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399.臨時・非常勤教員(その11) [46.臨時・非常勤教員]

 非常勤講師とは、どのような性格の職であるのか。もう一つ頭の中に入らない。ずっと悩んでいるのだが、仕方がないので遠回りにはなるのかもしれないが、『新版 逐条地方公務員法第3次改訂版』(学陽書房)によって確認しながら学習しよう。

 一般職と特別職の違いについては、「地方公務員法第三条第三項に掲げる職員の職は、恒久的でない職または常時勤務することを必要としない職であり、かつ、職業公務員の職でない点において、一般職に属する職と異なるものと解される。」とする行政実例(昭和三五年七月二八日 自治庁公発第九号、茨城県人事委員会事務局長あて公務員課長回答)があるが、より具体的な両者を区別する基準としては次の要素が考えられる。
 ① 指揮命令関係の有無  一般職の地方公務員は上司の命令に従って職務を遂行するものであり(法三二、地教行法一九56、消防法一四など参照)、特別職の地方公務員は法律や自己の学識経験等に従って自らの判断と責任で職務を遂行することが期待されている(自治法一三八の二参照)こと
 ② 専務職であるか否か  一般職の地方公務員はもっぱら地方公務員としての職務に従事するものであり、特別職の地方公務員は、当該地方公務員としての職務のほかに、他の職務を有することも妨げられないのが原則である(自治法九二の二、一四二参照)こと
③ 終身職であるか否か  一般職の地方公務員は、原則として、定年に達するまでの勤務が想定されており、特別職の地方公務員には一定の任期が定められていること
④ 成績主義の適用の有無  一般職の地方公務員は、受験成績、勤務成績など、客観的な能力の実証に基づいて採用、昇任などが行われ(成績主義)、特別職の地方公務員は選挙、任命権者との信頼関係、特定の知識経験などに基づいて当該職に就くものであり、転任や昇任などのいわゆる人事異動の対象となることが想定されていないこと
 ⑤ 政治職であるか否か 一般職の地方公務員は政治活動において中立性が要求されるが、特別職の地方公務員は必ずしも政治的な中立性が要求されるわけではないこと
右の基準は、理論的なものであり、実定法上は、特別職に属する職が列記され、「一般職は、特別職に属する職以外の一切の職とする」とされている(法三2)のであるから、地方公務員の範囲が決まれば、自動的に一般職の範囲が定まることになるはずであるが、法公務員の定義に微妙な点があることは前述したところであるし、特別職を列記した地方公務員法第三条第三項にも解釈の余地があるものがあるので、必ずしも一義的に決まるとは限らない。(48~49頁)

 引用した解説は、選挙等によって就任する「政治職」や首長との人間的関係などに基づいて任命される「自由任用職」を含んだ説明であるし、これだけでは分かったような、分からないような感じのものとなっている。
 それらの職ほか、『逐条地方公務員法』は「非専務職」の範疇を用いて解説している。同書は、非常勤講師をこの「非専務職」に位置づけている。
 関係する部分を抜粋して掲載する。

 ウ 非専務職  非専務職というのは、生活を維持するために公務に就くのではなく、特定の場合に、一定の学識、知識、経験、技能などに基づいて、随時、地方公共団体の業務に参画する者の職のことを意味する。これらの職と占める者は、その相当する職務が厳格な指揮命令系統の中で行われることが予定されておらず、当該公務の他に職務を有していたり、公務のために使用する時間が短時間であったり、その期間が短いのが通例であることから、地方公務員法を適用することが適当ではないとされるのである。その意味で、特別の学識、知識、経験、技能などに基づくことなく、上司の指揮命令の下に、補助的職務に従事するにすぎない者は、ここでいう非専務職には含まれないことになる。具体的には、審議会や審査会などの委員、臨時または非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員およびこれらの者に準ずる者など、非常勤の消防団員および水防団員がある。(52頁)

 5 臨時または非常勤の顧問、参与などの職(本条3③)  非専務職として特別職となるものである。本号では、顧問、参与、調査員および嘱託員の職名が例示されているが、これらの者はいずれも特定の学識または経験に基づいて任用されるものであり、この職に該当するか否かは、客観的な職務の内容・性質、勤務態様や勤務条件等を総合的に考慮して判断されるべきものである(大阪高裁平二五・三・二七判決例集未登載)。そして、このような特定の要件に基づかない者を臨時または非常勤の職に任用しようとするときは、地方公務員法第二二条第二項の規定に基づく臨時職員として任用すべきである。また、ここで臨時または非常勤というのは、定数を条例で定めるとする地方自治法などにおけるのと異なり、特定のプロジェクトに従事する場合や調査研究のために採用された場合など、会計年度を越えて存続するものも含まれると解される。
 本号に基づく特別職としては、非常勤の公民館長(通知昭二六・三・三○ 委社第四○号、行実昭二六・三・一 地自公発第五一号)、非常勤の学校医(行実昭二六・二・六 地自乙発第三七号)、公立学校の非常勤講師(行実昭三二・八・二六 自丁公発第一○二号、昭三五・七・二八 自治丁公発第九号)、福井地裁昭三四・三・一一判決)、スポーツ振興法に規定する体育指導員(行実昭四二・二・二○ 公務員第一課電話回答)、 (略) などがある。(63~64頁)

 以上、長々と引用を続けて考えてきたのだが、少なくとも週12時間程度のような非常勤講師については、「非専務職である嘱託員に準ずる職」だと解釈していると理解してよいだろう。
しかし、である。公立学校に勤務する実際の非常勤講師については様々な任用形態があるのが実態なのではないだろうか。多くは雇用保険に加入もできないような時間数の非常勤講師が多いのだろうが、一方では、週当たりの勤務時間が常勤の者の2分の1をこえ、雇用保険にも加入するような者もいるのではないかと思われる。そうすると、そのような者については、先に引用した昭和35年の自治省公務員課長回答の前提となった非常勤講師とは異なるのではないか。つまり、すべての非常勤講師が特別職に属する職である即断すべきではなく、昭和32年の自治庁公務員課長通知に従って、「いわゆる非常勤講師と称されている職員が特別職に属するか一般職に属するかは、その者の勤務の実態により判断するべきもの」なのではないのだろうか。

 ということは、元に戻ると、「週12時間程度のような非常勤講師については、非専務職である嘱託員に準ずる職だと理解してよい」とするならば、そのような者は「労働者なのであろうか」との疑問がわいてくる。まず、「生活を維持するために公務に就くのではない」という理解がベースになっている。さらに、その12時間というものは、公立学校の実態からすると、厳密な意味での勤務時間というよりは、「授業時間が12時間」、すなわち「12コマ」を意味しているのではないのだろうか。そうすると、労働契約の重要事項の一つである勤務時間が明確になっているのかどうか、あやふやなのが実態なのではないのだろうか。そうすると、ますます、そのような者は「労働者なのであろうか」との疑問がわくのである。
 悩みは深まるばかりなのだ。

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