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256.読書=『賃金とは何か』 [29.読書]

 楠田丘『賃金とは何か-戦後日本の人事・賃金制度』(中央経済社、2004年)
 戦後日本の賃金制度の流れには楠田式と弥富式があるのだが、終身雇用という日本の雇用慣行にマッチした「職能資格制度」を 提唱し、多くの日本企業で採用される賃金制度を確立したのが楠田丘氏である。この本は、同志社大学の石田教授らによるインタビューであるが、戦後日本の 復興から高度成長期、そしてバブル崩壊後の成果主義導入期を通じた人間中心の賃金制度の歴史を学ぶことができる。この本を読むと、「賃金」がほんとうに面白くなる。

  目 次
   解題:賃金論の学び方
   第1章 労働省時代
   第2章 インドで学んだこと
   第3章 賃金体系の模索
   第4章 楠田理論の構想
   第5章 楠田賃金論の普及
   第6章 成果主義との格闘

 昭和25~26年、労働省時代の楠田氏は、GHQに通って、女性将校からアメリカの賃金論の講義を集中的に受けた。職務調査、職務評価、職務グレードの作成、賃金表の作成…。ペイ・フォー・ジョブを徹底的に学ぶ。さらに、ヨーロッパの職種給の考え方やインドでの経験を通じて、労働市場の在り方が根本的に異なっている日本社会で通用する賃金論を模索し、独自の「職能給」を構想する。それは、高度成長期を通じて日本企業に普及し、さらには海を渡って、アメリカの職務給をブロードバンド化させた。そして、能力に着目する考え方は、アメリカでコンピタンシーに生まれ変わって、日本に逆輸入されることになるのである。
 本書を読んだ上で、楠田丘『改訂新版 賃金表の作り方』(経営書院、2006年)、楠田丘『改訂9版 労使のための賃金入門 賃金テキスト』(経営書院、2010年)を読むと、より一層理解が深まる。

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