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14. 旧教育職俸給表(二)(三)の作成(その14) [1.旧教(二)(三)の作成]

 教(二)(三)の作成に関する面白い研究論文がある。財団法人地方自治総合研究所が毎月刊行している『自治総研』第298号~第301号(2003年8月号~11月号)に連載された金井利之東京大学大学院法学政治学研究科助教授(現教授)の「公立小中学校教員給与の決定方式Ⅰ~Ⅳ」である。
 幅広い観点から公立小中学校教員給与の決定方式の研究をされているのだが、このブログの問題意識から見て、人事院の教育職俸給表作成ノウハウの一端を示す興味深い記述があった。それは、人事院の担当職員へのインタビューに基づいて作成された「人事院の勧告に基づく義務教育諸学校等教育職員の給与決定の流れ」という図1に記載されていた。
 勧告措置に当たっての留意点とする箇所で、「他職種とのバランスを考慮」との記載があり、その下に「バランス」の具体的なイメージを説明する注意書きがある。
 「※バランス 教育(三)2級(教諭)の到達水準について、人確法により、本省課長補佐(行政(一)7級)を念頭に置き、1号俸程度上回ること。」
 このインタビューに基づく記述が正しいとすれば、これまで格合わせ方式で見てきた教(三)と行(一)との対比関係が正しかったことを裏付けることになるだろう。しかもこの記述には、これまで所与のものとして受け止めてきた教(三)の対行(一)優位率の指標が「1号俸程度上回ること」として示されている。
 この教(三)の対行(一)優位率指標たる「1号俸」の沿革を求めれば、いわゆる教員給与の三本建てによって確立された際の調整号俸に由来するのではないかと考えられる。その辺りの事情について、金井助教授は概ね次のように言う。
 「1つには、教員を一般俸給表より切り離して、一般の行政事務職員より「優遇」すること。…2つには、教員間に職域差を認めて、それぞれに適した俸給額を定める。」具体的には、前者は、調整号俸1号俸、後者は、さらに調整号俸1号俸を積むことになる訳であるが、金井助教授は、それが教育職俸給表を作成する際の教行関係基準、教育職員の内部関係基準の具体的指標になったと指摘する。
 この調整号俸と教員給与の有利性については、宮地茂監修『教育職員の給与特別措置法解説』(第一法規、昭和46年)に経緯の概略が書かれている。ただ、そこでは、8等級制への「切替直後は、一応従前の調整号俸を含んでいることは明らかであったが、毎年の給与改定、俸給表の構成の改正等により、端的に、かつての教員給与の有利分を明確な形で調整付加していた調整号俸分がどの程度俸給表に含まれているかは、明らかでなくなった。」と指摘している。
 しかしながら、それでもなお、現在の人事院の担当者が「教育(三)2級(教諭)の到達水準について、人確法により、本省課長補佐(行政(一)7級)を念頭に置き、1号俸程度上回ること。」というからには、いったん「明らかでなくなった」調整号俸分の有利性というものを、人材確保法に基づく特別改善の過程で復活させたと言えないだろうか。これは、うがった見方だろうか。もとより、調整号俸が勤務時間の違いに着目した措置であったのに対して、人材確保法に基づく俸給月額の優遇があくまで正規の勤務時間に対する報酬としてのそれであることは理解しているが、どうであろうか…


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