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44.「職階制」小考察(その3) [4.「職階制」小考察]

 川村祐三『ものがたり公務員法』(日本評論社、1997年)という本がある。これを開いてみると、その第13話「さまよう職階制」に、次のような面白い下りがある。
 元人事院管理局長の橘利弥氏が『官界新報』という庁内紙に寄せた随筆から引用している部分を重引してみる。
 「いかにもありそうだが職階制には職階というものはない」「ついでに言っておくと…職階給だの職務職階給だのという給与制度も、もしあったとしても職階制とは縁がない」「官職は、昔の官吏制度で官吏の身分や組織上の地位を示す言葉として用いられた官や職とは全く無関係」「『官職を類集するための原則と手続』であるものに職階制という名称は全くそぐわないし、『官職を分類整理するための計画』という定義づけに至っては、日本語の用法の許容範囲を遙かに逸脱している」…。
 なんと、元人事院管理局長が現行法の定義規定を全面否定しているのである。こうなるともう職階制という迷路に迷い込み、出口を求めてさまよっているような気がしてくる。

 それから、職階制のこんな定義付けもある。連合公務員制度改革に関する研究会=座長西尾勝国際基督教大学大学院教授「公務員制度改革に関する提言(中間報告)」(2004.6.23)の記述である。
 「職階制-官職を詳細に分類し、分類官職に欠員があった場合に能力の実証に基づいて内外から採用するという開かれた任用制度」
 なんと簡潔で、しかもその政治的意義も含めた分かりやすい定義であることか。職階制は、戦後、日本における公務部門の民主化を実現するために、アメリカで発達した人事行政の基礎である”classification”を取り入れたものであることはよく知られている。アメリカでは、スポイルズシステムによる混乱を克服し、メリットシステムを導入していく中でテーラー主義と結びつき、公務の能率化の基礎として職階制を導入した。アメリカでは官職は内外に開かれたものなのであって、黒人の人種差別撤廃運動にも貢献したとも言われているぐらいである。そのような背景をもった職階制が、戦前の身分制の残滓を引きずったままで、年功的な長期勤続雇用を前提とし、大部屋主義的な執務方法を採用している日本の人事慣行に適合しなかったのも、当然といえば当然と言えるだろう。
 そして、提言は次の点も指摘する。
 「また、法の建前と実態との間に看過し得ない乖離もある。職階制を原則とする人事管理制度という法の建前とは別に、実態は長期継続雇用を前提とした内部昇進による人事管理となっている。能力の実証に基づく任用を担保するメリットシステム(資格任用制)の原則は競争試験による採用・昇進を定めているが、競争試験は入り口の採用段階だけにとどまり、その後の任用は任免権者の裁量による選考となっている。/こうした人事管理の内実は、採用試験区分別にⅠ種採用者とⅡ・Ⅲ種採用者との壁で峻別する牢固とした「隠れた身分制」に貫かれている。」


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