SSブログ

240. 博士課程修了(その1) [31.博士課程修了]

 今回のテーマは、「初任給基準における博士課程修了」を取り上げる。
 以前、このノートで、3級の給料表が2級の最高号俸の位置よりも、2年分の号俸が飛び出した形となっていることを巡って考察した際、初任給基準の博士課程修了と大学卒の差が2号6月分あることに着目して、3級と4級は2年前倒しすれば、俸給制度として整合的に理解できるのではないかという仮説を提示した。
 しかし、なぜ、博士課程修了の初任給基準が定められているのかについては考察しておらず、疑問が残されたままである。修士課程修了の初任給基準があるのは、教育職員免許制度との関係があることは容易に想像できるのだが、博士課程修了の基準があるのは、直ちには理解できないのである。

 教員の給与体系は、教育職員免許制度と密接に関係している。まず、その点について、再確認しておこう。
例によって、佐藤三樹太郎『教職員の給与』(学陽書房)から教育職員免許制度との関連を指摘する代表的な記述を抜粋してみる。

 「まず、高等学校以下の学校の教職員には、教育職員免許法および同法施行令の適用があり、教職員の資格体系を形成しているので、学歴免許等の資格区分を設ける場合には、これら免許制度との関連を尊重する必要があり、前述の等級別資格基準表における備考のとおり、それぞれ大学卒、短大卒、高校卒に相当する教職員の例外資格を規定し、大学卒を基準学歴として授与される高等学校教諭二級普通免許状、養護学校教諭一級免許状等に、免許法または同法施行令の規定によって切り替えられる旧免許または旧学歴を掲げ、これを大学卒として区分することを規定したほか、「短大卒」、「高校卒」に区分されるものについても、それぞれ該当する学歴免許資格を規定している。」

 これは学歴免許資格区分表に関する記述であることから、博士課程修了は出てこない。初任給に関する部分を見ても、特段の言及はない。
 次に思い浮かぶのは、昭和31年3月末に高等学校以下の教職員に対して実施された、高学歴是正である。同書から学歴是正の趣旨に関する部分を抜粋する。

 「この高学歴是正というのは、学歴における修学年数一年の差を教員経歴一年半の差とみて、これまでの一対一を一対一・五に改めることにより、短大卒を基準とした場合、新大卒については一号俸、旧大卒については二号俸高くするというものであった。
 このため、新卒者の給与についても、新たに初任給を引き上げることとされたが、これは次に述べる新給与制度において考慮されることとなった。
 これによって当時、高等学校職員、中・小学校職員を通じて、旧制専門学校、旧制大学、新制大学の卒業者のほぼ全員にわたって一号俸ないし二号俸の昇給が行われることとなった。
この措置は単に高等学校以下の教職員にとどまらず、大学の教職員をはじめ全公務員についても及ぼされるべきはずのものであったが、財政上の都合その他の理由により、結局高等学校以下の教職員だけについて行われたものであり、このことにより高等学校以下の教職員の給与がさらに有利になったことは事実である。」

 具体的な措置内容は、別のページに掲載されている。紙幅の関係で詳細は省略するが、教育職員免許状との関係で次のように述べている。

 「給与調整の対象となる学歴免許等の資格は、同指令に詳細に列記されているが、これは旧制大学卒業者またはこれに準ずる資格を有する者(指令一号該当)と、新制大学卒業者またはこれに準ずる資格を有する者(指令二号該当)の二種類に分類された。
 また、この二分類のグループは、免許状の関係からいえば、高等学校教諭一級普通免許状を授与しうる対象となる学歴免許等の資格を一号該当とし、高等学校教諭二級普通免許状を授与しうる対象となる学歴免許等の資格を二号該当としたという意味もある。」

 この一号該当の中に、「新制の大学院の修士課程または博士課程の修了者」と「博士号を有する者」が含まれている。とはいえ、博士課程修了を修士課程修了よりも有利とする取扱いにしたものではない。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:仕事

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。