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398.臨時・非常勤教員(その10) [46.臨時・非常勤教員]

 このノートは教員給与がテーマであり、非常勤講師を取り上げるなら、その報酬について考察すべきなのだが、その前に、どうしても非常勤講師の身分というか、任用関係の本質というものを理解しなければならない気がしている。
 次のような行政実例がある。

○公立学校の非常勤講師は一般職か特別職か
(昭三二・八・二六 自丁公発第一○二号 自治庁公務員課長回答)
照会
 公立学校に勤務する非常勤講師は、地方公務員法上、一般職に属するか、特別職に属するか
回答
 非常勤講師は、地方公務員法第三条第三項第三号に該当し、特別職に属するものであるが、本来一般職であるべき職員が非常勤講師として発令されている例もあるように見受けられるので、いわゆる非常勤講師と称されている職員が特別職に属するか一般職に属するかは、その者の勤務の実態により判断するべきものと解される。


 前回紹介した『学校経営ハンドブック』では、「非常勤講師は特別職に属する」と明快に述べるのだが、前記の公務員課長通知を読む限り、そう単純に割り切ることはできないようにも思われる。典型的な非常勤講師、本来的な勤務実態の非常勤講師は特別職に属するものだけれども、非常勤講師と称されている職員のうち、その勤務の実態を踏まえると、一般職に属すると言わなければならないものもいるよと述べているのだが、この通知をどのように理解したら良いのだろうか。「非常勤講師には、特別職に属するものと一般職に属するものが存在する」と理解すべきなのか、「非常勤講師は特別職に属するものなのだから、一般職に属する職員のような勤務形態を採用するのはダメだぞ」、「一般職に属する職員のような勤務形態の非常勤講師は本来的な在り方ではないから、非常勤講師と称してはいけないよ」と言っているのだろうか。後者については、いくらなんでも言い過ぎだろうから、前者のように純粋に理解してもよいような気がするのだが…。公務員課長通知で具体例を示して説明してくれればよかったのだが、どのような勤務の実態を前提に述べているのか、残念ながら分からない。
こんな行政実例もある。

○非常勤講師はなぜ特別職といえるか
(昭三五・七・二八 自治丁公発第九号 自治省公務員課長回答)
照会
一 地方公務員法第三条第三項第三号に規定する職を特別職として地方公務員法の適用を排除したのは、これらの職のいかなる点が、地方公務員法を適用するのに不適当であると考えられるのか。
二 非常勤講師は、地方公務員法第三条第三項第三号に該当するという行政実例の解釈理由について
 イ 非常勤であるだけでは同号に該当しないことは明らかであるから、講師は同号中の「これらの者に準ずる者の職」に含まれると解すると思われるが、「準ずる」とは顧問、参与、調査員、嘱託員のうち、いずれに準ずると解するか、或いはそれらのすべてに準ずると解するのか。
 ロ~二 (略)
回答
一 地方公務員法第三条第三項第三号に掲げる職員の職は、恒久的でない職または常時勤務することを必要としない職であり、かつ、職業的公務員の職でない点において一般職に属する職と異なるものと解せられる。
二イ 非常勤講師は地方公務員法第三条第三項第三号の嘱託員に該当するものである。
 ロ~二 (略)

 この行政実例は、おそらく次の判例を意識したものと思われる。

○週三日、各四時間勤務の県立高校非常勤講師は、地方公務員法にいう特別職職員にあたるか
 (福井地方 昭三四・三・一一判決)
要旨
 県立高等学校のいわゆる非常勤講師として週の火、水、土曜日に各四時間勤務し、手当月額四千円の支給を受けている地方公務員の職は、地方公務員法第三条第三項第三号にいう非常勤の嘱託員およびこれに準ずる者の職に該当し、特別職に属するものと解すべきである。

 この裁判における判断の基礎となった非常勤講師は、週当たり12時間の勤務ということになるので、「常時勤務することを必要としない職であり、かつ、職業的公務員の職でない」職であるということになろう。そして、そのような性格の職であって、かつ、非常勤の嘱託員及びこれに準ずる者の職に該当するのだから、特別職に属するのだというのである。

 ところで、「非常勤講師は、非常勤の嘱託員及びこれに準ずる者の職に該当する」というのだが、この「嘱託員」とはいったいどのような職なのだろうか。とある国語辞典によれば、嘱託とは「①たのむこと。まかせること。②ある業務を臨時に委託された人」とある。有斐閣の『法律用語辞典』を開くと、嘱託とは、「①一定の行為をすることを他人に依頼すること。(略)公の機関が他の期間等に一定の行為を依頼するときに多く用いられる。嘱託登記(略)等がその例。②公の機関が、正式に職員に任命しないで、ある人に一定の業務に携わることを依頼したとき、その人の地位を「嘱託」又は「嘱託員」という。(略)」ある。嘱託に類似する「委嘱」の項を見ると、「①一定の事実行為又は事務を他人に依頼すること。「委託」とほぼ同じ。(略)②行政機関に置かれる審議会等の委員等に、当該行政機関以外の行政機関の職員、民間の学識経験者等を任命する場合に用いる。法令上は、この用例が一般。(略)」と説明されている。『法律用語辞典』は「正式に職員に任命しないで」とあるけれども、嘱託「員」となる場合には、やはり任命行為があると理解するのが普通だろうとは思うが…。
 前記の文章から「非常勤」を取り去ると、「講師は、嘱託員及びこれに準ずる者の職に該当する」ということになる。しかし、「常勤の嘱託員」というものはしっくりこない。どう考えても、少なくとも職業公務員ではない非常勤の職を想定していると思われる。

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