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278.へき地手当(その5) [35.へき地手当]

 全国へき地教育連盟著『へき地教育の振興』(講座・へき地の教育1、昭和40年)という本がある。この本は、へき地教育振興法制定10周年記念として、天城勲文部省調査局長及び木下一雄前東京都教育委員長の監修の下に刊行された全5巻のうちの一つである。
 目次を見ると、第一章「へき地学校の現状」、第二章「へき地教育振興の構造」、第三章「国のへき地教育振興方策」、第四章「都道府県及び市町村のへき地教育振興対策」、第五章「へき地教育関係団体」となっている。
 執筆者は、第一章は文部省調査局調査課長奥田真丈、第二章は調査局長天城勲、第三章は初中局財務課長今村武俊ほか財務課係員、第四章は地方課長補佐山川武正ほか都道府県教育長、指導主事諸氏、第五章は東京都立教育研究所所員渡辺ユキとなっている。
 実は、文部省自身の手により、昭和36年に『わが国のへき地教育』(帝国地方行政学会)が刊行されている。この本は、振興法制定後7年を経過し、へき地教育の現状と課題を明らかにしたものである。しかし、このノートの観点からは記述が簡潔にすぎて、物足りない。その点、『へき地教育の振興』の方は、へき地教育振興法の制定に至る経緯や関係団体の運動、へき地教育振興法の構造や改正趣旨などが、生き生きと綴られている。
 詳細を紹介するスペースはないが、へき地学校等の指定基準に関して引用しておく。

 「ところで、文部省令で定めようとしている基準を仮に前述の給実甲による人事院基準(編注=隔遠地官署指定基準(給実甲117号))と同一とすれば約半数の学校がへき地指定から外れる。これはへき地教育の振興上からも問題が大きすぎる。しからば人事院基準と全く別個のものを作ればよいということにもなろうが、「公務員」と「教育公務員」の相違だけで別個の扱いとするのは少しく飛躍しすぎるといった意見もあった。
この間、文部省では、各都道府県教育委員会の関係者、へき地教育振興期成会、へき地教育研究連盟などの意見もじゅうぶん聴取して、基準案の作成にとりかかった。
 その基本的構想は次のようなものであった。
 イ 現に国家公務員・地方公務員の官公署指定の基準となっている人事院基準の骨子は踏襲するが、一部その合理化を図る。
 ロ 教育公務員の特殊性を何らかの形でとり入れる。
 ハ 基準設定に伴う不利益擁護のため、必要な経過的措置を講ずる。
 この構想に基づき、基本的にへき地性を評価する基準点数は大体において人事院基準の考え方をとり入れる。しかしながら、小・中学校を指定するための要素に「小・中学校までの距離」というのは無意味なのでこれを削り、経済・文化の中心地としての「高等学校までの距離」を要素としてあらたにとり入れる。また、各要素までの距離の区分を二粁単位とする。さらに、補正の面において、各要素に至る間に運行回数の少ない「バス」を利用する場合は点数の補正増を行う。そのほか、島の場合で定期航行回数が一日二回以内のところにも点数を与える、といいた合理化を図る。
 一方、教育公務員の特殊性については、他の公務員との均衡もあるので、それを付加点数によって強調しようという考え方が採用された。それには、(イ) ラジオ等の視聴覚教材の使用が困難であること、(ロ) 家庭訪問等の場合を想定した遠距離通学者が多いこと、(ハ) 学用品などの購入地が遠いこと、(ニ) 貧困児童生徒が多いこと、(ホ) 教員が単独又は二人だけの学校、(ヘ) 教員の住宅事情が悪いこと、(ト) 分校であって本校と相当離れていることなどについてとくに付加点をつける。
 このような案で、最終案がまとまったので、この基準を実際に十数府県のへき地学校に実際にあてはめてみると大体において満足できる結果が得られた。
 文部省は、この案を「へき地教育振興法施行規則」として成文化するとともに、この指定基準の施行にともなって、前述のごとく従来のへき地指定より不利益となるものについては必要な救済措置を講ずることとして、昭和三十四年七月三十一日、「へき地教育振興法施行規則」を文部省令第二十一号として制定したのである。」
 「三十五年四月、給実甲による人事院基準は文部省令の影響を受けて手直しされたが、教育公務員の特殊性を強調した「付加点」による両者の差は依然として残されている。」
 (第三章「国のへき地教育振興方策」から)

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