみると次のようになる。これは行(一)Ⅰ種でおこなっても、級別資格基準のラインと各級の初号の位置関係が基本的には同じなので同様の結果となる。
 <行(一)の級別資格基準のラインと初号の位置関係>
           昇格改善前  昇格改善後  18.4カット
  新1級(2級)    0号俸    0号俸     -
  新2級(3級)    1       1        -
  新3級(4・5級)  1       2(1+1)  1号俸
  新4級(6級)    1       3(1+2)  2
  新5級(7級)    1       4(1+3)  3
  新6級(8級)    1       5(1+4)  4
  新7級(9級)    ※       ※+5    5
  新8級(10級)   ※       ※+6    6
  新9級(11級)   ※       ※+7    6
   新7級(9級以上)の※は、規則上「別に定める」となっている。

 これを見ると、昇格改善により従来より早くなった号俸にほぼ対応する号俸がカットされたことが分かる。人事院は、50年ぶりと言われる18年4月の給与構造改革の中で、制度的に実質使えなくなっていた各職務の級の初号付近の号俸をこの際整理したのだと理解してよいであろう。人事院は、在職実態がない…などと外向けには説明しつつ、本音は俸給制度としての形にこだわったのではないか。
 ただ、ここで確認したいのは、18年4月改正によってカットされた行(一)の4級以上の各職務の級の号俸数には、級別資格基準が大きく影響していたのだという事実、そして、給与構造改革によって号俸が4分割された俸給表ではあるが、その形は、基幹号俸で見れば従来の考え方を色濃く継承したものとなっているのではないかということである。


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50. 行政職俸給表(一)の構造(その5) [5.行(一)の構造]

 行政職俸給表(一)の構造を考察するには、職員の職務の級を決定する場合に必要となる級別資格基準の意義と役割を確認しておく必要があるだろう。

 教(二)(三)が適用される教育職員については、実務の中で職務の級を意識することはほとんどない。教諭や養護教諭は2級であるし、教頭は3級、校長は4級と決まっている、と思っている。確かに、短大卒又は大学卒の者を小中学校又は高等学校の教諭に採用する場合の2級の級別資格基準については、必要経験年数及び必要在級年数ともに0年であるから、職務の級のことなど考える必要もなく、号俸だけを気にすればよい。しかし、短大卒の教諭直採者を養護学校に配置するとなると2年6月を経ないと2級に決定できないことになるし、比較的若い者を教頭や校長に任用する際にはそれぞれの級別資格基準をクリアしているかどうかチェックしなければならない。そのときになって初めて意識する程度であろう。
 この級別資格基準は、行(一)の場合には教(二)(三)の場合とは少し様相を異にし、11級制を採用する行(一)の昇格を考えるにはこれを強く意識せざるを得ないものとなっている。
 そもそも級別資格基準は、職階制が未実施で、官職の統一的な任用基準もない中で、給与制度の運用面の要請から、各職員間の給与の均衡を確保するために、少なくともそれぞれの「職務の級に決定するに必要な職員の最低資格」を定めておく必要から設けられたものであった(『公務員給与法精義』)。
 そこで、11級制移行時の昭60年7月1日適用の行政職俸給表(一)により行(一)Ⅱ種(大学卒)の俸給制度表を作成し、これに行(一)Ⅱ種の級別資格基準のラインを重ねてみた。すると、各職務の級の初号の大卒制度年数上の位置と級別資格基準のラインとが完全に一致していることが分かる。この時点の行(一)Ⅰ種は、級別資格基準のラインが各職務の級の初号より1年ないし2年早くなっている。このような制度では、行(一)Ⅱ種の者は、優秀者でも原則として各職務の級の号俸を1段づつ昇っていくようなイメージになるが、行(一)Ⅰ種については、この時の初任給基準こそ2-2で行(一)Ⅱ種よりも1号有利なだけだが、級別資格基準の2号俸分の有利差を生かして昇格の際に1年飛び越して高い号俸に飛びつくこともあるようなイメージになっている。
 その後、それぞれ時期は違うが初任給基準が改善され、その結果、変更されなかった級別資格基準のラインが各職務の級の初号より1年遅くなる形となった。その点は、Ⅰ種、Ⅱ種とも同じ形となったのであるが、初任給基準の2号俸分の格差自体が変更された訳ではない。ただ、なぜ各職務の級の初号がその位置にあるのかというのは、級別資格基準と関係していることは間違いない。
現行では、級別資格基準のラインが各職務の級の初号より1年遅くなっているが、ということは各職務の級の初号は使うことはなく、必要ないのではないかとの疑念もわく。しかし、勤務成績が特に良好である職員を昇格させる場合には、いわゆる8割昇格という制度が利用できることとなっている。その効果は、初号の位置を級別資格基準のラインよりも遅い方が高まると考えられるが、どのような考えで現在の姿となっているのかは分からない。
 ところで、この8割昇格については、財務省や経済産業省では使っているが文部科学省や農林水産省では使っていないのではないかという学識経験者の研究もあるけれど、いずれにしても組織の外部から推測したものにすぎない。


