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252. 部活動指導と給与(その3) [32.部活動指導]

 前回、糟谷正彦『校長・教頭のための学校の人事管理』(学陽書房)を引用した。著者は、対外運動競技等引率指導業務について、「本来の職務でないものが合意することで職務となり、それに教員特殊業務手当という給与を支給」すべきという日教組の論法を退けた上で、人事院の見解も無理があるとしつつ、「端的に、…超勤の歯止め項目以外の業務であつても、教員特殊業務手当の支給対象となるものについては、教員の職務として旅行命令を出せる」と主張するのである。
 この主張には、いくつか疑問がある。例えば、「時間外勤務を命じられない業務について、教員の職務として旅行命令を出せる」と言う場合の、時間外勤務命令と旅行命令との関係などである。おそらく、それが教員の職務と勤務態様の特殊性なのだろうが、この時点でこの学習ノートが注目しておきたいのは、著者が「本来教員の職務ではない」とする日教組の見解を否定し、「対外運動競技等引率指導業務に従事することは、教員の職務である」との立場を明確にしていることである。「付加的」な職務であるかどうかはここでは問題ではない。「教員の職務である」ことにこだわっているように思うのである。なんとしても「教員の職務である」と位置付けなれば、学校教育活動の現実を否定し、熱意ある教員の取組に水を差すのみならず、ひいては「教育の自由」論や「教諭の職務の独立」論を是認することに繋がると危惧しているのではないかとさえ感じる…。

 さて、この問題を考えるために、対外運動競技等引率指導手当が支給される要件を確認しておきたい。注目するのは、次の部分である。(平13.2.26給実乙第316号)
<人事院が定める対外運動競技等>
(1) その競技会等が国若しくは地方公共団体の開催するもの又は市、郡若しくはこれと同等以上の区域を単位とする学校教育団体若しくは教育研究団体の開催するものであること。
(2) その競技会等への参加が学校により直接計画・実施されたものであること。(すなわち学校教育活動として行われるものであること。)

 『校長・教頭のための学校の人事管理』が紹介する人事院の見解は、これを著者なりに言い換えたものと言えるだろう。確認のためにもう一度引用しておく。
  「また、人事院も、この点について、教員特殊業務手当の支給の対象となる業務には、正規の勤務時間内の勤務および時間外勤務命令にもとづく勤務のほか、勤務時間外のものであっても学校が計画し実施するものと認められるもので、その業務の執行方法、成果の報告などについての校長の指示に従い、校長が費任をとりうる態勢の下に実施されるものも含まれると解しているようである。」

 つまり、学校においては、校長が年度当初に対外競技等への引率指導を含む部活動の指導業務を包括的に命じておくのが通例なのであり、その対外運動競技等への参加が学校教育活動として直接計画・実施されたものである限り、勤務時間外に及ぶ指導業務についても、その都度個別に時間外勤務として命じることなく教員の職務になるというのである。これは、教員の職務は、教員の自発性や創造性に期待するものであるからこそ到達できる論理であろうが、そこには、二つの意味がある。一つは、教員が校長の一般的指示に従わずに実施したものを排除することであり、二つには、社会教育関係の行事に引率し指導する場合を除外することである。

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