254. 部活動指導と給与(その5) [32.部活動指導]
前回まで、教員の職務と部活動指導との関係を巡る問題や社会教育業務について考察してきた。その結果、教員が部活動の指導業務に従事した場合と社会教育の事業に従事した場合との違いは、結局、「労働者性の判断基準」の問題に帰着すると思われる。
「労働者」とは、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」(労基法第9条)とされているが、その労基法上の「労働者」の判断基準は、次のとおりとされている。(労働基準法研究会第1部会報告『労働基準法の「労働者」の判断基準について』(昭和60年12月19日)から)
1.「使用従属性」に関する判断基準
(1) 「指揮監督下の労働」に関する判断基準
イ.仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
ロ.業務遂行上の指揮監督の有無
ハ.拘束性の有無
ニ.代替性の有無
(2) 報酬の労務対償性
2.「労働者性」の判断を補強する要素
(1) 事業者性の有無
イ.機械、器具の負担関係
ロ.報酬の額
(2) 専属性の程度
イ.他社業務への従事の制度上の制約又は事実上の困難
ロ.固定給部分があり、額が生計を維持しうる程度で報酬に生活保障的要素が強い
労働法制については全くの素人であり、各判断基準をどのように理解するのかよく分からないのであるが、この「使用従属性」に関する判断基準に照らした場合にどうなるか、荒っぽいけれども、私見によって試みに当てはめてみたい。
部活動指導(時間内) 部活動指導(時間外) 社会教育業務
(1) 「指揮監督下の労働」
イ.諾否の自由の有無 ×(命じ得る) △(命じられない) ○
ロ.指揮監督の有無 ○(命じ得る) △(命じられない) ×
ハ.拘束性の有無 ○ × ×
ニ.代替性の有無 × △ ○
(2) 報酬の労務対償性 ○(本給) △(特勤手当) ×(謝金)
部活動指導については、勤務時間内は職務として命じることができるが、勤務時間外は命じて行わせることはできない。糟谷正彦『校長・教頭のための学校の人事管理』における人事院の見解を説明する下りに、「勤務時間外のものであっても学校が計画し実施するものと認められるもので、その業務の執行方法、成果の報告などについての校長の指示に従い、校長が費任をとりうる態勢の下に実施されるものも含まれると解しているようである」とあるので、勤務時間外の場合には、(1)のイ・ロを判断するにあたっては、「△」とし、(1)のハは「×」とした。(ただし、公務災害制度の理解では、勤務時間外であっても任命権者の支配従属下にあるものと理解されているようであるが…。)また、外部指導者を招聘することが許されるので、(1)の二は「△」とし、(2)の労務対償性については、時間外勤務手当制度が適用されていないため、とりあえず「△」とした。
こうして並べて比較して見ると、勤務時間外における部活動指導については、労働者性が必ずしも高いとはいえず、労働と社会教育業務との中間に位置するグレーな位置づけと理解せざるを得ない制度となっている。
ところで、事務職員に部活動の指導を命じた場合には、このような整理にはならず、勤務時間外であっても命じ得る業務であり、従事した場合には時間外勤務手当が支給されることになるものであろう。そうでなければ、教員と同じように職務に従事したとの整理にならないし、時間外勤務手当ではなく謝金を支払うこととすれば、社会教育業務と同じ整理になるからである。
「労働者」とは、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」(労基法第9条)とされているが、その労基法上の「労働者」の判断基準は、次のとおりとされている。(労働基準法研究会第1部会報告『労働基準法の「労働者」の判断基準について』(昭和60年12月19日)から)
1.「使用従属性」に関する判断基準
(1) 「指揮監督下の労働」に関する判断基準
イ.仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
ロ.業務遂行上の指揮監督の有無
ハ.拘束性の有無
ニ.代替性の有無
(2) 報酬の労務対償性
2.「労働者性」の判断を補強する要素
(1) 事業者性の有無
イ.機械、器具の負担関係
ロ.報酬の額
(2) 専属性の程度
イ.他社業務への従事の制度上の制約又は事実上の困難
ロ.固定給部分があり、額が生計を維持しうる程度で報酬に生活保障的要素が強い
労働法制については全くの素人であり、各判断基準をどのように理解するのかよく分からないのであるが、この「使用従属性」に関する判断基準に照らした場合にどうなるか、荒っぽいけれども、私見によって試みに当てはめてみたい。
部活動指導(時間内) 部活動指導(時間外) 社会教育業務
(1) 「指揮監督下の労働」
イ.諾否の自由の有無 ×(命じ得る) △(命じられない) ○
ロ.指揮監督の有無 ○(命じ得る) △(命じられない) ×
ハ.拘束性の有無 ○ × ×
ニ.代替性の有無 × △ ○
(2) 報酬の労務対償性 ○(本給) △(特勤手当) ×(謝金)
部活動指導については、勤務時間内は職務として命じることができるが、勤務時間外は命じて行わせることはできない。糟谷正彦『校長・教頭のための学校の人事管理』における人事院の見解を説明する下りに、「勤務時間外のものであっても学校が計画し実施するものと認められるもので、その業務の執行方法、成果の報告などについての校長の指示に従い、校長が費任をとりうる態勢の下に実施されるものも含まれると解しているようである」とあるので、勤務時間外の場合には、(1)のイ・ロを判断するにあたっては、「△」とし、(1)のハは「×」とした。(ただし、公務災害制度の理解では、勤務時間外であっても任命権者の支配従属下にあるものと理解されているようであるが…。)また、外部指導者を招聘することが許されるので、(1)の二は「△」とし、(2)の労務対償性については、時間外勤務手当制度が適用されていないため、とりあえず「△」とした。
こうして並べて比較して見ると、勤務時間外における部活動指導については、労働者性が必ずしも高いとはいえず、労働と社会教育業務との中間に位置するグレーな位置づけと理解せざるを得ない制度となっている。
ところで、事務職員に部活動の指導を命じた場合には、このような整理にはならず、勤務時間外であっても命じ得る業務であり、従事した場合には時間外勤務手当が支給されることになるものであろう。そうでなければ、教員と同じように職務に従事したとの整理にならないし、時間外勤務手当ではなく謝金を支払うこととすれば、社会教育業務と同じ整理になるからである。
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