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466. 教員給与を能力重視に(その後Ⅱ) [8.トピック]

 2018年4月27日付けの「内外教育」誌に次の記事が掲載されている。

「◎教諭初任給、月2万9000円上げ
 大阪市は2019年度から、市立小中高校教諭の初任給を月額で約2万9000円引き上げる。市教委によると、全国の都道府県と政令市で最高額になる見込みで、大卒新人の小中学校教諭は26万1306円になる。
 引き上げるのは、給料月額と教職調整額、地域手当を合わせた月額給与。団塊世代の退職に伴い大量採用が続く中、優秀な人材を確保するのが狙いだ。同市の教諭の初任給は18年4月時点で政令市20市の中で11番目で、大阪府や京都市、神戸市より低い。
 新人教諭の給与が2年目以降の教諭を上回らないよう、2~4年目の給与を増やして対応する。勤続4年目までは初任給と同額の給与で、5年目から昇給する仕組みとする。19年度の採用予定者約650人と合わせて計1180人程度が増額の対象で、人件費は年間約1億5000万円増える見通しだ。
 引き上げに必要な財源は、市教委の予算内で捻出する方針。財源のめどを付けた上で、市は来年の2月議会に条例改正案を提出する予定だ。」

 大阪市といえば、「教員給与を能力重視に」ということで、このノートで過去2回取り上げた。(「427.教員給与を能力重視に、大阪市教委」、「440.教員給与を能力重視に(その後)」)
その後のその後が気になるところだが、先に内外教育の記事について、大阪市の現行の給与条例で確認しておこう。現行の高等学校等教育職給料表と小学校・中学校教育職給料表では給料月額が微妙に違うので、両方確認しておく。

 高校教諭の大卒初任給は2級9号給、小中学校は2級17号給なので、これを基準に考察してみよう。地域手当は、16%。
 (高校教諭)
  初任給 2-9 192,700円+7,708円+32,065円=232,473円
  2年目 2-13 199,400円+7,976円+33,180円=240,556円
  3年目 2-17 207,600円+8,304円+34,544円=250,448円
  4年目 2-21 216,600円+8,664円+36,042円=261,306円
 (小中学校教諭)
  初任給 2-17 192,900円+7,716円+32,098円=232,714円
  2年目 2-21 199,600円+7,984円+33,213円=240,797円
  3年目 2-25 207,800円+8,312円+34,577円=250,689円
  4年目 2-29 216,900円+8,676円+36,092円=261,668円

 ん? 内外教育の記事では「大卒新人の小中学校教諭は26万1306円になる」とあるけれど、もしかして給料表を取り違えているのかもしれない。
 いずれにしても、現行初任給基準の号給の号数に4号×3年=12号を加算した号数の号給を初任給とし、3年間は昇給しないということを考えているのかもしれない。

 さてさて、その後のその後はどうなったのか。
平成30年2月説明会の資料が存在するので、内容を見ておこう。資料は、「権限移譲にかかる教職員の給与制度等について(主務教諭等)【施行日:平成30年4月1日】」と題するものである。

 「1 給料号給等」には、高等学校等教育職給料表及び小学校・中学校教育職給料表の新旧対照表が掲載されている。
 これによると、2級の号給について、教諭に対してはこれ以上昇給できない上限号給が設定され、主務教諭に任用されると更に昇給できる仕組みとしている。
それぞれ号給と給料月額を抜粋しておく。

(1) 高等学校等教育職給料表
  改正前 【2級】教諭等 1号給175,600円~149号給409,100円
  改正後 【2級】教諭等 1号給175,600円~65号給327,500円
        主務教諭等 41号給269,700円~149号給409,100円
(2) 小学校・中学校教育職給料表
  改正前 【2級】教諭等 1号給159,200円~161号給400,900円
  改正後 【2級】教諭等 1号給159,200円~73号給327,900円
          主務教諭等 49号給270,000円~161号給400,900円

 主務教諭に適用する新たな職務の級を設けることなく、2級の号給の適用範囲を定めるというのは、どう理解すればよいのか。
 職務の級は同じであるから、主務教諭と教諭は、職務の複雑さと責任の度合いが基本的には同程度であるということになる。主務教諭も学校教育法上は同じ教諭であるという位置づけであろうから、当然かもしれない。
 副校長と教頭では職責が異なるが、同じく3級が適用されることを踏まえると、この場合とほぼ同じとの考えも成り立つかもしれない。しかし、教頭だから3級に上限号給が設けられるという考え方は、どこも採用していないのではないか。教諭だから上限号給を設けることの制度上の正当な理由が想像できない。

「2 主務教諭等任用時における昇給等の取扱い」とあり、次の記述がある。
(1) 教諭等として昇給 → 主務教諭等に任用(昇格メリットは発生しない)
 教諭、養護教諭、栄養教諭、教諭(指導専任)又は総括実習助手(以下「教諭等」という。)が、4月1日(昇給日)に主務教諭、主務養護教諭又は主務栄養教諭(以下「主務教諭等」という。)に任用される場合、教諭等としての昇給(教諭等としての上限号給が適用される。)した後に、主務教諭等として任用される(任用後に受ける号給は、教諭等としての昇給後の号給)

 主務教諭に任用されたとしても、昇任ではあるのかもしれないが、昇格はしない。従って、昇格メリットはない。けれども、最高号給まで昇給できる可能性が生まれるということらしい。元々、大阪市教育委員会は能力主義で給与制度を運用したいという考えであったと思うが、結局、教諭と主務教諭の職務と責任の違いについて、人事委員会をはじめ関係者に対して職務給の原則を踏まえた説明ができなかったということなのではないだろうか。それにしても、よく理解できない…。

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