334.東京都の教育職給料表(その6) [41.東京都の教育職給料表]
東京都の行政職給料表(一)は国の行政職俸給表(一)とは異なる構造の給料表となっている。国の10級制に対して、東京都では6級制になっているし、級別資格基準と初号の位置関係や最高号給の制度年齢も国の俸給表の作成思想とは異なるものと思われる。それ自体、考察の対象としてよいのだが、このノートでは省略する。
前回までは、東京都の教育職給料表について、全人連モデル給料表と対比することによって、その特長を理解しようとしてきた。それは、旧教育(二)と旧教育(三)を一本化するとともに、2級の給料表を2つに分化し、6級制としたものであった。もちろん、東京都の行政(一)の6級制とは異なる給料表になっている。
そこで、今回は、東京都の教育職給料表と行政職給料表(一)との対比、すなわち人材確保法を意識した場合の東京都内部の較差を確認しておきたいと思う。手法は、制度表を作成し、同格と想定される職務の級の給料月額について、制度年齢が同じもの同士を比較する。
例によって、主なものを抽出して掲載する。
<教育2級(教諭)×行政2級(主任)>
年齢(経験) 教育2級 行政2級 較差
23歳(1年) 13号 204,700円 1号 201,100円 3,600円(1.02)
33歳(11年) 53号 294,300円 41号 278,400円 15,900円(1.06)
55歳(33年) 141号 385,400円 129号 369,300円(最高)16,100円(1.04)
64歳(42年) 177号 399,200円 -
<教育3級(主任教諭)×行政3級(係長)>
年齢(経験) 教育3級 行政3級 較差
27歳(5年) 1号 246,600円 9号 240,600円 6,000円(1.02)
33歳(11年) 25号 303,000円 33号 291,300円 11,700円(1.04)
55歳(33年) 113号 416,000円 121号 403,600円 12,400円(1.03)
60歳(38年) 133号 424,000円 141号 411,900円(最高)12,100円(1.03)
64歳(42年) 149号 430,000円 -
<教育4級(主幹教諭)×行政4級(課長補佐)>
年齢(経験) 教育4級 行政4級 較差
28歳(6年) 1号 271,100円 1号 258,600円 12,500円(1.05)
33歳(11年) 21号 319,500円 21号 302,600円 16,900円(1.06)
55歳(33年) 109号 445,400円 109号 422,800円 22,600円(1.05)
59歳(37年) 125号 451,800円 125号 429,500円(最高)22,300円(1.05)
61歳(39年) 133号 455,000円 -
<教育5級(副校長)×行政5級(課長)>
年齢(経験) 教育5級 行政5級 較差
33歳(11年) 1号 335,500円 13号 316,900円 18,600円(1.06)
45歳(23年) 49号 438,400円 61号 437,400円 1,000円(1.00)
54歳(32年) 85号 475,500円 97号 461,400円(最高)14,100円(1.03)
58歳(36年) 101号 483,500円 -
このように対比することが人材確保法の趣旨を踏まえたものであるならば、東京都の教育2級~5級については、いずれも東京都の一般の公務員を上回る水準を確保できているということになるのだろう。(東京都の教諭に適用される2級の位置づけがこれでよいのかどうかは議論があろうが、法令で格付けが明記されていない以上、極論すれば、それぞれの団体の考え方次第ということになろうか。)
次に、教育6級(統括校長・校長)を確認する。
東京都の行政(一)6級は本庁等の部長に適用される職務の級なのだが、号給は4つしかなく、個別の部長ポストごとに適用される号給が決められている。そのため、教育6級(統括校長・校長)については、制度年齢による行政(一)との対比ができないので、水準のみによる比較をしてみる。
なお、教育6級の初号の大学卒制度年齢は36歳であり、行政5級の同じ制度年齢の号給である25号給以上の水準も記載する。
<教育6級(統括校長・校長)×行政6級>
行政5級 25号348,600円~97号461,400円
教育6級 1号382,300円~85号512,500円
行政6級 1号501,000円~4号534,000円
おおざっぱであるが、教育6級(統括校長・校長)の水準は、東京都の課長級(行政5級)と部長級(6級)も中間に位置づけられるものと言えそうである。
次に、教育1級(講師・実習助手)を見ておく必要がある。
対比させるべき東京都の行政(一)の職務の級は1級(係員)なのであるが、基準となる初任給基準の考え方が違っているようである。つまり、教育職の場合、大学卒と高校卒の学歴差4年に対して5年分の号給数差(大学卒1-21、高校卒1-1)となっているのに対して、行政職(一)のそれは6年分の号給数差(大学卒1-29、高校卒1-5)となっているのである。したがって、水準差の比較を試みる場合に、大学卒基準で比較するのか、高校卒の基準で比較するのかという問題が生じる。
