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356.トピック=総合的見直し先送り勧告 [8.トピック]

 報道によれば、11月5日、ようやく47都道府県人事委員会による平成26年の給与勧告がすべて出そろったとのことだ。

<時事ドットコム>
全都道府県で年収アップ=41自治体が給与配分見直し-人事委勧告
47都道府県人事委員会の2014年給与改定勧告が5日、出そろった。月給は44都道府県、期末・勤勉手当(ボーナス)は47都道府県でそれぞれ引き上げを勧告した。勧告通り実施されると、平均年収は全都道府県で3万3000~16万3000円アップする。
 国が15年度から取り組む、世代間と地域間の給与配分の変更を柱とする「給与制度の総合的見直し」に関しては、41都道府県が国に準ずるよう求めた。
 月給の引き上げ率が大きかったのは、大阪1.65%(6450円)、香川1.14%(4207円)、静岡0.72%(2758円)など。秋田、鳥取、高知は民間との格差が小さく、水準を据え置いた。
 ボーナスは東京が0.25カ月引き上げ、年間支給月数を4.20カ月とした。その他は0.05~0.20カ月引き上げ、年間3.80~4.10カ月の支給とするよう勧告した。(2014/11/05-12:34)

 給与引上げ勧告は、個人的にも嬉しい限りだが、注目したいのは、この記事の「「給与制度の総合的見直し」に関しては、41都道府県が国に準ずるよう求めた」との部分である。つまり、総務省からの技術的助言があったにもかかわらず、6団体は「給与制度の総合的見直し」を先送り、若しくは拒否したのである。この6団体は、岩手県、秋田県、群馬県、京都府、高知県、熊本県ということなので、早速、各人事委員会の給与報告を読んでみた。

 6団体のうち、東日本に所在する岩手県、秋田県、群馬県の各人事委員会は、概ね「給与構造改革の経過措置の廃止や、昇給回復を実施していない」という国と異なる事情を述べて、総合的見直しを先送りするいわば消極的な理由による報告をしている。
 これに対して、西日本に所在する京都府、高知県、熊本県の各人事委員会は、今回の総合的見直しが各団体の給与制度の在り方にもたらす問題点を指摘するという画期的な報告を行っている。京都府の報告は課題となる点を簡潔に述べるだけであるが、高知県と熊本県の報告はそれぞれの検証結果を比較的詳しく述べており、大変面白いものになっている。それらの全文を掲載したいところだが、紙幅の関係上、骨子・概要版に記述されている内容を掲載しておく。(勧告日順に掲載)


●熊本県人事委員会「概要」(平成26年10月9日)
(1) 給与制度の総合的見直し(地域間・世代間の給与配分の見直し)
① 地域間の給与配分の見直し〈給料表水準の見直し〉
  地域手当の支給地域が県内に設けられない状況で、本県より民間賃金水準が低い地域の官民の給与差を踏まえて行われる人事院勧告に準じて、本県の給料表水準を引き下げれば、地域の民間給与との均衡が図れなくなる状況が予見されるため、単に国に準じて見直しを行うのではなく、地域の民間給与との均衡を図ることに重きを置いて対処することが必要
② 世代間の給与配分の見直し〈給与カーブの見直し〉
  公務と民間では人事管理等が異なるため、世代間の給与配分の相違をどこまで職員給与に反映するかは難しい課題。また、給料表の構造は国に準じてきたが、職員構成が国と異なるため、人事院勧告に準じて給料表を改定しても、国家公務員とは異なる影響等が生じる可能性があり、慎重な対処が必要。他方、雇用と年金の接続を検討する上でも世代間の給与配分の見直しは大きな課題であり、本県においても検討することが必要
③ 給与制度の総合的見直し(地域間・世代間の給与配分の見直し)への対応
 ア 地域間の給与配分の見直しについては、地域の民間給与との均衡をより重視する観点から、人事院勧告に準じた給料表水準の引下げは見送る。県外勤務者の地域手当の見直しも行わない
 イ 世代間の給与配分の見直しは、国との均衡、雇用と年金の接続の観点から、本県においても検討が必要な課題であり、職員給与に与える影響等の検証とともに、本県人事管理や職員構成等の状況、他の都道府県の取組状況等を総合的に勘案する必要があることから、引き続き検討

