334.東京都の教育職給料表(その6) [41.東京都の教育職給料表]
東京都の行政職給料表(一)は国の行政職俸給表(一)とは異なる構造の給料表となっている。国の10級制に対して、東京都では6級制になっているし、級別資格基準と初号の位置関係や最高号給の制度年齢も国の俸給表の作成思想とは異なるものと思われる。それ自体、考察の対象としてよいのだが、このノートでは省略する。
前回までは、東京都の教育職給料表について、全人連モデル給料表と対比することによって、その特長を理解しようとしてきた。それは、旧教育(二)と旧教育(三)を一本化するとともに、2級の給料表を2つに分化し、6級制としたものであった。もちろん、東京都の行政(一)の6級制とは異なる給料表になっている。
そこで、今回は、東京都の教育職給料表と行政職給料表(一)との対比、すなわち人材確保法を意識した場合の東京都内部の較差を確認しておきたいと思う。手法は、制度表を作成し、同格と想定される職務の級の給料月額について、制度年齢が同じもの同士を比較する。
例によって、主なものを抽出して掲載する。
<教育2級(教諭)×行政2級(主任)>
年齢(経験) 教育2級 行政2級 較差
23歳(1年) 13号 204,700円 1号 201,100円 3,600円(1.02)
33歳(11年) 53号 294,300円 41号 278,400円 15,900円(1.06)
55歳(33年) 141号 385,400円 129号 369,300円(最高)16,100円(1.04)
64歳(42年) 177号 399,200円 -
<教育3級(主任教諭)×行政3級(係長)>
年齢(経験) 教育3級 行政3級 較差
27歳(5年) 1号 246,600円 9号 240,600円 6,000円(1.02)
33歳(11年) 25号 303,000円 33号 291,300円 11,700円(1.04)
55歳(33年) 113号 416,000円 121号 403,600円 12,400円(1.03)
60歳(38年) 133号 424,000円 141号 411,900円(最高)12,100円(1.03)
64歳(42年) 149号 430,000円 -
<教育4級(主幹教諭)×行政4級(課長補佐)>
年齢(経験) 教育4級 行政4級 較差
28歳(6年) 1号 271,100円 1号 258,600円 12,500円(1.05)
33歳(11年) 21号 319,500円 21号 302,600円 16,900円(1.06)
55歳(33年) 109号 445,400円 109号 422,800円 22,600円(1.05)
59歳(37年) 125号 451,800円 125号 429,500円(最高)22,300円(1.05)
61歳(39年) 133号 455,000円 -
<教育5級(副校長)×行政5級(課長)>
年齢(経験) 教育5級 行政5級 較差
33歳(11年) 1号 335,500円 13号 316,900円 18,600円(1.06)
45歳(23年) 49号 438,400円 61号 437,400円 1,000円(1.00)
54歳(32年) 85号 475,500円 97号 461,400円(最高)14,100円(1.03)
58歳(36年) 101号 483,500円 -
このように対比することが人材確保法の趣旨を踏まえたものであるならば、東京都の教育2級~5級については、いずれも東京都の一般の公務員を上回る水準を確保できているということになるのだろう。(東京都の教諭に適用される2級の位置づけがこれでよいのかどうかは議論があろうが、法令で格付けが明記されていない以上、極論すれば、それぞれの団体の考え方次第ということになろうか。)
次に、教育6級(統括校長・校長)を確認する。
東京都の行政(一)6級は本庁等の部長に適用される職務の級なのだが、号給は4つしかなく、個別の部長ポストごとに適用される号給が決められている。そのため、教育6級(統括校長・校長)については、制度年齢による行政(一)との対比ができないので、水準のみによる比較をしてみる。
なお、教育6級の初号の大学卒制度年齢は36歳であり、行政5級の同じ制度年齢の号給である25号給以上の水準も記載する。
<教育6級(統括校長・校長)×行政6級>
行政5級 25号348,600円~97号461,400円
教育6級 1号382,300円~85号512,500円
行政6級 1号501,000円~4号534,000円
おおざっぱであるが、教育6級(統括校長・校長)の水準は、東京都の課長級(行政5級)と部長級(6級)も中間に位置づけられるものと言えそうである。
次に、教育1級(講師・実習助手)を見ておく必要がある。
対比させるべき東京都の行政(一)の職務の級は1級(係員)なのであるが、基準となる初任給基準の考え方が違っているようである。つまり、教育職の場合、大学卒と高校卒の学歴差4年に対して5年分の号給数差(大学卒1-21、高校卒1-1)となっているのに対して、行政職(一)のそれは6年分の号給数差(大学卒1-29、高校卒1-5)となっているのである。したがって、水準差の比較を試みる場合に、大学卒基準で比較するのか、高校卒の基準で比較するのかという問題が生じる。
<教育1級(講師)×行政1級(係員) 大学卒基準>
年齢(経験) 教育1級 行政1級 較差
22歳(0年) 21号 185,300円 29号 182,400円 2,900円(1.02)
23歳(1年) 25号 191,000円 33号 191,200円 ▲200円(1.00)
53歳(31年) 145号 327,800円 153号 336,600円(最高)▲8,800円(0.97)
59歳(37年) 169号 337,100円(最高) -
<教育1級(実習助手)×行政1級(係員) 高校卒基準>
年齢(経験) 教育1級 行政1級 較差
18歳(0年) 1号 146,000円 5号 142,700円 3,300円(1.02)
31歳(13年) 53号 236,200円 57号 236,600円 ▲400円(1.00)
55歳(37年) 149号 329,400円 153号 336,600円(最高)▲7,600円(0.98)
40歳(42年) 169号 337,100円(最高) -
大学卒基準の場合も高校卒基準の場合も、初任給基準は教育1級の方が高く設定されているが、給与カーブは途中でクロスし、最高到達号給の水準は教育1級の方が高いとはいえ、制度年齢ごとではほぼ行政1級の方が有利となっており、教育1級は同格と想定される行政1級より優遇されているとまでは言えない。なお、全人連モデルにあっては行政(一)1~2級と比較することとなるが、東京都のように給与カーブがクロスし、逆転するようなことはない。
以上、東京都の教育職給料表と行政職給料表(一)について、この学習ノートで考察してきた格合わせ方式により対比を試みた。
そもそも、級別資格基準と初号の位置関係や最高号給の制度年齢が国の俸給表の作成方法とは異なっていると考えられることから、このように比較することが許されるのかどうか分からない。
また、教育職給料表の2級及び3級の最高号給の制度年齢が行政職給料表(一)以上に高くなっているのは、給与カーブをフラット化するとうい教育職給料表の改定に伴う切替に当たって、同額又は直近上位に切り替える方式を採用したことから、人事院の方式では考えられない号給数が必要になったのだろう。従って、切替に伴い、制度年齢が切替前の制度年齢よりも高くなってしまった者が順次退職していくことにより、将来的には最高号給付近の号給は不要になるだろう。もっとも、55歳原則昇給停止制度を導入しているので、実際の様相は違うだろうが…
とはいえ、ある程度、東京都の教育職給料表の特長を掴むことはできたのではないかと思う。
前回までは、東京都の教育職給料表について、全人連モデル給料表と対比することによって、その特長を理解しようとしてきた。それは、旧教育(二)と旧教育(三)を一本化するとともに、2級の給料表を2つに分化し、6級制としたものであった。もちろん、東京都の行政(一)の6級制とは異なる給料表になっている。
そこで、今回は、東京都の教育職給料表と行政職給料表(一)との対比、すなわち人材確保法を意識した場合の東京都内部の較差を確認しておきたいと思う。手法は、制度表を作成し、同格と想定される職務の級の給料月額について、制度年齢が同じもの同士を比較する。
例によって、主なものを抽出して掲載する。
<教育2級(教諭)×行政2級(主任)>
年齢(経験) 教育2級 行政2級 較差
23歳(1年) 13号 204,700円 1号 201,100円 3,600円(1.02)
33歳(11年) 53号 294,300円 41号 278,400円 15,900円(1.06)
55歳(33年) 141号 385,400円 129号 369,300円(最高)16,100円(1.04)
64歳(42年) 177号 399,200円 -
<教育3級(主任教諭)×行政3級(係長)>
年齢(経験) 教育3級 行政3級 較差
27歳(5年) 1号 246,600円 9号 240,600円 6,000円(1.02)