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49. 行政職俸給表(一)の構造(その4) [5.行(一)の構造]

 前回、行(一)にはⅠ種、Ⅱ種、Ⅲ種の3つの俸給表が組み込まれていると考えた傍証として、56歳昇給停止制度の俸給表構造への影響を考察したが、この点に関しては、人事院給与局給与法令研究会人事院給与局長鹿兒島重治編『改正給与制度詳説』(学陽書房、昭和61年)が参考になる。
 これによれば、8等級制から11級制度へと俸給表の等級構成が再編整備されるに至った重要な契機として、定年制の実施を第一に挙げ、その経緯を解説している。給与制度改定の検討過程で示された説明会配付資料(昭和60年5月)には、次のような下りがある。
 「定年制度の施行による在職期間の明確化等に伴い、標準的な職員の採用から退職までの公務員生活を想定した制度設計に基づき必要号俸数を設定」
 更に、従前は「各等級の号俸構成は在職者の実態を基準とした形で設定されてきたものであるが、昭和60年から定年制度が実施されることによっていわば職員の在職期間が明確になることになるため、職員の在職中の処遇の明確化を図る必要があった。」と指摘した後、「各等級の最高号俸の位置については、現行制度において昇給し得ることとされている年齢である57歳に見合う号俸まで設定することを基本として措置された」と述べている。
 この頃の昇給延伸・昇給停止制度は、56歳を超える職員の最初の昇給期間は18月、その後の昇給期間は24月とし、58歳を超える職員を昇給停止としていたのだが、そこに定年制が実施されることになり、3号俸を限度に号俸延長の措置が採られたようである。
 その後、平成2年に初任給基準が1号俸改善され、従って、俸給制度表上では1号俸づつ前倒しされる形となり、結果として昭和60年に最高号俸の位置を制度年齢57歳にいったん並べたラインが1年前倒しの56歳昇給停止のラインにそろった形となったのである。

 傍証の二つめの根拠は、「適用俸給表別、級別、号俸別人員」の表である。これは、毎年の人事院勧告の公務員会計の報告資料に掲載されている。ちなみに平成17年勧告の行(一)についてみてみよう。
 といったが、紙幅の関係でここには掲載できない。おおざっぱに見て1,000人以上の在職人員となっている号俸の束がある。これがおそらく行(一)Ⅱ種及びⅢ種であろう。大きな在職人員の束の行き着き先は、7級のわく外と8級のわく外であることが容易に分かる。それらの大きな束より早く昇格し、各級をわたっているグループがあるが、これが行(一)Ⅰ種であろう。試験区分別にこの「適用俸給表別、級別、号俸別人員」の表が作成されていれば歴然とするのだろうが、それは公表されていない。従って、あくまでおおざっぱなことしか想像できないが、おそらくそのような在職の実態があるといって良いのではないかと思う。


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48. 行政職俸給表(一)の構造(その3) [5.行(一)の構造]

 前回、行(一)の試験区分別の俸給表の適用の検討を通して、行(一)にはⅠ種、Ⅱ種、Ⅲ種の3つの俸給表が組み込まれていることを見てきた。あくまで想定である。人事院がどのように考えているかは分からない。
 想定ではあるが、そのように想定する根拠は初任給基準のほかにもある。公務員給与制度の変遷からすれば、昭和32年に8等級制へ移行した際、政府案による行政職俸給表(一)(二)が国会により一本化されたという事実があり、少なくとも2つの俸給表が組み込まれたともいえるが、ここでは違う観点から考えてみたい。
 一つは、56歳昇給停止制度である。ここで、それが「俸給制度表」でどのように考慮されているか確認しておこう。
 これまで、教(二)(三)2級の検討のため行(一)Ⅱ種(大学卒)の俸給制度表を見てきた。そこで、行(一)Ⅰ種(大学卒)と行(一)Ⅲ種(高校卒)の俸給制度表も作ってみる。この時点では、スタートの初任給の職務の級と号俸は分かるが、いったい上は何級まで考えるのかは分からない。出来上がった俸給制度表に56歳昇給停止の線を入れてみる。すると、行(一)Ⅱ種(大学卒)では、4級から7級は55歳のライン、8級以上で56歳昇給停止のラインと一致する。行(一)Ⅰ種(大学卒)については、8級から10級は54歳のラインであり、11級に至って56歳昇給停止のラインを超え、更に指定職俸給表へとつながる。行(一)Ⅲ種(高校卒)については、4級から7級で56歳昇給停止ラインとなっている。
 56歳昇給停止制度を俸給表の構造にどのように組み込むべきかという発想から、実際の俸給表の設計が行われているとするならば、4級から7級までが行(一)Ⅲ種(高校卒)の到達水準、8級から10級が行(一)Ⅱ種(大学卒)の到達水準、11級及び指定職俸給表が行(一)Ⅰ種(大学卒)の到達水準と考えることも理にかなったものと思われるのである。


