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186.古書散歩(その1)=『公務員給与制度総説』 [24.古書散歩]

 昭和25年10月に学陽書房から発行された『公務員給与制度総説』という本がある。当時の人事院給与局長である瀧本忠男の著したものであるが、同年4月に「一般職の職員の給与に関する法律」が公布されるという戦後の公務員給与制度確立期において、その理論的な側面を記録するとても誠実な作品である。
 まず、「給与」という観念の由来を検討し、その本質について学問的研究をベースに議論している。さらに、我が国の給与制度の変遷を踏まえて後、現在の給与制度へと連綿と続く、その大本となる具体的な給与制度の設計について説明している。第四章の各節を拾ってみると、標準生計費、地域給の決定、民間給与調査、公務員実態調査、俸給表…、どれもが初々しい印象を受ける。
 この学習ノートの最大関心事という点からすれば、第4章第5節の「俸給表」が注目されるところである。
 そこでは、米国連邦政府の職階制に基づく一般職俸給表(General Schedule)を分析しながら、我が国における15級制の一般俸給表等の特徴を明らかにしつつ、俸給表の作成の在り方を議論している。特に、「3.等比級数的俸給表と等差級数的俸給表」の部分は、大変興味深いものとなっている。
 例えば、人事院が行った第二回民間給与調査(昭和24年5月)の結果によれば、職種を職務と責任に基づき格付けして等級別に給与額を示して、その傾向を見て最もよくfitすると思われる曲線をグラフにし、その式は「S=(3,076)(1.142036)G」であると説明する。すなわち、Gradeが変わるに従って、賃金は大体一割五分程度変わることが分かるというのである。更に、各級内の号俸の金額については、職務に習熟する程度と経験年数との関係によるべきであることから、次第に逓減する習熟曲線であるべきで、実際には生計費を勘案して、等差級数的に定めることが適当であろうと延べ、そうすれば、昇給率は逓減して、習熟の度合いと一致するという。
 現在の我が国の俸給表作成の根本思想を示すものと理解してよいのではないだろうか。

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