33歳(11年) 25号 303,000円 33号 291,300円 11,700円(1.04)
55歳(33年) 113号 416,000円 121号 403,600円 12,400円(1.03)
60歳(38年) 133号 424,000円 141号 411,900円(最高)12,100円(1.03)
64歳(42年) 149号 430,000円 -
<教育4級(主幹教諭)×行政4級(課長補佐)>
年齢(経験) 教育4級 行政4級 較差
28歳(6年) 1号 271,100円 1号 258,600円 12,500円(1.05)
33歳(11年) 21号 319,500円 21号 302,600円 16,900円(1.06)
55歳(33年) 109号 445,400円 109号 422,800円 22,600円(1.05)
59歳(37年) 125号 451,800円 125号 429,500円(最高)22,300円(1.05)
61歳(39年) 133号 455,000円 -
<教育5級(副校長)×行政5級(課長)>
年齢(経験) 教育5級 行政5級 較差
33歳(11年) 1号 335,500円 13号 316,900円 18,600円(1.06)
45歳(23年) 49号 438,400円 61号 437,400円 1,000円(1.00)
54歳(32年) 85号 475,500円 97号 461,400円(最高)14,100円(1.03)
58歳(36年) 101号 483,500円 -
このように対比することが人材確保法の趣旨を踏まえたものであるならば、東京都の教育2級~5級については、いずれも東京都の一般の公務員を上回る水準を確保できているということになるのだろう。(東京都の教諭に適用される2級の位置づけがこれでよいのかどうかは議論があろうが、法令で格付けが明記されていない以上、極論すれば、それぞれの団体の考え方次第ということになろうか。)
次に、教育6級(統括校長・校長)を確認する。
東京都の行政(一)6級は本庁等の部長に適用される職務の級なのだが、号給は4つしかなく、個別の部長ポストごとに適用される号給が決められている。そのため、教育6級(統括校長・校長)については、制度年齢による行政(一)との対比ができないので、水準のみによる比較をしてみる。
なお、教育6級の初号の大学卒制度年齢は36歳であり、行政5級の同じ制度年齢の号給である25号給以上の水準も記載する。
<教育6級(統括校長・校長)×行政6級>
行政5級 25号348,600円~97号461,400円
教育6級 1号382,300円~85号512,500円
行政6級 1号501,000円~4号534,000円
おおざっぱであるが、教育6級(統括校長・校長)の水準は、東京都の課長級(行政5級)と部長級(6級)も中間に位置づけられるものと言えそうである。
次に、教育1級(講師・実習助手)を見ておく必要がある。
対比させるべき東京都の行政(一)の職務の級は1級(係員)なのであるが、基準となる初任給基準の考え方が違っているようである。つまり、教育職の場合、大学卒と高校卒の学歴差4年に対して5年分の号給数差(大学卒1-21、高校卒1-1)となっているのに対して、行政職(一)のそれは6年分の号給数差(大学卒1-29、高校卒1-5)となっているのである。したがって、水準差の比較を試みる場合に、大学卒基準で比較するのか、高校卒の基準で比較するのかという問題が生じる。
<教育1級(講師)×行政1級(係員) 大学卒基準>
年齢(経験) 教育1級 行政1級 較差
22歳(0年) 21号 185,300円 29号 182,400円 2,900円(1.02)
23歳(1年) 25号 191,000円 33号 191,200円 ▲200円(1.00)
53歳(31年) 145号 327,800円 153号 336,600円(最高)▲8,800円(0.97)
59歳(37年) 169号 337,100円(最高) -
<教育1級(実習助手)×行政1級(係員) 高校卒基準>
年齢(経験) 教育1級 行政1級 較差
18歳(0年) 1号 146,000円 5号 142,700円 3,300円(1.02)
31歳(13年) 53号 236,200円 57号 236,600円 ▲400円(1.00)
55歳(37年) 149号 329,400円 153号 336,600円(最高)▲7,600円(0.98)
40歳(42年) 169号 337,100円(最高) -
大学卒基準の場合も高校卒基準の場合も、初任給基準は教育1級の方が高く設定されているが、給与カーブは途中でクロスし、最高到達号給の水準は教育1級の方が高いとはいえ、制度年齢ごとではほぼ行政1級の方が有利となっており、教育1級は同格と想定される行政1級より優遇されているとまでは言えない。なお、全人連モデルにあっては行政(一)1~2級と比較することとなるが、東京都のように給与カーブがクロスし、逆転するようなことはない。
以上、東京都の教育職給料表と行政職給料表(一)について、この学習ノートで考察してきた格合わせ方式により対比を試みた。
そもそも、級別資格基準と初号の位置関係や最高号給の制度年齢が国の俸給表の作成方法とは異なっていると考えられることから、このように比較することが許されるのかどうか分からない。
また、教育職給料表の2級及び3級の最高号給の制度年齢が行政職給料表(一)以上に高くなっているのは、給与カーブをフラット化するとうい教育職給料表の改定に伴う切替に当たって、同額又は直近上位に切り替える方式を採用したことから、人事院の方式では考えられない号給数が必要になったのだろう。従って、切替に伴い、制度年齢が切替前の制度年齢よりも高くなってしまった者が順次退職していくことにより、将来的には最高号給付近の号給は不要になるだろう。もっとも、55歳原則昇給停止制度を導入しているので、実際の様相は違うだろうが…
とはいえ、ある程度、東京都の教育職給料表の特長を掴むことはできたのではないかと思う。
333.東京都の教育職給料表(その5) [41.東京都の教育職給料表]
今回は、東京都の5級(副校長・教頭)及び6級(統括校長・校長)の給料表水準を確認する。
まず、5級(副校長・教頭)の水準を全人連モデルと比較していきたいが、全人連モデルの方にはいわゆる3級加算額が存在するので、加算後の額と比較しなければならないだろう。
<東京5級×旧教育(二)3級(加算額7,700円を含む。)>
年齢(経験) 東京 旧教育(二) 差額
33歳(11年) 1号 335,500円 -
34歳(12年) 5号 345,500円 1号 338,300円 7,200円(2.1%)
37歳(15年) 17号 373,900円 13号 365,400円 8,500円(2.3%)
42歳(20年) 37号 415,600円 33号 404,800円 10,800円(2.7%)
47歳(25年) 57号 451,700円 53号 435,900円 15,800円(3.6%)
52歳(30年) 77号 471,500円 73号 467,500円 4,000円(0.9%)
53歳(31年) 81号 473,500円 77号 471,300円(最高)2,200円(0.5%)
57歳(35年) 97号 481,500円 -
58歳(39年) 101号 483,500円(最高) -
<東京5級×旧教育(三)3級(加算額7,500円を含む。)>
年齢(経験) 東京 旧教育(三) 差額
30歳(8年) - 1号 293,100円
32歳(10 年) - 9号 317,400円
33歳(11年) 1号 335,500円 13号 328,900円 6,600円(2.0%)
37歳(15年) 17号 373,900円 29号 364,000円 9,900円(2.7%)
42歳(20年) 37号 415,600円 49号 397,300円 18,300円(4.6%)
47歳(25年) 57号 451,700円 69号 422,800円 28,900円(6.8%)
52歳(30年) 77号 471,500円 89号 439,100円 32,400円(7.4%)
53歳(31年) 81号 473,500円 93号 441,700円(最高)31,800円(7.2%)
57歳(35年) 97号 481,500円 -
58歳(39年) 101号 483,500円(最高) -
最高到達水準に着目すると、東京5級は、旧教育(二)3級より12,200円(2.6%)、旧教育(三)3級より41,800円(9.5%)高いこと(全人連モデルは加算額を加算後)は、以前に書いたとおり。
初号の位置や最高号給の位置が全人連モデルと異なっていることは、とりあえず置いておく。
制度年齢ごとの様相を概観すると、東京5級は、旧教育(二)3級に対しては、旧教育(二)3級初号の位置である大学卒制度年齢34歳で7,200円(2.1%)、47歳で15,800円(3.6%)高くなっているのに対して、旧教育(二)最高号給の位置である53歳では2,200円(0.5%)高に止まっている。
一方、旧教育(三)3級に対しては、東京5級初号の位置である大学卒制度年齢33歳で6,600円(2.0%)、52歳で32,400円(7.4%)高くなっているのに対して、旧教育(三)最高号給の位置である53歳では31,800円(7.2%)高くなっている。
