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491. 教員も休暇のまとめ取り可能に [8.トピック]

 10月9日、一年単位の変形労働時間制を公立学校の教員に適用可能とする給特法改正案が自民党文教科学部会で了承されたとの報道があった。

○読売新聞
教員も休暇のまとめ取り可能に…自民党が改正案了承
2019/10/09 20:56
 労働時間を年単位で調整する「変形労働時間制」を公立学校の教員にも適用可能にする「教員給与特別措置法(給特法)」改正案が9日、自民党文部科学部会で了承された。政府は10月下旬にも閣議決定し、今国会での成立を目指す。夏休み期間中などに休暇のまとめ取りをできるようにすることで、教員の働き方改革を進める狙いがある。
 労働基準法が定める年単位の変形労働時間制は、繁忙期に労働時間を延ばす代わりに、閑散期に休暇を増やすなどして調整する仕組みだ。現在は地方公務員は適用対象外だが、給特法改正案が成立すれば、2021年度から自治体が条例に基づいて教員にも適用可能となる。
 文科省の休暇まとめ取りのイメージは、行事などで多忙な4、6、10、11月の計13週に勤務時間を週3時間延長し、その分を夏休み期間中の8月に振り替えるというものだ。振り替え分は約5日となり、有給休暇と組み合わせると、10日程度の連続休暇も可能となるという。育児や介護などで勤務時間を延ばせない教員は適用対象外にもできる。
 文科省の16年度教員勤務実態調査では、小学校教諭の約3割、中学校教諭の約6割で残業時間が「過労死ライン」とされる月80時間を超えていた。ただ、休暇のまとめ取りは繁忙期の長時間労働の追認につながるとの指摘もあり、改正案では文科相が教育委員会が取るべき勤務管理の指針を策定、公表するとの規定を定めた。
 文科省は今年1月、教員の「自発的行為」とされてきた放課後の部活動指導や授業準備なども「勤務時間」とし、残業の上限は原則「月45時間、年360時間」とするガイドラインを定めた。改正案ではこれを法的な指針に格上げし、自治体に順守を求める。
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20191009-OYT1T50268/

○日本経済新聞
教員の労働時間を柔軟に 文科省、法改正案を提出へ
2019/10/9 11:57
 教員の働き方改革を進めるため、勤務時間を年単位で管理する「変形労働時間制」の導入を柱とする教職員給与特別措置法(給特法)の改正案が9日、自民党の文部科学部会で了承された。文部科学省は4日に召集された臨時国会に提出する。成立すれば、繁忙期の勤務時間の上限を引き上げる代わりに、夏休み期間中などに休日をまとめ取りできるようになる。
 年単位の変形労働時間制は労働基準法が定めている。原則として1日8時間以内と決まっている労働時間を、平均で週40時間を超えない範囲で繁忙期には延長できる。ただし1日10時間が上限。残業は通常は月45時間、年360時間以内にする必要があるが、月42時間、年320時間以内となる。
 同制度は繁閑期が分かれる工場の従業員らに適用されてきたが、教員は対象外となっていた。
 同省は導入した場合、学校行事などが多い4、6、10、11月の間の計13週は所定の勤務時間を週3時間増やし、夏休みがある8月に5日程度の休みを取るといったイメージを描く。有給休暇を合わせてより長く休むことも狙う。
 導入の背景には教員の長時間労働問題がある。文科省の2016年度の調査では、中学校教員の約6割、小学校教員の約3割の残業時間が、おおむね月80時間超が目安の「過労死ライン」を超えていた。
 給特法改正案が成立すれば、自治体の判断で21年4月から変形労働時間制の導入が可能になる。ただ、現場の教員からは「夏に休める保証はない」「夏休み前に過労で倒れてしまう」といった声も上がる。
 導入反対の署名活動などに取り組む公立高校教員、西村祐二さんは、給特法の抜本改正を主張する。同法は残業代を払わない代わりに、基本給の4%を「教職調整額」として支給すると規定。これが長時間残業を招いているとし、時間に見合った残業代を払う内容に変えるべきだとしている。
 部活動や校務を含む業務量の削減、教員の増員を優先すべきだとの声もある。野党側からも同様の意見が出ており、国会で議論される見通しだ。
 教員の働き方改革では、中央教育審議会が1月、残業時間の上限を「月45時間、年360時間」とするガイドラインの順守を柱とした答申を提出。教員の自発的な行為とされてきた部活指導や授業準備なども含めて勤務時間とし、タイムカードなどによる管理を求めた。
 改正案はガイドラインを文科相が定める「指針」に格上げすることも盛り込んだ。同省は各自治体に指針の順守を求め、勤務時間を把握していない自治体名や、自治体ごとの教員の勤務時間も今後公表する方針。部活動指導員など外部人材の活用も進める考えだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50780080Z01C19A0CR0000/


 この問題については色々論点があるのだが、報道で聞く限りということにはなるが、ここでは2つの点を指摘しておきたい。

 まず、「多忙な4、6、10、11月の計13週に勤務時間を週3時間延長する」というのだが、そもそも教師の勤務時間の上限に関するガイドラインで示されたように、公立学校の教員はいわゆる超勤4項目以外の業務で残業しているのが大半なのであって、しかもその業務に従事している時間は労基法上の労働時間ではないと述べている。であるのに、「勤務時間を週3時間延長する」という。この勤務時間は労働基準法上の労働時間の扱いとなるはずである。何を言いたいかというと、変形労働時間制を活用すると、労基法上の労働時間ではない時間が労基法上の労働時間に化けるという訳である。不思議に思うのは、このノートだけか…?

 もう一つは、「給特法改正案が成立すれば…自治体が条例に基づいて教員にも適用可能となる」とする点だ。一年単位の変形労働時間制は、労基法上は労使協定によってしか適用されないこととなっている。それをどのような理由で条例で適用可能とするのか。おそらく、「勤務条件条例主義」を持ち出すのだろうと思う。確かに、労基法上は労使協定で実施できる一斉休暇の除外や代償休日、時間年休については、地方公務員は条例で特別の定めをすれば実施できるよう地公法に読み替え規定が設けられている。しかし、いわゆる時間外労働や休日労働に関する三六協定については、官公署に勤務する公務員には空振りだが、現業の公務員には適用されている。そうした中で、どうして公立学校の教員のみ条例で特別の定めをすれば適用可能になるのか。公立学校の教員のみ適用される給特法の存在が許されるという合理的な理由が理解できない限り、やはり理解できない点である。

 さて、いつ閣議決定され、国会でどのような論戦が行われるのだろうか。



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