●高知県人事委員会「骨子」(平成26年10月14日)
3 給与制度の総合的見直しに関する事項
(3) 報告事項
給与構造改革以降、制度は国、水準は地域の民間との均衡を図ることを基本的なスタンスとしており、そうした認識のもと、資料に示すとおり、人事院が指摘した課題が本県にも当てはまるのか、国家公務員との均衡も念頭に検討
  これまで、本県は、地域の民間との均衡を図るため、独自に水準調整した給料表を導入するとともに、特別給については国家公務員を下回る水準で改定
  また、給与制度の適正な運用に最大限努めてきたところであり、職務給の原則に基づく厳格な昇格運用や勤務実績の給与への反映を実施
  これらの取組の結果、本県では、地域における民間との均衡が保たれており、国家公務員のように50歳台後半層の職員の給与水準が民間を上回る状況は生じておらず、地域における国家公務員の給与水準を下回る状況にあることから、現時点では特段の見直しが必要と認められないため、地域間及び世代間の給与配分の見直しによる給料表の改定は行わず、現行のまま据え置くことが適当

●京都府人事委員会「概要」(平成26年11月5日)
3 給与制度の総合的見直し
 ・ 人事院は、本年の勧告において、「地域間の給与配分の見直し」、「世代間の給与配分の見直し」、「職務や勤務実績に応じた給与配分の見直し」の観点から、俸給表、諸手当の在り方を含めた給与制度の総合的見直しを平成27年4月から実施するよう勧告
 ・ 府が国に準じて今回の見直しを実施した場合、国と手当制度が異なること等から民間の給与水準との均衡が維持できないこととなる
 ・ 世代間の給与配分の見直しについては、府においても国と共通の課題
 ・ 給料表構造等の給与制度については国に準じた見直しを行う必要性があるが、給与水準については府内の民間との均衡を重視していくことが必要
   このため、今後、給料表や地域手当の在り方を含め、民間給与の水準との均衡を確保するための方策や地域間給与配分の方法について、府内各地域の実情や職員の状況、国や他府県の措置状況等を踏まえ、引き続き検討していくことを報告



 どうであろうか。是非、本文を読んでいいただきたい。とりわけ、高知県の報告では、「国の昇格運用は厳格ではない」と言わんばかりの指摘をした上で、「本県では、…現時点では特段の見直しが必要と認められない」とまで言い切っている。なかなか挑戦的で、地方の主体性を発揮した内容となっており、国準拠の呪縛から抜け出せないでいる人事委員会が多い中で、読むに値する報告になっているのではないかと思う。
 さて、人事院や総務省の幹部方は、これらの人事委員会報告をどのように読み、どのように受け止めるのであろうか…。

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コメント 1

takasaki

はじめまして。ずいぶん以前から拝見して勉強させていただいています。
今回の各都道府県・政令市の勧告ですが、人事院は他人ごとのような気がしますが、総務省は、検討会の中間とりまとめも、技術的助言も「国に準拠せよ」と出した以上、国に準拠していない団体は非常にけしからんと思っているでしょう。
見送りだけでなく、今回は、引き下げ率は国と異なるものにして給与カーブだけ国の形状を取り入れた団体もあり、神奈川のように給与カーブも独自にしたところもありますね。
地域手当の総枠ペナルティのように、なんらかの財政的ペナルティをちらつかせて、なんとか国準拠にさせようとしてくると思いますが、皆が国に倣えだった給与構造改革時と比べると、今回は、どこの団体も悩みながら独自の道を模索したのだろうなぁと感じます。今回は国準拠だが、来年以降の較差次第では調整給料表に移行する、といった宣言めいたものを書いている団体も複数ありましたね。
やはり、地域手当のあり方も含め、給与構造改革というのは各団体にとってなかなか苦い体験だったのではないかと思います。
自治総合センターの昨年の報告書を見ていてもそう思いました。
http://www.jichi-sogo.jp/document
by takasaki (2014-11-12 22:12) 

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