号給の対応する部分のみで全体を比較すると、東京5級は、旧教育(二)3級に対しては2.55%高であるが、旧教育(三)3級に対しては4.99%に及んでいる。
次に、6級(統括校長・校長)について確認する。
<東京6級×旧教育(二)4級>
年齢(経験) 東京 旧教育(二) 差額
36歳(14年) 1号 382,300円 -
37歳(15年) 5号 391,700円 -
42歳(20年) 25号 434,900円 -
44歳(22年) 33号 451,200円 1号 422,000円 29,200円(6.9%)
47歳(25年) 45号 473,200円 13号 433,600円 29,600円(6.8%)
52歳(30年) 65号 501,200円 33号 479,300円 21,900円(4.6%)
53歳(31年) 69号 504,100円 37号 483,400円(最高)20,700円(4.3%)
57歳(35年) 85号 512,500円(最高) -
<東京6級×旧教育(三)4級>
年齢(経験) 東京 旧教育(三) 差額
36歳(14年) 1号 382,300円 -
37歳(15年) 5号 391,700円 -
42歳(20年) 25号 434,900円 -
44歳(22年) 33号 451,200円 1号 411,600円 39,600円(9.6%)
47歳(25年) 45号 473,200円 13号 429,200円 44,000円(10.3%)
52歳(30年) 65号 501,200円 33号 455,300円 45,900円(10.1%)
53歳(31年) 69号 504,100円 37号 458,900円(最高)45,200円(9.8%)
57歳(35年) 85号 512,500円(最高) -
以前に書いたとおり、東京6級の最高到達水準は、全人連モデルよりも相当に高いものとなっており、具体的には、旧教育(二)4級より29,100円(6.0%)、旧教育(三)4級より53,600円(11.7%)高くなっている。
大学卒制度年齢が一致する44歳から53歳までの号給の水準を比較すると、東京6級は、旧教育(二)4級に対しては、旧教育(二)4級初号の位置である大学卒制度年齢44歳で29,200円(6.9%)、旧教育(二)最高号給の位置である53歳では20,700円(4.3%)高くなっている。
そして、旧教育(三)4級に対しては、旧教育(三)4級初号の位置である大学卒制度年齢44歳で39,600円(9.6%)、旧教育(三)最高号給の位置である53歳では45,200円(9.8%)も高くなっている。(優遇率が一番高いのは、大卒制度年齢47歳で、実に10.3%である。)
号給の対応する部分のみで全体を比較してみても、東京6級は、旧教育(二)4級に対しては6%高く、旧教育(三)4級に対しては1割高(10.19%)になっている。主幹教諭や副校長・教頭の水準も大幅に引き上げられているが、統括校長・校長の水準は更に大幅に引き上げられており、その優遇率は倍になっている。つまり、一般の教諭と校長の給与差を格段に大きくしたものとなっているのである。(ただし、あくまで制度表上での対比であり、運用の実際に基づく比較を行ったものではない。)
ところで、6級(統括校長・校長)の初号は、大学卒制度年齢36歳(経験14年)の位置にある。全人連モデルの位置が44歳(経験22年)となっているのに対して、7歳も若い位置となっている。人事院から包括的に承認を受けている校長4級の必要経験年数(旧教育(二)は大学卒25年、旧教育(三)は大学卒24年)と比べると、ほぼ10年若くなっている。東京都における校長登用年齢の実態がそれだけ若い位置の号給を必要としているということのだろうか。あるいは、今後を見越しての準備なのだろうか…。
まず、5級(副校長・教頭)の水準を全人連モデルと比較していきたいが、全人連モデルの方にはいわゆる3級加算額が存在するので、加算後の額と比較しなければならないだろう。
<東京5級×旧教育(二)3級(加算額7,700円を含む。)>
年齢(経験) 東京 旧教育(二) 差額
33歳(11年) 1号 335,500円 -
34歳(12年) 5号 345,500円 1号 338,300円 7,200円(2.1%)
37歳(15年) 17号 373,900円 13号 365,400円 8,500円(2.3%)
42歳(20年) 37号 415,600円 33号 404,800円 10,800円(2.7%)
47歳(25年) 57号 451,700円 53号 435,900円 15,800円(3.6%)
52歳(30年) 77号 471,500円 73号 467,500円 4,000円(0.9%)
53歳(31年) 81号 473,500円 77号 471,300円(最高)2,200円(0.5%)
57歳(35年) 97号 481,500円 -
58歳(39年) 101号 483,500円(最高) -
<東京5級×旧教育(三)3級(加算額7,500円を含む。)>
年齢(経験) 東京 旧教育(三) 差額
30歳(8年) - 1号 293,100円
32歳(10 年) - 9号 317,400円
33歳(11年) 1号 335,500円 13号 328,900円 6,600円(2.0%)
37歳(15年) 17号 373,900円 29号 364,000円 9,900円(2.7%)
42歳(20年) 37号 415,600円 49号 397,300円 18,300円(4.6%)
47歳(25年) 57号 451,700円 69号 422,800円 28,900円(6.8%)
52歳(30年) 77号 471,500円 89号 439,100円 32,400円(7.4%)
53歳(31年) 81号 473,500円 93号 441,700円(最高)31,800円(7.2%)
57歳(35年) 97号 481,500円 -
58歳(39年) 101号 483,500円(最高) -
最高到達水準に着目すると、東京5級は、旧教育(二)3級より12,200円(2.6%)、旧教育(三)3級より41,800円(9.5%)高いこと(全人連モデルは加算額を加算後)は、以前に書いたとおり。
初号の位置や最高号給の位置が全人連モデルと異なっていることは、とりあえず置いておく。
制度年齢ごとの様相を概観すると、東京5級は、旧教育(二)3級に対しては、旧教育(二)3級初号の位置である大学卒制度年齢34歳で7,200円(2.1%)、47歳で15,800円(3.6%)高くなっているのに対して、旧教育(二)最高号給の位置である53歳では2,200円(0.5%)高に止まっている。
一方、旧教育(三)3級に対しては、東京5級初号の位置である大学卒制度年齢33歳で6,600円(2.0%)、52歳で32,400円(7.4%)高くなっているのに対して、旧教育(三)最高号給の位置である53歳では31,800円(7.2%)高くなっている。
号給の対応する部分のみで全体を比較すると、東京5級は、旧教育(二)3級に対しては2.55%高であるが、旧教育(三)3級に対しては4.99%に及んでいる。
次に、6級(統括校長・校長)について確認する。
<東京6級×旧教育(二)4級>
年齢(経験) 東京 旧教育(二) 差額
36歳(14年) 1号 382,300円 -
37歳(15年) 5号 391,700円 -
42歳(20年) 25号 434,900円 -
44歳(22年) 33号 451,200円 1号 422,000円 29,200円(6.9%)
47歳(25年) 45号 473,200円 13号 433,600円 29,600円(6.8%)
52歳(30年) 65号 501,200円 33号 479,300円 21,900円(4.6%)
53歳(31年) 69号 504,100円 37号 483,400円(最高)20,700円(4.3%)
57歳(35年) 85号 512,500円(最高) -
<東京6級×旧教育(三)4級>
年齢(経験) 東京 旧教育(三) 差額
36歳(14年) 1号 382,300円 -
37歳(15年) 5号 391,700円 -
42歳(20年) 25号 434,900円 -
44歳(22年) 33号 451,200円 1号 411,600円 39,600円(9.6%)
47歳(25年) 45号 473,200円 13号 429,200円 44,000円(10.3%)
52歳(30年) 65号 501,200円 33号 455,300円 45,900円(10.1%)
53歳(31年) 69号 504,100円 37号 458,900円(最高)45,200円(9.8%)
57歳(35年) 85号 512,500円(最高) -
以前に書いたとおり、東京6級の最高到達水準は、全人連モデルよりも相当に高いものとなっており、具体的には、旧教育(二)4級より29,100円(6.0%)、旧教育(三)4級より53,600円(11.7%)高くなっている。
