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404.臨時・非常勤教員(その15) [46.臨時・非常勤教員]

 前回、公立学校の非常勤講師の時給について具体例を見たが、今回は、非常勤講師の時給がどのようにして算出されたのかを考えてみたい。
 そこで、前々回紹介した国立大学の非常勤講師の勤務1時間当たりの給与(時間給)の計算方法をもう一度確認しておく。(『非常勤職員の給与について』平成13年3月26日付け12文科人第242号、文部科学省大臣官房人事課長通知)

(1) 講師である非常勤職員については、その者を常勤の講師として採用した場合に受けることとなる俸給月額および調整手当の額を基礎として、次の算式により算出した額の範囲内の額をもって時間給とする。
 (俸給月額+調整手当)×12 / 52×10

 この算式中の「10」の数値にかかわっては、佐藤三樹太郎の『教職員の給与』に次のような記述があるのであった。

「(注)52×10は52週(年間標準時数)×10時間の意味である。10時間というのは国立大学教官の標準担任時間を想定したものであるから、公立高等学校以下の教員に準用する場合は、これとは異なる時間数を想定することとなろう。なお、右の算式中、暫定手当は現在では調整手当と読み替える必要がある。」(292頁)

現行の公立高等学校以下の非常勤講師の時給は、前回見たところによれば、東京・大阪では授業1時間当たり2,860円程度の額であった。非常勤講師の時給についての地方交付税積算単価については、手元にある資料では、平成22年度以降2,780円となっている。
 この額の基礎となった標準担任時間が分かれば、ベースとなっている俸給月額とその号俸が分かるのだが、公表されていないと思われる。仕方がないので、このノートなりに想定してみるしかない。

 文部科学省による教職員定数の解説書によれば、従来、高等学校の教員の標準定数については、教員1人当たり担当時数を18時間として算定した必要教員数を基礎とし、中学校の教員について1教員24時間、小学校については1教員の週当たり担当時間数を26時間と想定して算定していることになっていた。
 大学教官の標準担任時間である10時間は、実際の授業時間の長さで考えると1授業90分が標準だろうから、1.5倍した15時間が実時間ということになるだろう。同じように無理矢理計算すると、高校の18時間は×50/60をして15時間、中学校の24時間は×50/60をして20時間、小学校の26時間は×45/60をして19.5時間がそれぞれ実時間ということになる。こうしてみると、大学と高校で釣り合いをとり、中学校と小学校で釣り合いをとっていることが分かる。
 しかしである、東京都も大阪府も東京学芸大学も、非常勤講師の時給について、高校と小・中学校で金額が異なってはいなかった。高校をベースに考えるなら「10」を「18」に替えて計算することになるし、小・中学校をベースにするなら「10」を「25」辺りに替えて計算することになる。
 「さて、どう考えるべきか」と、悩んでも答えはでないので、とりあえず、義務教育費国庫負担金の対象となっている小・中学校をベースとして計算してみることにしよう。

 まず、大学の非常勤講師の時間給の算式のうち「10」を「25」に替えてみる。(調整手当は地域手当に読み替える。)

 (俸給月額+地域手当)×12 / 52×25

 地方交付税単価の時給2,780円を当てはめた上で、俸給月額を逆算してみる。地域手当の支給割合は、地域によって異なるので、4.8%と仮定する(便宜上23年度の地方公務員給与実態調査により算定してみたら、4.77…%だった。)。このとき、教職調整額をどう考えるかなのだが、そもそも「10」は勤務時間ではなく、実時間で考えても「15」時間であり、フルタイムが「40」時間であることを考慮すると、教職調整額4%は計算に入れなくてもよいような気がする。俸給月額は、平成23年4月官民格差に基づく全人連モデル給与表の旧教(三)によった。
 逆算した結果は、1級84号俸287,400円となった。(大学卒の初任給基準は1級21号俸であるから、大卒制度年数15.75年の位置ということになる。)

 同じ手法でもって教職調整額4%を計算に入れて逆算してみる。結果は、1級75号俸276,200円(大卒制度年数13.5年)となった。

 ところで、平成18年に実施された給与構造改革の一環として、中途採用者の初任給決定方法が改善され、いわゆる初号制限が撤廃された。
 従前の取扱いでは、経験年数を有する者の号俸を決定するに当たっては、一定のルールに従い経験年数を号給数に換算して基準号俸の号数に加算することができることとなっていたが、その際、1級上位の職務の級の号俸との関係で決定できる号俸に一定の制限が加えられていたのだが、旧教育職俸給表(二)(三)には特例が認められていた。すなわち、旧教(二)については、1級は19号俸まで、2級は29号俸まで、旧教(三)については、1級は15号俸まで、2級は30号俸までの範囲内で初任給の号俸を決定することができることになっていた。(「教育職俸給表の適用を受ける職員の職務の級及び俸給月額の決定等について」(昭和39年12月28日給実乙第74号))
 そこで、この初号制限の号俸をベースに非常勤講師の報酬額との関係を試算してみたらどのようになるであろうか。旧教(三)1級15号俸は、給与構造改革後では1級53号俸(23年4月ベースで243,100円)に当たる。先ほどの式(地域手当は4.8%)に代入してみると約2,350円となる。教職調整額4%を考慮した場合でも、2,450円弱の額となる。これでは2,780円と大きな開きが出る。
 そこで、今度は、2,780円から時間数を逆算してみよう。

(俸給月額+地域手当)×12 / 52×X = 2,780円
ア(243,100円+11,668円)×12 / 52×X = 2,780円
 教職調整額4%を含めると、
イ(252,824円+12,135円)×12 / 52×X = 2,780円

 計算すると、アはX=「21.148…」となり、イはX=「21.994…」となった。

 先に書いたとおり、教職員定数の算定の基礎となる担当時間数は、高等学校教員は18時間、中学校教員は24時間、小学校教員は26時間と想定されていた。そして、実時間を考慮すると大学教員と高等学校教員は実15時間であり、小中学校教員は実20時間程度であった。高等学校教員の時間数を考慮する合理的な理由までは見いだせないのだが、高等学校教員と小中学校教員の平均の担当時間数を計算してみる。

(18時間+(24時間+26時間)÷2)÷2 = 21.5

 近い数字になった。まあ、無理矢理合わせていると言われれば、そのとおりではあるが…。

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