SSブログ

208.古書散歩(その8)=『人事院月報(1957)』 [24.古書散歩]

 『人事院月報』は、言うまでもないことだが、人事院から毎月発行されている。最近のものは、よく言えば洗練された内容であるが、逆にあっさりしすぎていて、少々面白みに欠けるように思う。それに比べると、昔の月報の方には、著名な行政学者が寄稿していたりして、はるかに読み応えがある。

 例えば、8等級制が成立した昭和32年の月報を見ると、4月には、日本の行政学の先駆者である蝋山政道が「人事行政の望むもの」と題した巻頭論文を寄せているし、5月には、後に人事官になる元法制局長官である佐藤達夫の「憲法回想-公務員に関する規定あれこれ」と題した論文が掲載されている。また、佐藤論文の次には、「米国における連邦公務員制度」が収録され、給与制度の項では、「枠外昇給」の存在が紹介されている。年功的な日本の給与制度の象徴の一つとして取り上げられてきた「枠外昇給」は、意外にも当時のアメリカにもあった制度なのである。
 更に、同じ5月には、高等学校以下の教員について行われた「高学歴教育職員の俸給の調整-指令9-7とその運用方針-」が掲載されている。これは、「学歴における修学年数一年の差を教員経歴一年半の差とみて、これまでの一対一を一対一・五に改めることにより、短大卒を基準とした場合、新大卒については一号俸、旧大卒については二号俸高くするというものであった。」(佐藤三樹太郎『教職員の給与』29頁)
 また、9月には、「俸給の調整額を改正」と題して、従来の号俸制から定率制への改正内容を解説している。このとき、盲学校およびろう学校の教員については、改正前の細則9-8-2(初任給、昇格、昇給等の実施細則)の規定によって必要経験年数を1年ずつ短縮さてれていたが、当該規定が廃止されたため、旧1号俸に相当するものを新たに調整額に加算することとされたようである。その結果、国立大学附属の盲学校及びろう学校において、教育に直接従事することを本務とする職員には、調整数2が適用されることとなったのである。
 11月には、「日本官僚制の研究」等の著者である辻清明が「“人事行政の本旨”とはなにか」と題した論文を寄稿している。
 いずれにしても、時代を感じる内容である。

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:仕事

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。