大学卒制度年齢が一致する44歳から53歳までの号給の水準を比較すると、東京6級は、旧教育(二)4級に対しては、旧教育(二)4級初号の位置である大学卒制度年齢44歳で29,200円(6.9%)、旧教育(二)最高号給の位置である53歳では20,700円(4.3%)高くなっている。
そして、旧教育(三)4級に対しては、旧教育(三)4級初号の位置である大学卒制度年齢44歳で39,600円(9.6%)、旧教育(三)最高号給の位置である53歳では45,200円(9.8%)も高くなっている。(優遇率が一番高いのは、大卒制度年齢47歳で、実に10.3%である。)
号給の対応する部分のみで全体を比較してみても、東京6級は、旧教育(二)4級に対しては6%高く、旧教育(三)4級に対しては1割高(10.19%)になっている。主幹教諭や副校長・教頭の水準も大幅に引き上げられているが、統括校長・校長の水準は更に大幅に引き上げられており、その優遇率は倍になっている。つまり、一般の教諭と校長の給与差を格段に大きくしたものとなっているのである。(ただし、あくまで制度表上での対比であり、運用の実際に基づく比較を行ったものではない。)
ところで、6級(統括校長・校長)の初号は、大学卒制度年齢36歳(経験14年)の位置にある。全人連モデルの位置が44歳(経験22年)となっているのに対して、7歳も若い位置となっている。人事院から包括的に承認を受けている校長4級の必要経験年数(旧教育(二)は大学卒25年、旧教育(三)は大学卒24年)と比べると、ほぼ10年若くなっている。東京都における校長登用年齢の実態がそれだけ若い位置の号給を必要としているということのだろうか。あるいは、今後を見越しての準備なのだろうか…。
332.東京都の教育職給料表(その4) [41.東京都の教育職給料表]
次に、東京都の4級(主幹教諭)と全人連モデルの特2級(主幹教諭)の給料表水準を比較していこう。
最高到達水準で比較すれば、東京4級は、旧教育(二)特2級より8,800円(2.0%)、旧教育(三)特2級より30,100円(7.1%)高い水準であることは既に述べたが、大学卒制度年齢ごとに比較すれば、どのような姿になっているのであろうか。
<東京4級×旧教育(二)特2級>
年齢(経験) 東京 旧教育(二) 差額
28歳(6年) 1号 271,100円 1号 254,100円 17,000円(6.7%)
32歳(10年) 17号 309,800円 17号 297,200円 12,600円(4.2%)
37歳(15年) 37号 357,000円 37号 345,900円 11,100円(3.2%)
42歳(20年) 57号 398,100円 57号 386,200円 11,900円(3.0%)
47歳(25年) 77号 428,100円 77号 414,500円 13,600円(3.3%)
52歳(30年) 97号 440,600円 97号 438,300円 2,300円(0.5%)
55歳(34年) 109号 445,400円 109号 446,200円(最高)▲800円(▲0.2%)
57歳(35年)117号 448,600円 -
61歳(39年)133号 455,000円(最高) -
<東京4級×旧教育(三)特2級>
年齢(経験) 東京 旧教育(三) 差額
28歳(6年) 1号 271,100円 1号 254,100円 17,000円(6.7%)
32歳(10年) 17号 309,800円 17号 297,200円 12,600円(4.2%)
37歳(15年) 37号 357,000円 37号 345,500円 11,500円(3.3%)
42歳(20年) 57号 398,100円 57号 379,900円 18,200円(4.8%)
47歳(25年) 77号 428,100円 77号 402,900円 25,200円(6.3%)
52歳(30年) 97号 440,600円 97号 418,400円 22,200円(5.3%)
55歳(34年) 109号 445,400円 109号 424,900円(最高)20,500円(4.8%)
57歳(35年)117号 448,600円 -
61歳(39年)133号 455,000円(最高) -
主幹教諭の級別資格基準については以前紹介したとおり、旧教育(二)(三)の特2級では大学卒7年であるのに対して、東京都の4級は大学卒10年となっていた。しかし、給料表の設計上の位置が関連するはずの初号の位置については、いずれも大学卒経験年数6年となっている。
その初号同士を比較すると、東京4級の水準は、旧教育(二)(三)特2級の水準に比べて17,000円、6.7%も高い水準となっている。これは、東京3級(主任教諭)初号の水準を旧教育(二)(三)2級の同位置の号給の水準と比較した場合の差13,800円、5.9%を上回るものとなっている。
全人連モデルの最高位置である制度年齢56歳(大学卒経験年数34年)でみると、東京4級は、旧教育(二)特2級との比較では800円(0.2%)低くなっているが、旧教育(三)2級との比較では20,500円(4.8%)も高くなっている。行政(一)と比較した場合、全人連モデルの特2級の最高号給(109号給)の水準は、旧教育(二)(三)のいずれも行政(一)6級を超えており、旧教育(二)は23,600円(7級を10,000円下回る。)、旧教育(三)は2,300円上回っているのに対して、制度上の同位置にある東京4級の109号給は同じく行政(一)6級を超える水準で、22,800円(7級を10,800円下回る。)上回っている。つまり、東京4級は、小中学校の主幹教諭に適用される給料表の最高到達水準を高等学校並の水準に引き上げたということができる。
更に、職務の級ごとの給料表全体(大学卒ベース。全人連モデルよりも延長している部分を除く。)の制度上の較差を見ると、東京2(教諭)は旧教育(二)2級より2.9%、旧教育(三)2級より1.9%それぞれ低くなっており、東京3級(主任教諭)は旧教育(二)2級及び旧教育(三)2級より高くなっているものの、それぞれ1.2%、2.5%に止まっているのに対して、東京4級(主幹教諭)は、それぞれ3.0%、4.9%も高い水準となっている。
最高到達水準で比較すれば、東京4級は、旧教育(二)特2級より8,800円(2.0%)、旧教育(三)特2級より30,100円(7.1%)高い水準であることは既に述べたが、大学卒制度年齢ごとに比較すれば、どのような姿になっているのであろうか。
<東京4級×旧教育(二)特2級>
年齢(経験) 東京 旧教育(二) 差額
28歳(6年) 1号 271,100円 1号 254,100円 17,000円(6.7%)
32歳(10年) 17号 309,800円 17号 297,200円 12,600円(4.2%)
37歳(15年) 37号 357,000円 37号 345,900円 11,100円(3.2%)
42歳(20年) 57号 398,100円 57号 386,200円 11,900円(3.0%)
47歳(25年) 77号 428,100円 77号 414,500円 13,600円(3.3%)
52歳(30年) 97号 440,600円 97号 438,300円 2,300円(0.5%)
55歳(34年) 109号 445,400円 109号 446,200円(最高)▲800円(▲0.2%)
57歳(35年)117号 448,600円 -
61歳(39年)133号 455,000円(最高) -
<東京4級×旧教育(三)特2級>
年齢(経験) 東京 旧教育(三) 差額
28歳(6年) 1号 271,100円 1号 254,100円 17,000円(6.7%)
32歳(10年) 17号 309,800円 17号 297,200円 12,600円(4.2%)
37歳(15年) 37号 357,000円 37号 345,500円 11,500円(3.3%)
42歳(20年) 57号 398,100円 57号 379,900円 18,200円(4.8%)
47歳(25年) 77号 428,100円 77号 402,900円 25,200円(6.3%)
52歳(30年) 97号 440,600円 97号 418,400円 22,200円(5.3%)
55歳(34年) 109号 445,400円 109号 424,900円(最高)20,500円(4.8%)
57歳(35年)117号 448,600円 -
61歳(39年)133号 455,000円(最高) -
主幹教諭の級別資格基準については以前紹介したとおり、旧教育(二)(三)の特2級では大学卒7年であるのに対して、東京都の4級は大学卒10年となっていた。しかし、給料表の設計上の位置が関連するはずの初号の位置については、いずれも大学卒経験年数6年となっている。
その初号同士を比較すると、東京4級の水準は、旧教育(二)(三)特2級の水準に比べて17,000円、6.7%も高い水準となっている。これは、東京3級(主任教諭)初号の水準を旧教育(二)(三)2級の同位置の号給の水準と比較した場合の差13,800円、5.9%を上回るものとなっている。
