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255. 部活動指導と給与(その6) [32.部活動指導]

 部活動指導の位置づけについては、従来、様々に議論のあったものであろう。深入りするつもりは毛頭ないが、「社会体育や社会教育に位置づけるべき」、「社会的な受け皿がない段階では、学校教育の一環として実施せざるを得ない」、「生徒指導にとって、部活動は不可欠の教育活動である」などの主張がなされてきたのではないかと思う。位置づけ論を議論しても、現実を考えた場合には、教員が部活動指導を担わなければならない現状が一気に代わる訳ではないので、現状のままにこのややこしい問題を検討するしかないだろう。
 また、現実の部活動指導を前提にした場合には、正規の勤務時間内に収まる業務ではないことは関係者の共通理解するところである。例えば、中教審初等中等教育分科会「学校・教職員の在り方及び教職調整額の見直し等に関する作業部会」においても、「部活動指導に予め教員の勤務時間を割り振ることは、現状の体制では、これを原則とすることは難しい」(第10回資料1 教職調整額を時間外勤務手当化した場合における各論点に関する主なご意見)と指摘されている。資料1には、様々な意見が掲載されているが、そう簡単に解決できるものではない。
 仮に、「生徒指導の一環として実施する部活動は勤務時間内に終了するように活動時間を設定し、競技スポーツは学校体育と切り離し、教員の職務ではないとして別の処置をする」と整理したとしても、結局は、実態を明確に切り分けることは困難であろう。

 以前このノートで、昭和41年度の教員勤務状況調査の結果に基づき4%を算出する過程で対象外あるいは相殺減した時間を見ていくと、クラブ活動の時間も減じられているように思うとの仮説を示した。勤務時間外の部活動指導を教員に命じて行わせることはできないと整理されたことも、この考え方を補強しているように思える。そして、人事院は、教員の職務と勤務態様の特殊性に基づき勤務時間の内外を包括的に評価する本俸的給与として教職調整額を支給するという制度を創設した上で、心身に著しい負担が生じたときに限って特殊勤務手当を支給するという現行制度を編み出したのである。改めて、「うまく考えたものだな」と感心するばかりだが、ここで確認しておきたいのは、「勤務時間外の部活動指導については、厳密な意味での勤務時間管理を諦めている」ことだ。元々、教員の勤務態様の特殊性から超過勤務手当制度がなじまないとの考え方が根本にあるのだが、いわゆる限定4項目以外の業務については、教員の自発性・創造性に期待することとし、厳密な意味での勤務時間管理を放棄しているように思えるのである。労働者の総実労働時間の短縮や適正な勤務時間の把握が求められる今日、勤務時間管理を放棄するような取扱いは問題ではあろう。しかし、そのように指摘したとしても、「部活動指導の時間を予め教員の勤務時間として割り振ることは不可能」という現状を改善することに直結する訳でもない。

 そのように考えてくると、現状を曖昧なままにしておくのではなく、「勤務時間外の部活動指導については、勤務時間管理の対象外」とすることにして、それを法令上明確に規定したらどうなのかと思ってしまう。法定労働時間又は所定労働時間以外の時間において従事する部活動指導業務については、教員も事務職員も民間労働者も原則として勤務時間にカウントしなくてもよいことにするのである。現行の給与制度の中でも、例えば、宿日直勤務は勤務時間規制の対象外とする制度があるし、一定の裁量労働についても勤務時間管理の縛りが緩いのだから、考え方次第で制度化できないのだろうか。そして、業務従事の実態に労働者性がない場合には、労働契約に基づかないものとして謝金を支払うことでよいと思われるし、業務従事の実態に労働者性が認められる場合には、労働契約に基づきそれにふさわしい賃金を支給すればよいのである。イメージで述べれば、外部指導者の場合、年間を通じて継続的に委嘱するなら非常勤職員として報酬を支払うのであろうし、週1回程度の範囲内のものであれば、謝金で対応することも考えられる。また、仮に部活動指導のための専任の教員を雇えば、日曜日などの平日以外に正規の勤務時間を割り振って給料を払うのであろうし、平日の授業を担当している教員に対して付加的な業務として顧問を命じ、部活動指導にあたらせるのであれば、教職調整額制度の下での特殊勤務手当が実態に合うのか、超過勤務手当がふさわしいのか、あるいは別の手法が考えられるのかという議論になるのだろう。
 もちろん、この案を実現したからといって、それだけで教員の実働時間が減るわけではない。けれども、勤務時間外の部活動指導を勤務時間管理の対象外とすることで教員の超勤問題を整理し、とりあえず部活動指導問題とは切り離して、これ以外の様々な教員の超勤実態の改善策を検討することができるし、部活動指導への外部指導者の招聘や中体連等の申し合わせ事項の徹底、顧問委嘱の在り方の見直しなどの施策と相まって、教員の勤務時間を巡る混乱を解決することに繋がっていくのではないかと思うのだが、どうだろうか…。
 それとも、「問題を先送りにした開き直りだ。」あるいは、「現状の教員の長時間労働を正当化するだけだ。」と批判を受けることになるだけなのだろうか…。

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