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465.地方公務員の給与決定に関する調査研究報告書 [8.トピック]

 平成30年3月、一般財団法人自治総合センターから「地方公務員の給与決定に関する調査研究報告書」が取りまとめられた。調査研究の問題意識について、次のとおり述べられている。

 「地域における国家公務員の給与水準を目安とするための比較にあたってはラスパイレス指数を用いることが適当とされているところですが、近年、このラスパイレス指数が漸増傾向にあり、その要因分析が喫緊の課題となっています。
このような状況を踏まえ、今後の地方公共団体の給与決定に際して、その参考に資するため、人事委員会の勧告、国と異なる独自の給料表、職員構成における上位級比率等について調査研究しました。」(はしがき)

 国と異なる独自の給料表に関しては、まず、次のように述べる。
 「国の俸給表と異なる独自の給料表は、大きく分けて、国の俸給表の構造を援用しつつ、水準について独自の調整を行う「水準アレンジ」型と、国の俸給表とは級や号給の構成が異なる「構造アレンジ」型の2種類に分類することができる。」
そして、特徴ごとに次のとおり分類する。

<独自の給料表の種類>
①水準アレンジ
・国の行政職俸給表(一)に一定「額」を加減したもの
・国の行政職俸給表(一)に一定「率」を乗じたもの
②構造アレンジ
・国の行政職俸給表(一)の最高号俸を超える月額区分を定めた「継足」(国準拠継足と独自継足)
・国の行政職俸給表(一)の最低号俸を下回る月額区分を定めた「下駄履き」(国準拠下駄履きと独自下駄履き)
・国の行政職俸給表(一)の最高号俸又は最低号俸を「縮減」したもの(高位号給縮減と低位号給縮減)
・複数の級を合わせて1つの級に「合成」したもの
・1つの級を複数の級に「分割」したもの
※上記②のいずれにも当てはまらない、国の俸給表とは級や号給の構成が異なる給料表を「独自構造」とする。

 続いて、給料表カーブの分析結果を説明しながら、問題意識を述べる。項目のみ掲載する。
① 特定の級の給料表カーブ単体でみた際に特徴的であるもの
(ⅰ)水準調整
(ⅱ)継足
(ⅲ)高位号給の非フラット化
(ⅳ)号給過多
② 複数の級の給料表カーブの関係性からみて特徴的であるもの
(ⅰ)級間の重なり
③ 職制上の段階という観点からみた際に特徴的であるもの
(ⅰ)職制上の段階について、国との対応関係が明確である場合
(ⅱ)職制上の段階について、国との対応関係が必ずしも明確でない場合
④ 職務給の原則という観点から特徴的であるもの
(ⅰ)高位の級における合成
⑤ 独自の給料表を適用しているが、ラスパイレス指数が低い団体
(ⅰ)独自の給料表を適用しているがラスパイレス指数が低い団体
(ⅱ)ラスパイレス指数を低くするために給料表を改善した団体
⑥ 給料表カーブの特徴が掴みづらいもの
⑦ ラスパイレス指数が高いが、給料表カーブに特徴が認められないもの

 「独自の給料表の構造がラスパイレス指数の上昇又は高止まりの要因の一つとなっているとの推定のもと、(略)独自の給料表が構造的に抱える問題点を分析し、その特徴ごとに指摘を行った。」と述べ、53ページ以降には、独自の給料表の給料表カーブを国の俸給表のカーブと比較して分類ごとの特徴を示している。
 これらを見ると、縦軸は給料月額なのだが、横軸は「昇給」となっている。この方法だと、①~④(又は⑤)までは単純に比較できて特徴もつかめるだろうが、全く独自の給料表を作成している場合には、比較が困難であろう。俸給表は、俸給表の運用を前提にして作成されるものであることを踏まえると、やはり、俸給制度表を作成して重ね合わせ、比較すべきだろうと思う。横軸に「昇給」を置いて初号の位置を単純に合わせて比較するのではなく、その初号の制度上の位置を確認し、相互のずれを反映させて比較すべきであり、横軸には級別の資格基準となる「経験年数」を置くべきではなかったか。ラスパイレス比較をする際には、学歴及び経験年数を合わせるではないか。そうした観点からすると、今回の研究会の給料表に関する分析には不十分さを感じる。


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