全人連モデルの最高位置である制度年齢56歳(大学卒経験年数34年)でみると、東京4級は、旧教育(二)特2級との比較では800円(0.2%)低くなっているが、旧教育(三)2級との比較では20,500円(4.8%)も高くなっている。行政(一)と比較した場合、全人連モデルの特2級の最高号給(109号給)の水準は、旧教育(二)(三)のいずれも行政(一)6級を超えており、旧教育(二)は23,600円(7級を10,000円下回る。)、旧教育(三)は2,300円上回っているのに対して、制度上の同位置にある東京4級の109号給は同じく行政(一)6級を超える水準で、22,800円(7級を10,800円下回る。)上回っている。つまり、東京4級は、小中学校の主幹教諭に適用される給料表の最高到達水準を高等学校並の水準に引き上げたということができる。
更に、職務の級ごとの給料表全体(大学卒ベース。全人連モデルよりも延長している部分を除く。)の制度上の較差を見ると、東京2(教諭)は旧教育(二)2級より2.9%、旧教育(三)2級より1.9%それぞれ低くなっており、東京3級(主任教諭)は旧教育(二)2級及び旧教育(三)2級より高くなっているものの、それぞれ1.2%、2.5%に止まっているのに対して、東京4級(主幹教諭)は、それぞれ3.0%、4.9%も高い水準となっている。
331.東京都の教育職給料表(その3) [41.東京都の教育職給料表]
今回は、東京都の3級(主任教諭)と全人連モデルの2級(教諭)の給料表水準を比較する。例により、ポイントのみ掲載する。
<東京3級×旧教育(二)2級>
年齢(経験) 東京 旧教育(二) 差額
27歳(5年) 1号 246,600円 21号 232,800円 13,800円(5.9%)
32歳(10年) 21号 293,400円 41号 286,100円 7,300円(2.6%)
37歳(15年) 41号 338,800円 61号 334,100円 4,700円(1.4%)
42歳(20年) 61号 378,900円 81号 374,200円 4,700円(1.3%)
47歳(25年) 81号 402,600円 101号 399,900円 2,700円(0.7%)
52歳(30年) 101号 411,200円 121号 417,200円 ▲6,000円(▲1.4%)
56歳(34年) 117号 417,600円 137号 424,800円(最高)▲7,800円(▲1.8%)
57歳(35年) 121号 419,200円 -
64歳(42年) 149号 430,000円(最高) -
<東京3級×旧教育(三)2級>
年齢(経験) 東京 旧教育(三) 差額
27歳(5年) 1号 246,600円 33号 232,800円 13,800円(5.9%)
32歳(10年) 21号 293,400円 53号 286,100円 7,300円(2.6%)
37歳(15年) 41号 338,800円 73号 334,100円 4,700円(1.4%)
42歳(20年) 61号 378,900円 93号 369,400円 9,500円(3.9%)
47歳(25年) 81号 402,600円 113号 389,600円 13,000円(3.3%)
52歳(30年) 101号 411,200円 133号 404,600円 6,600円(1.6%)
56歳(34年) 117号 417,600円 149号 413,400円(最高)4,200円(1.0%)
57歳(35年) 121号 419,200円 -
64歳(42年) 149号 430,000円(最高) -
最高到達水準に着目した場合には、前回考察したとおり、東京3級は、旧教育(二)2級より5,200円(1.2%)、旧教育(三)2級より16,600円(4.0%)高いくなっている。これらを格合わせ方式により同年次の水準を比較すると上記のとおりである。
全人連モデルの最高位置である制度年齢56歳(大学卒経験年数34年)では、東京3級は、旧教育(二)2級との比較では7,800円(1.8%)低いが、旧教育(三)2級との比較では4,200円(1.0%)高くなっている。
行政(一)と比較すると、全人連モデルの最高号給の水準は旧教育(二)2級は行政(一)6級を、教育(三)は行政(一)5級を超える水準であるのに対して、東京3級は行政(一)5級を超える(6級を5,000円下回る)水準となっている。
ところで、公立小学校等の校長及び教員も地方公務員であることから、地公法における職務給の原則(第24条1項=「職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない。」)が適用されるのであるが、教育公務員特例法で「公立の小学校等の校長及び教員の給与は、これらの者の職務と責任の特殊性に基づき条例で定めるものとする。」(第13条)と規定されている。そして、人材確保法(学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法)に基づき、「義務教育諸学校の教育職員の給与については、一般の公務員の給与水準に比較して必要な優遇措置が講じられなければならない。」し、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)に基づき、「公立の義務教育諸学校等の教育職員(校長、副校長及び教頭を除く。)には、その者の給料月額の百分の四に相当する額を基準として、条例で定めるところにより、教職調整額を支給しなければならない。」とされている。
そこで、前回と今回を通じて考察してきた東京都の2級(教諭)及び3級(主任教諭)の給料表の水準について、人材確保法における優遇措置との関係でどのように理解すべきなのか、考えておきたい。
そもそも、東京都教育委員会は、「教員の職をめぐっては、学校教育が抱える課題の複雑化、多様化などにより、給与上、同一の級にある教員の間で、職務の困難度や責任の度合い等に大きな違いが生じている実態がある。」ことから、2級職を分化する必要があるとの認識であった。そして、具体的には、2級の教諭等については、「主任層」と「一般層」に分化し、新たな職として「主任教諭」を設けて、その職責に応じた処遇を求めたのであった。その結果の水準が、前回及び今回示した数字であった。
人材確保法が求める優遇措置とは、繰り返しになるが「一般の公務員の給与水準に比較して必要な優遇措置」であって、その沿革的な経緯を踏まえた具体的な水準は、すなわち全人連モデル給与表の旧教育(三)2級を基準にした水準に示されている。単純化して説明すれは、大学卒のノンキャリアに適用される行政(一)の各職務の級を峰渡りした給与カーブとのいわゆる「交差点」を解消し、その最高到達水準を現行の行政(一)5級の最高号給の水準を超える水準にまで引き上げたものであった。
そうすると、東京都の2級(教諭)の最高到達水準は現行の行政(一)4級を2,900円下回る水準止まりであり、給料の格が1ランクダウンになっている。つまり、おおざっぱに言えば、人材確保法の制定による優遇措置を講じる前の「一般の公務員の給与水準」との関係に戻したことになっている。ということは、東京都の教諭=学校教育法上の教諭であるならば、そのままでは人材確保法の趣旨に反する恐れがあることになる。(ただし、「一般の公務員」の定義は法律上存在しないので、「東京都における一般の公務員より優遇している」と言えるのかもしれないが、確かめてはいない。)
しかしながら、東京都の主任教諭は、元々の教諭を分化させた職であるので、東京都の教諭+主任教諭=学校教育法上の教諭と理解すれば、東京3級は行政(一)5級を超える水準なのだから、一応「OK」ということになるのだろう。
職務の級を2分したことをどう考えるのかは別に置くとしても、給与カーブについては若年層部分を改善し、高齢層部分を一層フラット化したものであることから、職務給を全人連モデル以上に強化したものとなっていると言えそうである。(職務給の強化という観点からすると、あれだけ長い号給延長はよく理解できないが…。)
<東京3級×旧教育(二)2級>
年齢(経験) 東京 旧教育(二) 差額
27歳(5年) 1号 246,600円 21号 232,800円 13,800円(5.9%)
32歳(10年) 21号 293,400円 41号 286,100円 7,300円(2.6%)
37歳(15年) 41号 338,800円 61号 334,100円 4,700円(1.4%)
42歳(20年) 61号 378,900円 81号 374,200円 4,700円(1.3%)
47歳(25年) 81号 402,600円 101号 399,900円 2,700円(0.7%)
52歳(30年) 101号 411,200円 121号 417,200円 ▲6,000円(▲1.4%)
56歳(34年) 117号 417,600円 137号 424,800円(最高)▲7,800円(▲1.8%)
57歳(35年) 121号 419,200円 -
64歳(42年) 149号 430,000円(最高) -
<東京3級×旧教育(三)2級>
年齢(経験) 東京 旧教育(三) 差額
27歳(5年) 1号 246,600円 33号 232,800円 13,800円(5.9%)
32歳(10年) 21号 293,400円 53号 286,100円 7,300円(2.6%)
