SSブログ

50. 行政職俸給表(一)の構造(その5) [5.行(一)の構造]

 行政職俸給表(一)の構造を考察するには、職員の職務の級を決定する場合に必要となる級別資格基準の意義と役割を確認しておく必要があるだろう。

 教(二)(三)が適用される教育職員については、実務の中で職務の級を意識することはほとんどない。教諭や養護教諭は2級であるし、教頭は3級、校長は4級と決まっている、と思っている。確かに、短大卒又は大学卒の者を小中学校又は高等学校の教諭に採用する場合の2級の級別資格基準については、必要経験年数及び必要在級年数ともに0年であるから、職務の級のことなど考える必要もなく、号俸だけを気にすればよい。しかし、短大卒の教諭直採者を養護学校に配置するとなると2年6月を経ないと2級に決定できないことになるし、比較的若い者を教頭や校長に任用する際にはそれぞれの級別資格基準をクリアしているかどうかチェックしなければならない。そのときになって初めて意識する程度であろう。
 この級別資格基準は、行(一)の場合には教(二)(三)の場合とは少し様相を異にし、11級制を採用する行(一)の昇格を考えるにはこれを強く意識せざるを得ないものとなっている。
 そもそも級別資格基準は、職階制が未実施で、官職の統一的な任用基準もない中で、給与制度の運用面の要請から、各職員間の給与の均衡を確保するために、少なくともそれぞれの「職務の級に決定するに必要な職員の最低資格」を定めておく必要から設けられたものであった(『公務員給与法精義』)。
 そこで、11級制移行時の昭60年7月1日適用の行政職俸給表(一)により行(一)Ⅱ種(大学卒)の俸給制度表を作成し、これに行(一)Ⅱ種の級別資格基準のラインを重ねてみた。すると、各職務の級の初号の大卒制度年数上の位置と級別資格基準のラインとが完全に一致していることが分かる。この時点の行(一)Ⅰ種は、級別資格基準のラインが各職務の級の初号より1年ないし2年早くなっている。このような制度では、行(一)Ⅱ種の者は、優秀者でも原則として各職務の級の号俸を1段づつ昇っていくようなイメージになるが、行(一)Ⅰ種については、この時の初任給基準こそ2-2で行(一)Ⅱ種よりも1号有利なだけだが、級別資格基準の2号俸分の有利差を生かして昇格の際に1年飛び越して高い号俸に飛びつくこともあるようなイメージになっている。
 その後、それぞれ時期は違うが初任給基準が改善され、その結果、変更されなかった級別資格基準のラインが各職務の級の初号より1年遅くなる形となった。その点は、Ⅰ種、Ⅱ種とも同じ形となったのであるが、初任給基準の2号俸分の格差自体が変更された訳ではない。ただ、なぜ各職務の級の初号がその位置にあるのかというのは、級別資格基準と関係していることは間違いない。
現行では、級別資格基準のラインが各職務の級の初号より1年遅くなっているが、ということは各職務の級の初号は使うことはなく、必要ないのではないかとの疑念もわく。しかし、勤務成績が特に良好である職員を昇格させる場合には、いわゆる8割昇格という制度が利用できることとなっている。その効果は、初号の位置を級別資格基準のラインよりも遅い方が高まると考えられるが、どのような考えで現在の姿となっているのかは分からない。
 ところで、この8割昇格については、財務省や経済産業省では使っているが文部科学省や農林水産省では使っていないのではないかという学識経験者の研究もあるけれど、いずれにしても組織の外部から推測したものにすぎない。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:資格・学び

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。