139. 産業教育手当(その12) [17.産業教育手当]
前回、産業教育手当又は定時制通信教育手当の支給される間は義務教育等教員特別手当が4分の3又は4分の2に減額される事情を踏まえて、これらの合計額の推移を概観した。また、定時制通信教育手当が併給される場合に産業教育手当が減額される事情についても概観した。その際、産業教育手当又は定時制通信教育手当に係る「人材誘致」を趣旨とする部分を4%と、それぞれの職務の特殊性を評価した部分を6%考えられないか仮説として示した。
これらを踏まえて、前回、<義務特手当と産教・定通手当の合計>として記した表に手を加え、おのおのの率からそれぞれの職務の特殊性を評価した部分の率を控除し、「人材誘致」又は「人材確保」を趣旨とする部分を抽出するとどのような数値になるであろうか。次に示してみよう。
<義務特手当と産教・定通手当の合計-特殊性>
50.1 50.4 52.4 現在
産教・定通非支給 4% 4% 6% 平均3.8%
産教手当(工商) 4% 6% 7% 5.9%
産教手当(農水) 4% 7% 8.5% 6.85%
産教(工商)・定通 4% 6% 7% 5.9%
産教(農水)・定通 4% 7% 8.5% 6.85%
このようにしてみると、義務教育等教員特別手当が創設された当初は、産業教育手当又は定時制通信教育手当の支給対象者には同手当は支給されなかったのであるが、そうであったとしても、「人材確保」の趣旨である4%分の手当―高等学校の教員であることに伴う若干の目減り分はこの際考慮にいれないでおくが―は支給されていたことになる。その後、減額に止められる改正があったことにより、「人材確保」部分は6~7%となり、第3次改善時点では7~8.5%、その後は目減りしている。
いずれにしても、義務教育等教員特別手当の支給を所与として考えてみると、産業教育手当又は定時制通信教育手当の支給によって「人材誘致」部分で更に優遇されるのは、2~3%程度であると考えてよいだろうと思う。
以前、産業教育手当の支給率10%のうち、概ね半分が「人材誘致」の趣旨であり、残りが「職務の特殊性」を考慮したものとの考えを示したが、定時制通信教育手当や義務教育等教員特別手当との関係を検討して、概ね裏付けられたと言っていいのではないだろうか。もちろん、義務教育等教員特別手当の減額の取扱いにおける農業・水産と工業・商船による違いや「人材誘致」部分は4%なのか5%なのかといった部分までは、十分に調べられなかった。
今日では、産業教育手当の支給率を5~8%の水準に見直している県が多数に登っており、支給率10%といえば相当高い水準に受け止めてしまいがちである。手当創設当時の状況では、たとえば調整手当の前身である暫定手当にしても、地域格差の大きさを反映して、相当高い率を設定しているから、特に違和感もなかったのであろう。いずれにしても、概ね半分が「人材誘致」の趣旨であり、残りが「職務の特殊性」を考慮したものであろうと思うが、見直しを実施した県では、これらの要素をどう見直したのか興味のあるところではあるが、残念だが資料がない。
結局、現時点では産業教育手当の支給率10%の根拠までは十分突き止めることはできなかった。
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