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473. 中教審働き方改革答申=給特法の今後の在り方 [8.トピック]

 1月25日、中教審答申「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」が取りまとめられた。
 この答申は、「給特法の今後の在り方について」も述べている。教員の勤務時間制度の面から記述しているのであるが、その中で、給与処遇の観点からの意見もあったことを紹介している。

○ 給特法に定める諸制度については,一部の委員からは,給特法の下での教師の勤務時間管理に関する実態や問題意識がある中で,労働基準法に定められた時間外勤務に関する36 協定や労働時間の上限規制,割増賃金などの規定が,適切な時間管理を通じて勤務の縮減を図るという蓋然的な意義を有することからして,給特法を見直した上で,36 協定の締結や超勤4 項目以外の「自発的勤務」も含む労働時間の上限設定,すべての校内勤務に対する時間外勤務手当などの支払を原則とすることから働き方改革の議論を始めるべきとの認識が示された。
 この意見に対しては,教師の職務の本質を踏まえると,教育の成果は必ずしも勤務時間の長さのみに基づくものではないのではないか,また,給特法だけではなく,学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法(以下「人確法」という。)によっても形作られている教師の給与制度も考慮した場合,必ずしも教師の処遇改善につながらないのではないかとの懸念が示された。

 ざっくり言えば、「時間外勤務手当を支払う制度にすべき」との一部の委員の意見に対して、「給特法だけではなく、人確法によっても形作られている教師の給与制度を考慮した場合、必ずしも教師の処遇改善につながらない」との懸念が示された、というのである。

 一部の委員の意見というのは、おそらく、10月15日の働き方改革特別部会第18回における相原委員(連合事務局長)の次の意見を踏まえた記述と思われる。

【相原委員】  ありがとうございます。大きく3点申し上げたいと思います。
 1点目は、公立学校の教員について、労基法37条を適用して、ICT、タイムカードによる客観的な勤務管理を徹底し、36協定を締結して時間外労働に対する割増賃金も支払うこと、これを原則として、議論のベースに置くべきではないかと思っています。
 論拠は2点あります。1点は、働き方改革関連法案には47の附帯決議が付きましたが、その11に教員の働き方についても言及がなされています。ICTやタイムカード、勤務時間の客観的な把握を行いなさいということが1つ。それと、学校における36協定の締結届出、時間外労働の上限規制は法令遵守の徹底を図ると明記されたことが1つです。給特法の関係についても、既に国立大学や私立の小中学校の教員には給特法は適用されておらず、労働基準法が適用されています。したがって、給特法を維持する観点からすると、職務と勤務対応の特殊性があるということは裏付けになりにくいということを申し上げたいと思います。

 後半の「給特法だけではなく、人確法によっても形作られている教師の給与制度を考慮した場合、必ずしも教師の処遇改善につながらない」との懸念については、現時点で公開されている議事録を見ても、誰が、どのように示したのか、よく分からなかった。

 時間外勤務手当制度に移行すれば、単純に考えれば給与支給額が増えるのだから、その意味で処遇改善になると考えるのが普通ではないのかと思うのだが、そうではないようである。そうすると、「給特法だけではなく、人確法によっても形作られている教師の給与制度を考慮した場合…」をどう理解すれば良いのか。

 給特法に基づく教職調整額は、超過勤務手当の一律支給という性格の給与ではなく、教育職員の勤務態様の特殊性に基づいて勤務時間の内外を問わず、包括的に評価して支給される俸給相当の性格を有する給与というべきである」(宮地茂監修『教育職員の給与特別措置法解説』(第一法規、昭和46年))と理解されている。そして、それは、「教育というものは教員の創意と自発性というものにまつところが多い」という考え方(当時の佐藤人事院総裁国会答弁)をベースとしている。更に、給特法制定を巡る国会論戦においては、それが教員の処遇改善に繋がるものとの意見が表明されていたのではなかったかと思う。

 この給特法の考え方は、「学校教育が次代をになう青少年の人間形成の基本をなすものであることにかんがみ、義務教育諸学校の教育職員の給与について特別の措置を定めることにより、すぐれた人材を確保し、もつて学校教育の水準の維持向上に資することを目的とする」と高らかに謳う「人確法」(学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法)の発想に相通ずるところがあるように思う。

 こう考えてくると、歴とした田中角栄内閣時代の閣法である人確法を「議員立法」などとミスリードする財務省的発想からすれば、「時間外勤務手当を支給しろというのなら、教職調整額を支給しないのは当然として、それだけでなく、人確法に基づいて1ランク引き上げられた給与の格付けを人確法制定以前に戻せ。そうでないと筋が通らない…。」と言い出しかねないのではないかと思われる。そうとでも理解しないと、「必ずしも教師の処遇改善につながらないとの懸念」がまったく理解できない。

 さて、どのように読み解くべきなのか…。


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