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181.定時制通信教育手当(その1) [23.定時制通信教育手当]

 今回から定時制通信教育手当を取り上げてみたい。
 以前、産業教育手当について考察した際にも触れたが、近年、定時制通信教育手当については全国の多数の県で手当水準の引き下げや昼間定時制教員に対する手当の廃止などの見直しが進み、その広がりは既に相当な数の県に及んでいる。
 この動きは、産業教育手当と同様、平成16年4月に国立大学が法人化されたことに伴う法改正で、高等学校の定時制教育及び通信教育振興法第5条において「俸給月額に百分の十(俸給の特別調整額を受ける者にあつては、その職務の複雑、困難及び責任の度合による区分に応じ、百分の八を超えない範囲内において文部大臣がそれぞれ定める割合)を乗じて得た額の定時制通信教育手当を支給する」と規定されていたものが、「定時制通信教育手当の内容は、条例で定める」とされたのを契機としている。
 さて、この定時制通信教育手当であるが、昼間定時制教員を支給対象から外している県が多いことから、逆に夜間勤務に対する手当であるかのように受け止められているのではないかと考えてしまうのだが、その趣旨は本来どの様なものであるのだろうか。

 まず、地方公務員給与制度研究会編著『地方公務員給与制度詳解』(学陽書房)から引用してみたい。
「第十九節 定時制通信教育手当
  一 性 格
 定時制通信教育手当は、高等学校の校長及び教員のうち、定時制教育に携わる者の職務の複雑性・困難性にかんがみ支給される手当てであり、定時制教育又は通信制教育に従事する校長及び教員の労苦に報いて、これらの者が専心その職務に精励することができるようにするとともに、この分野に優秀な人材を誘致し確保することにより、高等学校の定時制教育及び通信教育の振興を図ることを目的としている。」
 職務の複雑性・困難性という観点と人材誘致・確保という観点から給与水準を引き上げる「俸給の調整額」に近い特別の職務給的手当と理解すればよいだろうか。少なくとも、「夜間勤務」という言葉は出てこない。

 次に、産業教育手当を考察した際と同じように、第一法規『公立学校教職員人事執務提要』から引用する。
「16 定時制通信教育手当
 説 明
1 定時制通信教育手当とは、高等学校の校長及び教員のうち定時制教育又は通信教育に従事する職員の職務の複雑性・困難性にかんがみ、これらの教職員に支給される手当である。」
 これでは、人材誘致・確保の観点が脱落している。

 次に、『教職員の給与』(佐藤三樹太郎著、学陽書房)における定時制通信教育手当に係る解説を確認しておきたい。
 「この手当支給の趣旨は、国立又は公立の高等学校の校長および教員のうち定時制教育または通信教育に従事する職員の職務の複雑困難性にかんがみ、その労苦に報いるとともに、この分野に人材を誘致・確保することにあるとされている。/したがって、手当の性格は前述の産業教育手当と似ており、俸給の調整額と同じ支給方法による職務給であるが、特殊勤務手当的な性格を持つものとみることができる。」

 また、文部科学省が中教審の教員給与ワーキンググループに提出した資料には、次のような記述がある。
 「※ 定時制通信教育手当の検討の際は、高等学校の定時制教育及び通信教育における勤労青年教育の重要性や優秀な人材の確保の必要性を考慮する必要がある。」
 ここには、産業教育手当と同じように「優秀な人材の確保」という観点が示されている。

 ここまで見てきたが、定時制通信教育手当の趣旨を端的に言えば、「優秀な人材の確保」であり、その手当の性格は、産業教育手当と同様に「特殊勤務手当的」な性格と「俸給の調整額的」な性格を併せ有する特別の職務給的な手当と捉えてよいだろう。
 もう少し詳細に確認するため、いわゆる定通振興法が国会で審議されたときの議論を次回から見ていきたい。

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