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178.残業時間の再評価(その4) [21.残業時間の再評価]

 ところで、脱線するが、昭和41年度調査による残業時間を文部科学省はなぜ「月平均8時間」と言ったのだろうか。一週平均一時間四八分の4週分であるなら、「7時間12分」で少し少ない感じがする。だからといって、一週平均一時間四八分の52週分を12月で割ったものと考えると「7時間48分」になるが、これでは、先ほど触れた「エ」の「年間四四週」という計算と齟齬を来すように思う。

 ここで、文部科学省の平成20年度概算要求の内容を思い出したい。そこでは、「メリハリのある教員給与」を実現するための一つとして、教職調整額の見直しを掲げ、教員勤務実態調査による残業時間月平均34時間を半分の17時間に抑制した上で、現在との差額を措置し、総額約12%を確保するものであった。その考え方は、まず、諸手当へのはね返り分を廃止した上で、標準を10%とし、職務負荷を考慮して主任や主幹には2~4%プラスするというものであった。一方、現行の教職調整額の水準を振り返ってみると、支給割合は4%であるが、はね返り分を含めると実質6%ということになっている。つまり、文部科学省の概算要求については、残業時間が月平均8時間から月平均17時間に概ね倍増していることに対応して、教職調整額の水準を実質6%から総額12%に倍増しようという内容になっていると理解してよいのではないだろうか。

 しかし…、何か引っかかる。昭和41年調査で文部省が算定した残業時間である「一週平均一時間四八分」から残業時間「月平均概ね8時間」を算出するためには、通年で計算する必要があった。つまり、先ほど計算したように、夏休み等の間も「一週平均一時間四八分」の残業をしていると仮定して、ようやく「月平均概ね8時間」の数字になるのだった。しかしながら、『教育職員の給与特別措置法解説』によれば、「一週平均一時間四八分」の残業が「年間四四週(年間五二週から、夏休み四週、年末年始二週、学年末始二週の計八週を除外)にわたって行われた場合の超過勤務手当に要する金額が、超過勤務手当算定の基礎となる給与に対し、約四%に相当したものである」と説明しているのである。これは、廃案になった教職特別手当4%の根拠としてものを流用したものらしいのだが、この「超過勤務手当算定の基礎となる給与に対し、約四%に相当した」という部分を計算式で表せば次のようになろう。
 <本給に対して4%相当とした計算>
  残業時間 (1時間48分×44週)÷12月 = 月6.6時間 
  超勤手当 {(俸給月額+調整手当)×12月/44時間×52週}×1.25×残業時間数
  俸給月額に対する割合
   ={1.06×12/44×52}×1.25×6.6
   = 0.0458 → 概ね4%

 こうして見ると、年間おしなべて考えると、月平均6.6時間=月平均6時間36分ということになる。これでは、文部科学省が平成20年度概算要求で要求したストーリーとは合わなくなってくる。そうではなくて、はね返り分を考慮した実質6%の倍程度の時間に対応する水準が、はね返りを廃止して総額12%を確保するというのだから、現行の教職調整額が諸手当に跳ね返る分を考慮して、割り戻した時間数を根拠に要求したのかもしれない。次に計算してみよう。
 <教職調整額を残業時間数に割り戻す計算>
  超勤手当 {(俸給月額+地域手当)×12月/44時間×52週}×1.25×残業時間数
  教職調整額のはね返り効果
   年間 4%×調整(地域)手当分1.06×16.8月(昭和46年当時)=71.232%
   月間 71.232%÷12月=5.936%→概ね6%
  残業時間に割戻し
   (俸給月額×1.06×12月/44時間×52週)×1.25×残業時間数=俸給月額×5.936%
   残業時間数=8時間32分→概ね8時間

 なんだか分かりにくい、混乱した説明となったが、ここで言いたかったのは、「概算要求では、はね返り分の廃止と絡んで、改善前後の水準を実質水準で対比させるために『月平均概ね8時間』という説明をしたのではないだろうか」、という点である。


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