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431.「人事院月報」第13号(その2) [49.「人事院月報」拾い読み]

 「人事院月報」第13号(昭和26年4月発行)の第二の記事は、「国家公務員の政治活動-人事院規則14-7の解説-」である。
 この規則の制定公布は昭和24年9月19日であるが、この時期に解説を掲載している。

 ところで、この規則に規定されている政治的行為は、特定の「定時的目的」と「政治的行為」とが結びついたときにだけ、これを禁止しているのであり、しかも、その「政治的目的」と「政治的行為」を個々に列挙する形式をとっており、且つ政治的目的をもってなされる行為であっても、それが政治行為に含まれない限り違法ではないものとしているのである。…
 なお、この規則は、その制定の目的から見て、思想および学問の自由、その他の基本的人権をなんら制限しようとするものではないのであり、従ってその運用にあたっては、その濫用を厳につつしまなければならない。…(6頁)

 この後、規則及びその運用方針を紹介していくが、省略する。

 ところで、この人事院規則14-7が制定されたときの国立大学教授の反対意見に対する人事院側の反応について、例えば、辻清明が伝えている。
 『公務員制の研究』(1991年、東京大学出版会)ではごく簡単に次のように述べる。

 昭和二四年秋に「公務員の政治活動」を規制する人事院規則一四-七が制定されたとき、この規則が国立大学教授の言論の自由を阻害する恐れがあるという日本政治学会の総意に基づき、吉村正・堀豊彦の両先輩と私の三人が人事院に浅井総裁を訪れ、学会の要望書を手渡したところ、同じく学者である浅井氏が温顔に微笑を浮かべながら、「規則は規則ですが、それほど気にされなくても、いまのままで大丈夫ですよ」といわれたことを憶えている。ここにも理念と現実との隔差があったと見てよかろう。…(288頁)

 より詳しくは、『新版 日本官僚制の研究』(1969年、東京大学出版会)所収、後編「四 公務員と市民的自由」から引用する。

 公務員の政治活動を大幅に禁止した昭和二四年九月の人事院規則(一四-七)は、はからずも国立大学教授の学問的自由を制限するか否かという順大問題を学会に捲き起こしたことによって、一躍有名になった。すなわち、憲法二三条がはっきりと保障し、かつ民主国家の形成に不可欠の条件である「学問の自由」が、こうした一片の規則の制定によって、国立大学の教授にのみ許されないというのは不当であるという学者側の激しい非難と強硬な反対声明が相次いで発せられたのである。たまたま、大学教授に対する「レッド・パージ」というえたいもしれない流言が巷間に流布していた折とて、この規定があたかも思想探察の「踏絵」であるかのごとき印象を世人にあたえ、とくにその注目を惹いたのである。
 こうした予期しない反撃と誤解に直面して、当局もこれに対する釈明を試みた。そのなかでも、浅井人事院総裁とマッコイ総司令部公務員制度課長代理がこの規則全体について行った声明のなかの、その点に関する見解は極めて注目すべきものであるが、それは次のごとくである。浅井総裁は「この規則は、決して大学教授から学問の自由を奪ういかなる規定も有していない」と明言し(雑誌『公務員』昭和二四年一一月号)、さらにその直後に出された『公務員の政治活動』と題する自著のなかで「この規則は、学問の自由を侵害すべき何等の企画も持たないのみならず、国立大学の教授等が、正常の態度で、その研究の結果を外部に発表し、特に国又は特定の内閣の政策を批判し、特定の立法に反対するようなことは、この規則で定めた政治的目的を有するものとは考えられない。反対に謂えば、この規則が規定しているような政治的目的や大部分の政治的行為は、国立大学教授等の正常な任務の遂行には、必要なものではないと謂えるであろう。」(同書、昭和二四年一二月、四一-二頁)と、より明確な意思表示を行ったのである。またマッコイ氏も、一○月一四日の記者団との会見で、この規則の真意について詳細な談話を発表し、そこでも教育公務員の特殊な地位を肯定したのである。すなわち、「たまたま、ある教育者の過去の著作を利用して、政治的候補者や政党が、みずからの政治的立場を証明したとしても、教育という職務の一部として論文を書き、または意見を発表した教育者は、そのような論文を書いたという行為について、法的に罪を問われることはないのであります。教育者が禁じられているのは、特定の政治家または政治的代弁者になって、教育者としての名誉を傷つけ、その見るがままに曇りない真理を伝えるという崇高な地位から、敢えて我が身を引きずり落とし、しばしば集団的に利己的な目的のために個人的利益を求めるに過ぎない政治的集団に対して一方的な宣伝を事とする雇い人に堕することだけなのであります。皆さん、この政治的行為の規則は、教育職員みずからみるがままに真理を伝えるというその職務を妨げるものではありません。ただ特殊な利益の宣伝人に堕することを禁じているだけであります。」(前述『公務員』所収声明)(282頁)

 この後、これに対する辻の評価や意見が述べられていく。

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