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266.トピック=2年連続マイナス勧告 [8.トピック]

 8月10日、人事院は今年の給与勧告を行った。同日のasahi.com.の記事は、次のように報道している。

 「人事院は10日、国家公務員の2010年度の月給を平均0.19%、年間のボーナス(期末・勤勉手当)を0.2カ月分、それぞれ引き下げるよう菅内閣と国会に勧告した。2年連続の引き下げ勧告で、一般の行政職の年間給与は平均で9万4千円(1.5%)の減額となる。景気低迷による民間企業の賃金動向を踏まえた措置で、ボーナスの支給月数(3.95カ月)は1963年度以来47年ぶりに4カ月を割り込んだ。
 (略)
 勧告に先立ち人事院が民間の約1万1100事業所で働く約45万人の給与を調べたところ、国家公務員の月給39万5666円(平均41.9歳)は民間より757円高かった。ただ、若年層では民間を下回り、高齢層ほど上回っているため、基本給の引き下げ幅に年齢差を設けた。30歳代までは据え置く一方、40歳以上は平均0.1%減。今年度に56歳以上になる層はさらに基本給と管理職手当をいずれも1.5%引き下げる。」

 公務員にとっては、2年連続マイナス勧告という厳しい内容だが、この学習ノートが注目したいのは、「30歳代までは据え置く一方、40歳以上は平均0.1%減。今年度に56歳以上になる層はさらに基本給と管理職手当をいずれも1.5%引き下げる」という改定方針だ。
 記事では概略的表現になっているが、ここには、旧教(二)(三)相当の改定を考えるに当たって2つの制度的な注目点がある。一点目は、「40歳以上」を俸給制度としてどのように設定したのかということ。二点目は、56歳以上の1.5%引下げ対象者が行政職6級相当以上のものに限定されたのだが、特別俸給表はそれぞれどのような考え方でもって行政職6級相当と判断しているのか、という点である。これが理解できない限り、全人連モデルは作成できないことになる。

 ところで、今年の勧告本文を読んでみても、56歳以上を減額対象としたことについての根拠となるデータが示されていない。あれだけ、公務員労組側がデータの提示を求めたにもかかわらずである。少し長くなるが、人事院の報告から該当部分を引用しておく。

 「官民の給与水準は全体で均衡させているところであるが、年齢別にみると、30歳台までは民間の給与水準が公務を上回っているのに対し、50歳台では公務が民間を上回っている。特に50歳台後半層の平均給与額をみると、公務では50歳台前半層よりも高くなっているのに対し、近年民間では50歳台前半層よりも低くなっており、官民の給与差は拡大している傾向にある。公務において50歳台後半層の給与水準が上昇しているのは、多くの地方機関において50歳台後半に管理職に昇任し、給与上も昇格する昇進パターンが一般的であることに加え、近年、在職期間長期化のため、この年齢層において、上位級在職者の割合が高くなっていることが影響している。一方、個々の民間企業では一定年齢以降において給与を引き下げる仕組みを有しているところは多くないものの、50歳台後半層の民間の月例給は、他企業への出向・転籍なども背景に、全体としてみると50歳台前半層に比べその水準が低下している。
 このような官民の給与差の状況は、公務部内の昇進管理の実態等を考慮してもなお、公務員給与の在り方として適当でなく、早急に一定の対応を行うことが適当と考えられる。そこで、当面の措置として、本年の民間給与との較差を解消するための措置を通じて、特に給与差の大きい50歳台後半層の給与水準の是正を図る必要があると判断した。
 その具体策については、第2で述べる定年延長の実施に当たって50歳台後半層の給与制度を見直すことが考えられることから、当面、50歳台後半層の職員の俸給及び俸給の特別調整額について一定率を乗じた額を減ずる方策を講ずることが適当である。この措置によると、従来と全く同様の業務を担当していても特定年齢到達により支給される俸給月額が一定割合下がることとなるが、俸給は同一級の中で一定の幅をもって水準が設定されていること、俸給表は生計費も考慮して定めるものとされており、生計費の減少が認められる50歳台後半層の職員について民間の状況を踏まえて給与を引き下げることには合理的理由があることなどから、今回の措置も現行の職務給の考え方と整合するものである。」

 データは示してはいないが、「特に50歳台後半層の平均給与額をみると、公務では50歳台前半層よりも高くなっているのに対し、近年民間では50歳台前半層よりも低くなっており、官民の給与差は拡大している傾向にある」ことを指摘している。また、「俸給表は生計費も考慮して定めるものとされており、生計費の減少が認められる50歳台後半層の職員について民間の状況を踏まえて給与を引き下げることには合理的理由がある」と解説している。
 例えば、全国労働基準関係団体連合会編集・発行『適正人件費管理のための賃金制度』(平成22年4月)に「基本給の決め方『年齢給』」という章がある。
 ここで取り上げている「年齢給」は、労働者とその扶養する家族の生計費を基に賃金を決定しようとした戦前の思想に遡ることができ、戦後は、戦後の日本の賃金体系に大きな影響を与えた電算型賃金体系の「本人給」に引き継がれたものであるという。
 そして、年齢給を設計するに当たっての根拠として考えられるデータの1つが示されている。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」である。詳しい内容は省略するが、この本では、平成21年の標準労働者・高校卒業・男性の企業規模計(10人以上)の所定内給与額の結果を取り上げ、「所定内給与のピークは54歳の464.7千円となっています」と指摘している。

 賃構データの一部のみをもって、「56歳以上を減額対象とする根拠は十分にある」とするのは、いささか乱暴な気がする。人事院は、どうして調査データを示さなかったのだろうか…。

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