37歳(15年) 41号 338,800円 73号 334,100円 4,700円(1.4%)
42歳(20年) 61号 378,900円 93号 369,400円 9,500円(3.9%)
47歳(25年) 81号 402,600円 113号 389,600円 13,000円(3.3%)
52歳(30年) 101号 411,200円 133号 404,600円 6,600円(1.6%)
56歳(34年) 117号 417,600円 149号 413,400円(最高)4,200円(1.0%)
57歳(35年) 121号 419,200円 -
64歳(42年) 149号 430,000円(最高) -
最高到達水準に着目した場合には、前回考察したとおり、東京3級は、旧教育(二)2級より5,200円(1.2%)、旧教育(三)2級より16,600円(4.0%)高いくなっている。これらを格合わせ方式により同年次の水準を比較すると上記のとおりである。
全人連モデルの最高位置である制度年齢56歳(大学卒経験年数34年)では、東京3級は、旧教育(二)2級との比較では7,800円(1.8%)低いが、旧教育(三)2級との比較では4,200円(1.0%)高くなっている。
行政(一)と比較すると、全人連モデルの最高号給の水準は旧教育(二)2級は行政(一)6級を、教育(三)は行政(一)5級を超える水準であるのに対して、東京3級は行政(一)5級を超える(6級を5,000円下回る)水準となっている。
ところで、公立小学校等の校長及び教員も地方公務員であることから、地公法における職務給の原則(第24条1項=「職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない。」)が適用されるのであるが、教育公務員特例法で「公立の小学校等の校長及び教員の給与は、これらの者の職務と責任の特殊性に基づき条例で定めるものとする。」(第13条)と規定されている。そして、人材確保法(学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法)に基づき、「義務教育諸学校の教育職員の給与については、一般の公務員の給与水準に比較して必要な優遇措置が講じられなければならない。」し、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)に基づき、「公立の義務教育諸学校等の教育職員(校長、副校長及び教頭を除く。)には、その者の給料月額の百分の四に相当する額を基準として、条例で定めるところにより、教職調整額を支給しなければならない。」とされている。
そこで、前回と今回を通じて考察してきた東京都の2級(教諭)及び3級(主任教諭)の給料表の水準について、人材確保法における優遇措置との関係でどのように理解すべきなのか、考えておきたい。
そもそも、東京都教育委員会は、「教員の職をめぐっては、学校教育が抱える課題の複雑化、多様化などにより、給与上、同一の級にある教員の間で、職務の困難度や責任の度合い等に大きな違いが生じている実態がある。」ことから、2級職を分化する必要があるとの認識であった。そして、具体的には、2級の教諭等については、「主任層」と「一般層」に分化し、新たな職として「主任教諭」を設けて、その職責に応じた処遇を求めたのであった。その結果の水準が、前回及び今回示した数字であった。
人材確保法が求める優遇措置とは、繰り返しになるが「一般の公務員の給与水準に比較して必要な優遇措置」であって、その沿革的な経緯を踏まえた具体的な水準は、すなわち全人連モデル給与表の旧教育(三)2級を基準にした水準に示されている。単純化して説明すれは、大学卒のノンキャリアに適用される行政(一)の各職務の級を峰渡りした給与カーブとのいわゆる「交差点」を解消し、その最高到達水準を現行の行政(一)5級の最高号給の水準を超える水準にまで引き上げたものであった。
そうすると、東京都の2級(教諭)の最高到達水準は現行の行政(一)4級を2,900円下回る水準止まりであり、給料の格が1ランクダウンになっている。つまり、おおざっぱに言えば、人材確保法の制定による優遇措置を講じる前の「一般の公務員の給与水準」との関係に戻したことになっている。ということは、東京都の教諭=学校教育法上の教諭であるならば、そのままでは人材確保法の趣旨に反する恐れがあることになる。(ただし、「一般の公務員」の定義は法律上存在しないので、「東京都における一般の公務員より優遇している」と言えるのかもしれないが、確かめてはいない。)
しかしながら、東京都の主任教諭は、元々の教諭を分化させた職であるので、東京都の教諭+主任教諭=学校教育法上の教諭と理解すれば、東京3級は行政(一)5級を超える水準なのだから、一応「OK」ということになるのだろう。
職務の級を2分したことをどう考えるのかは別に置くとしても、給与カーブについては若年層部分を改善し、高齢層部分を一層フラット化したものであることから、職務給を全人連モデル以上に強化したものとなっていると言えそうである。(職務給の強化という観点からすると、あれだけ長い号給延長はよく理解できないが…。)
330.東京都の教育職給料表(その2) [41.東京都の教育職給料表]
前回に引き続き、東京都の教職員給料表について考察していこう。
まず、各職務の級ごとの給料月額の水準について、初号と最高号給の金額により確認しておく。
<東京都>
1級 1号146,000円~169号337,100円
2級 1号178,100円~177号399,200円
3級 1号246,600円~149号430,000円
4級 1号271,100円~133号455,000円
5級 1号335,500円~101号483,500円
6級 1号382,300円~85号512,500円
<全人連モデル>
旧教育(二)
1級 1号148,800円~153号332,700円
2級 1号192,800円~137号424,800円
特2級 1号254,100円~109号446,200円
3級 1号330,600円~77号463,600円(加算額7,700円)
4級 1号422,000円~37号483,400円
旧教育(三)
1級 1号148,800円~125号309,500円
2級 1号164,400円~149号413,400円
特2級 1号254,100円~109号424,900円
3級 1号285,600円~93号434,200円(加算額7,500円)
4級 1号411,600円~37号458,900円
最高到達水準について、最高号給の金額に着目して比べてみる。
東京1級は、旧教育(二)1級より4,400円(1.3%)、旧教育(三)1級より27,600円(8.9%)高い。
東京2級は、旧教育(二)2級より25,600円(6.0%)、旧教育(三)2級より14,200円(3.4%)低い。
東京3級は、旧教育(二)2級より5,200円(1.2%)、旧教育(三)2級より16,600円(4.0%)高い。
東京4級は、旧教育(二)特2級より8,800円(2.0%)、旧教育(三)特2級より30,100円(7.1%)高い。
東京5級は、加算額を加味して比較すると、旧教育(二)3級より12,200円(2.6%)、旧教育(三)3級より41,800円(9.5%)高い。
東京6級は、旧教育(二)4級より29,100円(6.0%)、旧教育(三)4級より53,600円(11.7%)高い。
全体として相当高い水準となっており、しかも、職務の級が上昇するに従ってより手厚くなっている。ただし、教諭は、主任教諭に昇任できなければ、最高到達水準の給料は国モデルよりも14,200円~25,600円低い額(▲3.4%~▲6.0%)に止まることになっている。
給料表全体の水準は最高到達水準を比較しただけでは分からない。制度表を作成して、同一の制度年齢における給料月額の比較を行ってみるのが簡便な方法である。
比較全体を掲載するスペースはないので、ピックアップする。
まずは、2級(教諭)について比較する。
<東京2級×旧教育(二)2級>
年齢(経験) 東京 旧教育(二) 差額
22歳(0年) 9号 195,600円 1号 192,800円 2,800円(1.5%)
27歳(5年) 29号 241,700円 21号 232,800円 8,900円(3.8%)
32歳(10年) 49号 285,600円 41号 286,100円 ▲500円(▲0.2%)
37歳(15年) 69号 327,200円 61号 334,100円 ▲6,900円(▲2.1%)
42歳(20年) 89号 358,200円 81号 374,200円 ▲16,000円(▲4.3%)
47歳(25年)109号 372,600円 101号 399,900円 ▲27,300円(▲6.8%)
52歳(30年)129号 380,600円 121号 417,200円 ▲36,300円(▲8.7%)
56歳(34年) 145号 387,000円 137号 424,800円(最高)▲37,800円(▲8.9%)
57歳(35年)149号 388,600円 -
64歳(42年)177号 399,200円(最高) -
<東京2級×旧教育(三)2級>
年齢(経験) 東京 旧教育(三) 差額
