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174.トピック=時間外勤務と教職調整額(その4) [8.トピック]

 今回も、引き続き京都地裁判決(平成20年4月23日判決、平成16年(ワ)第145号損害賠償等請求事件)について、「安全配慮義務違反」と判示した部分を見ておきたい。

 判決は、「地方公共団体は公務員に対し,公務員が地方公共団体もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたって,公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮する義務(安全配慮義務)を負うと解するのが相当である」とする最高裁の判例(昭和50年2月25日最判)を踏襲した上で、本件について、次のように述べるのである。

 「O校長は,原告Iが平均して午後8時ころ退校していたこと,また,吹奏楽部の指導のため土・日に出勤したりしていたこと,被告教育委員会の指定を受けた研究発表の冊子のまとめ作業等その仕事量が多かったことを認識していたところ,原告Iの時間外勤務が極めて長時間に及んでいたことを認識,予見できたことが窺われるが,それに対してそれを改善するための措置等は特に講じていない点において適切さを欠いた部分があるというべきである。
 原告Iは,上記のとおり平日は平均して午後8時ころまで勤務する他,吹奏楽部の指導のため休日にも出勤したりしていてその時間外勤務の時間は少ないとはいえない時間であり,包括的に評価しても,配慮を欠くと評価せざるを得ないような常態化した時間外勤務が存在したことが推認でき,O校長は,同一の職場で日々業務を遂行していた以上,そうした状況を認識,予見できたといえるから,事務の分配等を適正にする等して原告Iの勤務が加重にならないように管理する義務があったにもかかわらず,同措置をとったとは認められないから同義務違反があるというべきである。」

 続いて、「時間外勤務手当請求権」については、次のように判示している。

 「ところで,原告らは,上記主張の前提として原告らの期間外の勤務時間について実際に時間的計測をすることができた旨主張して,前記のような特段の事情がある場合は,労働基準法37条,本件条例15条及び18条に基づき時間外勤務手当請求権が発生すると解すべきである旨主張する。
 しかし,原告らが原告ら自身の尺度で労働時間と考えた時間を計測できたとしても,前記に説示したとおりの教育職員の職務の特殊性を考慮すると,原告ら自身の尺度から労働時間と考えた時間帯における労働の全てを使用者である被告の拘束下における労働とまで評価してよいか,疑問を差し挟む余地がある。特に,原告らが時間外労働と主張する持ち帰り仕事は,原告らそれぞれの自宅でなされるものであって,使用者である被告の指揮監督の下にあるとまでいうことができないうえ,同職務の遂行の程度は勤務時間中に比して密度は高くはなく,仮に同時間を自己申告させたとしてもそのまま使用者の指揮監督下にある労働時間として扱うことはできないし,上記3(2)アで記載したような事情がある。以上のようなことを踏まえると,原告らの時間外勤務の労働実態について,原告らが主張する原告ら各自の時間外勤務について的確な時間的計測をなし得るとはいえず,その他,的確な時間外勤務時間を認めることはできない。」

 いずれにしても、原告及び被告の双方が大阪高裁に控訴したと聞く。裁判の行方は別にして、この京都地裁判決には学ぶところも多い。

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