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357.総合的見直しと人件費削減(その1) [44.総合的見直しと人件費削減]

 給与制度の総合的見直しの実施が、地方の人件費削減にどの程度の影響を及ぼすことになるのか。10月10日の時事ドットコムに次のような記事が掲載された。

自治体人件費、2100億円減=給与の総合的見直しで-総務省
 総務省は、政府が2015年度から実施する方針の国家公務員の「給与制度の総合的見直し」に準じ、全国の地方公務員給与が改定された場合の人件費削減効果を試算した。基本給の平均2%引き下げなどにより、見直し完了後は年間約2100億円が減ると見込んでいる。
 給与制度の総合的見直しは、民間賃金が低い地域の水準に合わせて国家公務員の基本給を引き下げる一方、民間の方が高い地域では公務員への「地域手当」支給を手厚くし、民間の実態に近づける内容。
 総務省の試算は、都道府県や市町村の一般職員や教職員、警察・消防職員ら約230万人を対象に実施した。基本給引き下げで3700億円程度が削減される一方、民間賃金が高い自治体では地域手当が手厚くなるため、同手当分で1500億円程度増加。差し引きで2100億円程度の削減になると見込んだ。
 国家公務員の給与制度の総合的見直しは、15年度から3年かけて段階的に実施する。人事院が今年8月に行った給与改定勧告に盛り込み、政府は今月7日の閣議で勧告通りの実施を決めた。(2014/10/10-14:50)

 国家公務員の人件費に関わっては、この報道に先立つ10月7日の給与関係閣僚会議で麻生財務大臣が次のように発言している。(議事録から抜粋)

○麻生財務大臣:今般の人事院勧告のうち,「給与制度の総合的見直し」を実施した場合の財政への影響を試算いたしましたところ,完全実施された平成30年度の段階で約600億円の人件費削減効果が見込まれるとの結果となりました。次に,今年度の給与改定の実施につきましては,約820億円を要しますが,人事院勧告制度の趣旨,現在の経済政策の方向性,また,先ほど申し上げた「給与制度の総合的見直し」が盛り込まれていること等を勘案すれば,引き続き行財政改革を推進するとの方針の下,勧告どおり実施することに異存はございません。また,地方公共団体におかれても,「給与制度の総合的見直し」を踏まえ,地域の民間給与の状況をより的確に反映するとともに,適正な定員管理の推進に取り組んでいただく必要があると考えております。

 これらを巡って、10月31日の第187回国会衆議院内閣委員会で、なかなか興味深いやりとりが行われたことが記録されている。国家公務員一般職給与法案及び関連二法案の審議にあたって日本共産党の佐々木憲昭氏が質疑を行い、政府側が回答した部分である。

 まず、「給与制度の総合的見直しは、全国共通に適用される俸給表水準を、民間賃金水準の低い地域の官民較差に沿って平均2%下げる、その一方、引き下げた分を原資として、その分を他の手当に振り分ける、したがって給与水準、給与総額は変わらない、との理解で良いか」という質問に対して、人事院総裁は次のように答えている。

○一宮政府特別補佐人 人事院の給与勧告は、国家公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させることを基本としていることは、委員のおっしゃるところでございます。
 官民比較に当たりましては、同種同等の者同士を比較するということが適当であることから、職員数が最も多い国の行政職俸給表(一)適用職員の給与と、民間企業の事務・技術の業務を行う従業員の給与を比較しております。
 今般の給与制度の総合的見直しは、行政職俸給表(一)の給与水準を維持しつつ、給与配分の見直しを行うこととしております。(佐々木(憲)委員「総体は変わらない」と呼ぶ)行政職俸給表(一)の給与に関しては、トータルは変わらないということになっております。

 つまり、「官民均衡は行(一)の給与水準について行うので、行(一)に関しては総額で変わらない」と回答している。ということは、その他の俸給表適用職員を含めると、総額で変わる可能性を示唆しているのである。
 そして、給与制度の総合的見直しを実施した場合の人件費削減効果について、西田財務省主計局次長は次のように回答している。

○西田政府参考人 お答え申し上げます。
 給与制度の見直しによります人件費削減効果についてのお尋ねでございますが、給与制度の総合的見直しによる影響額は、見直しが完成をいたします平成三十年度時点におきまして、国が負担する人件費ベースで三角の六百億円程度、地方公共団体につきましては、総務省の試算によれば三角の二千百億円程度でありまして、義務教育国庫負担金等の両者に重複している部分を除く国、地方の純計ベースでは三角の二千五百億円程度となっております。また、このうち一般職の国家公務員については、三角二百億円程度の人件費削減効果を見込んでおります。

 時事ドットコムの記事等のとおり、国は▲600億円、地方は▲2,100億円と説明されており、義務教育費国庫負担金等の重複分を除く国と地方の合計では▲2,500億円の人件費効果が示されている。そうすると、やはり、国の場合には行(一)以外を含めた国家公務員としては民間均衡が図られていないことになるのだが、地方も同じ論理になるのだろうか、その点がよく理解できない。
 国家公務員に関しては、古屋人事院事務総局給与局長が次のとおり説明している。

○古屋政府参考人 先ほど御説明申し上げたとおり、公務員の給与は、最も一般的な俸給表である行政職俸給表(一)について官民比較を行い、給与水準、具体的な改定の内容を決定していくということにしておりまして、他の俸給表につきましては、行(一)との均衡を基本に改定を行っているということでございます。
 そういうことで、一般職給与法職員全体で見た場合には、給与水準の動きというのは行政職俸給表(一)と全く同じ結果になるとは限らないということでございますが、多様な職種を抱える国家公務員におきましては、適用される職員数が最も多く、同種同等の者同士で官民比較を行うことができる行政職の(一)の職員を基本として決定することが現実的であり合理的な方法であるということで、これまでもそういう方法をとってきたところでございます。

 地方公務員に関しても質問をしてほしかったのだが、残念ながら突っ込み不足で、この日の審議では明らかにされないまま、採決されてしまった。

 ところで、官民較差適用方式については、現行では官民均衡を図る対象を行(一)のみとしているが、かつてはすべての職種を対象とする総合較差方式であった。それを現行方式に改める契機となったのは、以前このノートでも述べたとおり、昭和49年の教員及び看護婦についての給与の特別改善の勧告であった。特定の職種を優遇するために、行政職をはじめ他の職種の給与水準を低くして原資を捻出することが困難だと判断された訳である。以後、官民均衡が図られるのは行政職であり、その後、行(一)のみとされたのだが、そもそも国家公務員全体で官民均衡を図る方式は40年以上も前に変更されていたのであった。

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