<教育1級(講師)×行政1級(係員) 大学卒基準>
年齢(経験) 教育1級 行政1級 較差
22歳(0年) 21号 185,300円 29号 182,400円 2,900円(1.02)
23歳(1年) 25号 191,000円 33号 191,200円 ▲200円(1.00)
53歳(31年) 145号 327,800円 153号 336,600円(最高)▲8,800円(0.97)
59歳(37年) 169号 337,100円(最高) -
<教育1級(実習助手)×行政1級(係員) 高校卒基準>
年齢(経験) 教育1級 行政1級 較差
18歳(0年) 1号 146,000円 5号 142,700円 3,300円(1.02)
31歳(13年) 53号 236,200円 57号 236,600円 ▲400円(1.00)
55歳(37年) 149号 329,400円 153号 336,600円(最高)▲7,600円(0.98)
40歳(42年) 169号 337,100円(最高) -
大学卒基準の場合も高校卒基準の場合も、初任給基準は教育1級の方が高く設定されているが、給与カーブは途中でクロスし、最高到達号給の水準は教育1級の方が高いとはいえ、制度年齢ごとではほぼ行政1級の方が有利となっており、教育1級は同格と想定される行政1級より優遇されているとまでは言えない。なお、全人連モデルにあっては行政(一)1~2級と比較することとなるが、東京都のように給与カーブがクロスし、逆転するようなことはない。
以上、東京都の教育職給料表と行政職給料表(一)について、この学習ノートで考察してきた格合わせ方式により対比を試みた。
そもそも、級別資格基準と初号の位置関係や最高号給の制度年齢が国の俸給表の作成方法とは異なっていると考えられることから、このように比較することが許されるのかどうか分からない。
また、教育職給料表の2級及び3級の最高号給の制度年齢が行政職給料表(一)以上に高くなっているのは、給与カーブをフラット化するとうい教育職給料表の改定に伴う切替に当たって、同額又は直近上位に切り替える方式を採用したことから、人事院の方式では考えられない号給数が必要になったのだろう。従って、切替に伴い、制度年齢が切替前の制度年齢よりも高くなってしまった者が順次退職していくことにより、将来的には最高号給付近の号給は不要になるだろう。もっとも、55歳原則昇給停止制度を導入しているので、実際の様相は違うだろうが…
とはいえ、ある程度、東京都の教育職給料表の特長を掴むことはできたのではないかと思う。
前回までは、東京都の教育職給料表について、全人連モデル給料表と対比することによって、その特長を理解しようとしてきた。それは、旧教育(二)と旧教育(三)を一本化するとともに、2級の給料表を2つに分化し、6級制としたものであった。もちろん、東京都の行政(一)の6級制とは異なる給料表になっている。
そこで、今回は、東京都の教育職給料表と行政職給料表(一)との対比、すなわち人材確保法を意識した場合の東京都内部の較差を確認しておきたいと思う。手法は、制度表を作成し、同格と想定される職務の級の給料月額について、制度年齢が同じもの同士を比較する。
例によって、主なものを抽出して掲載する。
<教育2級(教諭)×行政2級(主任)>
年齢(経験) 教育2級 行政2級 較差
23歳(1年) 13号 204,700円 1号 201,100円 3,600円(1.02)
33歳(11年) 53号 294,300円 41号 278,400円 15,900円(1.06)
55歳(33年) 141号 385,400円 129号 369,300円(最高)16,100円(1.04)
64歳(42年) 177号 399,200円 -
<教育3級(主任教諭)×行政3級(係長)>
年齢(経験) 教育3級 行政3級 較差
27歳(5年) 1号 246,600円 9号 240,600円 6,000円(1.02)
33歳(11年) 25号 303,000円 33号 291,300円 11,700円(1.04)
55歳(33年) 113号 416,000円 121号 403,600円 12,400円(1.03)
60歳(38年) 133号 424,000円 141号 411,900円(最高)12,100円(1.03)
64歳(42年) 149号 430,000円 -
<教育4級(主幹教諭)×行政4級(課長補佐)>
年齢(経験) 教育4級 行政4級 較差
28歳(6年) 1号 271,100円 1号 258,600円 12,500円(1.05)
33歳(11年) 21号 319,500円 21号 302,600円 16,900円(1.06)
55歳(33年) 109号 445,400円 109号 422,800円 22,600円(1.05)
59歳(37年) 125号 451,800円 125号 429,500円(最高)22,300円(1.05)
61歳(39年) 133号 455,000円 -
