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62. 教職調整額(その3) [7.教職調整額]

 ところで、労働時間を算定することが困難であったり、性質上、業務遂行の手段や時間配分に関して使用者が具体的な指示をせず、所定労働時間又は通常労働時間となる時間を労働したとみなす「みなし労働時間制」というものがある。これと、教職調整額とはどう違うのか。
 根本的に違うのは、労働基準法第37条の適用除外があるかないかだ。教職調整額の支給される教員は、この規定の適用除外があって、休日勤務手当や超過勤務手当が支給されないが、みなし労働時間制には、名称から受けるイメージとは異なりこの規定が適用される。
 したがって、みなし労働時間制を採用しているからといって、休日労働させておいて休日に係る割増賃金を支払わなければ、それは労基法違反となってしまう。時間外労働の場合も同じ理屈で、所定労働時間を超える時間を労働させた場合には、それ以上の時間外勤務手当に相当する額を支払うことが求められるのである。この点に関して、時間外割増が手当に含まれていると主張するためには、それが分かるように明確に区分することを要するとする判例もある(東京地裁平3.8.27)。
 このみなし労働時間制については、次の指摘がある。
「現行の裁量労働制は、みなし労働時間制を採用しており、労働時間規制の適用除外を認めたものではないが、その本質は、「業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し当該業務に従事する労働者に対し具体的な指示をしないこと」にあることを踏まえると、管理監督者等と同様、時間規制の適用除外を認めることが本来の姿であるとの考え方もある。よって、米国のホワイトカラーエグゼンプションの制度(その改革の動向を含む。)を参考にしつつ、裁量性の高い業務については、改正後の労働基準法の裁量労働制の施行状況を踏まえ、今般専門業務型裁量労働制の導入が認められた大学教員を含め、労働者の健康に配慮する等の措置を講ずる中で、適用除外方式を採用することを検討する。その際、現行の管理監督者等に対する適用除外制度の在り方についても、深夜業に関する規制の適用除外の当否を含め、併せて検討する。」(規制改革・民間開放推進3か年計画(平16.3.19閣議決定))
 今日、このホワイトカラーエグゼンプションを導入に向け、政府が関連法案を通常国会に提出する方針に舵を切ったとの報道があった。こうみると、教職調整額を支給し、労基法第37条を適用除外として、休日勤務手当や超過勤務手当を支給しないこととしている現行の教員についての勤務時間制度というものは、正に労働者を労働時間規制の対象外にする裁量労働制を35年も前に先取りしていたものと言えないだろうか。


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