22歳(0年) 9号 195,600円 13号 192,800円 2,800円(1.5%)
27歳(5年) 29号 241,700円 33号 232,800円 8,900円(3.8%)
32歳(10年) 49号 285,600円 53号 286,100円 ▲500円(▲0.2%)
37歳(15年) 69号 327,200円 73号 334,100円 ▲6,900円(▲2.1%)
42歳(20年) 89号 358,200円 93号 369,400円 ▲11,200円(▲3.0%)
47歳(25年) 109号 372,600円 113号 389,600円 ▲17,000円(▲4.4%)
52歳(30年) 129号 380,600円 133号 404,600円 ▲24,000円(▲5.9%)
56歳(34年) 145号 387,000円 149号 413,400円(最高)▲26,400円(▲6.4%)
57歳(35年)149号 388,600円 -
64歳(42年)177号 399,200円(最高) -
最高到達水準に着目した場合には、先ほど述べたように、東京2級は、旧教育(二)2級より25,600円(6.0%)、旧教育(三)2級より14,200円(3.4%)低いということになっている。しかし、格合わせ方式により同年次の水準を比較すると上記のとおりであり、全人連モデル=国基準における号俸構成の最高位置である制度年齢56歳(大学卒経験年数34年)では、東京2級は、旧教育(二)2級より37,800円(8.9%)、旧教育(三)2級より26,400円(6.4%)低くなっている。(それぞれ更に12,200円(2.9%)、12,200円(3.0%)低い。)行政(一)と比較すると、全人連モデルの最高号給の水準は旧教育(二)2級は行政(一)6級を、教育(三)は行政(一)5級を超える水準であるのに対して、東京2級は行政(一)4級を若干下回る水準となっている。
一方、東京都の最高号給の位置は、制度年齢64歳(大学卒経験年数42年)であり、全人連モデル=国基準を8歳(8年)も上回っている。それだけの号給数を用意した理由は想像するしかないのだが、一つには、現行給料表への切替えに伴い、経過措置的に号俸数を用意する必要があったのかもしれない。あるいは、完成形を想定した場合、新規大学卒採用後60歳までの38年間に優秀な成績に伴う査定メリットを平均的に享受するものと仮定すれば生涯で約6年分(38年×15%=5.7年)早いスピードで最高号俸に到達する計算になることから、定年まで昇給させることを前提とするならば、この程度の号給数を用意する必要があったのかもしれない。いずれにしても、全人連モデル=国基準を前提にすれば、かなりの号給延長を行った給料表ということができるだろう。
まず、各職務の級ごとの給料月額の水準について、初号と最高号給の金額により確認しておく。
<東京都>
1級 1号146,000円~169号337,100円
2級 1号178,100円~177号399,200円
3級 1号246,600円~149号430,000円
4級 1号271,100円~133号455,000円
5級 1号335,500円~101号483,500円
6級 1号382,300円~85号512,500円
<全人連モデル>
旧教育(二)
1級 1号148,800円~153号332,700円
2級 1号192,800円~137号424,800円
特2級 1号254,100円~109号446,200円
3級 1号330,600円~77号463,600円(加算額7,700円)
4級 1号422,000円~37号483,400円
旧教育(三)
1級 1号148,800円~125号309,500円
2級 1号164,400円~149号413,400円
特2級 1号254,100円~109号424,900円
3級 1号285,600円~93号434,200円(加算額7,500円)
4級 1号411,600円~37号458,900円
最高到達水準について、最高号給の金額に着目して比べてみる。
東京1級は、旧教育(二)1級より4,400円(1.3%)、旧教育(三)1級より27,600円(8.9%)高い。
東京2級は、旧教育(二)2級より25,600円(6.0%)、旧教育(三)2級より14,200円(3.4%)低い。
東京3級は、旧教育(二)2級より5,200円(1.2%)、旧教育(三)2級より16,600円(4.0%)高い。
東京4級は、旧教育(二)特2級より8,800円(2.0%)、旧教育(三)特2級より30,100円(7.1%)高い。
東京5級は、加算額を加味して比較すると、旧教育(二)3級より12,200円(2.6%)、旧教育(三)3級より41,800円(9.5%)高い。
東京6級は、旧教育(二)4級より29,100円(6.0%)、旧教育(三)4級より53,600円(11.7%)高い。
全体として相当高い水準となっており、しかも、職務の級が上昇するに従ってより手厚くなっている。ただし、教諭は、主任教諭に昇任できなければ、最高到達水準の給料は国モデルよりも14,200円~25,600円低い額(▲3.4%~▲6.0%)に止まることになっている。
給料表全体の水準は最高到達水準を比較しただけでは分からない。制度表を作成して、同一の制度年齢における給料月額の比較を行ってみるのが簡便な方法である。
比較全体を掲載するスペースはないので、ピックアップする。
まずは、2級(教諭)について比較する。
<東京2級×旧教育(二)2級>
年齢(経験) 東京 旧教育(二) 差額
22歳(0年) 9号 195,600円 1号 192,800円 2,800円(1.5%)
27歳(5年) 29号 241,700円 21号 232,800円 8,900円(3.8%)
32歳(10年) 49号 285,600円 41号 286,100円 ▲500円(▲0.2%)
37歳(15年) 69号 327,200円 61号 334,100円 ▲6,900円(▲2.1%)
42歳(20年) 89号 358,200円 81号 374,200円 ▲16,000円(▲4.3%)
47歳(25年)109号 372,600円 101号 399,900円 ▲27,300円(▲6.8%)
52歳(30年)129号 380,600円 121号 417,200円 ▲36,300円(▲8.7%)
56歳(34年) 145号 387,000円 137号 424,800円(最高)▲37,800円(▲8.9%)
57歳(35年)149号 388,600円 -
64歳(42年)177号 399,200円(最高) -
<東京2級×旧教育(三)2級>
年齢(経験) 東京 旧教育(三) 差額
22歳(0年) 9号 195,600円 13号 192,800円 2,800円(1.5%)
27歳(5年) 29号 241,700円 33号 232,800円 8,900円(3.8%)
32歳(10年) 49号 285,600円 53号 286,100円 ▲500円(▲0.2%)
37歳(15年) 69号 327,200円 73号 334,100円 ▲6,900円(▲2.1%)
42歳(20年) 89号 358,200円 93号 369,400円 ▲11,200円(▲3.0%)
47歳(25年) 109号 372,600円 113号 389,600円 ▲17,000円(▲4.4%)
52歳(30年) 129号 380,600円 133号 404,600円 ▲24,000円(▲5.9%)
56歳(34年) 145号 387,000円 149号 413,400円(最高)▲26,400円(▲6.4%)
57歳(35年)149号 388,600円 -
64歳(42年)177号 399,200円(最高) -
最高到達水準に着目した場合には、先ほど述べたように、東京2級は、旧教育(二)2級より25,600円(6.0%)、旧教育(三)2級より14,200円(3.4%)低いということになっている。しかし、格合わせ方式により同年次の水準を比較すると上記のとおりであり、全人連モデル=国基準における号俸構成の最高位置である制度年齢56歳(大学卒経験年数34年)では、東京2級は、旧教育(二)2級より37,800円(8.9%)、旧教育(三)2級より26,400円(6.4%)低くなっている。(それぞれ更に12,200円(2.9%)、12,200円(3.0%)低い。)行政(一)と比較すると、全人連モデルの最高号給の水準は旧教育(二)2級は行政(一)6級を、教育(三)は行政(一)5級を超える水準であるのに対して、東京2級は行政(一)4級を若干下回る水準となっている。
一方、東京都の最高号給の位置は、制度年齢64歳(大学卒経験年数42年)であり、全人連モデル=国基準を8歳(8年)も上回っている。それだけの号給数を用意した理由は想像するしかないのだが、一つには、現行給料表への切替えに伴い、経過措置的に号俸数を用意する必要があったのかもしれない。あるいは、完成形を想定した場合、新規大学卒採用後60歳までの38年間に優秀な成績に伴う査定メリットを平均的に享受するものと仮定すれば生涯で約6年分(38年×15%=5.7年)早いスピードで最高号俸に到達する計算になることから、定年まで昇給させることを前提とするならば、この程度の号給数を用意する必要があったのかもしれない。いずれにしても、全人連モデル=国基準を前提にすれば、かなりの号給延長を行った給料表ということができるだろう。