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47. 行政職俸給表(一)の構造(その2) [5.行(一)の構造]

 行(一)の改定に当たり、まず検討するのは初任給の水準である。少なくとも11級制導入後は、初任給といえば大学卒か高校卒かの比較をベースにしている。実際、人事院勧告では、大学卒(Ⅰ種試験)、大学卒(Ⅱ種試験)、高校卒(Ⅲ種試験)のそれぞれの初任給を示して勧告している。行(一)の初任給基準表では、その他の試験区分についても記載されているが、このⅠ種、Ⅱ種、Ⅲ種の3区分が基本と考えてよいであろう。
 これらの初任給の号俸について、過去の経緯はとりあえず置いておいて、現行の号俸となった平成2年4月1日適用の初任給基準表を見てみよう。
<行(一)初任給基準表>
  試験区分   初任給基準  学歴差    初任給の号俸差  有利差
  Ⅰ種(大学卒)   3-1    Ⅱ種と0年  Ⅱ種と2号俸    Ⅱ種より2号俸有利
  Ⅱ種(大学卒)   2-2    Ⅲ種と4年  Ⅲ種と5号俸    Ⅲ種より1号俸有利
  Ⅲ種(高校卒)   1-3
 学歴社会の反映と見るか、戦前の身分制の残滓とみるかどうかは別にして、長い公務員生活における給料の出発点ともいえる初任給の水準において、高校卒と大学卒とで1号俸の差、同じ大学卒でもキャリア官僚かノンキャリかの違いで2号俸の差が付けられているのである。
 このことと前回の話とを総合して考えてみたい。その際、以前触れた「俸給制度表」を合わせて見てみることが重要である。
 結論から言えば、行(一)という俸給表は、行政職に適用される11級構成の一つの俸給表の姿をとっているけれども、そこには、学歴や試験区分を基本に3つの俸給表が潜んでいる構造になっているのではないかということである。
 そういう観点から、「俸給制度表」を見ながら想定した試験区分別の俸給表の適用を次に示してみたい。
 <行(一)の試験区分別の俸給表の適用>
  試験区分   初任給基準  職務の級
  Ⅰ種(大学卒)   3-1   3級から11級、更に指定職俸給表(局長級以上)へ
  Ⅱ種(大学卒)   2-2   2級から10級(本省庁の課長まで)
  Ⅲ種(高校卒)   1-3   1級から7級(本省庁の課長補佐まで)

 初任給基準はより詳細に定められているが、おそらくこの3区分が基本ではないかと思っている。(より詳細に分析すれば、例えば3級と4級の間にある壁をどう見るかなどの論点をはじめ切り口は色々あるが、ここでは検討しない。)


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46. 行政職俸給表(一)の構造(その1) [5.行(一)の構造]

 旧教育職俸給表(二)(三)について考察するためには、行政職俸給表(一)についての理解がベースになる。もちろん行(一)の作成方法=官民均衡を図りつつ従来の経緯や国家公務員の在職実態などに配慮しつつ、具体的な金額を号俸単位で配分していく=には検討が及ばないけれども、教(二)(三)を考える上でのヒントになりそうな行(一)の基本構造についてここで若干考察しておきたい。

 行(一)のそれぞれの職務の級にどのような官職を格付けするかは級別標準職務表によることになるが、よく知られているように、そこには機関・組織の大きさなどにより4段階の組織階層がある。本省庁、管区機関、府県単位機関、地方出先機関である。
 <行(一)の組織階層別官職の格付け>
   本省庁     1級~11級(局長級以上は指定職俸給表)
   管区機関    1級~11級
   府県単位機関 1級~10級
   地方出先機関 1級~8級
 ところで、義務教育諸学校の教育職員の給与については、いわゆる人材確保法に基づき、一般の公務員の給与水準に比較して必要な優遇措置が講じられなければならないとされている訳だが、その場合の「一般の公務員の給与水準」とは何だろう。
 既に見てきたように、教(二)(三)と対比する行(一)はⅡ種(大学卒)であった。色々な書物によれば、Ⅱ種採用の事務官は本省庁の課長補佐どまり、よくいって課長まで昇進するが、それもきわめてまれらしい。本省庁の課長補佐は、行(一)の7級又は8級であるから、管区機関の困難課長補佐又は課長、府県単位機関の相困課長、困難課長又は機関の長、地方出先機関の特困課長又は機関の長と同格といえる。つまり、一般の公務員が行(一)Ⅱ種(大学卒)であるとするならば、その給与水準とは行(一)の2級から7級又は8級までの水準ということになるとして受け取ってよいのではないか。実際、教(二)(三)の行(一)との対比を確認すると、以前言及したように、教(二)は行(一)2級から8級まで、教(三)は行(一)2級から7級までであった。
 何が言いたいかと言えば、行(一)という11級構成の俸給表があるのだが、一つの俸給表を4つの組織階層別に適用することのほかに、別の見方があるということである。


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