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189.古書散歩(その4)=『教職員の給与』 [24.古書散歩]

 前回、高等学校等の教諭の給料と小中学校等の教諭の給料とでは、最高到達級が違うことを取り上げたが、別の観点から、両者の水準差を説明している本がある。それは、この学習ノートで、「バイブル」の一つとして紹介した初版が昭和38年4月発行の佐藤三樹太郎著『教職員の給与』(学陽書房、昭和52年新版2刷)である。
 詳しくは、直に読んでいただくとして、ここでは、別の観点から「給与格差の波紋」と題して論じている部分を紹介しておこう。
 まず、昭和32年の高等学校職員俸給表と中小学校職員俸給表とについて、同資格同年次の新大卒の教諭の場合、一定年数後において、どのように開いていくか、標準的な号俸を想定して説明している。
 <昭和32年>
      初年   5年後  10年後  20年後  25年後
高 校  9,800  14,800  19,800  30,600  37,800
中 小  9,800  14,300  19,300  30,000  36,000
給与差   -     500    500    600   1,800
 次に20年後の昭和48年改正の俸給表上での想定を掲載している。
 <昭和48年>
       初年   5年後  10年後   20年後   25年後
高 校  58,100  72,100  87,900  125,900  144,600
中 小  58,100  71,600  86,900  121,100  133,900
給与差   -      500   1,000    4,800    10,700
 このような変化に対して、双方の教職員の間で、異なった主張があることを紹介して、次のように述べている。
「しかし、この問題は複雑である。とくに等級別俸給表が制定されてからは、この職域差の問題は、新たに職階差的な要素がからみあうこととなり、一層微妙な性格をおびることとなってきた感がある。」

 さて、この両者の給与差は、更に35年が経過した現在ではどうなっているのだろうか。全人連平成20年モデルによる俸給制度表によって確認した額を記しておく。
 <平成20年>
      初年   5年後   10年後  15年後  20年後  25年後
高 校 192,800 232,800 286,600 334,700 375,200 402,600
中 小 192,800 232,800 286,600 334,700 370,400 392,200
給与差   -     -     -     -     4,800  10,400
 これを見ると、両者の関係が大きく様変わりしていることが分かるが、これは、人材確保法に基づく給与改善が行われた際に、両者の関係が見直されたことが、影響しているのは明らかだろう。

 そのほかにも、本書は、教員給与の沿革の理解のみならず、行政職を含む給与制度の詳細設計の理解に役立つ内容がたくさんある。

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