329.東京都の教育職給料表(その1) [41.東京都の教育職給料表]
今回からのテーマは、おそらく文部科学省での検討にも影響を与えているのではないかと思われる東京都の教員給与制度にかかわる議論を踏まえて作成された教育職給料表を取り上げ、考えてみたい。
東京都教育委員会では、国立大学の法人化に伴い、平成16年4月から従前の国立学校準拠制度が廃止され、各都道府県が主体的に条例により給与を定めることができることとなることから、平成15年5月には教員の給与制度検討委員会(第一次)を設置し、教員特有の手当を中心に当面の見直すべき課題について検討し、同年10月、第一次報告としてその方向性を提示した。
続いて、平成16年6月に設置した教員の給与制度検討委員会(第二次)において、職務・能力・業績を一層反映した給与制度としていく観点から、給料表の水準や小中学校と高等学校とで格差のある給料表のあり方、職級構成のあり方などについて、検討している。(平成17年8月、第二次報告)
更に、平成18年4月には教員の職のあり方検討委員会を設置し、同年7月には、「これからの教員の任用制度について~新たな職の視点から~」を取りまとめ、公表している。
これによれば、「教員の職をめぐっては、学校教育が抱える課題の複雑化、多様化などにより、給与上、同一の級にある教員の間で、職務の困難度や責任の度合い等に大きな違いが生じている実態がある。」との認識の上に立って、2級職及び管理職の分化の必要性を示し、それぞれの新たな職の設置を提唱している。具体的には、2級の教諭等については、「主任層」と「一般層」に分化し、新たな職として「主任教諭」を設けて、その職責に応じた処遇を求めるとともに、校長職については、学校の困難度に着目して「統括校長」の設置を求めている。(教諭職を分化して「主任教諭」を設けることとする説明を読むと、「能力」に着目した記述が多い。任用に当たって能力実証が求められることは公務員制度上当然のことであるが、「職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない。」とする職務給の原則からすると、十分に証明できているとは思えないのだが、その点については問わないこととしよう。)
これらの検討結果を踏まえて、東京都では、小・中学校給料表と高等学校給料表の2本立てであった給料表を統合し、新たに6級制の教育職給料表を設けている。
では、この東京都の教育職給料表について、具体的に確認していこう。
まず、職務の級の構成については、次のとおりである。
<東京都>
1級 助教諭、養護助教諭、講師、実習助手又は寄宿舎指導員の職務
2級 教諭、養護教諭又は栄養教諭の職務
3級 主任教諭又は主任養護教諭の職務
4級 主幹教諭又は指導教諭の職務
5級 副校長又は教頭の職務
6級 統括校長又は校長の職務
全人連モデルについては掲載するまでもないので省略するが、全人連モデルとの対応関係は、「東京1級=モデル1級、東京2級及び3級=モデル2級、東京4級=モデル特2級、東京5級=モデル3級、東京6級=モデル4級」ということになるのだろう。
次に、教諭、主任教諭を中心に、級別資格基準における必要経験年数(現行では、在級期間の年数の累計)を確認しておく。東京都については、学校職員の級別資格基準に関する規則(昭和33年東京都人事委員会規則第3号)による。
<東京都 教育職>
2級(教諭) 大学卒0年
3級(主任教諭) 大学卒8年
4級(主幹教諭) 大学卒10年
※短大卒も大学卒と同じ年数になっている点は、よく理解できない。
<全人連モデル 旧教育(二)>
2級(教諭) 大学卒0年
特2級(主幹教諭) 大学卒7年
3級(教頭) 大学卒16年
<全人連モデル 旧教育(三)>
2級(教諭) 大学卒0年
特2級(主幹教諭) 大学卒7年
3級(教頭) 大学卒11年
<行政(一) 一般職(大卒)>
2級(係員) 大学卒3年
3級(係長) 大学卒7年
4級(困難係長) 大学卒11年
5級(課長補佐) 大学卒13年
6級(困難補佐) 大学卒15年
東京都の3級(主任教諭)の資格基準は、全人連モデル=国基準の特2級(主幹教諭)の資格基準よりも1年厳しい年数となっている。また、東京都の4級(主幹教諭)の資格基準は、全人連モデル=国基準の旧教育(三)3級(教頭)の資格基準とほぼ同じである。旧教育(二)と比較した場合には、3級(教頭)の資格基準より6年短くなっているものの、いずれにしても国基準より2年厳しい年数となっている。
国基準であれば、最短29歳で特2級(主幹教諭)になりうるが、東京基準であれば、最短でも32歳である。任用実態を踏まえれば、問題がないということなのだろう。
東京都教育委員会では、国立大学の法人化に伴い、平成16年4月から従前の国立学校準拠制度が廃止され、各都道府県が主体的に条例により給与を定めることができることとなることから、平成15年5月には教員の給与制度検討委員会(第一次)を設置し、教員特有の手当を中心に当面の見直すべき課題について検討し、同年10月、第一次報告としてその方向性を提示した。
続いて、平成16年6月に設置した教員の給与制度検討委員会(第二次)において、職務・能力・業績を一層反映した給与制度としていく観点から、給料表の水準や小中学校と高等学校とで格差のある給料表のあり方、職級構成のあり方などについて、検討している。(平成17年8月、第二次報告)
更に、平成18年4月には教員の職のあり方検討委員会を設置し、同年7月には、「これからの教員の任用制度について~新たな職の視点から~」を取りまとめ、公表している。
これによれば、「教員の職をめぐっては、学校教育が抱える課題の複雑化、多様化などにより、給与上、同一の級にある教員の間で、職務の困難度や責任の度合い等に大きな違いが生じている実態がある。」との認識の上に立って、2級職及び管理職の分化の必要性を示し、それぞれの新たな職の設置を提唱している。具体的には、2級の教諭等については、「主任層」と「一般層」に分化し、新たな職として「主任教諭」を設けて、その職責に応じた処遇を求めるとともに、校長職については、学校の困難度に着目して「統括校長」の設置を求めている。(教諭職を分化して「主任教諭」を設けることとする説明を読むと、「能力」に着目した記述が多い。任用に当たって能力実証が求められることは公務員制度上当然のことであるが、「職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない。」とする職務給の原則からすると、十分に証明できているとは思えないのだが、その点については問わないこととしよう。)
これらの検討結果を踏まえて、東京都では、小・中学校給料表と高等学校給料表の2本立てであった給料表を統合し、新たに6級制の教育職給料表を設けている。
では、この東京都の教育職給料表について、具体的に確認していこう。
まず、職務の級の構成については、次のとおりである。
<東京都>
1級 助教諭、養護助教諭、講師、実習助手又は寄宿舎指導員の職務
2級 教諭、養護教諭又は栄養教諭の職務
3級 主任教諭又は主任養護教諭の職務
4級 主幹教諭又は指導教諭の職務
5級 副校長又は教頭の職務
6級 統括校長又は校長の職務
全人連モデルについては掲載するまでもないので省略するが、全人連モデルとの対応関係は、「東京1級=モデル1級、東京2級及び3級=モデル2級、東京4級=モデル特2級、東京5級=モデル3級、東京6級=モデル4級」ということになるのだろう。
次に、教諭、主任教諭を中心に、級別資格基準における必要経験年数(現行では、在級期間の年数の累計)を確認しておく。東京都については、学校職員の級別資格基準に関する規則(昭和33年東京都人事委員会規則第3号)による。
<東京都 教育職>
2級(教諭) 大学卒0年
3級(主任教諭) 大学卒8年
4級(主幹教諭) 大学卒10年
※短大卒も大学卒と同じ年数になっている点は、よく理解できない。
<全人連モデル 旧教育(二)>
2級(教諭) 大学卒0年
特2級(主幹教諭) 大学卒7年
3級(教頭) 大学卒16年
<全人連モデル 旧教育(三)>
2級(教諭) 大学卒0年
特2級(主幹教諭) 大学卒7年
3級(教頭) 大学卒11年
<行政(一) 一般職(大卒)>
2級(係員) 大学卒3年
3級(係長) 大学卒7年
4級(困難係長) 大学卒11年
5級(課長補佐) 大学卒13年
6級(困難補佐) 大学卒15年
東京都の3級(主任教諭)の資格基準は、全人連モデル=国基準の特2級(主幹教諭)の資格基準よりも1年厳しい年数となっている。また、東京都の4級(主幹教諭)の資格基準は、全人連モデル=国基準の旧教育(三)3級(教頭)の資格基準とほぼ同じである。旧教育(二)と比較した場合には、3級(教頭)の資格基準より6年短くなっているものの、いずれにしても国基準より2年厳しい年数となっている。
国基準であれば、最短29歳で特2級(主幹教諭)になりうるが、東京基準であれば、最短でも32歳である。任用実態を踏まえれば、問題がないということなのだろう。