<教育5級(副校長)×行政5級(課長)>
年齢(経験) 教育5級 行政5級 較差
33歳(11年) 1号 335,500円 13号 316,900円 18,600円(1.06)
45歳(23年) 49号 438,400円 61号 437,400円 1,000円(1.00)
54歳(32年) 85号 475,500円 97号 461,400円(最高)14,100円(1.03)
58歳(36年) 101号 483,500円 -
このように対比することが人材確保法の趣旨を踏まえたものであるならば、東京都の教育2級~5級については、いずれも東京都の一般の公務員を上回る水準を確保できているということになるのだろう。(東京都の教諭に適用される2級の位置づけがこれでよいのかどうかは議論があろうが、法令で格付けが明記されていない以上、極論すれば、それぞれの団体の考え方次第ということになろうか。)
次に、教育6級(統括校長・校長)を確認する。
東京都の行政(一)6級は本庁等の部長に適用される職務の級なのだが、号給は4つしかなく、個別の部長ポストごとに適用される号給が決められている。そのため、教育6級(統括校長・校長)については、制度年齢による行政(一)との対比ができないので、水準のみによる比較をしてみる。
なお、教育6級の初号の大学卒制度年齢は36歳であり、行政5級の同じ制度年齢の号給である25号給以上の水準も記載する。
<教育6級(統括校長・校長)×行政6級>
行政5級 25号348,600円~97号461,400円
教育6級 1号382,300円~85号512,500円
行政6級 1号501,000円~4号534,000円
おおざっぱであるが、教育6級(統括校長・校長)の水準は、東京都の課長級(行政5級)と部長級(6級)も中間に位置づけられるものと言えそうである。
次に、教育1級(講師・実習助手)を見ておく必要がある。
対比させるべき東京都の行政(一)の職務の級は1級(係員)なのであるが、基準となる初任給基準の考え方が違っているようである。つまり、教育職の場合、大学卒と高校卒の学歴差4年に対して5年分の号給数差(大学卒1-21、高校卒1-1)となっているのに対して、行政職(一)のそれは6年分の号給数差(大学卒1-29、高校卒1-5)となっているのである。したがって、水準差の比較を試みる場合に、大学卒基準で比較するのか、高校卒の基準で比較するのかという問題が生じる。
<教育1級(講師)×行政1級(係員) 大学卒基準>
年齢(経験) 教育1級 行政1級 較差
22歳(0年) 21号 185,300円 29号 182,400円 2,900円(1.02)
23歳(1年) 25号 191,000円 33号 191,200円 ▲200円(1.00)
53歳(31年) 145号 327,800円 153号 336,600円(最高)▲8,800円(0.97)
59歳(37年) 169号 337,100円(最高) -
<教育1級(実習助手)×行政1級(係員) 高校卒基準>
年齢(経験) 教育1級 行政1級 較差
18歳(0年) 1号 146,000円 5号 142,700円 3,300円(1.02)
31歳(13年) 53号 236,200円 57号 236,600円 ▲400円(1.00)
55歳(37年) 149号 329,400円 153号 336,600円(最高)▲7,600円(0.98)
40歳(42年) 169号 337,100円(最高) -
大学卒基準の場合も高校卒基準の場合も、初任給基準は教育1級の方が高く設定されているが、給与カーブは途中でクロスし、最高到達号給の水準は教育1級の方が高いとはいえ、制度年齢ごとではほぼ行政1級の方が有利となっており、教育1級は同格と想定される行政1級より優遇されているとまでは言えない。なお、全人連モデルにあっては行政(一)1~2級と比較することとなるが、東京都のように給与カーブがクロスし、逆転するようなことはない。
以上、東京都の教育職給料表と行政職給料表(一)について、この学習ノートで考察してきた格合わせ方式により対比を試みた。
そもそも、級別資格基準と初号の位置関係や最高号給の制度年齢が国の俸給表の作成方法とは異なっていると考えられることから、このように比較することが許されるのかどうか分からない。
また、教育職給料表の2級及び3級の最高号給の制度年齢が行政職給料表(一)以上に高くなっているのは、給与カーブをフラット化するとうい教育職給料表の改定に伴う切替に当たって、同額又は直近上位に切り替える方式を採用したことから、人事院の方式では考えられない号給数が必要になったのだろう。従って、切替に伴い、制度年齢が切替前の制度年齢よりも高くなってしまった者が順次退職していくことにより、将来的には最高号給付近の号給は不要になるだろう。もっとも、55歳原則昇給停止制度を導入しているので、実際の様相は違うだろうが…
とはいえ、ある程度、東京都の教育職給料表の特長を掴むことはできたのではないかと思う。
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