79. 高等官のなごり(その2) [10.高等官のなごり]
いわゆる職階法が国会で審議される過程で公述人として意見を開陳した足立忠夫関西学院大学助教授の発言を、大森彌『官のシステム』(東京大学出版会、2006)から引用してみたい。
「それゆえにまた、足立は、当時の一五級の分類が職階制の一種であり、しかもそれが給与という人事行政の機能にのみ役立つように作成されたものであるが、「一五級の分類は、奇妙なことに、わが国の官吏の階級である一つの親任官と、九つに分れる勅任官、奏任官、即ち高等官と、四つに分れる判任官及び一つの雇員の階級、合せて一五級の階級とぴったりと一致しているではないか、しかも、この一五級の分類は形を変えて国家公務員の採用試験にも適用されているではないか」と指摘した。」(p26)
足立忠夫の指摘に従えば、次のような対応関係となる。
(戦前の官吏の階級) (15級制)
勅任官 親任官 大臣 15級 次官
高等官1等 次官 14級 長官
高等官2等 局長 13級 局長
奏任官 高等官3等 課長 12級 部・課長
高等官4等 書記官 11級 課長・補佐
高等官5等 〃 10級 課長補佐
高等官6等 〃 9級 補佐・係長
高等官7等 〃 8級 係長
高等官8等 〃 7級 係長・事務員
高等官9等 〃 6級 事務員
判任官 判任官1等 書記 5級 〃
判任官2等 〃 4級 事務員補助
判任官3等 〃 3級 〃
判任官4等 〃 2級 〃
雇員、傭人 1級 給仕
前回掲載した対比表とは対応関係が異なり、違った様相を示している。再び、大森彌『官のシステム』から引き続く部分を引用してみる。
「そして、当時、実施されていた六級職の採用試験に言及し、「この六級職の受験資格として大学卒業者であることを要求しているが、この資格はほぼかつての高文試験の要求する資格と一致している。六級職が下から六番日の階級であるのと同様に、高文試験に合格したものがなる高等官九等もやはり下から六番目に当る。勅任、奏任等の官吏の分類は一級官、二級官と名前を代えただけで存在している」と指摘したのである。」(p26-27)
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